ギンリョウソウ
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#674 [向日葵]
お腹をさする母。
しかし椿は頭を撫でられている気がした。
だからか、強く思う。
私は、絶対に生きる。
そう強く思う。
「この子は今の事、きっと全部見えてますよ。だからきっと、あなたを悲しますような事しませんわ」
まるで全て分かってるかのように母は言った。
そして次の瞬間、柔らかな温かい光に包まれた。
と思えば、淡い黄色い空間に椿はたたずんでいた。
「ね……椿」
声がして、驚いて椿は振り返れば、優しい笑顔を浮かべた母が立っていた。
:09/03/29 03:29
:SO906i
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#675 [向日葵]
「母さま……っ!」
思わず走り、椿は母の元へ。
走った勢いのまま、母に抱きつく。
「あらあら駄目よ。この子がびっくりしちゃう」
フフフと笑いながら、母は椿のお腹を、さっき撫でていたように優しい手つきで撫でる。
その感触が、あまりにもリアルで、椿は夢かどうかわからなくなった。
試しに頬を軽くつねってみるが、やっぱり痛いか痛くないか分からなかった。
「母さま……。私、私どうすればいいかわからないです……っ」
母が目の前にいるせいか、急に甘えたくなって、椿は弱音を吐き出す。
:09/03/29 03:34
:SO906i
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#676 [向日葵]
「もう嫌です……っ。答えが見つからない……っ」
「落ち着いて椿……。大丈夫だから」
母は微笑み、椿の頬を両手で包む。
温かい。
本当にこれは夢……?
「この子は元気ねぇ。早くあなたたちに会いたがってる」
お腹を見つめながら母は呟く。
「私もおばあちゃんかしら?フフ、嬉しい、孫が見れるだなんて」
「で……でも……」
私は……。
:09/03/29 03:37
:SO906i
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#677 [向日葵]
「あら不安?じゃあ母さまがおまじないをかけてあげる」
そういうと、母は椿のおでこにキスをおとし、また椿のお腹に手をあてると、目をゆっくりと閉じる。
するとしばらくして、お腹がほかほかと温かくなってきた。
何故か、自分の中の命を強く感じれる。それと同時に、体に力がみなぎる気がした。
「これで平気よ」
そういうと、また辺りが光で包まれ出した。
「か、母さま……っ」
「私は、いつまでもあなたたちを見守っているから」
:09/03/29 03:42
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#678 [向日葵]
―――――――――…………
「椿さま、到着いたしました」
椿は目をゆっくりと開けた。
「お疲れのようで。お部屋でゆっくりなさってください」
椿は車を降りた。
降りて、要宅を見つめる。
疲れてはいなかった。
むしろ体は軽く、そしてお腹は温かいままだった。
あれは、やはり夢じゃない?
母がつかの間の魔法を使ったのだろうか。
それでも、椿は決意をした。
もう、絶対に迷わない。
足を進め、家の中へと入っていく。
真っ直ぐ向かった先は、要の仕事部屋だった。
:09/03/29 03:47
:SO906i
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#679 [向日葵]
ドアをノックする。
出てきたのは、要本人だった。
「椿……。どうしたの?」
いつもより、凛とした表情の椿に、要は首を傾げる。
「今、お時間よろしいですか?」
「あ……うん」
ソファに二人して座る。
要は戸惑いながら椿を見る。
「要さま。私……やっぱり産みたいです」
「…………。うん。分かってるよ」
「いえ、要さまは私とこの子を疑ってます」
:09/03/29 03:51
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#680 [向日葵]
「疑ってる?」
要は何がなんだか分からなくなってきて混乱しだす。
でも椿は、冗談を言ってる訳でも、茶化している訳でもなさそうだった。
「私と、この子が、助かる訳ないとお思いなのでは?」
言われて、要は眉を寄せる。
「私は……確かに弱いかもしれない。でも、要さまが思っているより強い人間です。もちろん……この子だって」
要は目を伏せる。
ゆっくりと息を吐き、椿を見る。
「その通りかもしれない。……だって僕は、こんなにも恐れてるから。君や、この子が……全てが、なくなってしまうかと思うと……気が狂いそうだよ」
:09/03/29 03:56
:SO906i
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#681 [向日葵]
椿はクスリと笑う。
「要さま、お父さまになられるんですよ。お父さまが不安がってましたら、この子まで、不安になって余計に会えないですよ」
さらりとそんな事を言うから、要は驚いて椿を見る。
でも椿は、いとおしそうにお腹を撫でる。
まるで、褒める時、頭を撫でるみたいに……。
「この子は、今きっと、全て見ています。だから、要さまが悲しむような事はしません。もちろん、私だって……」
椿は要の手をとり、優しく包む。
「私を信じて下さい。大丈夫です。私は分かります。必ず、要さまを笑顔にします」
:09/03/29 04:02
:SO906i
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#682 [向日葵]
母は、父との約束を守れなかった。
命にかえてもだなんて、冗談だっただろう。
誰よりも、父に笑顔になって欲しいと願っていただろう。
だからこそ、椿に願いをたくしたのかもしれない。
母は、椿を産んで亡くなった。
要はだからこそ、椿を心配した。
それが分かるから、椿は言いたかった。
私は母ではない。
私だ、と。
運命は、必ずしも同じじゃないから。
だから私は、必ず要の元へ戻ってくる。
椿はそう言いたかったのだ。
:09/03/29 04:08
:SO906i
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#683 [向日葵]
その意味を感じとったのか、要は全身の力を抜く。
かと思えば、涙がぽたりと一粒落ちる。
椿の言葉で、不安の鎖が取れたのだろう。
要だって、椿と同じくらい、いや、それ以上に悩んだ。
それは、椿も、椿の中に宿る命も、大切が故に。
要は椿とおでこを合わせて微笑む。
「うん。必ず、笑顔になる。それで、この子が誇れるような父親になるよ」
その言葉に、椿も涙を流した。
「……はい」
:09/03/29 04:12
:SO906i
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