ギンリョウソウ
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#411 [向日葵]
「君達に僕の気持ちが分かる筈ない……。いつの間にか婚約して、その相手の要くんこそ椿の事を考えてなさそうだった。どんなに大事に椿を扱っても、常に彼女の心は別の方へ向いていた……」
聖史はギリッと歯噛みする。
「大事に扱っても無駄なら、力づくでと思ったんだ……。それなら手に入るんじゃないかって……」
聖史はふらりと立ち上がる。
ドアの方へ向かう彼の顔を見た要は、眉を寄せた。
彼が泣いていたからだ。
「僕はもう……帰るよ……」
パタンと虚しくドアが閉まる。
:08/09/05 02:39
:SO906i
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#412 [向日葵]
椿を思うあまり、狂気の沙汰となった彼は、もしかしたら随分前から心がズタズタに壊れてしまっていたのかもしれない。
彼が壊した、この花瓶のように……。
「……で、君は何を泣いているんだ」
美嘉が肩を震わせて泣いていた。
要に言われて、袖で乱暴に顔を拭う。
「色んな思いが交差してぐちゃぐちゃになったらなんか出てきたのっ!」
「単純だね君は」
「素直って言ってよ!椿にゾッコンなアンタなんかに言われたくないわっ!」
:08/09/05 02:44
:SO906i
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#413 [向日葵]
要は咳き込む。
ゾッコンて……。
「それにまだ、アンタの事は完璧に認めた訳じゃないんだからねっ!聖史兄ちゃんに言った言葉は自分も含まれていると思いなさいっ!」
そう言われて、椿を思えば、椿の様子が気になった。
自分を庇って負った怪我。
彼は責任を感じていた。
そんな彼に気づいた美嘉は言った。
「早く行きなさいよ。私はここの片付けをしておくから」
「……ありがとう……」
そう告げた直後、ドアをノックされた。
:08/09/05 02:48
:SO906i
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#414 [向日葵]
入って来たのは見た事ないメイドだった。
一礼すると背筋を伸ばして話し出す。
「椿お嬢様の事なのですが、担当医が只今いらっしゃって治療中でございます」
「怪我の具合は?」
要が問う。
「あまり大きな傷ではありませんが、深く切れておりまして、縫わなきゃならないと言っております」
要は苦しそうにため息を吐いた。
自分の不注意で椿に怪我をさせてしまった。
しかも彼女は女の子だ。
たとえ見えない場所と言えど、傷跡が残らないといいが……。
:08/09/06 02:22
:SO906i
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#415 [向日葵]
結局美嘉と何人かのメイド達とで一緒に部屋の片付けを済ませた要は、帰ると言う美嘉を見送る為、門前まで来た。
自転車に鍵を入れながら美嘉は言う。
「椿怪我してんだから変な事しないでよ」
「あのね、君は何を勘違いしてるか知らないけど僕はそこまで理性の無い人間ではないから」
「君じゃない」
美嘉は自転車に股がる。
「美嘉は美嘉って言うの」
きょとんとしていた要は、やがて美嘉が自分の事を少し認めてくれたのに気づく。
「僕は要」
:08/09/06 02:28
:SO906i
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#416 [向日葵]
美嘉はニカッと笑うと自転車をこぎだし、後ろを振り向いて要に手を振る。
「じゃ、椿よろしく頼むよーっ!」
夜だと言う事を忘れて美嘉は元気に叫ぶ。
そして猛スピードで帰って行った。
そんな彼女の後ろ姿を楽しそうに微笑みながら要は見送る。
椿といい美嘉といい、相手の事を思いやれるいい子だと素直に思った。
――――――――…………
まるで要状態。
3針縫った傷は痛くはないが見ればフッと意識がとびそうになる。
:08/09/06 02:33
:SO906i
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#417 [向日葵]
包帯を巻いてあまり動かさないようにと言われた椿は腕をあまり振らずに歩き、自分の部屋へ向かう。
そういうば美嘉や要は帰ってしまったのだろうか?
そして聖史は、どうなったのだろうか……。
椿は少々重い気分を抱えながら部屋のドアを開けた。
「おかえり」
椿のベッドに要が座っていた。
「要さま……」
「傷は?痛い?」
「痛み止めを飲みましたんで、今は大丈夫です……」
:08/09/06 02:36
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#418 [向日葵]
「そう……」
椿は無意識に要の隣に座る。
それに気づいた要は微笑んで、椿の手を柔らかく包み込む。
椿はそれに気づくと要の方を向くが、すぐにうつむいてしまう。
そしてそのまだ慣れない甘い空気に堪えれず、要に訊く。
「聖史さまは……どうなさりましたか……?」
「君の友人……じゃなかった、美嘉が激怒して、こてんぱんにされた後に帰ってしまったよ」
「こてん……ぱん……」
椿はある事に気づく。
「要さま、美嘉ちゃんの名前……」
:08/09/06 02:43
:SO906i
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#419 [向日葵]
「うん。読んでもいいって」
その意味が分かった椿は、嬉しそうに笑う。
その笑顔を眩しそうに、でも愛おしそうに要は見つめる。
「ねぇ椿、今度こそいい?」
「え?」
要はポケットから何かを取り出す。
それは数時間前に差し出された、椿がついた婚約指輪だった。
椿は少し戸惑いながらも、恥ずかしそうに小さくコクリと頷く。
要は箱から指輪を取り出して、椿の左手を取る。
細い指に、小さな銀色の椿が光る。
サイズがぴったりなのに驚く。
要はいつ知ったのだろう。
:08/09/06 02:49
:SO906i
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#420 [向日葵]
それが不思議に思うから、要をじっと見る。
「ん?何?」
「私、サイズ言いましたでしょうか……?」
「佐々木さんに教えてもらったんだよ。君がいつも身につけている装飾品を作っている会社のリストを貰ってね」
それこそいつの間にしたのだろうと思う。
しかしそれよりも、指にはまった未来を約束する銀の輪の方に気がいってしまう。
「僕のは普通なんだ。でも指輪の裏には君と僕のイニシャルが掘ってある」
見せてくれた要は指輪を自分ではめてしまう。
:08/09/06 02:54
:SO906i
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