ギンリョウソウ
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#555 [向日葵]
「そっか、あの人大久保さんって言うのか」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「いや、聞いてたけど忘れてた」

口の中で、何度も繰り返し、ふと前にいる今覚えたての従者を見る。
要と何やら話してはいるが、内容は聞こえない。

「あの人は、何でも受け止めてくれるから、容赦なく甘えちゃいそうで怖いね」

大久保を見つめながら呟く。
そんな美嘉に、椿は静かに微笑む。

「それでも、美嘉ちゃんが甘えたかったら、甘えるのもいいかと思いますよ」

⏰:08/12/21 23:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#556 [向日葵]
美嘉は椿をまた睨むように見る。
椿はそんな視線を送られるとは思ってなかったので目をパチパチさせて、きょとんとする。

「なによ……なによなによなによ!ちょっと経験積んだからって上から目線でぇーっ!」

「えっ!?いえ、あの、そんなつもりは……っ!」

別に今、自分の中にくすぶる気持ちをどうこうするとは美嘉は思っていない。
その気持ちも、まだはっきりとどういうものかは分からない。
ただ、弱音も何もかも包んで、女の子扱いをしてくれる大久保に、少しだけ近づいて、もう少しだけ彼について知りたい、そう思っただけだ。

⏰:08/12/21 23:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#557 [向日葵]
美嘉の気持ちが発展していくのは、まだ先の話のようだ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「美嘉が気に入ったの?」

少し前を歩く要と大久保は、後ろに歩く椿と美嘉の会話は聞こえないが、さっきから美嘉が騒いでいるのに気がつきながら話している。

要の質問に、大久保は少し首を傾げる。

「何故です?」

「仕事至上主義のお前が、のんびり手を繋いで散歩だなんて珍しいじゃないか」

「折角のお誘いを拒否する訳にはいかないと思ったからですよ」

⏰:08/12/22 00:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#558 [向日葵]
そう言いながらも、ふと握った彼女の手を思い出す。

握ってあげなければ、駄目だと何故か思った。
女の子だという自覚があまりない彼女は、ちゃんと女の子で、友人思いで。
だからこそ、自分を犠牲にする事すら惜しまない気がした。

潰れてしまう前に、助けなければと。

大久保もまた胸の中の気持ちが未だ理解出来ないでいる。

どうやらこの二人の話は、延長してしまうらしい。

⏰:08/12/22 00:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#559 [向日葵]
[第13話]

要がデザイナーが集まるという催し物に旅立ってから一週間が経つ。
連絡は時折とってるし、声が聞ければ嬉しいが、やっぱりそばにいなければ寂しさは埋めれないのだと椿はため息をつく日々をおくっている。

そんな中、珍しい人が訪ねに来た。

「こんにちわ、椿さま」

「唯子さま……!」

唯子は要の妹だ。
心臓を患っている彼女は、長い間海外にて治療を受け、今はほぼ回復しているので帰国している。

前と変わらぬ柔らかな笑顔は、要とはあまり似てないような気がする。

⏰:08/12/22 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#560 [向日葵]
「どうなさいましたか?」

「椿さまに会いたくなりまして、来てしまいました」

椿はとりあえず応接間に唯子を案内した。
今にも倒れてしまいそうな儚さを醸し出す彼女をひやひやしながら椿は見守る。
それは自分も同じだという事は、椿は分かっていない。

「お兄さまがいなくて、お寂しいでしょうけれど、元気をお出し下さいね……」

年下に励まされ、ありがたいような、少し恥ずかしいような気がした。

「大丈夫ですよ。要さまをお支えするのが、私の役目ですから」

⏰:08/12/22 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#561 [向日葵]
唯子は微笑んで、先程出された紅茶に口をつける。

本当は元気はあまりない。
仕事とは言え次に会うのは来年だ。
あと三週間ちかくある。
寂しくないと言えば嘘になる。
でもあまり元気がなくては、唯子のように心配されるから、出来るだけいつも通りいようと心がける。

「そういえば……クリスマスはどうなさるんですか?」

淡い茶色の目をこちらに向け、唯子が椿に訊ねる。

「まだ何も……。でも、友人と過ごすかもしれません」

「もしよろしければ、その後にでも、葵家のパーティーにいらっしゃいませんか?」

⏰:08/12/22 00:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#562 [向日葵]
キラキラした目で唯子は言う。

「なんでしたらお泊まりなさいません?私、椿さまとたくさん、たっくさんお話をしたいんですっ」

無邪気に笑う唯子に、椿は胸が温かくなる。
椿は一人っ子なので、兄弟はいない。
だからか、唯子が妹のように可愛く思える。
今も、まるで自分が姉になったような気持ちで唯子を見つめている。

「はい、喜んで……」

それからしばらく話していると、戸口に唯子の従者が現れた。
どうやら今から検診へ行くようだ。
回復したと言っても、まだ油断は出来ないらしい。

⏰:08/12/22 00:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#563 [向日葵]
唯子を見送りながら、椿は要を思った。

永遠に会えなくなる訳じゃない。年が明ければ会える。
いつまでも寂しがっていてはいけない。
何度も繰り返して、何度も落ち込む。

いつの間に、こんなに好きになっていたのだろう……。

――――――――…………

描きかけの山積み資料。
生地確認の為の書類。
アクセサリーの手配先が書いてある紙切れ。

その中に埋もれている要はもう何日も寝ていない。
寝不足と疲労で段々とストレスがたまってきた彼はさっきから人差し指で机を苛立たし気に叩いている。

「要さま、少し横になってはいかがですか?」

⏰:09/01/10 00:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#564 [向日葵]
心配そうな顔をして要の顔を覗き込む大久保は、机から少し離れているソファー近くのテーブルに紅茶を置く。

それをちらりと見ながら要はため息をつく。

「今寝たら明日まで目が覚めない気がする……」

「パーティー前に体調を崩しては事ですよ。2時間程経ちましたら私が起こしますから、休んでください」

要は机に突っ伏して頭をかき回す。

「……。紅茶は飽きた。緑茶をいれてくれ……」

どうやら休むつもりになったらしい。
大久保はホッとしたように微笑むと、一礼してから部屋を出て行った。

⏰:09/01/10 00:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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