ギンリョウソウ
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#667 [向日葵]
「え?」

「相談があったから、うちに来たんでしょ?」

椿は急にシュンとする。
うつむいて、言いにくそうにする。

「実は……」

赤ちゃんについて、椿は越に話した。
話を聞いていくうちに、越の顔はだんだんと深刻になった。

「……そう。で、要くんはなんて?」

「一緒に頑張ろうと言って下さいました」

越は自分の事のようにホッと胸を撫で下ろす。

⏰:09/03/21 03:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#668 [向日葵]
「でも……。私が迷い始めてしまいました」

「え……」

椿は数日前、こんな会話を聞いた。

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―――――――――――

「大久保、僕は怖くて仕方ない」

椿が要の仕事部屋の前を通った時だった。
つい声がしたので、そこで足を止めてしまった。

「もし、椿も、子供も、僕は失う事になったら僕はどうしたらいいと思う?」

椿は目を見開いた。

⏰:09/03/29 03:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
「要さま、弱気はいけません」

「分かってる。でも、不安がつきまとうのは仕方ないだろ……。僕は……それ程強い人間じゃない……っ」

表情は見えなくても、その苦しそうな声に、椿は顔を歪ませた。

もしかして、このままこの子を諦めた方が、要の為でもある……?

椿はお腹に手を触れた。

でも撫でる度、いとおしさが溢れてくれば、そんな事考えたくもなかった。

大切な、大切な一つの命。

そんな簡単に、手放せる訳がなかった。

⏰:09/03/29 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
椿はお腹を抱えるようにしてその場に座り込み、涙を流した。

自分は、どうすればいい……?
どうすれば要も、この子も、傷つけないですむ?

ああ……要は、ずっとこんな風に悩んでいたに違いない。
なのに自分は、自分の事しか考えてなかった。
要の気持ちなんて、これっぽっちも……考えてなかった。

――――――
――――――――――

「そう思ったら、何が一番正しい選択か、分からなくなっちゃったんです……っ」

思い出して、椿はまた涙を流した。

⏰:09/03/29 03:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#671 [向日葵]
そんな椿を、越はただ頭を撫でてやるしか出来なかった。

――――――――………………

ひとしきり泣いた椿は、照れ臭そうに謝ってから帰って行った。

椿を乗せた車を、越はみつめ、悩んでいた。

「難しいね……」

隣にいた柴が呟く。

「俺だって、そんな時、どうしたらいいか分かんないや……」

そう呟く柴の手を、越はキュッと握る。

「……うん。……そうだね」

きっと、最後まで、悩み続けるだろうなと、越は思った。

⏰:09/03/29 03:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#672 [向日葵]
それでも、悩みぬいた先に、何かいい答えが待っていると信じている。

だから椿もそうであって欲しいと、越は車が行ってしまった方をしばらく見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

車に揺られながら、椿は体の疲れを感じ、目を瞑る。

そういえば、最近ちゃんと寝てない気がすると思いながら、段々と意識が遠のいていく。

気がつけば、いつの間にか要宅ではなく、実家にいた。
でも、自分の体は動かない。
かと思えば、誰かの力によって、動き出した。

そして薄々気づきつつあった。

⏰:09/03/29 03:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#673 [向日葵]
これは、母のお腹の中だ。

見慣れたドアから、若い父が出てきた。

「お願いだから、安静にしていてくれ。それでなくても君の体は……」

困っている父に対し、心地よい母の声が耳に届く。

「あらあら、そんな事ではこの子に笑われてしまいますよ」

「笑われたっていい。未だ、私はどうしたらいいか迷ってる情けない男なのだから」

母の手が、父の手に重なる。

「大丈夫です。例え私がダメでも、この子はちゃんと生まれてきてくれますわ。私の分も、強く……。ね、椿……」

⏰:09/03/29 03:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#674 [向日葵]
お腹をさする母。
しかし椿は頭を撫でられている気がした。

だからか、強く思う。

私は、絶対に生きる。
そう強く思う。

「この子は今の事、きっと全部見えてますよ。だからきっと、あなたを悲しますような事しませんわ」

まるで全て分かってるかのように母は言った。
そして次の瞬間、柔らかな温かい光に包まれた。
と思えば、淡い黄色い空間に椿はたたずんでいた。

「ね……椿」

声がして、驚いて椿は振り返れば、優しい笑顔を浮かべた母が立っていた。

⏰:09/03/29 03:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#675 [向日葵]
「母さま……っ!」

思わず走り、椿は母の元へ。
走った勢いのまま、母に抱きつく。

「あらあら駄目よ。この子がびっくりしちゃう」

フフフと笑いながら、母は椿のお腹を、さっき撫でていたように優しい手つきで撫でる。

その感触が、あまりにもリアルで、椿は夢かどうかわからなくなった。
試しに頬を軽くつねってみるが、やっぱり痛いか痛くないか分からなかった。

「母さま……。私、私どうすればいいかわからないです……っ」

母が目の前にいるせいか、急に甘えたくなって、椿は弱音を吐き出す。

⏰:09/03/29 03:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#676 [向日葵]
「もう嫌です……っ。答えが見つからない……っ」

「落ち着いて椿……。大丈夫だから」

母は微笑み、椿の頬を両手で包む。

温かい。
本当にこれは夢……?

「この子は元気ねぇ。早くあなたたちに会いたがってる」

お腹を見つめながら母は呟く。

「私もおばあちゃんかしら?フフ、嬉しい、孫が見れるだなんて」

「で……でも……」

私は……。

⏰:09/03/29 03:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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