ギンリョウソウ
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#501 [向日葵]
うなされないか注意深く椿を見た要は、するりと彼女の手を離し部屋を出ていく。
階段を降りた所で、お風呂上がりの美嘉に会った。
「あれ、看病は?」
「用事があるからちょっと外へ出かけてくるよ」
「ちょっと待って。椿なんか元気なさそうだった。……なんで?」
要は眉を寄せる。
言ってしまえば、自分に対する美嘉の信用がまた薄れる。
あんな目に合わせたから、もう2度と椿に近づくなと言われてもおかしくはないだろう。
しかし彼女は椿の友達。
知る権利はある。
:08/10/13 00:36
:SO906i
:☆☆☆
#502 [向日葵]
「僕の一方的な嫉妬で彼女を傷つけた。それに椿は秘密にしていた事も気づきだしてる。詰め寄られて焦って、気持ちが少しすれ違った……」
怒られる。
そう思いながらも美嘉の顔を見ていたが、彼女は表情1つ変えず話を聞いて頷いていた。
あまりに普通すぎて、要は何か裏でもあるのかと勘ぐってしまう。
「分かった。教えてくれてありがとう」
行こうとするから、思わず要は美嘉を呼び止める。
「ぼ、僕を、怒らないのか……?」
「は?怒られたいの?アンタマゾ?」
:08/10/13 00:42
:SO906i
:☆☆☆
#503 [向日葵]
「や、あの……えぇ……?」
美嘉は要をじっと見る。
まるでこちらが間違ってるいるように感じるから、要は困ったように頭をかく。
「椿を傷つけて、怒るかと……」
「あのね……美嘉は本来そんなに怒りっぽくないの。怒らせるのはアンタが椿にヒドイ事するから」
それ以外にも怒ってる気がした要だが、今は黙っておこうと口をキュッと結ぶ。
「椿と要は婚約を交わした、言わば夫婦みたいなものなの。相手に嫉妬して喧嘩するなんてきっと当たり前よ。それを美嘉がとやかく言っても仕方のない事じゃない」
:08/10/13 00:50
:SO906i
:☆☆☆
#504 [向日葵]
:08/10/13 10:24
:SO906i
:☆☆☆
#505 [向日葵]
それだけあっさりと言うと、美嘉はリビングへと消えていった。
美嘉のそんな気持ちに感謝し、要は外へと出た。
数時間前の雨もなんのその。
雲間からは三日月が冴えざえと辺りを照らし、雨が降ったあとの冷たい空気は気持ち良く感じる。
穏やかな風に身を任せていれば、揺れる草がしゃらしゃらと音を奏でているのが聞こえる。
そんな空気をしばらく楽しんだ要は歩き出す。
彼が向かうのは湖だ。
そこへ、椿が落としたと言う指輪を探しにいく。
あれじゃないと、彼女は納得しないように思った。
だから探し出す。
もしかしたら湖のほとりにでも落ちているかもしれないからだ。
:08/10/15 00:56
:SO906i
:☆☆☆
#506 [向日葵]
湖につけば、水面に映し出された月が綺麗でぼんやりと眺めたくなるが、それが目的ではないと、持っていた携帯のライトで足元を探してみる。
こんな風に、光をあてれば光って見つかりそうなのだが……。
「やっぱり無いか……?」
呟いた次の瞬間、少し強めの風が吹いた。
寒さとその強さに目を瞑った要は、再び目を開けた時驚く。
数メートル離れた所に、誰かがいる。
青白い肌、闇にも似た黒く長い髪。
口元には微笑みをたたえている。それは、要がよく知る人物だ。
「椿……?」
:08/10/15 01:01
:SO906i
:☆☆☆
#507 [向日葵]
呟きは再び吹いた風にかき消される。
ゆっくりと立ち上がった彼は、彼女をじっと見つめる。
「何をやっているんだ君は!熱があるのに、ちゃんと寝てなきゃ……っ」
最後まで言う前に言葉を切る。
それは月が雲から完全に出て、彼女を鮮やかに照らしたからだ。
改めて彼女を見た要はまた驚く。
椿……じゃない……。
とてもよく似ている。
髪や顔、その肌の白さまで。
しかし、椿はもっとおっとりした空気をまとっている。
今、彼の目線の先にいる人物は、どちらかと言えば凛としていた。
じゃあ彼女は一体誰なんだ?
:08/10/15 01:07
:SO906i
:☆☆☆
#508 [向日葵]
眉を寄せ、彼女をじっと見ていると、彼女はゆっくりと指を要の方へ差す。
自分を差された要はうろたえるが、彼女は一層微笑みを浮かべると、口を開く。
「あっちよ……」
あっち?
更に要はいぶかしむ。
すると、背後が急に光った気がした。
急いで振り返るも、さっき感じた光はもう無かった。
が、ある1点がほのかに光っている気がする。
月のせい?
そう思いながらも近づく。
そこには、銀色の小さな輪があった。
それこそが、椿に贈った婚約指輪だった。
「……!あった……っ」
:08/10/15 01:14
:SO906i
:☆☆☆
#509 [向日葵]
軽くついてる泥を丁寧に払い、大切にポケットにしまう。
そして振り返る。
まだ、彼女はいた。
さっきよりは近づいている。
普通の音量で話してもなんとか届くくらいの距離。
相変わらず彼女は微笑んでいる。
2人の間を、柔らかく冷たい風がすり抜ける。
この人を、自分は知っている。
さっきは驚いていたせいもあって思い出せなかったが、よくよく考えれば、1度、写真で見た事があった。
吹き終わると、要は口を開いた。
「椿の……お母様ですね……」
:08/10/15 01:18
:SO906i
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#510 [向日葵]
彼女はにこりと笑ってから頷いた。
(初めまして、要さん)
椿の母はもういない。
そこにいるのは魂。
つまりは幽霊。
それなのに動揺する事もなく話しているのは、怖く感じないからだろう。
だから要は普通に会話する。
「こちらこそ、初めまして。改めまして、葵 要と申します」
(椿がとてもお世話になっています。今も……)
椿の母は別荘がある方へ目をやる。
(あんな、臆病な子になってしまったのは、私のせいです。私がもっと、体が丈夫でしたら、あんな心配や重荷を背負わずのびのびと生きれたでしょうに……)
:08/10/15 01:24
:SO906i
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