ギンリョウソウ
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#677 [向日葵]
「あら不安?じゃあ母さまがおまじないをかけてあげる」

そういうと、母は椿のおでこにキスをおとし、また椿のお腹に手をあてると、目をゆっくりと閉じる。

するとしばらくして、お腹がほかほかと温かくなってきた。
何故か、自分の中の命を強く感じれる。それと同時に、体に力がみなぎる気がした。

「これで平気よ」

そういうと、また辺りが光で包まれ出した。

「か、母さま……っ」

「私は、いつまでもあなたたちを見守っているから」

⏰:09/03/29 03:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#678 [向日葵]
―――――――――…………

「椿さま、到着いたしました」

椿は目をゆっくりと開けた。

「お疲れのようで。お部屋でゆっくりなさってください」

椿は車を降りた。
降りて、要宅を見つめる。

疲れてはいなかった。
むしろ体は軽く、そしてお腹は温かいままだった。

あれは、やはり夢じゃない?
母がつかの間の魔法を使ったのだろうか。

それでも、椿は決意をした。
もう、絶対に迷わない。

足を進め、家の中へと入っていく。
真っ直ぐ向かった先は、要の仕事部屋だった。

⏰:09/03/29 03:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#679 [向日葵]
ドアをノックする。
出てきたのは、要本人だった。

「椿……。どうしたの?」

いつもより、凛とした表情の椿に、要は首を傾げる。

「今、お時間よろしいですか?」

「あ……うん」

ソファに二人して座る。
要は戸惑いながら椿を見る。

「要さま。私……やっぱり産みたいです」

「…………。うん。分かってるよ」

「いえ、要さまは私とこの子を疑ってます」

⏰:09/03/29 03:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#680 [向日葵]
「疑ってる?」

要は何がなんだか分からなくなってきて混乱しだす。
でも椿は、冗談を言ってる訳でも、茶化している訳でもなさそうだった。

「私と、この子が、助かる訳ないとお思いなのでは?」

言われて、要は眉を寄せる。

「私は……確かに弱いかもしれない。でも、要さまが思っているより強い人間です。もちろん……この子だって」

要は目を伏せる。
ゆっくりと息を吐き、椿を見る。

「その通りかもしれない。……だって僕は、こんなにも恐れてるから。君や、この子が……全てが、なくなってしまうかと思うと……気が狂いそうだよ」

⏰:09/03/29 03:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#681 [向日葵]
椿はクスリと笑う。

「要さま、お父さまになられるんですよ。お父さまが不安がってましたら、この子まで、不安になって余計に会えないですよ」

さらりとそんな事を言うから、要は驚いて椿を見る。
でも椿は、いとおしそうにお腹を撫でる。
まるで、褒める時、頭を撫でるみたいに……。

「この子は、今きっと、全て見ています。だから、要さまが悲しむような事はしません。もちろん、私だって……」

椿は要の手をとり、優しく包む。

「私を信じて下さい。大丈夫です。私は分かります。必ず、要さまを笑顔にします」

⏰:09/03/29 04:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#682 [向日葵]
母は、父との約束を守れなかった。
命にかえてもだなんて、冗談だっただろう。
誰よりも、父に笑顔になって欲しいと願っていただろう。

だからこそ、椿に願いをたくしたのかもしれない。

母は、椿を産んで亡くなった。
要はだからこそ、椿を心配した。

それが分かるから、椿は言いたかった。

私は母ではない。
私だ、と。

運命は、必ずしも同じじゃないから。
だから私は、必ず要の元へ戻ってくる。
椿はそう言いたかったのだ。

⏰:09/03/29 04:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#683 [向日葵]
その意味を感じとったのか、要は全身の力を抜く。
かと思えば、涙がぽたりと一粒落ちる。

椿の言葉で、不安の鎖が取れたのだろう。

要だって、椿と同じくらい、いや、それ以上に悩んだ。
それは、椿も、椿の中に宿る命も、大切が故に。

要は椿とおでこを合わせて微笑む。

「うん。必ず、笑顔になる。それで、この子が誇れるような父親になるよ」

その言葉に、椿も涙を流した。

「……はい」

⏰:09/03/29 04:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#684 [向日葵]
*感想板*

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⏰:09/03/29 04:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#685 [向日葵]
二人は産まれてくる事を楽しみに待った。

要が仕事が休みの時は、散歩に出掛けたし、椿は産まれてくる赤ちゃんの為に手編みで帽子や靴下を作る。

小さな小さなその靴下が出来れば、そっと手に取り、微笑む。

ある日、要が訊いた。
ちょうど、5ヶ月を向かえる頃。

「椿。そういえば、性別ってもう分かるはずだよね?きいてないの?」

赤ちゃん用の玩具を見ていた椿は、こくりと頷いた。

「楽しみは、とっておくタイプですから。要さまは、気になりますか?」

⏰:09/04/03 02:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#686 [向日葵]
すっかり、母親の顔になっている椿を、要は眩しそうに目を細め、見つめた。

ゆっくりとした動作で、椿を抱き締める。

「いや、僕も楽しみにしておくよ」

毎日が幸せだった。
まるで、温かい光に包まれているように。

これは、母の力?

椿はそう思わずにはいられなかった。

そして、いよいよ、臨月になった。

初出産の椿より、何故か要の方が落ち着きがなかった。

⏰:09/04/03 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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