ギンリョウソウ
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#475 [向日葵]
:08/09/21 02:19
:SO906i
:☆☆☆
#476 [向日葵]
携帯と思って開いて見るも圏外。
使い物にならない。
秋も終わりの冷たい雨は、椿の体温をどんどん奪っていく。
――――――――…………
「椿……」
さっきの場所へと戻って来た要は、その場に椿がいない事に落胆する。
だとすれば本当に湖に?
しかしここからでは湖は遠い。
なら林の中へ?
どちらにしろ動かなければならない事に変わりはない。
イチかバチかで、林の中へと進んで行く。
:08/09/21 02:24
:SO906i
:☆☆☆
#477 [向日葵]
林の中に道はない。
道なき道を進む足取りは迷いを含む。
椿はどちらへ向かっただろうか……。
ハッとして携帯を取り出す。
要のいる場所はちゃんと電波がある。
リダイヤルで椿の電話にかける。が、肝心の椿の方に電波がないらしく、アナウンスが流れる。
文明の利器はこういう時に役立つものじゃないのかと苛立つ。
雨足は霧雨から本格的な粒へと変わってくる。
さっきまで色づいて見えていた山は、灰色に見える。
地面から生えている草木に足を少しひっかけながらも要は進む。
:08/09/27 02:25
:SO906i
:☆☆☆
#478 [向日葵]
「椿ー!!」
叫んでみるも、エコーのように辺りに反響する自分の声と、雨の音しか聞こえない。
椿の返事らしきものは聞こえない。
遠くの方へ行ったのだろうか?
それともわざと返事をしない?
どちらにせよ、椿を見つけるのは難しいらしい。
――――――――…………
「ん……?」
振り向くが、自分が来た道しか目に入らない。
目をこらしても無駄に終わる。
椿は首を傾げる。
:08/09/27 02:29
:SO906i
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#479 [向日葵]
今、要の声が聞こえた気がした。……空耳か。
しかしここはどこなのだろうと椿は意味もなく空を見上げる。
さっき要と来た時のようなホッとする青空は見えない。
広がるのは、濃い灰色だ。
視線を戻し、フゥとため息をつく。
ついた瞬間妙な機械音が鳴り響く。
周りが雨の音以外何もないからよく聞こえる。
驚いた椿はびくりとし、その音が自分のスカートのポケットから鳴っている事に気づいた。
「あ、電池が……」
鳴っていたのは携帯。
どうやら電池が切れたらしい。
これでは電波がたった時に連絡する術がない。
:08/09/27 02:35
:SO906i
:☆☆☆
#480 [向日葵]
急がなければと思いながら椿はブルッと震える。
寒いのだ。
両腕を抱くようにしてさする。
だが濡れてるので結局は同じだったりする。
キュッと唇を結び、また椿は歩き出す。
すると前方に何かが見えてきた。
濡れて邪魔な前髪を避けてよく見れば、美嘉ときた湖ではないか。
「で、出れた……っ」
湖のほとりまでやって来た椿は安堵感に包まれてその場にペタリと座り込む。
「良かったぁ……」
:08/09/27 02:40
:SO906i
:☆☆☆
#481 [向日葵]
雨に濡れる事なんて気にしない。
もう髪の毛から全身にかけてびしょ濡れなのだから。
ふと手に注目した椿は左手に光る指輪を見る。
婚約した証、将来を約束した証。
私はそれだけの価値がある?
気づけば指輪に軽く泥がついている。
指輪を外して、泥をはらう。
大事な大事な椿の形をした指輪。
そういえば、要は自分をギンリョウソウのようだと称していた。
あれはどういう意味なのだろう。
:08/09/29 00:46
:SO906i
:☆☆☆
#482 [向日葵]
ゴウッと風が吹く。
木々を揺らし、辺りを不気味な雰囲気にする。
恐くなりながら立ち上がった椿は、寒さを感じくしゃみをする。
その時だった。
「あぁ……っ!」
くしゃみをした時、手が滑って持っていた指輪を落としてしまった。
その後また強い風が吹く。
目を瞑り、それに耐えて辺りを見渡す。
…………指輪がない……。
椿は血の気が引くのを感じた。
不自然に息が荒くなり、膝をついて草をかきわける。
:08/09/29 00:54
:SO906i
:☆☆☆
#483 [向日葵]
しかしかきわけても、見えるは土のみ。
銀の輪は見当たらない。
椿は泣きそうになる。
もう1度落とした辺りを探す。
けれど指輪らしい感触も、姿形もない。
椿の焦りは更につのる。
ハッとして、目の前の湖を見る。
もしかして……落ちてしまった……?
そう考えるよりも、体が先に動いて、湖の中へと飛び込む。
冷たさを感じないくらいに冷たいが、今はそうも言ってられなかった。
何より今は指輪を見つけなければ。
:08/09/29 01:06
:SO906i
:☆☆☆
#484 [向日葵]
冷たさを感じないくらい冷たい。天気のせいで湖は波立っているし、見えたもんじゃない。
それでも手探りで探す。
もし見つからなかったら嫌われるかもしれない。
どうしてそんな大事な物を無くせるのかと。
今度こそ自分の前からいなくなってしまうのではないだろうか。
聖史がまだいた頃、何日も会ってくれなかった時の事を思い出す。
そしてやっと会えた日の事も思い出す。
どれだけ……嬉しかっただろうか……。
そう思えば、探す力が強まる。
:08/09/29 01:17
:SO906i
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