ギンリョウソウ
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#491 [向日葵]
「僕がなんで怒ってるか分かる?」

「指輪を……無くしたから……」

「違う。君が僕をまだちゃんと理解してないからだ」

椿は分からなくて首を少し傾げる。
すると要の表情がほんの少し和らいだ。
彼の手が、冷えてしまった椿の頬を包む。

「僕が大事なのは指輪でもなんでもない。君なんだ。なのに君は、命を落としてしまったかもしれない事をしたんだ」

椿は目を見開く。

「こんな事、二度としないでくれ。僕はさっき、本当に心臓が止まってしまうほど焦ったんだからね」

⏰:08/10/05 00:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
椿は再びポロポロと涙を流す。

要は頬を緩め、親指で彼女の涙を拭ってやる。

「要さま……私でいいんですか……?」

「え?」

「私は……母のようにもなれず、要さまからもらった指輪を無くしてしまうような者です。ですが要さまは、私に沢山いろんなものを下さいます。しかし私は要さまに何1つ返せるものがありません。そんな私で……本当にいいのですか……っ?」

要は最初驚いたように椿を見ていたが、やがて穏やかに微笑むと、椿の髪をかき上げるようにして髪の奥まで指を滑らせ、そのまま引き寄せる。

⏰:08/10/05 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
「椿がそばに、ずっと笑ってそばにいて、僕を好きでいてくれるだけで充分だよ。他に必要なものなんて、何もないんだ……」

それだけ。ただそれだけでいい。
それを聞いて、椿は涙を更に流す。
要の胸元のシャツを握り締めて、しがみつくようにして泣いた。
要はそんな彼女を愛おしそうに抱き締め、なだめるように頭を撫でる。

それなら何もない私にも出来ると椿は思った。
そう思った瞬間、自分がどうしようもなく要が好きだとまた自覚したら、あまい感情が涙となって溢れてきた。

「そろそろ別荘に帰ろう。風邪をひいてしまうよ」

⏰:08/10/05 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
「あ、はい……、いた……っ」

どうしたのかと要が椿を見れば、治りかけていた傷が開いたのか、椿の服の腕の部分にうっすらと血が滲んでいた。

それを見て、要は下唇を噛む。

自分のせいだ……。

椿をふわりと抱き上げ、出来るだけ急ぎ足で別荘へと向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと何事!?」

2人の姿を見るなり、美嘉は驚いた。
しかし事情を聞くよりも2人に拭くものと着替えをと、美嘉と大久保は戸惑いながらタオルを持ってきた。

⏰:08/10/07 00:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「私、お風呂用意してくるね」

「では私は暖炉を準備して参ります」

椿の別荘には薪で暖める古い暖炉があった。
その準備が整う間、しっかりと水気を取る。

手を使うのを少し難しそうにしている椿を見かねた要は代わりに椿の体を拭いてやる。

「椿、大丈夫?」

「あ、あの、自分で出来ます」

「たまには甘えていいんだよ。お風呂が出来たら君が先に入るといい。あがったら僕が腕の治療をしてあげるから」

こくりと頷いた椿は、ハッとして自分の手を見つめる。

⏰:08/10/07 00:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
無くしてしまった。
要は怒らなかったし、嫌いにもならなかった。
むしろ椿が1番大切だとまで言ってくれた。

だけど椿は、初めて好きになった人からの贈り物で、やっと気持ちを重ねた時に貰ったものだから、大切に大切にしておきたかった。

要はああ言ってくれたけれど、椿の心は、あと少し晴れなかった。

その様子に気づいた要は、頭を拭いてやってるついでに椿の目線をグイッと自分の方へ向かせた。

「気にしなくてもいい。気持ちを込めて、また指輪を君に送るから。今は自分の体を心配してくれ」

⏰:08/10/07 00:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
ふわりと椿の瞼にキスを落とす。

椿は恥ずかしそうに口をキュッと結ぶと、素直にゆっくりと頷いた。

「要さま、椿さま、どうぞお部屋へ」

椿を先に部屋に通した大久保は、要を振り返る。

「下手に隠し事をなさいますと、こういう事が起こってしまうと反省いたしましたか?」

大久保の目は真剣だった。
彼は要の友人のような存在。
それは要が決めた事だ。

だから大久保は、さっきまで何が起きていたかを大体予想し、要の心配をすると共に叱っている。

⏰:08/10/07 00:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
もう少し、椿を大切にするようにと。

「……あぁ。もうこりごりだ……」

それを聞いて、大久保はにこりと笑い、要も部屋へと通した。

――――――――…………

その晩、やはりというか、椿が熱を出してしまった。
つきっきりで看病したいと、美嘉に部屋を交代してもらい、要は椿が寝ているベッドの近くに椅子を持ってきて座った。

顔がほのかに紅潮している。
さっき熱を計れば39度近かった。
暑くはないだろうか。

「…………さ……い」

⏰:08/10/07 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
潤み、うつろに開いた目で椿は要を見つめる。

聞き取りにくいし、椿もしゃべるのがキツイだろうと要は少し椿の方へと乗り出す。

「ん?何?」

「ごめん……な……さい。せっかくの、旅行なのに……こんな……」

「椿のせいじゃないよ。大丈夫だから。言ったでしょ?今は自分の体を心配してって」

優しく髪を撫でれば、心地よいのか椿の目はとろんとする。
疲れてるだろうから眠たいのかもしれない。
要は椿の手を怪我に響かないように慎重に握る。

⏰:08/10/07 00:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
「僕はずっとここにいるから、安心して眠るといいよ」

「で……も……」

もう少し乗り出して、椿の額にキスを落とす。

「いいから……」

安心させるように微笑めば、椿はゆっくりと目を瞑った。
しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきたので、要はそこでようやくホッとした。

この頃失態続きだな……。

椅子の背もたれにもたれながらため息をつく。

大久保に怒られてしまうのも無理はない。

⏰:08/10/07 00:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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