ギンリョウソウ
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#406 [向日葵]
「そんな訳ない」
きっぱりとした口調で要が言った。
「椿は嘘をつくような子じゃない。君はおかしい。好きな子を犠牲にしてまで自分のものにするなんて間違えてる」
聖史は歩いてドア近くまで歩く。
そして手を振り上げたと思うと、近くにあった花瓶を手で払い落とす。
耳障りな音が、応接間に響く。
美嘉はそんな聖史を初めて見るので、驚きを隠せないでいた。
「君には本当に腹が立つよ……」
品定めのように、割れた花瓶の破片を広いあげる。
:08/09/05 02:16
:SO906i
:☆☆☆
#407 [向日葵]
そしてまたこちらへ歩み寄る。
「君さえいなかったら……椿は僕のものなのに……っ!」
破片が握られた手を、要に降り下ろす。
それは要の胸めがけて真っ直ぐに下ろされていく。
椿が咄嗟に出ていく。
要の前に躍り出た細い椿の腕に、破片が突き刺さる。
「いやぁっ!椿っ!」
美嘉が叫ぶ。
椿の白い服が、段々と赤くなっていく。
絨毯の上に、聖史はポトリと破片を落とした。
要は痛さでよろめく椿を支える。
「全部……全部要くんのせいだ!!君のせいで椿が……っ!」
:08/09/05 02:21
:SO906i
:☆☆☆
#408 [向日葵]
素早く聖史のそばに進み出た美嘉が、力一杯聖史の横っ面をグーで殴る。
女の子と言えど、突然の攻撃に驚いた聖史は尻餅をついた。
「最低っ!見損なったよ聖史兄ちゃんっ!なんで全部人のせいにしてるの!?何よ要くんのせいって!」
要はグーで殴る女の子を初めて見たので呆気にとられていた。
とりあえず椿の傷の治療をと、メイドの佐々木を呼ぶ。
ただならぬ空気と、椿の負傷に驚いた彼女は、すぐに椿を連れて出て行った。
それを見送った要は、再び部屋の中を見る。
:08/09/05 02:26
:SO906i
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#409 [向日葵]
「椿を手に入れる為なら何をしてもいいの?椿が嫌がっても、傷ついても、それでも自分のものに出来たら満足だって言うの!?バッカじゃない!?椿の幸せの事なんてひとっつも考えてないじゃないっ!!」
普通ここで自分が怒る筈なのにと、要は冷静に今の状況を分析していた。
聖史はうつむいたまま動かない。
それでも容赦なく美嘉は攻撃する。
「椿が幸せになれない相手なんて美嘉は絶対許さないっ!椿の事考えない相手なんてふさわしくないっ!聖史兄ちゃんはふさわしくないっ!」
聖史の手がピクリと動いたかと思うと、ギュッと絨毯を握る。
:08/09/05 02:33
:SO906i
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#410 [向日葵]
:08/09/05 02:34
:SO906i
:☆☆☆
#411 [向日葵]
「君達に僕の気持ちが分かる筈ない……。いつの間にか婚約して、その相手の要くんこそ椿の事を考えてなさそうだった。どんなに大事に椿を扱っても、常に彼女の心は別の方へ向いていた……」
聖史はギリッと歯噛みする。
「大事に扱っても無駄なら、力づくでと思ったんだ……。それなら手に入るんじゃないかって……」
聖史はふらりと立ち上がる。
ドアの方へ向かう彼の顔を見た要は、眉を寄せた。
彼が泣いていたからだ。
「僕はもう……帰るよ……」
パタンと虚しくドアが閉まる。
:08/09/05 02:39
:SO906i
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#412 [向日葵]
椿を思うあまり、狂気の沙汰となった彼は、もしかしたら随分前から心がズタズタに壊れてしまっていたのかもしれない。
彼が壊した、この花瓶のように……。
「……で、君は何を泣いているんだ」
美嘉が肩を震わせて泣いていた。
要に言われて、袖で乱暴に顔を拭う。
「色んな思いが交差してぐちゃぐちゃになったらなんか出てきたのっ!」
「単純だね君は」
「素直って言ってよ!椿にゾッコンなアンタなんかに言われたくないわっ!」
:08/09/05 02:44
:SO906i
:☆☆☆
#413 [向日葵]
要は咳き込む。
ゾッコンて……。
「それにまだ、アンタの事は完璧に認めた訳じゃないんだからねっ!聖史兄ちゃんに言った言葉は自分も含まれていると思いなさいっ!」
そう言われて、椿を思えば、椿の様子が気になった。
自分を庇って負った怪我。
彼は責任を感じていた。
そんな彼に気づいた美嘉は言った。
「早く行きなさいよ。私はここの片付けをしておくから」
「……ありがとう……」
そう告げた直後、ドアをノックされた。
:08/09/05 02:48
:SO906i
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#414 [向日葵]
入って来たのは見た事ないメイドだった。
一礼すると背筋を伸ばして話し出す。
「椿お嬢様の事なのですが、担当医が只今いらっしゃって治療中でございます」
「怪我の具合は?」
要が問う。
「あまり大きな傷ではありませんが、深く切れておりまして、縫わなきゃならないと言っております」
要は苦しそうにため息を吐いた。
自分の不注意で椿に怪我をさせてしまった。
しかも彼女は女の子だ。
たとえ見えない場所と言えど、傷跡が残らないといいが……。
:08/09/06 02:22
:SO906i
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#415 [向日葵]
結局美嘉と何人かのメイド達とで一緒に部屋の片付けを済ませた要は、帰ると言う美嘉を見送る為、門前まで来た。
自転車に鍵を入れながら美嘉は言う。
「椿怪我してんだから変な事しないでよ」
「あのね、君は何を勘違いしてるか知らないけど僕はそこまで理性の無い人間ではないから」
「君じゃない」
美嘉は自転車に股がる。
「美嘉は美嘉って言うの」
きょとんとしていた要は、やがて美嘉が自分の事を少し認めてくれたのに気づく。
「僕は要」
:08/09/06 02:28
:SO906i
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