ギンリョウソウ
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#371 [向日葵]
沢山の事を思えば思う程、椿は要の訊ねに首を縦に振る事は出来なかった。

「椿……?嫌なの?」

椿はうつむいた。

要は長いため息を吐く。

「僕の自惚れじゃなかったら、君は少しでも僕に好意を抱いてくれてるんだろ?聖史さんとやらよりも僕を選んでくれるのだろう?」

これには、椿は力強く頷いた。

「じゃあ何がダメなの?」

それはあなたを傷つけてしまうかましれないから。
私が何をされるか分からない恐怖に包まれるから。

⏰:08/09/02 02:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#372 [向日葵]
「……ごめん、なさい……」

「分からない。君は僕に諦めないでほしいと言ったんだ!なのに何故婚約が出来ない!……もしかして、まだ僕の気持ちを疑ってる?」

「ちが……」

「じゃあなんで……っ!」

肩を掴み、椿を揺する。
椿はされるがままになりながら泣きそうになっていた。
聖史にされた事を告げても、要はそばにいてくれるだろうか。
夢のように、去って行ってしまわないだろうか……。

「失礼します」

お茶を持ってきた大久保が部屋に入ってくると、要は部屋を出ていった。

⏰:08/09/02 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
部屋の隅で、椿は震える。
大久保はテーブルにお茶を乗せたトレーを置くと、椿に歩み寄り優しく語りかける。

「何かありましたか?」

椿は大久保を見る。
大久保は優しく椿を見つめる。
堪えきれなくなって、椿は涙を流し始めた。

「き、昨日、聖史さんに、無理矢理キスされました……。怖くてすごく嫌なのに、離してくれなくて……」

椿は昨日あった事を全て大久保に話した。
大久保は何も言わず、ただ黙って椿の話に耳を傾けた。

「こんな事、要さまに知られるのが恐いんです……っ。嫌われたらって……っ。こんな事する人だとは思わなかったって、ショックを与えたくないんです……」

⏰:08/09/02 02:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
顔を覆って泣く椿を、大久保は淑女のようにソファーにエスコートする。

「だから、要さまには告げないのですね……」

「ハイ……言えませんこんな事……」

大久保は上着からハンカチを出し、椿の手に握らせた。
それに気づいた椿は、遠慮がちにハンカチで涙を拭く。

「私が口出しするのもなんですが、要さまは椿さまの事を嫌いになんかなりませんよ。大丈夫です」

口元をハンカチで押さえ、まだ潤む目で大久保を見る。
屈んで目線を合わせてくれている大久保は優しく微笑む。

⏰:08/09/03 01:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
「それでも、椿さまにまだ告げる勇気がないのであれば、私はもちろん喋りません。椿さまも、勇気が出たら要さまにお話してあげてください」

最後にニコリと微笑むと、大久保はふとドアの方を気にした。

「要さまの機嫌が治ったみたいですね。こちらに向かってきます。では、私はこれで……」

ドアから出た彼は、丁度外で出くわしただろう要に一礼して行ってしまう。
代わりに要が部屋に入って来た。

椿の涙を見た要は、幾分気まずそうだった。

「送るよ。だから今日は帰ろう……」

⏰:08/09/03 01:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
「で、でもお茶をせっかく運んで頂いたのに」

「帰ってきたら僕が飲むよ」

椿は少し落ち着きを取り戻す。
いつまでも泣いていたら要を困らすと思ったからだ。

黙って帰る準備をすすめる。

車を門前にまわしてくれた要は、その場で別れると思いきや一緒に乗ってきた。

どうしたのかと思ったが、彼は何も言わず、そして椿も何も言えず、車内は沈黙に包まれた。

しばらくして、椿の家が見えると要が言った。

「久しぶりに君の家にあがりたいんだけどいいかな?」

「あ、ハイ。どうぞ……」

⏰:08/09/03 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
玄関ホールに入る前、ドア前で椿が一旦立ち止まる。

足が……動いてくれない……。

「どうかした?」

要の声にハッとして、苦笑いを返すと、手に力を入れてドアを握る。

高鳴る心臓は、嫌な予感を表すものか。

それとも……。

⏰:08/09/03 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
[第9話]

玄関ホールに来て間もなく、メイドの佐々木がやってきた。

「おかえりなさいませ椿さま、そしていらっしゃいませ要さま」

「やぁ。久しぶり」

「お怪我の具合は大丈夫ですか?」

「だいぶ良くなったよ。そろそろ抜糸だ」

そんな他愛もない会話を聞きながら、椿は辺りに神経をとがらせた。
いつどこから、聖史が出てくるのかと……。

すると思い出したように佐々木が言った。

「椿さま、聖史さまを見かけませんでした?辺りを散歩してくると言って、帰られた姿を見ないのですが」

⏰:08/09/03 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
それを聞いて椿は少しホッとした。
今ここにいないだけマシだ。
現れでもしたら、それこそ要と火花を撒き散らすかもしれない。
その心配もあった。

でも、いると言う事には変わりないのか……。

「か、要さま。夕飯を一緒に食べませんか……っ?」

要は少し驚いた顔をした。

聖史と会うまで、少しの間でも要といたい。
椿は純粋にそう思った。

「いいけど……じゃあどこか食べに行く?」

「いえ、ここで」

「分かった。じゃあ着替えておいで」

⏰:08/09/03 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
安堵の笑みを浮かべ、椿は自室へと早歩きで行ってしまった。

「ねぇ」

要は近くにいる佐々木に問いかける。

「椿様子が変だけどいつから?昨日?」

「いえ、今朝からです。青い顔をして起床なさいましたから」

「うーん……。また風邪かなぁ……」

要が最早心配しているだなんて知らない椿は少し気分が明るくなり、いそいそと着替えをする。

脱いだ制服を綺麗にハンガーでかけ、出ていこうとした時、後ろから何かに引っ張られた。

⏰:08/09/03 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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