ギンリョウソウ
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#485 [向日葵]
「もう少しあっちも……」

そう思い、足を進めた。

世界が急に、水の中になる。
突然の事に椿は驚き、体の空気を一気に吐き出してしまう。

深みにはまってしまったらしい。浅瀬とは違い足がつかない。
椿は焦って水面に手を伸ばす。
どうにか水面に出れても、服が重くて泳げない。

ゾクリとした。
自分はもしやこのまま……。
考えたくないから、なんとか浮き沈みしながらも息を吸い込む。
しかし限度がある。
酸素が足りない。

力も段々と出なくなってきた。

指輪も見つけれず、要にも謝れないままだ。

⏰:08/09/29 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#486 [向日葵]
全てを中途半端なままで、終わる。

要さま……。

「――――……きっ!」

水の中で目を開ける。

要さま?

そう思ってるうちに、自分の体に誰かの腕が巻きつくのが見え、そのままどこかに連れて行かれる。

しばらくすると、水面に顔が出た。
足りないと言わんばかりに息を吸い込み、急な酸素吸入は体に良くなかったらしく咳き込む。

「椿……っ」

そばにいるのは、要だった。
周りをゆっくり見れば、さっきまでいた浅瀬に戻っていた。

⏰:08/09/29 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#487 [向日葵]
「要さま……」

抱き締めたままの椿を、要は更にきつく抱き締めた。
力が出ないけれど、その腕に寄りかかり、安心する。

「良かった……早く見つけれて……」

苦しそうに言う要に、椿は心底申し訳ないと思った。
もしあのまま椿にもしもの事があったなら、1番苦しむのは要だっただろう。

「ってか、君は何をしてたんだ。危ないだろ、こんな天気にこんな場所で」

そこで椿はハッとして、要の腕から離れようとするが、要がそれを許さなかった。

⏰:08/09/29 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#488 [向日葵]
「なに、どうかした?」

椿の胸が不自然に高鳴る。
要に目を向ければ、真剣な顔で椿を見返してくる。
だから椿は言葉が出てこなかった。

嫌われるかもしれない。
そう思えば思うほど口も動かなくなってきて、小さくパクパクと動かす事しか出来ない。

「椿?」

要が名を呼ぶと、椿の目から涙が溢れる。

「本当に、どうしたの……?」

要は困り果て、椿を抱き締めるしか出来ない。
椿は彼の胸に顔を埋め、覚悟を決めて口を開く。

⏰:08/10/05 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#489 [向日葵]
「指輪……」

「指輪?」

「指輪……落とし……」

それを聞いて、要は椿をゆっくりと離してから手をじっと見る。
確かに、今朝まで椿の左手にあった銀色のものが無くなっている。
要は手を無表情で見つめる。
その顔が、怒りだと受け取った椿は、草の上に両手をつき、頭を下げる。

「ごめんなさいっ……!無くすつもりなんてなくって……、もしかしたら湖の中に落としてしまったかもって思ってさっき……っ。ごめんなさいっ!あんな大切なもの、無くしてしまって……ごめんなさい……っ」

⏰:08/10/05 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#490 [向日葵]
要は長いこと黙っていた。
その間、雨と風と、椿は椿自身の鼓動が聞こえた。
そして微かに、要のため息が聞こえた。

「それだけ、なんだね……」

「ごめんなさい」

「本当に腹が立つよ」

一際大きく、椿の胸が高鳴る。
草の上についてる手が震え出す。

「ごめ……なさ……」

謝罪の言葉を口にしようとすると、腕を引かれて要の方へ乗り出す形になった。
要を見れば、目に怒りがこもっていた。

⏰:08/10/05 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#491 [向日葵]
「僕がなんで怒ってるか分かる?」

「指輪を……無くしたから……」

「違う。君が僕をまだちゃんと理解してないからだ」

椿は分からなくて首を少し傾げる。
すると要の表情がほんの少し和らいだ。
彼の手が、冷えてしまった椿の頬を包む。

「僕が大事なのは指輪でもなんでもない。君なんだ。なのに君は、命を落としてしまったかもしれない事をしたんだ」

椿は目を見開く。

「こんな事、二度としないでくれ。僕はさっき、本当に心臓が止まってしまうほど焦ったんだからね」

⏰:08/10/05 00:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
椿は再びポロポロと涙を流す。

要は頬を緩め、親指で彼女の涙を拭ってやる。

「要さま……私でいいんですか……?」

「え?」

「私は……母のようにもなれず、要さまからもらった指輪を無くしてしまうような者です。ですが要さまは、私に沢山いろんなものを下さいます。しかし私は要さまに何1つ返せるものがありません。そんな私で……本当にいいのですか……っ?」

要は最初驚いたように椿を見ていたが、やがて穏やかに微笑むと、椿の髪をかき上げるようにして髪の奥まで指を滑らせ、そのまま引き寄せる。

⏰:08/10/05 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
「椿がそばに、ずっと笑ってそばにいて、僕を好きでいてくれるだけで充分だよ。他に必要なものなんて、何もないんだ……」

それだけ。ただそれだけでいい。
それを聞いて、椿は涙を更に流す。
要の胸元のシャツを握り締めて、しがみつくようにして泣いた。
要はそんな彼女を愛おしそうに抱き締め、なだめるように頭を撫でる。

それなら何もない私にも出来ると椿は思った。
そう思った瞬間、自分がどうしようもなく要が好きだとまた自覚したら、あまい感情が涙となって溢れてきた。

「そろそろ別荘に帰ろう。風邪をひいてしまうよ」

⏰:08/10/05 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
「あ、はい……、いた……っ」

どうしたのかと要が椿を見れば、治りかけていた傷が開いたのか、椿の服の腕の部分にうっすらと血が滲んでいた。

それを見て、要は下唇を噛む。

自分のせいだ……。

椿をふわりと抱き上げ、出来るだけ急ぎ足で別荘へと向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと何事!?」

2人の姿を見るなり、美嘉は驚いた。
しかし事情を聞くよりも2人に拭くものと着替えをと、美嘉と大久保は戸惑いながらタオルを持ってきた。

⏰:08/10/07 00:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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