ギンリョウソウ
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#259 [向日葵]
押し倒すわ、強引に唇を奪うわ、泣かすわ……。
考えてみれば最悪な事しかしていないではないかと頭を抱える。
それでも、気持ちは伝えた。
ただ椿から何の返事も返ってこない。
毎日のメールからは、前の事ならきにするなという文や、今日どんな出来事があったのかが書かれていた。
今すぐ返事をしてくれないのは、要自身が言った最初の言葉や、突然の兄的存在が現れたせいだろうと考える。
最初の言葉は、これからの自分の誠実な接し方で帳消しにすると意気込んでも、あの聖史がやはり邪魔だと要はイラついた。
:08/08/20 02:06
:SO906i
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#260 [向日葵]
苦々しいため息をはいた後、ドアをノックされた。
「要さま」
大久保だった。
「なんだ」
「お客様が来ていますが、お通ししてもよろしいですか?」
「もしかして」と、微かな期待が胸をよぎる。
「誰だ」
「早乙女 聖史さ……」
「通すな追い返せ」
大久保が最後まで言う前に要は言った。
なんで奴が来るんだ。
:08/08/20 02:10
:SO906i
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#261 [向日葵]
大久保は部屋から出ていかない。
戸口で誰かと喋っている。
「あの、要さま。ならばドア越しに話さないかと、早乙女さまがおっしゃってます」
要は大久保に聞こえないように舌打ちした。
きっと要と喋るまで帰る気がないのだろう。
なら早く喋って早く帰ってもらった方が無駄な抵抗を続けるよりマシだ。
「分かった。大久保、下がっていいよ」
大久保は一礼すると、ドアを開けたまま去って行った。
要はドア近くの椅子に移動する。
:08/08/20 02:14
:SO906i
:☆☆☆
#262 [向日葵]
「久しぶりだね」
「君には2度会いたくなかったけどね」
「手の調子はどう?」
「言っただろ。柔じゃない。これくらい痛くも痒くもないね」
微かに笑い声が聞こえる。
なんだか馬鹿にされている気がした要は、青筋をこめかみに浮かべながらさっさと帰ってもらおうと用件を訊く。
「僕も暇じゃないんだ。何の用かな」
「それは失礼。確かめたい事があってね」
「雑談はいい。要点だけ言ってくれ」
:08/08/20 02:18
:SO906i
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#263 [向日葵]
「作戦なのかな?」
要はドアの方を向いて眉間にシワを寄せる。
「何が?」
「そうやって、拗ねてるみたいに頑なに椿に会わないのは、彼女の気をひく作戦なのかって訊いてるんだよ」
「拗ねてるだと……?」
事の元凶の奴が、こちらの心情も知らずに馬鹿にして……。
要は立ち上がるとドアに近づき、聖史がいるだろう場所を思いきり拳で叩く。
「君には吐き気がするほどイラつくよ。拗ねてるだと?ふざけた事を言われたものだ。君に僕や椿の何が分かるんだっ!」
:08/08/20 02:23
:SO906i
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#264 [向日葵]
言い終えてすぐに、反対側からもドンッ!と叩かれた。
「君のせいで……椿は僕に集中してくれない……。僕もそんなに気長じゃないんでね。作戦なら見事だねと、賛辞を贈りにきたんだよ」
冷静な口調だが、要と同じくらい彼もイラついているのだと分かった。
だからわざと要をイラつかせたのだろう。
「フェアに戦わないと言った筈だ。椿が僕で頭がいっぱいなら、僕は万々歳だね」
「なら僕にも考えがある。椿を今度帰る時に、泣き叫んでも連れて行くよ」
それを聞いた要は、戸口に出て聖史の姿を見つける。
聖史はドアに背を預けるようにして腕を組んでいた。
:08/08/20 02:29
:SO906i
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#265 [向日葵]
「焦らなくても、君が姿を見せればそんな事はしないよ。僕も鬼じゃない。椿が嫌がるのを無理矢理……って言うのは好まない」
「今……僕が悩んでるって分かってて言ってるのか……っ」
どんな状況になろうと、自分が有利に立とうとしむける聖史。
そんな聖史に、要は歯噛みしながら睨みつける。
「フェアには戦わないんだろ?」
ニヤリと笑って、聖史は去って行った。
椿に会いに行かねば。
いや、会いたいんだ。
でも、どんな顔で、椿の前にいけばいいかが、要には分からなくなっていた。
:08/08/20 02:34
:SO906i
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#266 [向日葵]
―――――――…………
「3針……ですか……」
聖史がいなくなったので、最近なかなか聞けなかった要の様子をメイドの佐々木に訊いて、椿は驚いていた。
「はい。どうもガラスで掌をお怪我されたそうで、痛みと熱があったので担当医に診てもらったところ、3針縫ったらしいです」
たしか要が怪我をしたのは右手。
私生活にも困っているのではないのだろうか……。
でも……。
「ありがとうございました。では……」
「え?椿さま……?」
:08/08/20 02:40
:SO906i
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#267 [向日葵]
佐々木は少し驚きながら椿を呼び止める。
椿は首を傾げ、佐々木を見る。
「あの……お見舞いに行かれたりしないのですか……?」
「どうしてですか?」
「椿さまは……要さまにご好意があるのではと思いまして……」
椿は佐々木を見つめたまま固まった。
佐々木は続ける。
「こんな事言っては失礼なことを承知で言わせて頂きます……。聖史さまはとてもいい方です。お優しいですし、椿さまを大事にしてくれるでしょう。……ですが……。椿さまは、要さまと一緒の方が、椿さまらしくいるような気がします……」
:08/08/20 02:45
:SO906i
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#268 [向日葵]
椿は今までの要との時間を思い出していた。
不器用で、でもどこか優しくて……。
弱い部分の自分を怒らないと言ってくれた人……。
「佐々木さん……。好きという感情は、私にはまだ分かりません。傷つけたくない人と、どうしても気になってしまう人はどう違うのでしょう……」
聖史は傷つけたくない人。
要はどうしても気になってしまう人。
どちらも大切な人。
でも椿には、どちらがより大切かなんて決めることは出来なかった。
「佐々木にも……分かりません……」
:08/08/20 02:49
:SO906i
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