ギンリョウソウ
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#192 [向日葵]
「要さま……」

「僕は……君が……」

言いかけて、要は口を閉ざす。

そして聖史を睨みつける。

本人にしか言いたくない事を、コイツの前で言う必要はないと思ったようだ。

「言っておくけど、売られたケンカは倍額で買う。こちらだってプライドがあるからね。でも、椿の事は、フェアで戦おうとは思わない。もともと椿は僕のものなのだから」

「プライドがあるのにフェアで戦わないなんておかしいよ」

「どうせフェアで無くなるのは分かってる。それとも何かい?君は椿の事を反則を犯してまで欲しいとは思わないのか?」

⏰:08/08/09 22:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
これには、冷静を装っていた聖史もムカッときたのだろう。
眉を寄せて、怒りを露にする。

「そこまで言われると、心外だな。いいだろう。フェアに戦わないと言った言葉を後悔するといい」

フッと笑うと、要は踵をかえして玄関ホールを去って行った。

「あ……」と思った椿は、追いかけようとする。
が、聖史に腕を引かれた。

「追いかけてどうするの?あんな人だよ?椿が気を遣う必要なんてないよ」

「……放して……くださいませ……」

しばらく腕を掴んでいた聖史は、ゆるりと椿の腕を放した。

⏰:08/08/09 23:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
そして椿は要を追った。

要は門までまっすぐ続く道を歩いている。

「か、要さま……っ!」

どうして追ってるか分からない。
ただ足が進むままに、椿は要の元まで走る。

「要さま……っ!」

さっきより少し大きな声で要を呼ぶと、要は足を止めてこちらを見た。

「……何……?」

少し冷たい要の言葉が、椿の胸に突き刺さる。
切なげに彼を見れば、彼も椿を見る目が切なく変化した。

⏰:08/08/10 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
「私……私……」

「……椿は、さっきの人が好き?」

「え……?ち、違っ……!」

すると要がふわりと椿を抱き締める。
空気を抱くように抱き締められてると、その力は段々と強くなり、細い椿の体は少し痛みを感じた。

けれど椿は戸惑う事なく、要を受け入れていた。

「例えそうでも、争う事をやめろなんて言わないで。僕は戦う。そして完璧に君を僕のものにする」

「要……さま……」

⏰:08/08/10 00:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
要は椿を放すと、近くで見つめる。
椿は胸が高鳴る。

「僕は…………。なんでもない……。とにかく僕は勝つつもりだから」

椿はどちらを応援するなんて考えていない。
ただ少し、ほんの少し、揺れ動いている自分の心が、聖史を好きになったらどうしようと思っている。

……でも、その方がいいのかもしれないとも思っている。

―――――ユイコ……。

切なげな声で、呼ばれたその名……。
まだ頭から離れない……。

⏰:08/08/10 00:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
「……じゃあ、また明日……」

椿はゆっくりと頷く。

しかしそう言いながらも、要は動こうとしない。
どうしてだろうと要を見つめれば、要もじっと椿を見つめていた。

そしてゆっくりとこちらに身を乗り出し、椿の頬に唇を寄せた。

そうして踵をかえして、要はまた歩き出した。

椿はその後ろ姿を見つめながら、さっき唇が触れた場所にそっと触れる。

好きになっても、仕方ないのに…………。

⏰:08/08/10 00:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
[第5話]

「おはよう椿」

朝食にと、部屋へ来た椿に、聖史は笑いかけた。

一方椿は、そこに聖史がいると知らなかったので、出かけた欠伸を止めた。

「お、おはようございま……。聖史さま、如何なさったんですか?」

「今日は僕が君を学校まで送ろうと思って」

昨日から椿を争う戦いは始まっているのだ。
どうやら聖史は先制攻撃を仕掛けてきたらしい。

しかし、椿の頭は要の事で一杯だった。

それはきっと、遠慮がちに触れた彼の唇のせいだろう。

⏰:08/08/10 01:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
「椿、早く座りなよ」

「あ、ハイ……」

席に座り、椿は聖史と一緒に朝食を取り始めた。

―――――――――…………

「椿っ!聖史兄ちゃん帰って来たって!?」

学校に着くと、美嘉が椿に言った。

「ハイ、昨日から……」

「ひっさしぶりじゃぁん!美嘉も会いたい!!今日会いに行っちゃダメ!?」

「いいえ、いいですよ」

「聖史さんって?」

聖史を知らない越はまったく話についていけない。

⏰:08/08/10 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
なので美嘉が越の方を向いて説明しだす。

「椿のお兄ちゃんみたいなので、財閥の跡取りなんだけど、めちゃくちゃ優しくていい人なんだ!美嘉にも優しくしてくれて、まさに理想の旦那さまって感じ!」

“旦那さま”というワードに、椿は密かにビクリとしていた。

今日も要はきっと来るだろう。

昨日の、あの要の悲しそうな顔……。
あんな顔にさせたのは自分だ。
……けれど、椿にはあの「ユイコ」という呟きがどうしても気になり、要に悪い事をしたと思う一方、要を責めている自分がどこかにいた。

「そういえば椿、アイツこの頃大人しく感じるけど、何もされてない!?」

⏰:08/08/10 01:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#201 [向日葵]
そう言われて、ポンと昨日頬にキスされたのを思い出した椿は、ほのかに顔を桃色に変えた。

それにショックを受けた美嘉は、逆に青い顔をした。

「ア、アイツ……っ!美嘉の椿にぃぃぃっ!!」

「ち、違います……っ!えと、そんな、美嘉ちゃんが思ってるような事は……っ」

「じゃあ、どうしたの?」

今度は越が訊いてきた。

椿は昨日触れられた場所に指先を触れながら、更に顔を赤くさせた。

「ほ……頬に……キ、キ、キスをされまして……」

⏰:08/08/10 01:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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