ギンリョウソウ
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#99 [向日葵]
「椿ー!そんなとこで何やってんのー?」

「あ……いえっ、今戻りますっ」

そう言って椿は美嘉の元へと駆け出した。

椿柄のレースが入った、日傘をさして……。

⏰:08/07/10 21:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
[第3話]

今日は生憎の雨。
どうやら台風が近づいて来ているらしい。
そんなジメジメした空気なのに、椿は広い書庫で探し物をしていた。

体育祭も終わり、今日は代休だ。
ゆっくり休めばいいものの、椿には気になる事があった。

それは、友人である越の家族、“柴”と名乗る男性の事だ。

体育祭で見た彼は、走る為に邪魔なのか、少し長い髪の毛を1つにまとめていた。


それでも椿には見た事がある顔だった。

余計な事だとは分かっている。
でも越に確かめて欲しかったのだった。
もしその人が、自分が知っている人ならば、何の為に越の元にいるのかと……。

⏰:08/07/10 21:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#101 [向日葵]
アルバムをさっきから探して写真とにらめっこするも、彼は写真が嫌いなのか写っているものが見つからない。

「んー……」

越を混乱させたくはないし、これは椿が勝手にやっている事だ。

もう諦めようか……。

椿はそう思い、立ち上がる。

「家宅捜査でもやっているのか?」

振り返れば、要がそこらに散乱しているアルバムを踏まないようにしてこちらに来ている。

「葵さま……。いらっしゃいませ」

椿は深々とお辞儀をしてから「あれ?」と思った。

⏰:08/07/10 21:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
「今日は都内で会合とお聞きしたのですが……」

「何だか知らないけどどこかの重役が予定入ったから中止になったらしいよ。まったく、勝手もいい所だよね」

「で」と要は続ける。

「この騒ぎは何?探し物?」

「あ、ハイ……。友人に柴さまと言う方がいらっしゃいまして、気になる事があったんです……」

それを聞き終えると、要は眉を寄せて難しい顔をした。
椿は首を軽く傾げて、どうしたのかと思う。

「……気になる?」

「あ、ハイ……」

⏰:08/07/10 21:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
「何気になるって」

要は椿に詰め寄る。
椿は目をまんまるくさせてから瞬きを何度か繰り返す。

「え、特には……意味は……」

「婚約者がいると言うのに堂々と浮気する気なの?君は誰のものか分かっているのか?」

そこまで言われ、椿は何故要の機嫌が悪いのかが分かった。
慌てて弁解する。

「そういう事ではありません……っ。恋愛感情って事ではなく、どこかで見た事があるから気になるって意味です」

要は椿をジーッと見つめる。
前のめりに見つめてくるので、徐々に椿の体がのけ反っていく。

「本当に?」

「は、はい……本当です……」

⏰:08/07/10 22:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
「なんだか……返事が曖昧だ……」

それは要のせいだろう。

「そんな事は……」

「無い」と言いかけると、少しずらした足に、散らかしていたアルバムが当たる。
と同時に、のけ反っていた椿の体が更にのけ反った。

「キャッ……!」

「あぶ……っ」

ドスンと大きな音を立てて倒れる。
椿は目をギュッと瞑り、衝撃が来るのを待った。
しかし、いつまでたっても衝撃どころか、痛みすらこない。

⏰:08/07/10 22:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
そっと目を開けると、まず天井が見え、そして……。

「ちょっと、大丈夫……?」

要の顔が間近にあった。

そして気づけば、自分の頭が床にぶつけないように、要の大きな掌がかばっていた。

しかし……。
先ほどといい今といい……。
さっきから要と近くで見つめあいすぎではないだろうかと椿は思った。
しかもこの格好だ。
椿の白い頬が赤く染まる。

「ちょ、ちょっと……!こんなお約束な格好になっただけで赤くならないでよ……っ!」

珍しく慌てて要は椿の腕を引っ張って起こす。

⏰:08/07/10 22:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
2人して座り、気まずい雰囲気になる。

要はポリポリと頭をかく。

「椿ってさ……恋とかした事ないの?」

「そういうの、あまり分からなくて……。憧れの人ならいましたけど……」

「ふーん。どんな奴?」

椿は散らばっていた中にあるアルバムを1つ手にした。
パラパラとページをめくり、ある写真を指差す。

「こちらの方です。早乙女聖史さんと言う方で、小さい頃から仲良くしてもらってるんです……」

要は写真を覗き込む。

⏰:08/07/14 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
写っているのは、柔らかな雰囲気をまとった10歳くらいの少年が、まだ3歳ほどの小さな椿を抱き締めて微笑んでいるものだった。

「兄のようになついていましたわ……。この頃は、聖史さまが忙しくて、会ってはいませんが……」

憧れと言うわりに、どこかうっっりしてその写真を見る椿に、要はムッとした。

「好きなの?」

また同じ事を言う要に椿は首を傾げる。

「明らかに、憧れって思ってない顔してるよ、椿」

それを言われ、椿の頬はまた赤くなった。
要はさらにムッとする。

⏰:08/07/14 00:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
「つまんない……。僕は一旦帰るよ」

「あ、じゃあお見送りを……」

「いい。他の奴にうっとりしてる君に見送られたくなんかないねっ」

ズカズカと進んで行き、乱暴にドアを閉めた。
椿は片目を瞑ってそれをやり過ごす。

そして椿はまた写真に目を落とした。

本当に憧れだ。
物腰が柔らかく、優しく、頭の機転がいい聖史は、椿の良き兄的存在。
久しぶりに会いたいな、などと思えば、こんな自分の浮わついた心が要を不機嫌にさせたのかと少し落ち込む。

⏰:08/07/14 00:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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