ギンリョウソウ
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#289 [向日葵]
:08/08/22 02:33
:SO906i
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#290 [向日葵]
「どうしましょう……要さまは、今留守してまして……」
戸惑っている椿と同じくらい大久保も戸惑っている。
「え、そうなんですか?」
「ハイ。ユイコさまとお食事に行かれるそうで、私は着いて来なくていいと言われ、屋敷に残ったのですが」
椿の心臓が一際大きく鳴る。
―――――ユイコ……。
「じ、じゃあ私は……帰ります」
椿は徐々に後ずさる。
胸の奥が、鋭い痛みに襲われる。
:08/08/23 02:06
:SO906i
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#291 [向日葵]
後ろ手にドアノブを持つと、反対側から回されたので、椿は手を放し、その方へ振り向いた。
「……椿?」
ドアを開けた人物が言う。
椿は驚いて目を見開く。
「要……さま……」
2人はお互い驚き固まる。
そんな要の後ろから、小柄な女の子が顔を出した。
椿はその女の子に気づく。
「椿……?」
可愛らしい声を出したその子を、椿はユイコだと直感で思った。
思ったと同時に、いても立ってもいられなくなって、屋敷を飛び出した。
:08/08/23 02:10
:SO906i
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#292 [向日葵]
[第7話]
呆然としていた要はハッとして振り返る。
「ユイコ。ちょっと待っとけ!」
「あ、ハイ……」
椿を追いかける要に、返事が届いたかは分からない。
ユイコは大久保を振り返る。
「あの方が椿さまですか?」
「ハイそうです」
「あの方が……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
広く長い屋敷から門までの道なりを走り抜けるなど無駄な事だった。
:08/08/23 02:14
:SO906i
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#293 [向日葵]
そしてそれは体を気遣い、普段運動をしない椿なら尚更辛いものだった。
諦めて椿は歩く。
「あの方が……ユイコさま……」
ふわふわと綺麗な栗色の髪で、可愛らしい人だった。
要と並べばいいカップルに見える。
それがなんだか嫌で、椿は逃げ出した。
せっかく美嘉が作ってくれた機会だと言うのにと、椿は落ち込んだ。
じわりと滲む涙を手の甲で拭い、足を進める。
すると後ろから腕を引かれた。
息をのみ、目を向ければ、息を切らした要がいた。
:08/08/23 02:18
:SO906i
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#294 [向日葵]
「待ってよ……」
椿は目を伏せて口を閉じる。
「大体なんで君がここに?」
「美嘉ちゃんが……連れて来て下さったんです。ご挨拶をしようと思っただけですので、もう帰ります」
再び歩き出そうとする椿を、要は慌てて止めた。
「待ってって!なら会ったんだからさ、少しくらい話をしようよ」
「駄目です……っ、そんなの……」
貴方には大切な人がいるのに。
私は邪魔する事は出来ない……。
:08/08/23 02:22
:SO906i
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#295 [向日葵]
「駄目?駄目ってなんで?」
よく分からないと言った風に要は困った顔をした。
椿は下唇を少し噛む。
そしてやんわりと要が掴む腕を要の手からはずした。
「私は、今…、いえ、要さまのそばにいる事は許されないのです」
「え?椿?」
「…………どうかあの方と、お幸せに」
苦しそうにそう告げ、椿は歩き出す。
これで終わった。
全て終わった。
椿は聖史を選ぶのみしか、道はなくなったのだ。
…………と、本人は思っていあ。
:08/08/23 02:26
:SO906i
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#296 [向日葵]
「待ってーっ!!」
今度は両肩を掴まれて向き合うように体を回される。
「なんか誤解してない!?何お幸せにって!」
何が誤解なのか、椿にも分からなかった。
だって要と一緒にいたのは……
「思ってらっしゃる方なんですよね……?」
要はしばらくフリーズしていた。何の事かさっぱりなので、今頭の中で、物事を整理している最中らしい。
「……え?唯子の事……?」
椿はうつむいて、小さく頷く。
「な、ばっ……!あれは妹だよ!」
これには椿も目をまんまるくした。
:08/08/23 02:32
:SO906i
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#297 [向日葵]
そしてすぐに悲しそうな顔をする。
「いいんです。要さまが婚約を解消すると言うなら私は了承しますし……」
「違っ、あの……っ。……あー!もういい!ちょっと来て!」
腕を強く掴まれ、引っ張られる。
抵抗なんてなんのそので、要は椿をズルズルと容赦なく屋敷へ連れて行った。
また屋敷に入ると、玄関ホールには大久保と唯子がいた。
何かを察知した大久保は、意味深に微笑みを椿に向ける。
「改めまして、要さまおかえりなさいませ。そして椿さま、いらっしゃいませ」
:08/08/23 02:36
:SO906i
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#298 [向日葵]
椿は頭の中を上手く整理出来ず、大久保の言葉にも反応出来ずにいた。
そして要は少し怒ったように声を上げる。
「聞いてよ!椿が唯子が僕の想い人だと言って本当の事を理解しないんだ!」
一瞬玄関ホールがシンと静まる。と、誰かが吹き出した息の音を合図に、玄関ホールに笑い声が谺(コダマ)する。
唯子もクスクス笑い、要だけが「ホラ見ろ」と言わんばかりに椿を見る。
「椿さま、それは禁忌ですよ。いくらなんでもそれはございません」
「え、あの、ですが……」
チラリと唯子を見ると、視線に気づいた唯子はフワリと柔らかく微笑んで履いていたスカートをひと摘まみすると、昔の姫君のようにお辞儀した。
:08/08/23 02:43
:SO906i
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