ギンリョウソウ
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#640 [向日葵]
そう、と要は微笑む。

式は延期する事なく、決めていた日どおりに行われた。
椿の体には、少し負担があったが、要が常に気にかけていた為、前のように倒れる事はなかった。

「後で、お父様に手紙を読む時、泣かないか心配です」

「泣いたって構わないよ。寂しいのは仕方ないからね」

少し歩いて、庭にある椅子に椿を座らせた。
隣に要が座らないのかと、椿は要を見上げた。

要はタキシードの内ポケットから何かを取りだそうとしていた。
そして出したものは、四角い紙だ。

⏰:09/03/08 18:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
椿はそれを不思議そうに見つめる。

「それは……?」

「手紙だよ」

「要さまも手紙を読まれるのですか?」

「違う。これは……椿へだよ」

椿は目を見開く。
要は微笑んで、封筒から二枚程、便箋を出す。

「椿が手紙を読む時、泣く心配をしてるなら、今泣いてもらうよ。そうしたら、少しは泣かずに済むでしょ?」

歯を見せて笑う要が眩しい。
椿は要が手紙を読むのを黙って待った。

そして要がゆっくりと読み出す。

⏰:09/03/15 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
こんな手紙を書くのは照れます。
読むのはもっと照れます。

でも、伝えたい事があるから、手紙にしました。
沢山あるから、きっと言葉ではつまってしまうと思ったからです。

椿、僕は今日この日、君と結婚出来る事がとても嬉しいです。

初めて君と会った時、君を利用しようとしていた最低な僕を好きになってくれてありがとう。

あの時、椿に言った最低な言葉や、最低な態度は、本当に反省しています。

ごめんなさい。

⏰:09/03/15 02:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
僕はいつしか、椿を守りたいと思うようになり、そして好きになりました。大好きになりました。

出会ってくれて、ありがとう。

君は、お母さまの事があって、自分の事が嫌だと思ってるかもしれない。
もしかしたら、生まれてこない方が良かったんじゃないかって、思った事もあるんじゃないかな……。

でもね、椿。
僕は、君が生まれてきてくれて良かった。
僕と出会ってくれて良かった。
僕を選んでくれて良かった。

ありがとう。
この運命に感謝します。

⏰:09/03/15 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
椿、ギンリョウソウって知ってますか?

僕が、君と会った時、椿はその植物みたいな印象を受けました。

目立たなく、暗い場所にひっそりといる……そんな風に。

でも今は違います。
ギンリョウソウは、確かに光の届かない暗い場所に小さく咲いていますが、その白い花は鬱蒼とした闇に映え、心を和ませてくれる。

椿は僕にとってそんな存在です。

かけがえのない、たった一人の大切な人。

⏰:09/03/15 02:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
僕は、君が知ってる通りこんな奴だから、これからの長い時間、君に迷惑をかけると思う。
それでも、支えてくれたら嬉しい。

僕も、君を命にかえても守るよ。

だから一生、そばで笑っていて下さい。

椿、好きです。大好きです。
いや…………





心から、愛しています。

妻・葵 椿へ
夫・葵 要より

⏰:09/03/15 02:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
読み終えた要は、丁寧に便箋を折り、また封筒にしまった。

膝を折り、椿と同じくらいの目線にしてから、椿の手をとり、その手紙を渡す。

「椿、幸せになろうね。世界一、幸せにするね」

柔らかく微笑みながら、要は言った。

固まっていた椿は、突然顔を歪ませて、手紙を顔に押しつけて泣き出した。
嗚咽が漏れてしまうほどに……。

「は……っ、はい、……はいっ……!」

何度も返事をする椿を、要は抱き寄せる。

⏰:09/03/15 02:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
日差しが温かくて、余計に涙が流れる。

私も愛してます。

まだ恥ずかしくて、口にする事は出来なかったが、椿は強く思った。

「なーかしたー、なーかしたー」

聞き慣れない声に、二人は顔をあげる。

「折角の結婚式に、何を泣かせているんだい」

意地悪そうな笑みをたたえた男性と、隣でにこにこ笑っている女性がこちらへ向かってくる。

その二人を見た途端、要は驚いて立ち上がった。

⏰:09/03/15 02:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「父さんっ!母さんっ!」

それを聞いて、椿は要よりも驚き、急いで止まらぬ涙を抑え、立ち上がった。

「いやぁ、なんとか間に合った間に合った」

飄々と、憎たらしささえ感じる要の父は若く、そしておしゃれだった。
母もまた綺麗だ。

要の父は、要の前までくると、要より背が高く、ニヤリと笑いながら要の頭をペシペシと叩く。

「さすが俺のせがれ。粋な事すんじゃねえかよ。意外とお前ってポエマーだな」

からかう父の言葉に顔を赤らめる要。
何かを言い返したいが、何を言おうか迷っている内に父は椿を見た。

⏰:09/03/15 02:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
目が会った椿は急いで頭を下げる。

要の父は、さっきの意地悪な雰囲気を消し、優しげな目をして椿を見た。

「君が椿さんだね。頭をお上げになって下さい」

そろりと椿は顔を上げ、要の父を見た。

「ご挨拶いたしませんで、すみませんでした」

「いえいえ。あなたの事は要からよく聞いていました。とーってもあなたに惚れ込んでるみたいで、コイツからのメールを読む度、滲み出る笑いをこらえる事は出来ませんでした」

要をいじめるみたいな口調だが、そこに愛情を感じた椿は微笑む。

⏰:09/03/15 03:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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