ギンリョウソウ
最新 最初 🆕
#627 [向日葵]
「椿を問い詰めたんだよ。疲れているんだろ、何故隠すんだとね」

そこまで言うと、美嘉が渋い顔をして見てきたので、要もなんだと目で応じる。

「まさかその時にいやらしぃー事してやいないでしょうね」

「どういう流れでそんな事をしなくちゃならない……」

「アンタの事だから変なスイッチ入ったんじゃないかと思って。なんて言うの、ホラ、怒りに任せて的なね」

休ますようにと押し倒しはしたが、あの時にそういう他意はなかったので、要はふと浮かんだ光景をすぐに消した。

⏰:09/03/08 17:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
「あるはずない。僕はそんな獣じゃないから」

どうだか、と美嘉は背もたれに体を預ける。

「で、椿はなんて言ったの?」

「何も言わなかった。だからそれからは僕も何も問い詰めちゃいない」

「そう……」

美嘉もなんらかの形で問い詰めようとしたのだろうか。
それが敵わなかったから要ならと来たのかもしれない。
敵視していた美嘉が自分を頼りにしてくれているのが、こんな時だが要は嬉しくもあった。

「で、今椿は?」

「ドレスでいい感じのが見つかって、今は休んでる」

⏰:09/03/08 17:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
なら、と要は席を立った。

あれからあまり話せていないし、今度は感情的にならず、冷静に話そう。
そうした方が、椿もゆっくりと話し出すかもしれない。

そう思って、扉に近づこうとした時、ノックをする音が聞こえた。

椿かもと自ら扉を開けた要だが、目の前にいたのはメイドだった。いきなり開いた扉に驚き、目を見開いている。

「ああ……、何か?」

「あ、ハイ!」

ぼんやりしていたメイドは要の声を聞くと急いで来た理由を話し出した。

「椿さまが、倒れてしまいました……っ!」

⏰:09/03/08 17:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
――――――――…………

体が重い……。
鉛のようだってこの事を言うんだろうなと、暗闇の中で椿は思った。

―僕は一方通行な気分だよ

ああ……また要さまを怒らせた……。

一方通行だなんて、そんな事ないのに……。
私はただ……。

意識が朦朧としている中で、椿は必死に手を伸ばす。
何かを掴もうと。
しかし当然掴める筈もなく、手は空をかく。

なのに、ふと手に暖かさが宿った。

とても安心する。
これは……?

⏰:09/03/08 17:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
そう思った時、闇の中に小さな光が見えた。

――――――――…………

光が戻れば、ここが何かが分かった。
ふかふかのベッドの上。
手を握っているのは……。

「椿……」

その声に、椿はゆっくりと目を開く。

「要さま……」

周りを見ると、美嘉と何人かのメイドがいた。

「良かった……」

ホッとしたように、要は何度も優しく頭を撫でる。
それが心地よくて、椿は目を細める。

⏰:09/03/08 17:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
「では、私どもは何か飲み物を持って参ります」

「あ、美嘉も手伝います」

そう言ってメイドと美嘉は出て行った。
部屋を静けさが包む。
要も椿も、お互いの顔を見つめあったままだ。
何から話そうか、お互いがお互い悩んでいた。

「……。……式は、もうちょっと先にする?」

「え…………」

急な要の言葉に、椿は驚いた。
要は前から考えていたらしく、淡々と話し出す。

「思えば、僕が勝手に決めて進めていた。君の意見なんか聞いてなかった。その勝手で君がこんな状態になってしまったなら、式はまた今度に……」

と、話の途中なのに、椿は布団を頭まですっぽりとかぶった。
その行動に、要は目を丸くさせる。

「つ、椿?」

⏰:09/03/08 17:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
布団に手をかければ、椿は指に力を入れ、布団を剥ごうとする事を拒む。

「嫌です……」

「うん嫌でしょ?だから先のばしに」

「違います……」

要は首を傾げた。

「式が嫌なんじゃないんです。私は……先伸ばしになるのが嫌だったんです」

「え……」

椿の聞きとりにくい声が、更に難しくなる。
声は小さくなり、そして微かに震えている気さえした。

⏰:09/03/08 18:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
「私だって……楽しみにしてたんです……」

最初はこの忙しさにかまけている中での結婚は、本当に幸せなのか分からなかった。
でも、いつも要が隣にいてくれるなら、きっと大丈夫だと思えた。

そうしたら段々と楽しみになれた、式を挙げる日を待つのさえもどかしい程に。

なのに自分の体が弱いせいで、式を伸ばす事になれば、きっと自分は落胆すると思った。

だから椿は、ずっと体の不調を隠していたのだ。

それでも、要が伸ばすと言うなら……。

⏰:09/03/08 18:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
「……いいえ、なんでもありません、私は、要さまの言う事に従い……」

要が椿がかぶっている布団を力づくで剥いだ。
椿が驚いている隙に、要は椿を抱き寄せた。
力が強くて、苦しいけれど、それ以上に心臓がうるさくて、椿は混乱した。

「そう思ってくれる事、すごく嬉しいよ」

要の声は、本当に嬉しそうだ。
椿は少しずつ落ち着きを取り戻してゆく。

力が緩められたかと思うと、要は体を離し、椿を見つめた。

「でもね、式を挙げるより、僕は椿の事の方が大切なんだ。だから無茶はして欲しくない。分かってくれる?」

⏰:09/03/08 18:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
柔らかな表情に、椿は安心する。
ぼんやりとしながら、こくりと頷く。


頬に手を触れられれば、その体温が心地いい。

「式は伸ばさない。君の希望だからね。尊重するし、本当は僕だって伸ばしたくはないんだ」

照れながら笑う要を見て、椿もようやく笑う事が出来た。

椿の唇に、要の唇が重なる。
優しいけれど、とても熱く、絶対に、要の一方通行じゃない。

それは自分が一番分かる。

だってこんなにも、胸の奥が温かいのだから。

⏰:09/03/08 18:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194