ギンリョウソウ
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#69 [向日葵]
「つ、ばきー!次お昼休みだって!教室行こっか!」

美嘉が爽やかに汗を流して椿に微笑みかける。
しかし椿にはその笑顔さえぐにゃぐにゃにしか見えていなかった。
それでも微笑み返し、頷いて立ち上がる。

人混みの中から、越が「委員会の仕事あるから」と叫び、先に行ってしまった。

「午後からも楽しみだねっ」

「そうですね……」

やっと日陰に入れる。
椿はホッした。

⏰:08/06/22 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#70 [向日葵]
しかしホッとしたのもつかの間。
次の瞬間、椿の体がぐらりと傾いた。

「椿!?」

美嘉の驚いた声をはっきりと聞きながらも、椿には答える元気がもうなかった。
そして徐々に、意識は遠のいていくのだった。

********************

昼休みだと聞いた要はどこかで昼食をとろうと歩き出したところだった。

すると背後からやけにザワついた声が広がるのを耳にした。

⏰:08/06/22 23:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#71 [向日葵]
何かあったのかと振り向けば、遠く離れた所で人だかりが出来ていた。

「要さま、昼食の方はどちらで」

従者が要に問う。

「ちょっとここで待ってて。何があったか興味あるから」

野次馬精神で要はその場所へと向かう。

「……ばきっ!」

聞いた事がある声だ。
と思えば先日自分をひっぱたいてくれた奴じゃないか。
要は眉を寄せる。

⏰:08/06/22 23:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#72 [向日葵]
「椿っ!」

「椿……?」

要が呟く。
やがて見えたのは、担架に乗せられてぐったりとしている椿の姿だった。

思わず目を見開く。
椿について行こうとする美嘉に駆け寄り、その腕を掴んだ。

「アンタ……!」

「椿はどうしたんだ?」

美嘉は要をキッと睨んで腕を振りほどく。

「アンタなんかに関係な……、ちょっと……なんでアンタがそれ持ってるの……」

⏰:08/06/22 23:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#73 [向日葵]
美嘉が見つけたのは要が椿からぶんどった日傘だ。
今はたたんで彼が左手に持っている。

「だって椿は壊れたって……」

「……え?」

自分が取った事を言わなかったのかと要は驚く。
全てを察した美嘉は歯を食い縛って要の胸ぐらを掴んだ。

「なんなのアンタ!椿イジメてそんなに楽しいの!?なんでこんな事するのよ!!」

まさか彼女はこの暑い中、誰にも何も言わず堪え続けていたのか?

そう思えば要の頭は混乱した。

どうしてそこまでして……?

⏰:08/06/23 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#74 [向日葵]
「椿がいつも笑ってるから何とも思わない鈍感な子とでも思ってるつもり……?ふざけないで!」

胸ぐらを話すついでに美嘉要の胸を叩いた。
突然の衝撃に、要は後ろへ少し下がりながらむせこんだ。

「椿はね、誰も困らせたくないから笑うの。自分のせいで、周りを困らせて大変な思いさせてると思ってるからなんでもないフリをするの!」

要はハッとする。

彼女の、椿の、微笑む理由……。

「なんでアンタなんかが、婚約者なのよ……」

それだけ言って、美嘉は椿の元へと駆け出した。

⏰:08/06/23 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#75 [向日葵]
要はその場で立ちすくむ。

椿は要に、本気で笑いかけていたかと考える。
その完璧な笑顔の仮面に惑わされ、自分がどれだけ彼女を苦しめたかとうろたえる。

その仮面の下に、どれだけの辛さを隠していたのだろう。

いや、こんな事気にしなくてもいい。
自分の目的は彼女ではない。彼女の会社だ。
だから……どうでもいい……。

そう思うのに、要の視線は、たった今美嘉が向かった方へと向いていている。

⏰:08/06/23 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#76 [向日葵]
椿と自分は似ているのかもしれない。

要も沢山のものを見て見ぬフリをした。
慕ってくる者の裏にある思惑や沢山の恨みの念。
自分の中にある、孤独な感情……。
全ては世界にのし上がる為と捨ててきて、利用した。

椿はそんな自分に似ている。
しかし彼女の場合はもっと綺麗な感情で、そこには“自分の為”だなんて勝手な思いはなく、“人の為”に全てを見て見ぬフリをしている。

きっと、要の事もそうなのだろう……。

⏰:08/06/23 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#77 [向日葵]
自分を押し殺して、“人の為”に何もかもを捨てるのは、どれだけの勇気や思いがあるだろう……。

要はため息をついた。

ダメだな……椿の事を考えたら気になって仕方ないじゃないか……。

要は歩き出した。

*******************

ヒヤリとした何かが額に当てられたのを感じ、椿は目をゆっくりと開けた。

「美嘉……ちゃん……」

「良かった……気がついた?」

⏰:08/06/23 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#78 [向日葵]
小さく頷く。

そうか、自分は倒れたのかと思えば、嫌な気持ちでいっぱいになった。
掛け布団から自分の細く白い手を出し見つめる。

頼りない体……。いっそのこと無くなってしまえばいいのに……。
これくらいの暑さにも堪えれないなんて情けなすぎる。

「保健の先生がここでご飯食べていいって言ってるの。食べれる?」

「はい……。ありがとうございます……」

微かな力に頼って体を起こす。
どうやら今は職員も昼休みなので保健室には美嘉と椿しかいないらしい。

⏰:08/06/23 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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