ギンリョウソウ
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#301 [向日葵]
:08/08/24 11:56
:SO906i
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#302 [向日葵]
それなのに自分は……と何度も思い返す度、椿の顔の火照りはしばらくやみそうになかった。
「まぁいいけどさ……」
「ごめんなさい……」
さっきから何度も消えてしまいそうな声で謝る椿がさすがに可哀想だと思ってきた要は、密かにため息混じりの微笑みを浮かべると窓に歩みより、開ける。
爽やかな風が吹いてくるのに気づいた椿は、少しだけ顔を上げる。
風で、目の前にある紅茶の香りが漂ってくる。
「しかし、君の友達もおせっかいだね。僕の事が気に入らないくせに君とくっつけようとする」
:08/08/24 12:05
:SO906i
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#303 [向日葵]
完全に顔を上げ、要を見ると、要は窓の外を眺めていた。
そんな要が夕焼けで綺麗に見えたれば、胸がドキリとした椿は、別の意味で顔を火照らす。
「で、そのお節介な友人に連れてこられた君は、僕に何か用事でもあったの?」
「え……」
言われてみれば、要に会おうなどと考えていなかった椿だ。
急に連れて来られたから、美嘉の気持ちに答えねばと入って来たが、ちゃんとした理由はあまりなかった。
訊きたかった唯子の事は分かったし、だからと言って前言ってくれた言葉は本当なのか訊く勇気は今の椿には無かった。
:08/08/24 12:12
:SO906i
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#304 [向日葵]
ぼんやりとしながら目線を徐々に下へやれば、要の手に巻いてる包帯を見つけた。
そこに視線を釘付けていると、要が気づいた。
「あぁ……これ?これが心配だったの?」
「え、あの、えと……」
「なら心配いらないよ。傷もだいぶんよくなってるしね。見たい?」
椿はいきおいよく首を振る。
そんな椿に要はクスリと笑う。
「冗談」
笑ってくれれば、椿も緊張がほぐれていった。
「さて……そろそろ暗くなる。君を送るよ」
:08/08/24 12:17
:SO906i
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#305 [向日葵]
椿は呟くように「え……」と言った。
椿の方に歩みより、立たせる為に手を差し出す。
「さ、行こう」
要の怪我はマシになっている。
怪我のせいでたまっていた仕事は多いだろう。
それを済まさなければならないのなら椿も早く帰った方がいい。
頭では椿も分かっている事だった。
でも、なかなかその手を取る事は出来ず、ただ手をジッと見つめているだけ。
そんな椿に、要は不思議そうな顔をする。
「椿……?」
:08/08/24 12:22
:SO906i
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#306 [向日葵]
「あ、ハイ……」
手をゆっくりと要の手に重ねようとする。
早く帰らなければ、要に迷惑がかかってしまう。
しかし、椿はあと数センチという所でキュッと拳を作り、手を降ろしてしまった。
そして悲しげに要を見る。
「もう……会ってはくれないのですか……?」
「椿……?」
椿はずっとそんな気がしてならなかった。
送ると言った要はあまりに惜しみなくて、あっさりとしていた。
まるでばっさりと縁を切ってしまうかのように。
そう思えば、椿はなんだか悲しかった。
:08/08/24 12:27
:SO906i
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#307 [向日葵]
「私が……いらなくなりましたか……?」
要に会った瞬間、胸が甘く疼き、その奥にある分からない気持ちが浮き出す。
ずっと……会いたかった。
分かったけれど、もう遅いのだろうか。
「いらない?そんな訳ないだろ!君は……っ。……僕の言葉……忘れたのか?」
少し顔を赤らめて、椿から視線を外す要。
その態度に、椿のもう1つの疑問は無くなった。
「じゃあ、この頃姿をお見せになってくれなかったのは……?」
:08/08/24 12:32
:SO906i
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#308 [向日葵]
黙り込んだ要は、椿の隣に腰かける。
やがて、ゆっくりと話し出した。
「この前の事、本当に申し訳なかった。反省してる。君からの電話やメールも無視してすまなかった」
「私は……気にしてませんでしたわ」
要はちゃんと謝ってくれたし、その後乱暴な行動とは違い、優しく抱き締めてくれた。
「僕はずっと気にしてたよ。それにね椿、僕は椿が嫌でなんじゃない。僕が嫌で仕方なかった」
「どうしてですか?」
「苛立ちにも似た気持ちを君にぶつけたから」
:08/08/24 12:37
:SO906i
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#309 [向日葵]
要は自分の膝に肘をつき、頬杖をついた。
絨毯をぼんやりと眺めていると、苦いため息をはいた。
「君も身をもって実感しただろ。僕はこんな奴だ。今度は歯止めすらきかなくなるかもしれない。それが恐いなら、あの聖史さんとやらを選べばいい」
椿は目を見開く。
それは、要はこの争いから手を引くということなのだろうか。
唯子の正体が分からなかった時感じた痛みより、更に鋭い痛みが胸を貫く。
「あの人は僕と違って優しいし、君も幼い頃からの知り合いなのだろう?なら尚更いいじゃないか」
要のあの告白は本当の気持ちなのに、諦める?
:08/08/24 12:44
:SO906i
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#310 [向日葵]
じゃあやっぱり椿がいらない?
それならば、やっぱり、あの言葉は嘘?
椿は突然立ち上がる。
そしてドアの方へと歩いて行った。
それに驚いた要は椿を呼び止める。
「椿、どうかした?」
しかし椿は答えなかった。
ドアノブに手をかけ、開けようとした時、要が後ろからドアに手をつき、出ていくのを阻止した。
「椿、何か言ってくれないと分かんないよ」
椿は要に背を向けたまま黙り込む。
痺れを切らした要は、肩を持ち、自分の方へ向かせる。
「椿!何か言ったらど……」
要はハッと気づいた。
うつむいてる椿から、絨毯にかけて滴が落ちている。
:08/08/24 12:50
:SO906i
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