ギンリョウソウ
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#684 [向日葵]
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⏰:09/03/29 04:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#685 [向日葵]
二人は産まれてくる事を楽しみに待った。

要が仕事が休みの時は、散歩に出掛けたし、椿は産まれてくる赤ちゃんの為に手編みで帽子や靴下を作る。

小さな小さなその靴下が出来れば、そっと手に取り、微笑む。

ある日、要が訊いた。
ちょうど、5ヶ月を向かえる頃。

「椿。そういえば、性別ってもう分かるはずだよね?きいてないの?」

赤ちゃん用の玩具を見ていた椿は、こくりと頷いた。

「楽しみは、とっておくタイプですから。要さまは、気になりますか?」

⏰:09/04/03 02:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#686 [向日葵]
すっかり、母親の顔になっている椿を、要は眩しそうに目を細め、見つめた。

ゆっくりとした動作で、椿を抱き締める。

「いや、僕も楽しみにしておくよ」

毎日が幸せだった。
まるで、温かい光に包まれているように。

これは、母の力?

椿はそう思わずにはいられなかった。

そして、いよいよ、臨月になった。

初出産の椿より、何故か要の方が落ち着きがなかった。

⏰:09/04/03 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#687 [向日葵]
「椿、何か変だと思ったらすぐに言うんだよ?ああそれと、明智にはちゃんと色々頼んでるから心配はいらないからね。それと……」

「要さま」

クスクスと笑っている椿は、大きくなったお腹を優しく撫でながら要の手を取る。

「そんなにすぐには産まれませんから。とりあえず座りましょう」

手を引かれる要は、少々情けなくなっていた。

自分がこういう落ち着いた態度でいなくちゃいけないのに、取り乱してばかりだ。

「この子に笑われちゃいますよ」

⏰:09/04/03 02:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#688 [向日葵]
複雑な顔をする要に、また椿は笑う。

「いよいよ、会えますね。どんなに、待ち望んでいたか……」

椿がお腹を撫でるのにならって、要も撫でる。

「ん……男の子のような気がする」

「そうですか」

「椿はどっちがいい?」

「どちらでも」

「欲がないなあ」

「元気に産まれてくれたら、それだけでいいんです」

「そうだね」と呟いて、要は椿の肩を抱き寄せると、頬にキスをする。

⏰:09/04/03 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#689 [向日葵]
「どちらにしても、可愛い僕らの子供だよ。世界一、いや宇宙一可愛いに違いない」

「はい……」

それからまた、数日間、何事もなく過ごした。
要は、とにかく椿に安静にするようにと、椿にあまり仕事を手伝わせなかった。

その間、椿は、花壇の世話をしたりするのだった。

「もうすぐで、この花の蕾が開きそうですわね」

椿についているメイドが言う。

⏰:09/04/03 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#690 [向日葵]
淡いピンク色の花。
椿が前に種を植え、育ててきたのだ。
それに、じょうろで水をやる。

「花が開く瞬間が見れたらいいんですけど……。……っ?」

椿はお腹をおさえる。

確かに今、チクンと痛みがあった。
気のせいかと思えば、またチクンとくる。
それは段々と時間差がなくなり、痛みは、次第に増していく。

「椿さま……?椿さま!大丈夫ですかっ!?」

椿は顔をしかめる。

ああ、あなた、産まれてくるのね。

⏰:09/04/03 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
――――――――――…………

分娩室に椿が入って、30分が経った。

椅子に座っても落ち着いていられない要は、先ほどから立ったり座ったりを繰り返していた。

そこに、椿の父が、病院へ来た。
要は一礼する。

「椿は?」

「まだです。30分ほど前に入ったままです」

「そうか……」

父も落ち着かず、近くの窓から外を眺めたり、壁によっかかったりする。

⏰:09/04/03 02:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
「椿は……」

「……え」

「とても、軽く産まれてきてね。なんグラムかは忘れてしまったけど、私は毎日心配だったよ」

要は黙って話を聞く。

「それでも、生きようと、力強く泣く姿に、私は涙が溢れたよ。命というのは、本当に素晴らしいものだと思えた」

「……そうですね」

要も、今は分かる。

自分が父親になるんだと思えば、椿の父のように、ああなんて素晴らしいと思った。

「椿は、体が危ないそうだね」

⏰:09/04/03 02:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
やはり、体の事は、安心出来ないと明智に言われた。

それでも今日まで、二人は光を信じて過ごしてきた。

「でも、私は、椿は大丈夫な気がするよ」

椿の父は、いとおしそうに、分娩室のドアを見る。
その中の椿を見守るように。
もしかすると、妻に重ねているのかもしれない。

要も、ドアを見つめる。

頑張れ……。

それしか言えないけど、要は思った。

―――――――
――――――――――

⏰:09/04/03 03:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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