愛の在り処
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#34 [果樹]
その女が家に住み始めてからも、私は一切その女と話そうとはしなかった。
一ヶ月程経ったある日、父が私を居間に呼び出した。
「マンションを買ってやるからそこに住みなさい。その方がお前も気兼しなくて済むだろう」
それが父の言葉だった。
一見私の事を考えた苦渋の選択と取れる父の言葉。
:08/06/12 16:18
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#35 [果樹]
でも本音は、二人だけになりたかった。
私とあの女との板挟みが辛かった。
などそんなとこだろう。
父にとってはマンションを買うくらい安いものだったのだ。
私は頷くだけの返事をして、一週間後、ここに住み始めた。
こんな広い家でのたった一人の生活は孤独以外の何ものでもなかった。
:08/06/12 16:22
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#36 [果樹]
笑い合う相手も一緒に食事をする相手もいない。
一人きりの生活。
銀行に月に20万振り込まれる父からの生活費。
生活に困ることはなかったが、寂しさが私も侵食していくのがわかった。
かつて愛し合った二人は離れ、子供をも見捨てて自分の愛に走る。
私は愛が何かわからなくなった。
:08/06/12 16:23
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#37 [果樹]
次第に私はぬくもりを求めて彷徨うようになった。
真実の愛がないのなら誰かに身体を委ねて一時だけでもぬくもりが欲しかった。
一哉もその一人。
男は付き合うと必ず肉体関係を求めてくる。
だれかが生殖行為は子孫を残す為だとか言っていたけど、本当にそうなのか疑ってしまう。
:08/06/12 16:24
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#38 [果樹]
ただ気持よければそれだけでいい獣なんじゃないのかな?
でも、私も同じか・・・。
気持ちいいから身体を委ねる獣。
――――――――・・・・
「お父さーんお母さーん」
満面の笑みで走る私。
:08/06/12 16:26
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#39 [果樹]
「愛実。そんなに走ると転ぶわよー」
「愛実は元気だなー」
遠くで笑う父と母
幸せだった。
生温いくらいの幸せ。
ずっとつかっていたかった幸せ。
「愛実はお父さんもお母さんも大好き!」
:08/06/12 16:26
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#40 [果樹]
大好きなんだよ
――――――――・・・・
パチッと目を開けると白い天井が目に飛込んできた。
「夢か・・・」
布団に入ったままぼそっと呟く。
そうだよね・・・。
:08/06/14 00:08
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#41 [果樹]
もう戻れないあの時の記憶。
生温い夢。
「支度しよう」
ギシッとスプリングを鳴らして、私はベッドから降りる。
父と母に「おはよう」を言ってから部屋を出た。
――――――――・・・・
「愛実もう帰るの?」
:08/06/14 00:09
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#42 [果樹]
HRも終わって、教室を出ようと鞄を持ったら里奈が声をかけてきた。
きっと言葉の意図は“一哉と帰らないのか?”なんだろう。
誘われた時だけしか私は一緒に帰るつもりはない。
そして今日は、一哉は迎えにこないし、待っているのも面倒だから早々に帰ろうと思っているのだ。
「うん」
「そっかーバイバイ!」
:08/06/14 00:10
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#43 [果樹]
「ばいばい」
満面の笑みで手を振る里奈に私も軽く手を振って返し、教室を出た。
・・・・・・・・・・・・
「あ」
昇降口に続く廊下を歩いてる途中、ある事に気付いて足がピタリと止まる。
一哉にCD返すの忘れてた。
:08/06/14 00:10
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