ギンリョウソウ
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#495 [向日葵]
「私、お風呂用意してくるね」
「では私は暖炉を準備して参ります」
椿の別荘には薪で暖める古い暖炉があった。
その準備が整う間、しっかりと水気を取る。
手を使うのを少し難しそうにしている椿を見かねた要は代わりに椿の体を拭いてやる。
「椿、大丈夫?」
「あ、あの、自分で出来ます」
「たまには甘えていいんだよ。お風呂が出来たら君が先に入るといい。あがったら僕が腕の治療をしてあげるから」
こくりと頷いた椿は、ハッとして自分の手を見つめる。
:08/10/07 00:17
:SO906i
:☆☆☆
#496 [向日葵]
無くしてしまった。
要は怒らなかったし、嫌いにもならなかった。
むしろ椿が1番大切だとまで言ってくれた。
だけど椿は、初めて好きになった人からの贈り物で、やっと気持ちを重ねた時に貰ったものだから、大切に大切にしておきたかった。
要はああ言ってくれたけれど、椿の心は、あと少し晴れなかった。
その様子に気づいた要は、頭を拭いてやってるついでに椿の目線をグイッと自分の方へ向かせた。
「気にしなくてもいい。気持ちを込めて、また指輪を君に送るから。今は自分の体を心配してくれ」
:08/10/07 00:21
:SO906i
:☆☆☆
#497 [向日葵]
ふわりと椿の瞼にキスを落とす。
椿は恥ずかしそうに口をキュッと結ぶと、素直にゆっくりと頷いた。
「要さま、椿さま、どうぞお部屋へ」
椿を先に部屋に通した大久保は、要を振り返る。
「下手に隠し事をなさいますと、こういう事が起こってしまうと反省いたしましたか?」
大久保の目は真剣だった。
彼は要の友人のような存在。
それは要が決めた事だ。
だから大久保は、さっきまで何が起きていたかを大体予想し、要の心配をすると共に叱っている。
:08/10/07 00:27
:SO906i
:☆☆☆
#498 [向日葵]
もう少し、椿を大切にするようにと。
「……あぁ。もうこりごりだ……」
それを聞いて、大久保はにこりと笑い、要も部屋へと通した。
――――――――…………
その晩、やはりというか、椿が熱を出してしまった。
つきっきりで看病したいと、美嘉に部屋を交代してもらい、要は椿が寝ているベッドの近くに椅子を持ってきて座った。
顔がほのかに紅潮している。
さっき熱を計れば39度近かった。
暑くはないだろうか。
「…………さ……い」
:08/10/07 00:32
:SO906i
:☆☆☆
#499 [向日葵]
潤み、うつろに開いた目で椿は要を見つめる。
聞き取りにくいし、椿もしゃべるのがキツイだろうと要は少し椿の方へと乗り出す。
「ん?何?」
「ごめん……な……さい。せっかくの、旅行なのに……こんな……」
「椿のせいじゃないよ。大丈夫だから。言ったでしょ?今は自分の体を心配してって」
優しく髪を撫でれば、心地よいのか椿の目はとろんとする。
疲れてるだろうから眠たいのかもしれない。
要は椿の手を怪我に響かないように慎重に握る。
:08/10/07 00:37
:SO906i
:☆☆☆
#500 [向日葵]
「僕はずっとここにいるから、安心して眠るといいよ」
「で……も……」
もう少し乗り出して、椿の額にキスを落とす。
「いいから……」
安心させるように微笑めば、椿はゆっくりと目を瞑った。
しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきたので、要はそこでようやくホッとした。
この頃失態続きだな……。
椅子の背もたれにもたれながらため息をつく。
大久保に怒られてしまうのも無理はない。
:08/10/07 00:48
:SO906i
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#501 [向日葵]
うなされないか注意深く椿を見た要は、するりと彼女の手を離し部屋を出ていく。
階段を降りた所で、お風呂上がりの美嘉に会った。
「あれ、看病は?」
「用事があるからちょっと外へ出かけてくるよ」
「ちょっと待って。椿なんか元気なさそうだった。……なんで?」
要は眉を寄せる。
言ってしまえば、自分に対する美嘉の信用がまた薄れる。
あんな目に合わせたから、もう2度と椿に近づくなと言われてもおかしくはないだろう。
しかし彼女は椿の友達。
知る権利はある。
:08/10/13 00:36
:SO906i
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#502 [向日葵]
「僕の一方的な嫉妬で彼女を傷つけた。それに椿は秘密にしていた事も気づきだしてる。詰め寄られて焦って、気持ちが少しすれ違った……」
怒られる。
そう思いながらも美嘉の顔を見ていたが、彼女は表情1つ変えず話を聞いて頷いていた。
あまりに普通すぎて、要は何か裏でもあるのかと勘ぐってしまう。
「分かった。教えてくれてありがとう」
行こうとするから、思わず要は美嘉を呼び止める。
「ぼ、僕を、怒らないのか……?」
「は?怒られたいの?アンタマゾ?」
:08/10/13 00:42
:SO906i
:☆☆☆
#503 [向日葵]
「や、あの……えぇ……?」
美嘉は要をじっと見る。
まるでこちらが間違ってるいるように感じるから、要は困ったように頭をかく。
「椿を傷つけて、怒るかと……」
「あのね……美嘉は本来そんなに怒りっぽくないの。怒らせるのはアンタが椿にヒドイ事するから」
それ以外にも怒ってる気がした要だが、今は黙っておこうと口をキュッと結ぶ。
「椿と要は婚約を交わした、言わば夫婦みたいなものなの。相手に嫉妬して喧嘩するなんてきっと当たり前よ。それを美嘉がとやかく言っても仕方のない事じゃない」
:08/10/13 00:50
:SO906i
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#504 [向日葵]
:08/10/13 10:24
:SO906i
:☆☆☆
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