月の裏側
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#201 [我輩は匿名である]
「ふーん。ロクな友達いないんだな」

「え?」

「ダルさだって幸せになんだよ、本気で好きになった恋人っつーのは」

「…」

女は驚いた顔をしていた

「あんた何歳?」

「15」

「高1?」

「ううん、中3」

⏰:08/08/18 14:39 📱:PC 🆔:F35161xY


#202 [我輩は匿名である]
最近のガキはマセてんなー。

デレデレになってる野郎達と、このチビ女の友達が楽しそうに会話してるのを見ながら、俺は腰を降ろしてタバコを吸った

チビ女も俺の隣にチョコンと座る

「俺もあんたぐらいの時は女なんてヤルだけの生き物だと思ってたよー」

「…」

女は黙って俺に耳を傾ける

⏰:08/08/18 14:40 📱:PC 🆔:F35161xY


#203 [我輩は匿名である]
「付き合うって何?って感じで…毎日違う女と寝た」

俺は続けた

「高校入って3年なるまで女にダラしなかったけど、半年前に美人なクラスメイトと付き合ったの」

「今の彼女?」

「そ。最近はヤリモクだったけど…あ、ヤリ目的って事ね?」

「わかってるよ」

女は笑った

まだまだ幼い笑顔だ

⏰:08/08/18 14:41 📱:PC 🆔:F35161xY


#204 [我輩は匿名である]
「うん、ヤリモクだったのよ。でもねー彼女が当時好きだった男と破局して、衝撃受けたの」

「どんな?」

「興味ある?」

「ある」

なんだ。

口では偉そうなこと言っといて、本当は迷い子なんじゃん。

こんな真剣に食いつくなんてさ、こいつも過去に色々あったんだろうな。

⏰:08/08/18 14:41 📱:PC 🆔:F35161xY


#205 [我輩は匿名である]
「失恋で落ち込んでたから慰めたかったけど、恋愛したことない俺に心配されたくない!とか図星つかれてさ。まぁ軽くショックだよな」

「で?」

「恋愛って人をこんなに変わらせるんだなーって衝撃受けちゃって。普段すっげー強気の彼女が泣いてるからさ」

「へー」

⏰:08/08/18 14:42 📱:PC 🆔:F35161xY


#206 [我輩は匿名である]
「その時から他の女には感じないもん感じ始めて、何日か後にキスしちゃったんだよ。元カレでうじうじしてる彼女見てるとヤリモクなんかじゃなくて、救ってやりてーなって…」

短くなったタバコを地面で消した。

⏰:08/08/18 14:43 📱:PC 🆔:F35161xY


#207 [我輩は匿名である]
「彼女は、これ以上優しくするな、とか言うし…でも優しくせずにいられないっつーか。恋なんてした事ないから、どうすればいいかわかんなくてテンパってさぁ」

「結局どうなったの?」

「ヤリチンだったから信用されないかもだけど、俺は彼女が好きだって事頑張って伝えたの。あれ?んー…今考えると、ちゃんと伝わってたのかな?あれ」

⏰:08/08/18 14:45 📱:PC 🆔:F35161xY


#208 [我輩は匿名である]
「彼女になったんだから伝わったんじゃない?」

「だよな」

「あんたの話聞いたけど、やっぱよくわかんない。恋人必要?」

「必要。恋愛してよかったって思うもん」

「どうすれば恋愛できる?」

「んー、自分に素直になることじゃねぇの?俺もよくわかんねーわ。恋愛なんて、よし!するぞ!って思ってするようなもんじゃないから。自然と好きになるもんだよ」

⏰:08/08/18 14:46 📱:PC 🆔:F35161xY


#209 [我輩は匿名である]
「自然とねぇ…。好きってどんな感じ?胸苦しい?」

「苦しいよー。雷に打たれたみたいにビリビリドキドキ〜みたいな」

俺が笑うと女も笑った

「雷かぁ」

あぁ、こいつ好きな奴いるのかも。って思った

「好きなら強がってないで素直になれよ。こんな風に逆ナンとかしてねーで、更正しろ」

⏰:08/08/18 14:47 📱:PC 🆔:F35161xY


#210 [我輩は匿名である]
「そう…だね」

「恋愛や恋人なんてウザくてダルい方が楽しめる。山あり谷ありでないと人生もつまんねーだろ」

「…うん」

⏰:08/08/18 14:47 📱:PC 🆔:F35161xY


#211 [我輩は匿名である]
「好きな人がいるから逆ナンとかしない!っつって離れていくような友達なら、必要ないよ」

俺は女の友達たちをアゴでさした

女はコクッと頷いた。

⏰:08/08/18 14:47 📱:PC 🆔:F35161xY


#212 [我輩は匿名である]
「お前なら変われる。恋愛できる。だから頑張れよ、な?」

「うん。あんたの話、聞けてよかった」

「そ?」

「こんな話聞かせてくれる人、今までいなかったもん」

「俺もいなかったけど今の彼女に学んだのー」

「ありがとね。あんたに会えてよかった」

「授業料10万円なりー」

「バーカ」

⏰:08/08/18 14:48 📱:PC 🆔:F35161xY


#213 [我輩は匿名である]
まさか俺が、他人にこんな話を聞かせる事ができるなんて思ってなかった。

やっぱすげーわ。

恋も、愛も、百合も。

女は笑って帰ってった。

名前も知らないチビな中3。

周りに合わせて大人ぶって、恋愛感情に嘘ついて…なんでこういう子が増えてくんだろ。

⏰:08/08/18 14:49 📱:PC 🆔:F35161xY


#214 [我輩は匿名である]
俺は…きっと寂しがりだから、人一倍。

いつも家には誰もいなくて、両親にも兄弟にも…あまり甘えた記憶がない。

そんな寂しさをSEXで埋める事しか知らなかった俺は無知で愚かだ。

百合に出会えて本当によかった。

SEXの意味もわかったんだ。

恋ってすげーな、まじで。

⏰:08/08/18 14:50 📱:PC 🆔:F35161xY


#215 [みんみ]
共感というか、胸が苦しくなりました。
好きな人に好きって伝える勇気はどうやって学ぶんでしょうね…(笑)

23歳大学生です、今すごく悩んでいます…。

⏰:08/08/18 22:19 📱:SH904i 🆔:mhpNGmzU


#216 [我輩は匿名である]
悩んでんなら恋愛板で相談すれば?イタチでしょw

⏰:08/08/19 07:44 📱:N903i 🆔:D.ourndw


#217 [我輩は匿名である]
〜〜〜〜〜〜〜
みんみさん

勇気ですかぁ…?
私はどんどん伝えていくタイプなので
どんなアドバイスをすればいいのか答えかねますが…

周りの友達の実体験話や恋愛ソングなどで勇気付けられたって人も少なくないはずです。

でも、恋愛方法は十人十色なので自分のペースでしてもらいたいですけどね。

素敵な恋愛してください。

〜〜〜〜〜〜〜

⏰:08/08/19 15:08 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#218 [我輩は匿名である]
・・・

「おめでとっ」

「ありがとー。お祝いのチューして」

「それは嫌だけど、でもおめでとう」

俺も大学が決まった。

百合と同じところには行けないけど地元から通える場所。

近いっちゃあ、近いかな。

でも会えなくなる時間が増えるだろう。

けど、俺らはきっと大丈夫。

⏰:08/08/19 15:11 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#219 [我輩は匿名である]
「なんで?百合最近チューしてくんねぇよな」

「そうかな?」

「まさか…浮気!?」

「あんたみたいな手がかかる彼氏がいるのに浮気する暇なんかないっつーの」

「じゃあ何でさー」

「車の中なんかでできるわけないでしょ!前見て運転してよ、若葉野郎!」

⏰:08/08/19 15:11 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#220 [我輩は匿名である]
免許を取った俺。

ドライブデートしほうだい。

車内キスって憧れなのに…百合は全く同意してくれない。

やっぱ野外だから?

でも一応二人っきりだし。

⏰:08/08/19 15:12 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#221 [我輩は匿名である]
百合は外に出ると強気な女になる。

でも家では甘えん坊。

見事なツンデレ。

まじ可愛いんだよ、これが。

⏰:08/08/19 15:12 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#222 [我輩は匿名である]
服買ったり映画見に行ったり。

手は繋ぐけど絶対イチャついてくれないとこが、またイイんだよ。

家に帰る楽しみができんじゃん?

早く家につきたくて俺はアクセルを強く踏んだ。

⏰:08/08/19 15:13 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#223 [我輩は匿名である]
夕日を眩しそうな目で睨む百合。

あーぁ、なんでこんな美人な訳?

我慢できなくなりそ。

ラブホ入ろっかなー

「今日はミナトん家にしよっか」

小さく笑ってタイミングよく百合が言った。

「了解」

俺の心読んでたみたいにナイスタイミング。

ラブホの誘惑を我慢して自分の家に急いだ

⏰:08/08/19 15:14 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#224 [我輩は匿名である]
「…ッ」

「…百合」

部屋に入ると同時に、むせ返るようなキスをした。

百合を壁に押さえ付け、俺の右手は柔らかく細々しいお腹を撫でる。

百合の左手がそれを止めてくる。

俺は構わず服の裾から手を侵入させた。

⏰:08/08/19 15:14 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#225 [我輩は匿名である]
「…ンッ…ちょっとミナト」

百合から離れた唇。

「何?」

俺の右手は百合の両手で制御された。

左手があるけど…嫌がる姿も可愛いから、今日は意地悪しない。

⏰:08/08/19 15:15 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#226 [我輩は匿名である]
「焦りすぎだよ」

照れてる百合の手に、指を絡めた。

「したくない?」

「そうじゃないけど…」

あぁ、ムードが大事ってやつですか。

俺はムードよりも早く百合の可愛い姿が見たくて仕方ないですよ。

⏰:08/08/19 15:15 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#227 [我輩は匿名である]
「ごめん、ビックリさせちゃったね〜」

俺は百合の頭を撫でて、ベットにもたれた。

「私こそごめん」

謝るなよ、俺が抑制できなかったのが原因なのに。

百合が好きだから焦りすぎたけど、百合が好きだから我慢できる。

⏰:08/08/19 15:16 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#228 [我輩は匿名である]
テレビをつけながら、ベットの上でひたすら話をした。

笑える話、驚く話、怖い話…他愛もない会話が心地いい。

ふと窓から空を見上げた。

⏰:08/08/19 15:16 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#229 [我輩は匿名である]
「うぉっ!」

「どうしたの?」

窓の外を見て小さな叫びを発した俺に、百合の疑問の声が掛かる。

「百合も見てみ」

「空?」

チョコンと俺の隣に座り、窓の外を覗く彼女。

⏰:08/08/19 15:17 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#230 [我輩は匿名である]
「綺麗…」

空一杯に神様がバラまいた星が輝く。

月は痩せていたが、とても美しい形だった。

「夜空なんて普段見ないから、たまに見ると感動するな」

⏰:08/08/19 15:17 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#231 [我輩は匿名である]
今日、こうやって綺麗な夜空を発見できたのは、ただの偶然。

百合の顔を見つめすぎた俺の目を休めるために、たまたま空を見上げたんだ。

百合、空。

どっちも綺麗。

やべ。

ノロけすぎかな?

⏰:08/08/19 15:18 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#232 [我輩は匿名である]
「ミナトぉ〜」

「はぁい〜」

百合のゆっくりとした口調を真似して返事をすると、“マネしないで”と笑った。

窓越しに空を見上げたまま百合は言った。

⏰:08/08/19 15:18 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#233 [我輩は匿名である]
「この星たち、今キラキラ輝いてんじゃん?」

「うん」

「綺麗に光ってるよね?」

「そうだね」

「でもこの光は今、現在の光じゃないんだって」

百合の言ってる意味がわからなかった。

⏰:08/08/19 15:19 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#234 [我輩は匿名である]
頭の上にハテナマークが浮かんでいたのだろうか。

百合は笑った。

「地球と星って、超離れてんだって。だから光が届くのに何年も時間がかかるの」

「…んん」

生ぬるい返事。

百合は続けた。

⏰:08/08/19 15:20 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#235 [我輩は匿名である]
「この世界で1番速いのは光なの。だけどその光でさえ地球に届くまでに何年もかかるって事は…言ってる意味わかる?」

「地球と星はすんげぇ遠いって事?」

「正解」

テストで100点取るより、百合に“正解”と言われる事のほうが俺には幸せ。

⏰:08/08/19 15:20 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#236 [我輩は匿名である]
「確か、この今ひかってる光は1億年前の光」

「マジで?」

「1億年前に光った光が、今こうして私たちが見てるって、なんか凄いよね」

「ロマンチックぅ〜」

俺は百合に少し近づいた。

⏰:08/08/19 15:21 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#237 [我輩は匿名である]
「星と星同士も、すごく離れてるんだよ。こうやって見る限りじゃ、すっごく近くに見えるのにね」

「じゃあ俺たちがこうやって近くにいるのは星からすると羨ましい事なんだな」

俺は百合の肩を抱いた。

⏰:08/08/19 15:21 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#238 [我輩は匿名である]
「こういう時だけ調子いいんだから。変態」

百合は笑いながら俺の肩にもたれてきた。

「他になんか知らないの?」

「んー…じゃあ月の話ね」

「ネタ豊富だね百合ちゃん。なんでそんな知ってんの?」

⏰:08/08/19 15:22 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#239 [我輩は匿名である]
百合は澄ました声で言った。

「頭いいから」

ごもっとも。

どうして俺みたいな馬鹿の彼女なんだろう、と時々申し訳なく思う事もある。

それくらい俺らの知識の差は激しい。

⏰:08/08/19 15:22 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#240 [我輩は匿名である]
「月はね絶対裏側を見せないの」

「裏側?」

「地球が自転するから…ってミナトにはこの説明難しすぎるか」

「ジテンって何?自転車ならわかるけど」

ボケではなく、本気。

理科は特に嫌い。

⏰:08/08/19 15:23 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#241 [我輩は匿名である]
「ばか。えっとね、地球と月の回転の関係で…って、私もこの話詳しく知らないかも」

自分が言い出した話を結局は“詳しく知らない”だって。

こういう天然バカなところがある百合。

かっわい。

「えー。そりゃないっすよ松本さ〜ん」

「ごめんごめん。とにかく月の裏側は絶対に見れないの」

⏰:08/08/19 15:24 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#242 [我輩は匿名である]
「月の裏側ねぇ…じゃあ見るにはどうすればいいの?」

「宇宙飛行士になって見に行くしかないんじゃないの?」

「もしくは宇宙戦艦ヤマトに頼むかだな」

「面白くない」

ちょっとボケただけで百合の完全な潰しが俺をへこます。

ボケとツッコミ。

なかなか相性いいんだよ、俺ら。

⏰:08/08/19 15:25 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#243 [我輩は匿名である]
「私、ミナトだけだよ」

百合は言った。

「何?」

「私の裏側見せてるの、ミナトだけ」

「あぁ〜、甘えん坊なところとか?」

「そうだよ。ミナトだけ。ミナトがいないと無理」

⏰:08/08/19 15:25 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#244 [我輩は匿名である]
急に甘えてきた百合を抱きしめる力が強くなった俺。

「こんなに自分らしく居られる相手、今までいなかったもん。ミナトが初めてだよ」

「あら、そんな嬉しい事言ってくれるの?なら俺も言うよ」

「なぁに」

⏰:08/08/19 15:26 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#245 [我輩は匿名である]
「俺も百合ちゃんだけ。百合ちゃんが初めて。恋愛がこんな楽しいなんて知らなかったよー」

「あら、嬉しい事言ってくれるのね」

二人は笑った。

「百合」

そのまま唇を交わしながらベットに寝転がった。

⏰:08/08/19 15:26 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#246 [我輩は匿名である]
手を伸ばし、電気とテレビを消す。

月と星が俺らを覗く。

一人ぼっちで寂しい星たちを嫉妬さすかのように、俺らは重なり合った。

「ミ…ナト…ンンッ…」

百合の声は俺を狂わす。

「百合…ッ…」

「アァッ…ン…」

俺の声も百合を狂わすようだ。

⏰:08/08/19 15:27 📱:PC 🆔:3lPcSpSs


#247 [我輩は匿名である]
頑張って

⏰:08/08/23 14:56 📱:SH704i 🆔:☆☆☆


#248 [我輩は匿名である]
ありがとうございます
更新遅れてすみません。
少しだけですが書きます

⏰:08/08/24 09:41 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#249 [我輩は匿名である]
・・・

大学生になった。

季節も変わった。

あれだけ寒かったのが嘘のように街中、熱気に包まれている。

「中畑」

「ん?」

「今日飲み行かない?」

タツヤの笑顔はもう居酒屋にいるような輝き。

⏰:08/08/24 09:42 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#250 [我輩は匿名である]
「ごめん、今日はパス」

「何、デート?」

マコトの顔が濁った。

「羨ましいか、負け犬め」

俺は勝ち誇った顔で笑ってやった。

⏰:08/08/24 09:42 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#251 [我輩は匿名である]
2人は大学に入ってできた友達。

こいつらは俺のことを苗字で呼ぶ。

なんだか慣れていないのでくすぐったい響き。

「うっぜー!」

彼女のいないこいつらはバイトのない日はほとんど飲んでいるらしい。

⏰:08/08/24 09:43 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#252 [我輩は匿名である]
誘われて、百合との約束がなかったら、たまに行くけど今日はダメ。

タツヤが言った。

「お前、中畑の彼女知ってる?」

マコトが答える。

「知らねぇ」

⏰:08/08/24 09:43 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#253 [我輩は匿名である]
「俺、こないだ見たんだけどさ…やべぇぞ?」

マコトの目が大きくなった。

「何?デブスとか?」

タツヤは嘲笑った。

笑ってんのも今のうち。

俺は携帯を取り出し、電池パックのフタに貼ってあるプリクラを掲げてやった。

⏰:08/08/24 09:44 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#254 [我輩は匿名である]
「すっげー美人だった」

マコトの声と俺が携帯を掲げたのが同じタイミングだったので、なんだかドラマみたいだった。

なかなかカッコイイ演出での彼女紹介。

タツヤの目が3倍に広がった。

⏰:08/08/24 09:44 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#255 [我輩は匿名である]
俺の携帯を手に取り、タツヤは言った。

「モデル?」

最高の褒め言葉をありがとう、タツヤくん。

「一般人だよ〜」

「嘘だ!どうやって騙したの、中畑!」

「別に〜。お互い惹かれ合って、今に至る」

⏰:08/08/24 09:45 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#256 [我輩は匿名である]
「プリクラも美人だけど、生のがもっと綺麗だぞ。オーラがあるもん、オーラが」

マコトは百合を絶賛してくれる。

彼氏として気分がいい。

「中畑、お前この子に金でも渡してんじゃねーの?」

とりあえずタツヤにデコピンをくらわせた。

⏰:08/08/24 09:45 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#257 [我輩は匿名である]
「彼女、大学生だっけ?」

「うん」

「合コン頼んでよ!」

「えぇ〜」

あからさまに面倒な顔をする俺と対称的にタツヤは必死。

「頼む!今度おごるから」

「…まぁ百合に聞くだけ聞いといてやるよ」

⏰:08/08/24 09:46 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#258 [我輩は匿名である]
おごりなんかに釣られた訳じゃないけど、タツヤの必死さに同情してしまった。

こいつは最後のSEXが高1の時。

もう3年もあの快楽を味わってないと嘆いていた。

さすがに可哀相だもんな。

忘れてなかったら百合に聞いておいてやろう。

⏰:08/08/24 09:46 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#259 [我輩は匿名である]
「中畑さぁ」

マコトが言った。

「ん?」

「マンネリとかない?」

「あー…今んとこ無いね」

「そっか。俺さ、マンネリで別れる事多くて。マコトなんてつまんない!みたいな」

マコトは困った顔をして笑った。

⏰:08/08/24 09:46 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#260 [我輩は匿名である]
「マジかぁ。マンネリって…刺激が足りないっつー事だろ?」

「まぁ、そうだよな。平凡で単調な付き合いにウンザリされるんだ」

「俺らも平凡で単調だぞ。気の持ちようじゃない?俺は百合といるのは、どんな時でも新鮮だし緊張するよ」

⏰:08/08/24 09:47 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#261 [我輩は匿名である]
「中畑って見掛けによらず純粋な奴だな!」

「そうなんだよー。俺、恋する少年だから」

「うっざい!中畑うっざい」

タツヤが嘆いた。

マコトの悩み、わからなくもないけど、俺と百合には今のところその問題はない。

⏰:08/08/24 09:47 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#262 [我輩は匿名である]
でも…今は“今”だよな。

気の持ちようだなんて、生意気言ってさ。

未来の事なんてわかんねぇのに。

浮ついてると痛い目に遭う事だって、わかってるはずだったのに。

⏰:08/08/24 09:48 📱:PC 🆔:cvHihT3E


#263 [我輩は匿名である]
・・・

大学に入って初めての夏休み。

付き合って1年が経った。

俺と百合はたくさんデートした。

たくさん笑ったし、たくさん愛を知った。

夏休みが終わり、秋が過ぎて、冬がやってくる。

事件が起こったのは12月の半ばだった。

⏰:08/08/29 13:27 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#264 [我輩は匿名である]
俺の部屋のベットに潜り、百合とのんびりとテレビを見て過ごしていた時だった。

「もうすぐ冬休みだね〜」

「私、旅行行きたいかも」

「あぁ、いいね。どこ行きたい?」

⏰:08/08/29 13:28 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#265 [我輩は匿名である]
「ボードとかしたいな」

「いいね。俺、中学の時やった以来だな」

「私やった事ない。教えてくれる?」

「受講料払ってくれんならいいよ〜」

「ケチ!いいもん、妻夫木似のインストラクター探すよーだ」

⏰:08/08/29 13:28 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#266 [我輩は匿名である]
「…ここにいるじゃん!妻夫木に激似のイケメン」

「鏡見たことあんの?似てないよー、バカ」

「うるせー」

「仕方ないなぁ。偽妻夫木で我慢するかぁ」

「じゃあ受講料前払いね」

そう言って百合の上に被さり、キスをした。

⏰:08/08/29 13:30 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#267 [我輩は匿名である]
いつもこうやって、ふざけた話しして、笑って、我慢できなくなって、ヤッちゃうんだよな。

百合は嫌がらず、キスに答えてくれた。

今日はいける。

この前は女の子の日だから断られた。

だから溜まってるんっすよ?

手加減できないですよー。

⏰:08/08/29 13:31 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#268 [我輩は匿名である]
見た事のある下着が俺の目に映る。

何度見ても緊張する。

そんな下着も簡単に床に落とされ、俺は胸に舌を這わす。

「…アッ」

甘い声が零れたところでパンツに手を伸ばした。


と、その時だった。

⏰:08/08/29 13:31 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#269 [我輩は匿名である]
♪♪♪〜


しまったーーー。

マナーにするの忘れてた。

「…ミナト、電話?」

「いいよ、ほっといて」

「あ、浮気相手?出ない所が尚更怪しいぞ〜」

百合は笑った。

浮気?

んなフザケタ事、俺がするわけないって、わかっててからかってくる。

可愛く憎い奴。

⏰:08/08/29 13:32 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#270 [我輩は匿名である]
「出ていいよ〜。大事な用かもしんないじゃん」

「…百合とのエッチしか大事だもん」

「変な事言ってないで早く出て」

俺はテーブルに手を伸ばし、携帯を手に取った。


未来の俺がそこにいたら、俺は携帯電話を壊してただろう。

電話に出れないように。

⏰:08/08/29 13:32 📱:PC 🆔:D.RUzQwQ


#271 [我輩は匿名である]
画面には幼なじみの名前がいじらしく表示されていた。

「はい」

「あれ、怒ってる?」

「別に。何か用?」

「今ミナトんちの前にいんだけど、貸してたCD取りに来た」

「CD?…あぁ!まだ返してなかったっけ」

「おぉ。彼女が聞きたいらしいから返してくれー」

⏰:08/08/31 11:25 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#272 [我輩は匿名である]
「あー、はいはい。玄関持ってくから、ちょっと待って」

「早くして、寒いから」

そう言ってヨースケから一方的に電話が切れた

「どうしたの?」

百合は上半身を布団で隠しながら俺に問い掛けた。

⏰:08/08/31 11:26 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#273 [我輩は匿名である]
「幼なじみが家の前にいるって。貸してたCD取りに来たって」

「今?」

「ん、そう。ちょっと渡してくるわ。ごめん、待ってて」

CDを手に取り、百合に軽くキスをしてから玄関に向かった。

⏰:08/08/31 11:26 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#274 [我輩は匿名である]
ドアを開けると寒そうに震えていたヨースケがいた。

「遅ぇよ、バカ」

玄関の中に飛び込んできたヨースケは俺の頭を殴った。

「あー悪い悪い。わざわざ取りに来てもらって」

「ったくよー。まぁ俺も貸してた事忘れてたけどな。彼女に貸してって言われるまで」

⏰:08/08/31 11:27 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#275 [我輩は匿名である]
CDは俺の手から持ち主の手へと軽々しく移動した。

「あれ、彼女?」

ヨースケは玄関で行儀よく並んでたブーツを見て言った。

「うん」

「もしかして邪魔した?」

「うん」

嫌味たっぷりの返事。

ヨースケはスマンと言って笑っている。

⏰:08/08/31 11:27 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#276 [我輩は匿名である]
「なんか不思議だよな。ミナトが彼女なんてさー」

「もう1年半だぞ、すげーだろ」

「マジで?俺この1年で何回彼女変わったかな」

ヨウスケは他県の大学に通っている。

滅多に会えないけど良い幼なじみだ

⏰:08/08/31 11:28 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#277 [我輩は匿名である]
「ヨーちゃん最低〜」

「よく言うよ。ヤリチンのくせに」

「卒業したよ、今の彼女が俺の救世主様だわ」

「へぇ。今度彼女に会わせてよ」

「はいはい、そのうちな」

「そういえば名前は?美人ちゃんっていつも言ってたから名前知らないや」

⏰:08/08/31 11:28 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#278 [我輩は匿名である]
「あぁ、そうだっけ?」

「うん」

「百合ちゃんって言うの。心に刻んどけ、俺の女神の名前」

「…百合。ふーん。まぁ忘れなうなら覚えといてやるよ」

「何だそれ」

ヨースケはクルッと体を回転させて玄関のドアに手をやった。

⏰:08/08/31 11:29 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#279 [我輩は匿名である]
「じゃあまたな」

「ほーい」

別れはいつもアッサリしている俺ら。

ヨースケが玄関から出て行ったと同時に、俺の足は自分の部屋へと向かった。

⏰:08/08/31 11:29 📱:PC 🆔:ykHJeKFw


#280 [我輩は匿名である]
「お待たせ!」

お待たせのキスを長く長く交わした。

そのままさっきの続き。

焦らされた分、熱く優しいSEXだった。

⏰:08/09/02 11:12 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#281 [我輩は匿名である]
互いの欲望が満たされた後、下着だけ付けた俺らは布団の中で温もりあった。

肌にサラサラしたシーツが触れる。

体を寄り添わせればスベスベとした百合の肌に触れる。

こんなに安らげる時間、他にはない。

⏰:08/09/02 11:12 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#282 [我輩は匿名である]
ガチャ

いきなり部屋のドアが開いて、心臓が飛び上がった。

とっさに俺の右手は、百合を布団の中に隠すという行動を取った。

百合も俺と同じ行動をしようとしたらしく、素直に布団に潜ってくれた。

⏰:08/09/02 11:13 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#283 [我輩は匿名である]
安らげる時間、終了。

「ミナトてっめー!中身入ってねぇじゃ…ん…か…」

ヨースケだ。

ベットから出る俺の裸の上半身。

その隣に顔と体が布団に潜り込み、サラサラとした髪だけが見えている女。

⏰:08/09/02 11:14 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#284 [我輩は匿名である]
状況を飲み込んだヨースケの声は徐々に小さくなった。

「ノックぐらいしろよ」

「マジ悪い!」

ヨースケは慌ててドアを閉めて外に出た。

「百合ちゃんごめん。ちょっと待ってて」

「…うん」

⏰:08/09/02 11:15 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#285 [我輩は匿名である]
布団の中から小さく返事をした百合。

俺はベットから出てズボンだけ履くと、ヨースケが待つ廊下に出た。

「ふざけんじゃねーぞ、こんにゃろう」

「本当ごめん」

そう言うヨースケは半笑い。

⏰:08/09/02 11:15 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#286 [我輩は匿名である]
「さっきみたいに用があんなら電話しろよ」

「めんどくさくてさ。部屋にいるのわかってるし、それに、まだヤッてるなんて思わなかったから〜」

半笑いからマジ笑い。

反省してねーな

「ヤッてねぇ。寝てただけ。で、何だって?」

⏰:08/09/02 11:16 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#287 [我輩は匿名である]
「あぁ、お前CDケースだけ返されても困るんだけど」

「は?」

「中身、入ってねーよ」

さっき返したCDケースはカラッポだった。

「あぁ、悪い。デッキの中入ってんのかも」

⏰:08/09/02 11:16 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#288 [我輩は匿名である]
そう言ってヨースケには廊下で待っててもらい、俺は部屋の中に戻った。

「ごめんね、百合ちゃん」

「…ううん」

「CDの中身返すの忘れちゃってさぁ」

「…ねぇ」

「ん?」

「幼なじみの名前は?」

「え?ヨースケだけど?」

⏰:08/09/02 11:17 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#289 [我輩は匿名である]
デッキの中を探す俺の後ろで百合が動く音がした。

そして次の瞬間にはドアの開く音と、百合の声が俺の耳に流れ込んだ。

俺は慌てて振り返る。

そこには上下とも下着姿の百合が、廊下で待つヨースケに強い視線を送っていた。

⏰:08/09/02 11:17 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#290 [我輩は匿名である]
俺は慌てて自分の上着を手にとって、百合の身体を隠した。

「ちょっ…百合?」

驚いたのは俺だけじゃない。

「…百合」

ヨースケもだった。

⏰:08/09/02 11:18 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#291 [我輩は匿名である]
百合がヨースケを睨み、ヨースケが百合を見て驚いている。

この状況を理解するには俺の頭の回転が遅いせいで、なかなか大変だった。

「久しぶりだね、ヨースケ」

「百合って…百合だったの」

「気付かなかった?私は、さっき声でわかったよ。ミナトの幼なじみだって言うから家も近いんでしょ?ヨースケの家、この近くだったよね」

⏰:08/09/02 11:19 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#292 [我輩は匿名である]
「百合?ヨースケと知り合いなの?」

百合とヨースケを交互に見る。

百合はただただヨースケを睨むだけ。

ヨースケは苦笑いしながら俺に言った。

「俺ら…付き合ってた」

⏰:08/09/02 11:19 📱:PC 🆔:cNhQLB8w


#293 [我輩は匿名である]
あげーっ

⏰:08/09/02 14:14 📱:W61SH 🆔:om3kkfbo


#294 [オ]
あげe
続きが楽しみ!!

⏰:08/09/02 16:24 📱:W43H 🆔:/WFtNaGI


#295 [我輩は匿名である]
あげ、ありがとうございます!
更新遅くてすみません。

⏰:08/09/05 13:53 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#296 [我輩は匿名である]
脳みそをハンマーで殴られた気分。

「…嘘」

唖然とする俺。

ショックというより驚きの方がデカかった

⏰:08/09/05 13:53 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#297 [我輩は匿名である]
「ヨースケ」

百合が小さな声で名前を呼んだ

「…ん?」

すると細々しい百合の右手がヨースケの左頬にかみついた。

肌と肌のぶつかる音が響く。

⏰:08/09/05 13:54 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#298 [我輩は匿名である]
勢い余って、百合の身体を隠していた俺の上着は、百合の肩から力無く落ちていった。

「ヨースケと別れて正解だった。あんたのせいで目が腫れるまで泣いたのに、結局は遊ばれて捨てられた。だから1度殴りたかったの。本当はもっと殴ってやりたいけどミナトの幼なじみだって言うからこれでチャラにしてあげる」

俺もヨースケも呆気にとられるだけ

⏰:08/09/05 13:55 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#299 [我輩は匿名である]
「いい加減、女遊びやめたら?女を何だと思ってんの?バカにしないでよ…」

そう言った百合の目から、静かに涙が零れた。

「帰って」

百合は体の向きを変え、俺の部屋に戻った。

⏰:08/09/05 13:55 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#300 [我輩は匿名である]
「ヨースケ」

「え?」

俺の左手がヨースケの右頬に軽く当たった。

「いって!」

「百合泣かしたバツ」

⏰:08/09/05 13:56 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#301 [我輩は匿名である]
「二人揃って暴力主義かよ、んっとにもー。百合のほうが痛いし」

「CDまた今度持ってくから、今日は帰って」

「あー、はいはい」

ヨースケはめんどくさそうに頭を縦に振り、帰って行った。

⏰:08/09/05 13:56 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#302 [我輩は匿名である]
ヨースケは帰って行き、俺は部屋に戻った。

「…百合」

真っ白い背中を丸め、俯いている。

俺は、そっと上着をかけた。

「寒いだろ?服、着なよ。な?」

「…ミナト…ごめん」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#303 [我輩は匿名である]
百合は声を枯らして謝っている。

「何が?」

「…全部。こんな姿で元カレの前に立った事、殴った事、泣いた事」

「気にしてないから。ビックリはしたけどね」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#304 [我輩は匿名である]
「ミナトぉ」

百合は俺に抱き着いて、こう言った。

「ヨースケと友達だなんて…神様、いじわるだよ」

「そうだな」

「私、泣いちゃったけど…未練とかないからね」

「わかってるよ」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#305 [我輩は匿名である]
「ヨースケは忘れたの。今はミナトだけだよ。ミナトが好き」

百合の力が強くなった。

「俺も百合だけだから。離れてくなよ?」

「ミナトこそ」

涙に濡れた唇はしょっぱくて、俺の涙まで流させる気なのかって思った。

あの時、電話に出なければこんなことにならなかった。

百合を泣かさずに済んだのに。

⏰:08/09/05 13:58 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#306 [我輩は匿名である]
百合を泣かせた元カレがヨースケだった事。

事実は変えられないのだから受け入れよう。

俺はきっとこれからもヨースケとは友達なんだろう。

ヨースケとどう接していくかは俺の心の広さ次第。

⏰:08/09/05 13:58 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#307 [我輩は匿名である]
決めた。

ヨースケとは、明日からも友達でいる。

俺も男なんだし、一発殴ったから水に流す!

百合とは、明日からも恋人。

ずっとずっと好きな人。

離れてやるもんか。

そう思いながら百合と何度もキスした。

⏰:08/09/05 13:59 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#308 [我輩は匿名である]
次の日の朝。

百合は名残惜しみながら自分の家に帰った。

「もしもし、ミナト?」

電話口のヨースケの声はいつもと変わらない

「今どこ」

「家にいる」

「行くから待ってろ」

徒歩5分圏内にあるヨースケの家に、返しそびれたCDを持って向かう。

⏰:08/09/05 14:00 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#309 [我輩は匿名である]
ヨースケの部屋に入り、腰を下ろした。

「おいおい、何で本格的にくつろいでんだよ」

「ん?だって今日ひまだしー」

「変な奴」

ヨースケの顔は腫れたりしてなかった。

いつもの顔。

なんかちょっとムカつく。

もう少し強く殴っとくんだった。

⏰:08/09/05 14:00 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#310 [我輩は匿名である]
CDをケースに直し、煙草を吸い始めたヨースケ。

「あ、俺も」

ついでに俺の火も付けてもらう。

「ミナト」

「ん?」

「何なの、これ」

⏰:08/09/05 14:01 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#311 [我輩は匿名である]
「あ?」

「昨日の今日だっつーのに、いつもと変わんねーし。新手の嫌がらせか?」

苦笑いしたヨースケ。

「別に。百合の元カレなのはウゼーけど、もう関係ないんだろ?」

「…ん」

「お前は二度と百合にちょっかい出さないって誓うか?」

「…うん、誓う誓う」

「じゃあもういい。俺らはこれからも変わらないウザイ幼なじみってやつだ」

「…あぁ」

⏰:08/09/05 14:01 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#312 [我輩は匿名である]
ヨースケは誓ったんだ。

二度と百合に手を出さないって。

だから信じた。

もう、心配なんていらない。

だから俺らはこれからも変わらず、友達であるんだ。

そう思った冬。

もうすぐクリスマスだ。

⏰:08/09/05 14:02 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#313 [我輩は匿名である]
待ちわびたクリスマス。

俺らはドライブや食事をして楽しんだ。

年が明けた1月。

冬休みが終わる前に旅行をしようと言うことで、ボードをするために北海道に行った。

楽しくて幸せで、とてもいい思い出だ。

⏰:08/09/05 14:02 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#314 [我輩は匿名である]
それからの俺たちは、喧嘩だってした。

だけどそのたび絆は深まっていた。

何も問題なんてなかった。

俺らは、問題なんてない。

そう思わずにいられない関係だった。

⏰:08/09/05 14:03 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#315 [オ]
頑張って下さいx!

⏰:08/09/06 22:50 📱:W43H 🆔:S0fIkIms


#316 [N]
続き読みたいです!

⏰:08/09/11 13:34 📱:W43H 🆔:TwPo2VoU


#317 [我輩は匿名である]
遅くなってすみません;

今から更新します

⏰:08/09/14 20:54 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#318 [我輩は匿名である]
20歳になった大学2年。

21、22歳と月日が過ぎ、無事に卒業もした。

俺はおきまりのコース。

両親に頼ってコネ入社し、就職した。

百合も事務職という、決して派手ではないが大手企業に就職した。

⏰:08/09/14 20:54 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#319 [我輩は匿名である]
付き合って5年目の夏に、同棲を始めた。

俺の親は、賛成も反対もしない。

好きにしろ。

そういった感じ。

⏰:08/09/14 20:55 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#320 [我輩は匿名である]
百合の親は、最初は反対したものの、俺が頭を下げに行くと快く了承してくれた。

仕事ですれ違い、会えなくなるということもなくなった俺たち。

同棲生活は楽しくて新鮮で、早く自分で稼いだ金を貯めて、百合と結婚したかった。

⏰:08/09/14 20:55 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#321 [我輩は匿名である]
付き合って6年目。

上司と同僚と一緒にキャバクラに行った事がバレて、百合を泣かした。

実家に帰る、といい玄関を飛び出したぐらいだ。

俺は細い腕を掴み、何度も謝った。

土下座もした。

仕事だから仕方ない。

そんな言葉はいいわけでしかない。

百合が嫌がっていたことをした俺が悪いんだから。

⏰:08/09/14 20:56 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#322 [我輩は匿名である]
頭を4発殴られた。

だけど、それで百合が許してくれるなら何発だって殴られてもいい。

俺は百合がいないとダメなんだ。

百合しかいないんだ。

本当にごめん。

⏰:08/09/14 20:57 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#323 [我輩は匿名である]
付き合って7年目。

俺の仕事が忙しくて旅行に行けなかった。

19歳の冬、初めてボードに行った旅行から、毎年冬にはどこかに旅行していた。

だけど、今年ばっかりは連休が取れなくて、百合は不機嫌そうだった。

お詫びに来年は海外に行く約束をした。

すると百合は簡単に許したくれた。

⏰:08/09/14 20:58 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#324 [我輩は匿名である]
だけど、その翌年、俺らは旅行に行けなくなった。

俺、百合、共に26歳。

小さな命を授かったんだ。

⏰:08/09/14 20:58 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#325 [我輩は匿名である]
「赤ちゃんできたの」

「…ブッ!…マ…ジで…すか?」

百合が照れながらそう言った時、俺は食べていたコロッケを吹き出したっけ。

嬉しくて嬉しくて、泣くのを我慢したせいで鼻の奥が痛かった。

「生んでもいいよね?」

⏰:08/09/14 21:01 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#326 [我輩は匿名である]
答えは1つしかないじゃんね。

「俺と百合の子供…」

「うん」

「産んでください。よろしくお願いします」

「はい」

百合は笑った。

もう母親の顔だった。

「百合」

「ん?あ、ご飯おかわり?」

そう言って立ち上がった百合の手を掴んで言った。

「結婚しよう」

⏰:08/09/14 21:01 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#327 [我輩は匿名である]
百合は、さっきより何倍もの可愛い笑顔で「はい」と言った。

数日後に百合の両親に、妊娠と結婚の報告に行った。

「順番が逆だ!もっと早くに籍を入れとかんから、こんなことになる!」

そう言ってお父さんに叱られた二人。

「まぁまぁいいじゃないの。私たちに孫ができるのよ?おめでたいじゃない」

お母さんは喜んでくれた

⏰:08/09/14 21:02 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#328 [我輩は匿名である]
「百合さんを幸せにします」

こんなありきたりの言葉しか言えない俺だけど、最後にはお父さんも許してくれた。

なんだかんだ言って、お父さんが1番喜んでくれていたらしい。

名前を考えたり、ベビーグッズを探したり…。

両親に愛されながら育った百合が羨ましかった

⏰:08/09/14 21:02 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#329 [我輩は匿名である]
俺の両親は、「そうか」「よかったわね、おめでとう」と軽い返事だった。

結婚や孫ができることになっても無関心なのか。

こんな両親にはなりたくない。

そう決めた。

⏰:08/09/14 21:03 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#330 [我輩は匿名である]
その翌年、元気な女の子が生まれた。

俺は泣いた。

27歳にして、周りの目も気にせずに泣いた。

百合はそんな俺を見て笑ってた。

⏰:08/09/14 21:03 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#331 [我輩は匿名である]
画数とかバランスとか、結局は関係なく俺ら2人の名前をとって「美優」と、素晴らしい名前を付けてくれたお父さん。

お父さんも病室で孫の顔を見て泣いた。

「美優、おじいちゃんだよー。泣き虫だね」

百合はまた笑ってた。

「可愛い子だな。じいちゃんに目元が似てるなぁ!」

⏰:08/09/18 14:38 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#332 [我輩は匿名である]
お父さんは美優を抱きながら目尻を下げっぱなしていた。

小さいけれど大きな命。

その誕生によって誰もが幸せになる。

俺が生まれたとき、親父やお袋も喜んでくれたのかな。

⏰:08/09/18 14:38 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#333 [我輩は匿名である]
百合と美優が退院し、仕事から家に帰る楽しみができた。

つい数週間前までは家に帰っても百合は入院して、ひとりぼっちだった。

この年になってもひとりぼっちは寂しくて…。

だから今、家族3人で過ごしているなんて「幸せ」以上の言葉があったら教えて欲しいくらいだ。

⏰:08/09/18 14:39 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#334 [我輩は匿名である]
28歳になった。

結婚して2年だが、付き合い始めて、なんと10年がたったのだ。

美優も1歳になり、百合は専業主婦として頑張ってくれている。

守るものが2つある。

仕事は前にも増して頑張った。

⏰:08/09/18 14:39 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#335 [我輩は匿名である]
29歳。

三十路1歩手前。

このまま親子3人、のらりくらり生きていくんだと思っていた。

だけど違った。

結婚3年目の真実は、頭を抱える物だった。

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#336 [我輩は匿名である]
「ぱぱ〜」

「ん?」

「ままとみゆ、どっちがすき?」

仕事が休みの俺に美優は甘えてくる。

「どっちも好き」

「えぇ〜。ままは、みゆが1ばんすきって、いってたよ」

「パパは?」

「2ばんめだって」

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#337 [我輩は匿名である]
「パパ、美優に負けたの?ショックー」

「キャハハハッ」

ムンクの叫びみたいな顔をしてやると美優は可愛い顔で笑った。

幸せ。

娘の笑顔見てると仕事の疲れなんて吹っ飛ぶな。

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#338 [我輩は匿名である]
「おなかすいたー」

「ん、パパも。ママまだ起きて来ないね」

時刻は朝の9時。

いつも8時には朝食を済ませる3人なのに、今日は百合がまだ起きて来ない。

⏰:08/09/18 14:41 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#339 [我輩は匿名である]
「パパが起こしてくるから美優テレビ見ててお利口にしててねー」

「はーい」

寝室に行き、布団に丸まっている百合に声をかけた。

「百合」

「…んんっ」

⏰:08/09/18 14:41 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#340 [我輩は匿名である]
「どうしたの?熱でもある?」

「…んー。何時?」

「9時。美優お腹すいたって」

百合はバッと起き上がったが、どこか力の入っていない顔。

「ごめんね。今から急いで作るよ」

「体調悪いなら無理しなくていいよ?」

「平気。寝坊してごめんね」

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#341 [我輩は匿名である]
百合は覚束ない足取りでリビングに向かう。

俺も後ろから追い掛けると美優が嬉しそうに百合に縋り付いている最中だった。

「おはよう!」

「おはよ。お腹空いた?ごめんね、すぐ作るから待ってて」

「うんっ」

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#342 [我輩は匿名である]
百合は美優に笑ってみせたけど、いつもと違う。

いつもの笑顔じゃない。

やっぱり体調が悪いのか。

「手伝うよ」

「あ、ありがと」

作り笑顔を俺に見せた百合の隣で、俺は朝食の準備を手伝った。

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#343 [我輩は匿名である]
その日からやっぱり百合は少し変だった。

ボーッとしたり、寝坊したり、無口だったり。

どうしたの?と聞いても、何もないよ、と笑顔で答えていた。

何もないわけない。

俺にはわかる。

何か悩み事があるってこと。

⏰:08/09/18 14:46 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#344 [我輩は匿名である]
ある日、突然言われたりもした。

「別れようなんて言ったら、どうする?」

そんな事、普通聞いてくるか?

何を悩んでいるのかわからないけど、そんな質問されるのが辛かった。

「別れない」

⏰:08/09/18 14:46 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#345 [我輩は匿名である]
真剣に聞いてくるから真剣に言い返すと百合は泣きそうな顔に変化した。

「…ごめん。変な事聞いたね。別に意味ないから」

そう言って百合は寝室に行ってしまった。

⏰:08/09/18 14:47 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#346 [我輩は匿名である]
百合が何を悩んでいるのか。

俺といる事が百合にとって苦痛になってきたのだろうか?

夫婦としてのマンネリなんてないし、互いの意見をぶつけ合う喧嘩もする。

冷め切った家庭ではない。

一体、何がどうなっているのか。

⏰:08/09/18 14:47 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#347 [我輩は匿名である]
早く解決させたいのに、仕事が邪魔をして上手くいかなかった。

いや、解決させるのが恐かったのかもしれない。

仕事を理由に、逃げていたのかも。

そんな風に百合の闇から逃げていると、いつの間にかクリスマスにの季節だった。

⏰:08/09/18 14:48 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#348 [.]
>>338-500

⏰:08/09/18 16:55 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#349 [我輩は匿名である]
アンカーありがとうございます

⏰:08/09/19 12:08 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#350 [我輩は匿名である]
俺が仕事から帰り、翌日が休みという幸せな夜。

「ただいまー」

「おかえり」

いつも通りの百合の出迎え。

「美優は?」

「もう寝たよ」

「そっか」

「先にお風呂でしょ?」

「おう」

⏰:08/09/19 12:09 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#351 [我輩は匿名である]
温かな風呂に行ってから、お待ちかねの夜ご飯。

お酒なんか飲みながら…なんて楽しみを抱きながら、さっさと風呂を済ませた。

⏰:08/09/19 12:09 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#352 [我輩は匿名である]
風呂から上がり、お楽しみの晩酌を期待してリビングに行くと、その時点で気が付いた。

今日、百合の悩みがわかる。

百合の闇が晴れるのかもしれない、って…。

⏰:08/09/19 12:10 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#353 [我輩は匿名である]
百合の表情でわかるんだ。

何か決心した顔。

「百合、お風呂出たよ」

「…うん。ご飯の前にさ、話したい事あるから座ってくれる?」

首にタオルを巻き、俺は百合の正面の椅子に座った。

⏰:08/09/19 12:10 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#354 [我輩は匿名である]
何を話されるのか。

やっと聞けるんだという安心と、俺らが壊れてしまうんじゃないかという不安。

冷静を装うのに一杯一杯だった。

「どした?」

俺は煙草に火をつけた。

…マズい。

煙草をうまいと感じないほど俺は緊張していた。

⏰:08/09/19 12:11 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#355 [我輩は匿名である]
「夢を…見るの」

「え?」

夢?

百合は家族3人が映されている写真立てを見ながら言った。

「あんな可愛い娘がいて、家族を愛してくれる旦那がいるのに…私、最低だよ」

「…」

何も言えない。

俺は黙って煙草を吸いながら話を聞いた。

⏰:08/09/19 12:11 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#356 [我輩は匿名である]
「いつも、私が追い掛けてるの。泣きながら…待ってよって言いながら追い掛けてるの。なのにどんどん行っちゃうんだ」

百合がおかしくなったのかと思った。

話が統一されていない。

だけど俺は必死に理解しようとした。

⏰:08/09/19 12:12 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#357 [我輩は匿名である]
「追い掛けても追い掛けても届かなくって…私はつまづいて転んじゃうの。すると、やっと立ち止まってくれる。それで振り返って…百合はもういらないから、って言うんだー」

今、百合が泣きそうになりながら話してくれているのは…夢の話だ。

⏰:08/09/19 12:12 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#358 [我輩は匿名である]
百合がいつも見るという夢は、誰かを追い掛けているのに捕まえられない。

百合が転ぶと誰かは立ち止まって、やっと振り返ってくれる。

そしてその誰かは言う。

百合はもういらない、と。

⏰:08/09/19 12:12 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#359 [我輩は匿名である]
「そっか、私いらないんだって自覚して…大泣きするの。苦しくてさ、そこで目が覚めるの。枕びしょびしょになるくらい泣いててさ。夢と現実の境目わかんなくて、ボーッとしてると、隣で寝てる美優とミナトが気持ちよさそうに眠る寝息とか聞こえるの。二人見てると余計に泣けちゃってさ。」

⏰:08/09/19 12:13 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#360 [我輩は匿名である]
百合はそう言って泣き始めた。

もう、バカな俺でもそろそろわかってきた。

「自分が情けない。こんな素敵な家族がいるのに…あんな夢見るなんてさ。ごめんね…ごめんなさい」

「…百合」

俺は煙草の火を灰皿で消した。

⏰:08/09/19 12:13 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#361 [我輩は匿名である]
百合は潤んだ目で俺を見た。

「その追い掛けても追い付かない相手のこと…まだ好きなのか?」

百合は首を横にふった。

「まさか。好きな訳ないじゃん。もう全然会ってないんだから」

⏰:08/09/19 12:14 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#362 [我輩は匿名である]
「でも夢に出てくるって事は…自然に百合はあいつを求めてんじゃねーの?」

「あんな奴…もう忘れたよ。忘れたのに…なんでよ…もうやだ。今更何なんだろ…夢にまで出てきてさ…」

百合は涙をぽろぽろ零して泣いた

⏰:08/09/19 12:14 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#363 [我輩は匿名である]
互いに名前は出さないけど、誰の話をしてるかはわかるだろ?

名前を出すと百合が苦しむから。

「ちょうど今みたいな季節じゃね?クリスマス前でさ、あいついきなり俺の部屋入って来たんだよな」

⏰:08/09/19 12:14 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#364 [我輩は匿名である]
何年前になるだろうか。

百合は懐かしみながら頷いていた。

「あの時の百合カッコよかったよー。俺、それまで不安だったんだ」

今更ながらの俺の本音。

⏰:08/09/19 12:15 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#365 [我輩は匿名である]
「百合を泣かすなんて、どんな男だよってムカついてた反面…俺から離れて行くかもしんねーって、いつもビビってたんだ」

また煙草に手が伸びた。

落ち着け、俺。

美優を妊娠して、産まれてからは、百合と美優の前でほとんど吸わなかったのに…やべぇな。

我慢できねぇ。

つい、煙草に頼ってしまう。

⏰:08/09/19 12:15 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#366 [我輩は匿名である]
「でも百合はあいつにガツンと言ってくれてさぁ。未練はないってちゃんと言ってくれて…あぁ、大丈夫なんだなってやっと安心できた」

スーっと俺の息を吐く音がリビング中に響き渡った。

⏰:08/09/19 12:16 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#367 [我輩は匿名である]
「あれから、あいつとは何度か遊んだりもした。百合の話をあえて出したりしてさ。でも最近じゃなかなか会えないな。百合がこんな事言い出すまで、思い出してやるのも忘れてたわ」

俺は笑った。

だけど百合はクスリとも笑わずに涙を流しながら俺を見ている。

⏰:08/09/19 12:16 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#368 [我輩は匿名である]
「あの日から安心して百合と付き合ってきて、結婚して子供もできて…ずーっと幸せに過ごせるんだと思ってた。だけどここ最近、また不安でさ」

あの日と同じ。

またあいつに泣かされる百合。

幼なじみのあいつを憎んでしまう。

⏰:08/09/19 12:16 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#369 [我輩は匿名である]
「やーっと理由わかった。悩んでたんだな、あいつの事で」

「未練はないの。なのに夢に出てくるなんて…自分が許せないよ。ミナトと美優にもどんな態度でいればいいのかわかんない」

⏰:08/09/19 12:17 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#370 [我輩は匿名である]
煙草を消して、テーブルの上に右の手のひらを開いて置いた。

「百合ちゃん」

百合は俺の手に自分の右手を乗せた。

俺はギュッと握ってやる。

⏰:08/09/19 12:17 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#371 [我輩は匿名である]
「いつもごめんね。家事と育児任せっきりで。きっと疲れてんだよ。俺は、百合があいつの夢を見たからって百合を責めたりしない。ちゃんと話してくれて嬉しいし」

本当は強がりなんだ。

責めたりなんかしないけど…本音としては腹が立ってた。

何であいつの夢なんか、って。

⏰:08/09/19 12:18 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#372 [我輩は匿名である]
「会いたいなら、会いなよ。俺は大丈夫だから。怒ったりしないもん。百合も…ヨースケのことも」

百合の手は小さくて冷たい。

その名前を出した途端、急に力強く俺の手を握り返して来た。

同時に大粒の涙が溢れ出した。

⏰:08/09/19 12:18 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#373 [我輩は匿名である]
「…会わないし、会う必要もない」

百合は首を横にふる。

「でもさ…」

「ミナトは優しすぎるよ。もっと叱っていいから、私のこと。嫁失格だって怒鳴っていいよ」

そんなこと、できるわけない。

百合を泣かせたくないし傷つけたくないんだから。

⏰:08/09/19 12:18 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#374 [我輩は匿名である]
俺も首を横にふる。

「最低な女だって叱りなよ。ミナトはいつも私に叱られてばかりじゃん。たまには…私の事叱ってよ…最低だよ私…」

もう限界だったと思う。

百合が壊れてきた。

「叱らないし叱りたくもない。もう今日は寝よう」

⏰:08/09/19 12:19 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#375 [我輩は匿名である]
「やだ。眠りたくない…寝ちゃうと…また…ヨースケの夢見ちゃうよ」

子供みたいに泣いている。

もう自分をコントロールできていない。

百合が苦しんでいた。

「見ない。ずっと俺が手ぇ握っててやるから。俺と美優の夢を見ろ」

⏰:08/09/19 12:19 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#376 [我輩は匿名である]
食欲も酒欲もなくなっていた。

今は百合を落ち着かせてあげたい欲が俺を支配している。

一緒に寝室まで行き、ヒックヒックと泣きじゃくる百合をベットの中で抱きしめてやった。

⏰:08/09/19 12:19 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#377 [我輩は匿名である]
「もう泣くな。美優が起きるだろ?」

「…うん」

俺の胸の中で小さく縮こまる百合。

「…ごめんね、ミナト」

「もういいから。百合が好きなのは俺だろ?」

「うん。ミナトが1番だから」

「あれ?パパは2番目に好きで美優が1番って、可愛い娘が言ってたけど?」

⏰:08/09/19 12:20 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#378 [我輩は匿名である]
「…バレたか」

やっと百合が笑った。

小さな声で笑ってた。

よかった。

「ま、いっか。美優の次に好きでいてくれるなら」

「…1番の中の2番目だから」

「意味わかんねーぞ」

百合が笑ってくれるなら何だってできる。

だからもう泣かないでくれ。

泣き顔なんて見たくないから。

⏰:08/09/19 12:20 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#379 [我輩は匿名である]
正直、かなりショックだった。

ヨースケのことで百合が悩んでたなんて。

しかも今更。

それほど百合とヨースケは凄い恋愛してきたのかな。

ふとした瞬間、昔の恋人を思い出す。

悪い事ではないけど、ヤキモチ妬いてしまう。

⏰:08/09/19 12:20 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#380 [我輩は匿名である]
明日、また百合を笑わせてあげよう。

休みだから、どこかに出掛けよう。

百合の闇は俺が晴らしてあげよう。

そう決めながら、百合を抱きしめて眠りについた。

⏰:08/09/19 12:21 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#381 [カラス]
>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500
>>500-600
>>600-700
>>700-800
>>800-900
>>900-1000

⏰:08/09/19 13:03 📱:D905i 🆔:0nSaL5is


#382 [我輩は匿名である]
アンカーありがとうございます。

⏰:08/09/22 18:31 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#383 [我輩は匿名である]
翌朝は空腹で目が覚めた。

寒い寒い朝だった。

「ん〜…」

俺の腕の中では美優がまだ眠っている。

あれ?

美優が?

夕べのことを思い出す。

違う。

美優じゃない。

俺の腕の中で眠っていたのは、百合だ。

⏰:08/09/22 18:32 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#384 [我輩は匿名である]
美優を起こさないように寝室から抜け出した。

百合がいない。

時刻は朝の7時前。

玄関を見ると百合の靴がない。

ゴミ出しにでも行ったのか?

ソファーに座り、しばらく待った。

⏰:08/09/22 18:32 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#385 [我輩は匿名である]
だけどなかなか帰ってこない。

おかしい。

嫌な予感がする。

空腹どころではない。

俺は充電が済んだ携帯電話を手に取った。

すると未読メール1件が表示されていた。

送り主は…百合だ。

⏰:08/09/22 18:32 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#386 [我輩は匿名である]
【しばらく頭冷やすね。心配しないで。ごめんなさい】

百合を…探さなきゃ。

だけど焦ってしまい、頭が上手く働かない。

まず何をすればいい?

とにかく…顔を洗おう。

⏰:08/09/22 18:33 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#387 [我輩は匿名である]
洗面所には俺、百合、美優の歯ブラシが並んでいる。

百合の歯ブラシもいつも通り。

俺と美優の歯ブラシは寄り添いながら並んでいるのに対して、百合の歯ブラシはそっぽ向いていた。

今の俺への当て付けのような並び。

泣きそうだった。

⏰:08/09/22 18:34 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#388 [我輩は匿名である]
百合が俺に話をしてくれたことによって余計に苦しめさせたのか。

叱らなかったのがいけなかったのか。

後悔ばかりが浮かんでくる。

顔を洗い、歯も磨き、服も着替えた。

そこでちょうど美優が起きてきた。

⏰:08/09/22 18:34 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#389 [我輩は匿名である]
「おはよ美優」

「おはよう…ままは?」

「ちょっとお出かけしてる。美優はパパとお出かけしよっか」

「うん、いくー」

「じゃあ支度しよ」

美優を着替えさせ、歯磨きをさせて用意完了。

⏰:08/09/22 18:35 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#390 [我輩は匿名である]
いつも綺麗に結ってもらっている髪の毛も今日は降ろしたまま。

美優の髪も結ったことがないんだ。

「ぱぱ、おなかすいたー」

「パパも。コンビニでパン買おうね」

「まま、あさごはん、つくってくれなかったのぉ?」

「うん。時間がなかったんだって」

「ふーん」

⏰:08/09/22 18:35 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#391 [我輩は匿名である]
美優は、車の中で遊ぶ人形を取ってくると言い、子供部屋に走っていった。

その間、俺は懐かしい人に電話をかけた。

「…はーい」

「ごめん、寝てた?」

「夜勤明けで今から寝るとこー。どしたの、こんな時間に」

「ごめんな。あのさ…百合行ってない?」

⏰:08/09/22 18:36 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#392 [我輩は匿名である]
夜勤明けだと言ってるのに、百合がいるわけない。

だけど、百合が家事や育児でわからないことがあると1番に駆け寄っていたのがこいつ、真子だった。

「来てないけど…何かあったの?」

真子の声色が変わった。

「いなくなったんだ。百合から何か相談とかされてなかった?」

「うそ…何も聞いてないけど。喧嘩でもした?」

⏰:08/09/22 18:43 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#393 [我輩は匿名である]
「いや、喧嘩じゃなくて。百合、ヨースケのことで悩んでたみたいだから」

「ヨースケって…なんでそんな懐かしい名前出てくるわけ?」

「知るか!俺だって知りてーよ!どこ行ったんだよ、百合…」

苛立ちから真子を責めてしまった

真子に怒鳴ったって百合が見つかるってわけじゃねーのに。

⏰:08/09/22 18:44 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#394 [我輩は匿名である]
「とにかく落ち着きな。美優は?」

「家にいる。一人で出てったんだ」

「もしかしたらフラっと買い物から帰ってく‥」

「んなわけねーだろ!こんな時間に。メールだって来たんだよ。心配するな、ごめん…って。何だよコレ!意味わかんねーし」

溜め息が零れる

⏰:08/09/22 18:45 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#395 [我輩は匿名である]
俺とは違い、真子は冷静だった

「実家に連絡は?」

「…まだ」

「じゃあ実家かもしんない。実家じゃなかったら…ヨースケのとこ」

真子の遠慮しがちな最後の言葉を聞いて、頭が痛くなった。

「とりあえず探してみる。悪かったな、寝てるのに」

「ううん…ミナト、大丈夫?」

「もう崩壊寸前」

⏰:08/09/22 18:46 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#396 [我輩は匿名である]
「がんばりな。ミナトには美優がいるんだから。逃げ出しちゃだめだよ」

「あぁ…」

「なんかあったらすぐ電話して。私も行くから」

「わかった。じゃあ」

電話を切って、後ろを振り向くと、怯えた顔の美優がいた。

⏰:08/09/22 18:46 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#397 [我輩は匿名である]
「美優、支度できた?」

「ぱぱ、こわいよ」

「え?」

「なにおこってんの?」

「別に何も」

真子に怒鳴ってしまった時、きっと美優は聞いていたんだ。

普段の俺は、美優に怒鳴ったこともなければ大声を出すこともない。

⏰:08/09/22 18:47 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#398 [我輩は匿名である]
だからさっきの俺が別人のように怖かったのだろう。

「美優、ごめん。びっくりしちゃったな」

しゃがんで美優に目線の高さに合わせた

「みゆにも、おっきなこえ、だすの?」

「出さないよ。美優にもママにも出さない。ごめんね」

「ほんと?」

「ほんと。もう支度できた?行ける?」

「うん」

「じゃあ行こっか」

⏰:08/09/22 18:47 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#399 [我輩は匿名である]
美優にも許してもらい、俺らは家を出た。

コンビニでパンとジュースを買い、簡単な朝ご飯を済ませた。

車内は陽気な子供のうた。

美優は楽しそうに歌っている。

向かうはヨースケの家。

何も連絡を入れなかった。

⏰:08/09/22 18:48 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#400 [我輩は匿名である]
もし百合がいて、俺らが迎えに来ることを知ったら…きっと逃げられる。

何も責めてないんだから、帰って来て欲しい。

30分後にはヨースケの家に着いた。

駐車場に車を止め、俺はヨースケの携帯に電話をかけた。

⏰:08/09/22 19:20 📱:PC 🆔:NBujLwf2


#401 [我輩は匿名である]
「…んあー、誰ぇ」

「俺」

「誰ー」

「ミナト」

「あー、ミナト。久しぶりー」

なんだ。

はずれか。

ここに百合はいない。

明らかに寝起きの声のヨースケ

⏰:08/09/23 15:59 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#402 [我輩は匿名である]
「百合、いないよな」

「…は?何の話だよー。つか、まだ8時前じゃねーか」

「今、お前んちの家の前の駐車場だから出てこい」

「やだー」

「2分で来い」

そう言って電話を切ると、1分もしないうちに寒そうな顔をしたヨースケが家から出てきた

⏰:08/09/23 15:59 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#403 [我輩は匿名である]
俺は車の外に出た。

「うおー、美優ちゃんおっきくなったねー」

美優は恥ずかしそうな顔で車の中からヨースケをじっと見ていた。

「もう3歳だから」

「デカくなったな。で、何?寒いし眠いし久しぶりだし意味わかんねーしで、俺爆発しそう」

「百合がいなくなった」

「…何で?意味不明」

⏰:08/09/23 15:59 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#404 [我輩は匿名である]
「お前のとこには勿論いねーよな?」

「いるわけねーだろ。ミナトんちで殴られてから百合なんて見てねーよ」

「ほんとか?」

「嘘付いてどーすんだよ。だいたい何で俺に聞くわけ?一番知ってる可能性の低い人間じゃんかー」

「百合がいなくなったのはお前が原因だもん」

⏰:08/09/23 16:00 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#405 [我輩は匿名である]
夢にお前が出て来る。

そして百合を突き放す。

百合を泣かした。

百合の見た夢を一部始終話すとヨースケは冗談じゃねぇ、と苦笑いした。

「百合が勝手に俺の夢を見て自分責めてるだけじゃん。バカじゃねーの?」

⏰:08/09/23 16:01 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#406 [我輩は匿名である]
ヨースケだろうが真子だろうが、百合をバカにすると殴り掛かりたくなるぐらい腹が立つ。

だけど美優が見てる前でヨースケを殴るだなんて、そんな事はできないのでグッと我慢した。

「そんな事で一々俺を恨んだり頼ったりされちゃ身が持たねぇって」

⏰:08/09/23 16:01 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#407 [我輩は匿名である]
昔から口の悪い奴だった。

頭がよくて女にルーズ。

今も変わらず、結婚もせずに遊びほうけてるんだろう。

「そうだけど、こんな事初めてだし…百合はそこまで弱くなんかなかったから」

⏰:08/09/23 16:02 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#408 [我輩は匿名である]
「だとしたらお前の考えすぎ。もしくは…百合は自分の弱さをお前には見せなかったって事だ」

いつかの話を思い出した。

月の裏側。

私の裏側はミナトにしか見せない、って甘えてきた百合はまだ幼かった。

⏰:08/09/23 16:02 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#409 [我輩は匿名である]
あれからどれくらいの時間が経った?

百合の気持ちは変わったのだろうか。

もしかしたら裏側だけしか見せてくれないようになっちまったのかな…。

「悪かったな。とりあえず他当たるわ」

一気に冷静になった俺はヨースケに礼を言ってから車を走らせた。

⏰:08/09/23 16:03 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#410 [我輩は匿名である]
途中、美優がトイレに行きたいと言うので、コンビニに寄った。

そのとき、とても懐かしい顔に遭遇した。

「中畑?」

すぐにわかった。

「タツヤ…」

大学の友達。

⏰:08/09/23 16:03 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#411 [我輩は匿名である]
「久しぶりだな!」

「ホント、何年ぶり?」

同窓会にも顔を出せなかった俺は、タツヤやマコトとは卒業以来会っていなかった。

「つか…子供?」

「あ、うん、そう。てか、待って。まずトイレ行くから!」

慌てて美優の手をひいてトイレに駆け込んだ。

後ろでタツヤが笑う声が聞こえた。

⏰:08/09/23 16:04 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#412 [我輩は匿名である]
「だれ〜?」

「ん?パパの大学の時のお友達」

「さっき、おそとで、おはなししてたひとは?」

「あの人は幼なじみ」

「おさななじみってなに?」

「んー。美優にはいないもんな。また教えてやるから」

手を洗ってトイレから出るとタツヤが笑ってた。

⏰:08/09/23 16:04 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#413 [我輩は匿名である]
「パパうんち?」

「きゃはは」

美優は下品な言葉が好きな年頃。

タツヤの顔見て笑ってた。

「違うっつーの」

「この子が噂の美優ちゃんね。初めましてー」

「はじめまして、みゆです」

「賢い!パパとは大違いだね」

⏰:08/09/23 16:05 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#414 [我輩は匿名である]
「みゆ、ぱぱより、かしこいの?」

「うん。パパおばかだから、ママの言うことだけ聞きなさ〜い」

美優は笑ってたけど、俺は笑えねーし。

そのママ、今探してるんだっつーの。

⏰:08/09/23 16:05 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#415 [我輩は匿名である]
「で、久しぶりついでに今日の夜飲み行く?マコトも呼んで」

「悪い。また今度な。今、忙しくて」

「えー、数年ぶりに再会したのにー」

タツヤは昔とほとんど変わってない。

「ごめんな。また連絡して」

「はいはい。じゃあね。美優ちゃん、バイバイ」

「ばいばーい」

⏰:08/09/23 16:05 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#416 [我輩は匿名である]
懐かしい友達の笑顔。

あの頃は、百合とこんな未来を築いているなんて想像もしなかった。

百合が綺麗で美人な女だと褒められるのが嬉しくて、いつも鼻が高かった。

やっぱり俺には勿体ないくらいの奥さんなんだな、百合って。

自分の不甲斐なさにどんどん腹が立ってくる。

美優をチャイルドシートに座らせて再び車を発車した。

⏰:08/09/23 16:06 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#417 [我輩は匿名である]
30分かけて着いた場所は、美優の喜ぶところだった。

「おじーちゃんとおばーちゃんのおうち〜」

百合の実家だった。

「うん。ほら、美優おりて」

⏰:08/09/23 16:06 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#418 [我輩は匿名である]
車から降りた美優の髪の毛がフワッと風で揺れた。

その動きや横顔が百合にそっくりで…俺に似てると言われてる美優だけど、やっぱり百合の子なんだ、って改めて実感させられた。

ピーンポーン

美優の手を繋ぎ、インターホンを押した

⏰:08/09/23 16:07 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#419 [我輩は匿名である]
「はい」

「おはようございます」

インターホンのカメラに向かって頭を下げた

「ミナトくん…どうぞ」

お義母さんの声でわかった。

百合がここにいるんだ、って。

⏰:08/09/23 16:08 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#420 [我輩は匿名である]
ガチャ…

「おばーちゃぁーん!」

美優が飛びつくとお義母さんは優しい笑顔を見せた。

「まぁ、美優ちゃんも来てくれたの?」

「うん、ぱぱのくるまできたー」

「そう!ありがとうね。中におじいちゃんいてるから入って」

⏰:08/09/23 16:08 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#421 [我輩は匿名である]
美優は靴を脱いで、おじいちゃんと叫びながら中に入っていった。

美優の靴の隣に、百合の靴もあった。

「ミナトくん、来てくれてありがとね」

「あの、百合は…」

「ええ。部屋にいる。私たちが朝起きて来たらリビングにいて、泣きながらミナトと美優に会わせる顔がないって言い出して」

気にしなくていいって伝えたのに…伝わらなかったのか。

百合は自分を責めているんだ

⏰:08/09/23 16:10 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#422 [我輩は匿名である]
「お父さんはミナトくんと喧嘩したんだと誤解してるみたいだけど…違うんでしょ?百合の様子、おかしかったから」

「喧嘩ではないですけど…僕の力不足です」

「私が悪いのってずっと言ってるし、ミナトくんには連絡しちゃダメって言うし…私どうすればいいのかわからなくて」

「迷惑かけてすみません」

⏰:08/09/23 16:11 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#423 [我輩は匿名である]
「とにかく入って。美優ちゃんは私たちが見てるから百合のところに行ってあげて。お父さんには私から話しておくわ」

「はい、お願いします」

百合の部屋まで通されて、お義母さんは部屋をノックした。

「百合、入るわよ」

「…」

返事のない扉を開けた。

⏰:08/09/23 16:12 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#424 [我輩は匿名である]
百合が嫁に出てからも、部屋はそのままにしてある松本家。

見覚えのある懐かしいベットの中に百合がいた。

「それじゃ」

お義母さんが扉を閉めて、俺と百合の二人っきりになった。

「…百合」

「…」

⏰:08/09/23 16:12 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#425 [我輩は匿名である]
ベットの近くに座って、百合の体の上に手をのせた。

「こっち向いて」

百合は首を横に振り、こっちを見てくれない。

「なんで、逃げるの。俺のこと嫌になった」

「…ううん」

消えていきそうなくらい小さな声

⏰:08/09/23 16:13 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#426 [我輩は匿名である]
「また、見たの?」

「…」

何も言わない百合。

そっか、見たんだ。

俺の手を繋ぎながらヨースケの夢を。

さすがにそれは俺もキツい。

「百合はさ、ここに逃げて来てどうしたいの」

「…」

「俺から逃げたいんだろ?」

⏰:08/09/23 16:24 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#427 [我輩は匿名である]
「わかんない。どうすればいいのかわかんないから、ここに来た」

「美優を置いて?」

「…」

「ヨースケの夢を見るのは百合の言う通り嫁失格かもしれない。でも母親失格にまでなるなよ」

⏰:08/09/23 16:25 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#428 [我輩は匿名である]
「…」

「美優、ずっとママは?ママは?って聞いてくんだよ。美優のこと不安にさせちゃダメじゃん」

「…ごめ…なさい」

百合は泣いていた。

叱りたくなかったけど、百合がここまで弱かったのなら、もう叱るしか方法がなかった。

⏰:08/09/23 16:25 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#429 [我輩は匿名である]
「わかったなら、帰っておいで」

「…ごめん」

「わかったから。もう帰ろう。これ以上、お義母さんたちに迷惑‥」

「これ以上ミナトに迷惑かけられない」

「え」

⏰:08/09/23 16:25 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#430 [我輩は匿名である]
百合が顔を上げ、俺を見た。

目元がベチャベチャに濡れていた。

「こんな女、もういらないでしょ?」

「何言ってんの」

「もうミナトと美優に迷惑かけたくない」

「だから帰ろうって言ってんじゃん」

⏰:08/09/23 16:26 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#431 [我輩は匿名である]
百合の目からとめどなく涙が流れている。

「帰れないよ」

「迷惑かけたくないなら、帰ってこいよ!帰って来ない方が迷惑だってわかるだろ?」

堂々巡りの会話。

どんどん…辛くなってきた。

百合と話すのが。

⏰:08/09/23 16:26 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#432 [我輩は匿名である]
「もうミナトの奥さんも、美優のママも…自信ない」

百合は全てを放棄した。

「何、何で?たかがヨースケが夢に出てきたぐらいで俺と美優を捨てんの?」

つい、声をあらげてしまった。

⏰:08/09/23 16:27 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#433 [我輩は匿名である]
「そんなに百合にとってヨースケは大きいの?」

誰にでも忘れられない人がいる。

俺は忘れるもなにも、目の前にいる百合が1番大切な人。

だけど百合は、きっと、ヨースケを忘れられない人として心に残してたんだ

⏰:08/09/23 16:28 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#434 [我輩は匿名である]
「ヨースケに未練はないの。でもね、生まれて初めて大恋愛だったの。結局遊ばれただけだったし、相手にもされてなかったけど…ミナトの言う通り、私にとって大きな人だったのかもしれない」

「ヨースケとは何もないって…」

⏰:08/09/23 16:29 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#435 [我輩は匿名である]
「本当に、何もないよ。ミナトと付き合ってから会ったのはあの日だけ。殴って、気持ちがスッキリしたってのも本当。でもね‥」

「もういい!わかった…」

これ以上、聞きたくない。

⏰:08/09/23 16:29 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#436 [我輩は匿名である]
俺を好きだけど、ヨースケも好きって事なんだろ?

だから俺と美優に会わせる顔がない、って。

もう、いいや。

これ以上百合を泣かせるのもいやだし、これ以上…百合に幻滅したくない。

⏰:08/09/23 16:31 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#437 [我輩は匿名である]
「自分の気持ちに整理ついたら改めて話そう。今の百合とじゃ話ててもキリないや」

「…」

「頭冷やしな」

「…美優は?」

⏰:08/09/23 16:32 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#438 [我輩は匿名である]
「今の百合に美優の事、無理なんじゃないの」

わざと憎まれ口を叩いたのに百合は目を伏せた

そんなことない!と反論さえしてこない

やっぱり百合は弱かったんだ

気付かなかった俺が悪いのか。

⏰:08/09/23 16:40 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#439 [我輩は匿名である]
「美優は俺が面倒見るから」

百合は何も言わない

これ以上、一緒にいると百合をもっと傷つける

俺は部屋を出た。

お義父さんに挨拶をしてから、お義母さんにも今回の騒ぎの理由を話した

⏰:08/09/23 16:40 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#440 [我輩は匿名である]
過去の恋人が、と、ヨースケの名前は伏せたが、お義母さんは「ヨースケくんね」とすぐに悟っていた。

百合の弱さや俺の不甲斐なさ。

美優のこと、これからのこと。

お義父さんもお義母さんも混乱していた。

俺だって、混乱している。

⏰:08/09/23 16:41 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#441 [我輩は匿名である]
きっと百合だって混乱している。

自分でどうしていいのかわからないだろう。

だからって投げやりな気持ちで、妥協しながら俺の元に戻ってきて欲しくない。

だから少し強く言ってしまったのだ。

⏰:08/09/23 16:41 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#442 [我輩は匿名である]
「美優に、ママが家にいないのは少し疲れたから、おじいちゃんとおばあちゃんのお家で休んでると話そうと思っています」

「そうね。それがいいわ」

妥協して帰ってきて欲しくないと思う反面、数日すれば百合も帰ってくるだろうとどこか余裕ぶった気持ちもあった。

⏰:08/09/23 16:42 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#443 [我輩は匿名である]
「じゃあね美優ちゃん」

「美優、また来なさい」

「おじーちゃん、おばーちゃんばいばーい」

「それじゃ、よろしくお願いします」

帰る時、美優はぐずらず一緒に車に乗ってくれた。

いつもは、まだいると泣いてぐずるのに。

⏰:08/09/23 16:43 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#444 [我輩は匿名である]
車に乗って、美優が言った。

「ままは?」

「ママね、今、コホンコホンって風邪ひいちゃったの」

「かぜ?」

「そう。美優もこの前なったでしょ?お薬飲んで、しんどかったでしょ?」

「しんどかったー」

「ママもあれになっちゃったの。だからしばらく、おじいちゃんの家でお休みするの」

⏰:08/09/23 16:43 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#445 [我輩は匿名である]
「おやすみ?」

「美優に移しちゃうといけないから、治すためにお休みするの。元気になったら帰ってくるから、美優は良い子にしてパパとおうちで待ってようね」

「ままいないの?」

「すぐ帰ってくるよ。美優が良い子にしてないと早く治らないかも。だからパパと2人で良い子にしてようね!」

「うん…わかったぁ」

⏰:08/09/23 16:44 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#446 [我輩は匿名である]
美優は納得していないようだ。

我ながら嘘が下手くそ。

昔はもっと上手に女を騙せたのになー、なんて。

⏰:08/09/23 16:44 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#447 [我輩は匿名である]
これからどうしよ。

何も家事のできない俺、どうすればいい?

とりあえず真子に電話をかけ、百合とのことを報告した。

「そっか。でもミナト、美優のこと大丈夫なの?」

「全然大丈夫じゃない」

⏰:08/09/23 17:19 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#448 [我輩は匿名である]
真子は優しいから、俺か百合が弱音を吐くと、すぐに助けてくれる。

俺はそれを知って、わざと甘えた。

本当はもっとしっかりしないといけないのに…。

でも、俺だってどうすればいいのかわかんねーだもん。

ホント、勘弁してよ…百合。

⏰:08/09/23 17:19 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#449 [我輩は匿名である]
「明日から3連休だから、そっち行ってあげる」

「まじ助かる。ありがと」

真子が明日から3日間、ママの変わりにお手伝いに来てくれる事を美優に話すと喜んでいた。

真子はよく遊びに来ているから美優も嬉しそう。

⏰:08/09/23 17:20 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#450 [我輩は匿名である]
その日は美優が生まれてから、初めて美優と二人っきりで過ごした日だった。

それほど俺はいつも百合に育児を任せっきりだったんだ。

どこに遊びに行くのにも美優がいて、片時だって一人の時間はない。

それが苦痛だと思ったことは無いんだろうが、少しは百合に一人の時間を作ってあげればと今更後悔している。

百合、ごめん。

⏰:08/09/23 17:20 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#451 [我輩は匿名である]
コンビニ弁当で我慢してもらった夕食。

洗濯機の使い方もわからない。

たまに一緒に入っていたので、お風呂だけはなんとかクリアー。

でもさ、家事も育児も大変なんだよな。

まじで奥さんには感謝するべきだよ。

⏰:08/09/23 17:20 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#452 [我輩は匿名である]
翌日から3日間。

俺が仕事中だと真子が美優の面倒を見てくれていた。

仕事から帰れば真子がご飯を作り、家事を全て終えてくれていた。

真子のご飯は美味しかったけど、百合の味とは全然別物。

みそ汁をすすりながら、寂しい気持ちになった。

⏰:08/09/23 17:58 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#453 [我輩は匿名である]
さて、真子は明日から仕事だ。

どうする。

百合からは連絡が来ないし、俺だって明日も仕事。

さすがに俺もストレスが溜まる。

思い切ってお義母さんに電話をかけた。

⏰:08/09/23 17:59 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#454 [我輩は匿名である]
「百合の様子、どうですか」

「元気にしてるけど、全然笑わないの。ミナトくんや美優ちゃんの話をすると黙っちゃうし」

「そうでうか。まだ気持ちの整理はついてないんですかね」

「えぇ。迷ってるみたいよ。ミナトくんと美優ちゃんの映った家族写真見て、何度も泣いてたわ」

⏰:08/09/23 17:59 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#455 [我輩は匿名である]
もう限界だった。

「お義母さん、すみませんが今から行ってもいいですか?」

「今から?」

時刻は夜の9時を迎えようとしていた

「はい。百合には言わないでください。今から俺とヨースケが行く事」

⏰:08/09/23 18:00 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#456 [我輩は匿名である]
お義母さんに了解を得て、俺は車を走らせた。

「…ぱぱぁ、んー。ねむいー」

「美優ごめんね。寝てていいよ」

眠いせいでぐずっている美優に謝りながらヨースケの家まで走らせた。

到着した頃には美優は夢の中だった

⏰:08/09/23 18:00 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#457 [我輩は匿名である]
「何ー」

「外出てきて」

「言われるとおもった」

ヨースケは家から出てきて俺の車に乗った

「そろそろ、また電話くるだろうなーって思ってた。で、また呼び出しされるんだろーなーって」

⏰:08/09/23 18:01 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#458 [我輩は匿名である]
あからさまに迷惑なんだけど!って態度のヨースケ

一応謝ったけど、こっちだって迷惑してんだよ

おめーの存在に。

「どこ行くの」

「松本宅」

「どこそれ」

「百合の実家」

「はぁ?なんで?意味わかんねー」

⏰:08/09/23 18:02 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#459 [我輩は匿名である]
この前の話をヨースケにした

「俺も迷惑してんの。明日仕事だから美優の面倒見る人いねーし。百合が帰って来なかったらヨースケ、お前が面倒見て!」

「やだよ。つーかなんで百合なんかに会わなきゃいけないのー」

「もうハッキリしてもらわねーと俺もキツい」

百合に考える時間をたくさんあげるつもりだったのに、俺ってば短気でさ。

もう限界だった

⏰:08/09/23 18:03 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#460 [我輩は匿名である]
10時前に松本家につき、お義母さんが出迎えてくれた。

眠った美優を、お義母さんたちの寝室に運び、俺とヨースケは百合の部屋に通された。

「百合、まだ起きてるから。どうぞ」

ノックの後に部屋を開けると、驚いた顔の百合がベットの中から体を起こしていた

⏰:08/09/23 18:03 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#461 [我輩は匿名である]
きっと百合は俺が来た事に驚いてるんじゃない。

数年ぶりに見る、かつての恋人、今でも忘れられない人を見て驚いてるんだ。

「百合、ベットから出てきて」

百合は今にも泣きそうな顔でベットから出てきた

⏰:08/09/23 18:03 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#462 [我輩は匿名である]
元々細い体の百合が、また細くなっていた

「ハッキリしたいんだ。俺のこと、美優のこと、ヨースケのこと」

俺が言い終えるとヨースケが言った

「百合さ、まだ俺が好きなの?」

普段の俺ならヨースケを殴り飛ばしてるかもしれないセリフ

だけど今は、これを聞かないと何も始まらないし…終わらない

⏰:08/09/23 18:04 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#463 [我輩は匿名である]
「…好きじゃない」

「俺のこと気にしなくていいから、本当のこと言って」

俺がそう言うと百合は強い目でこっちを見た

「私はミナトが好きなんだよ」

ヨースケが言った

「だってさ。はい、解決」

⏰:08/09/23 18:06 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#464 [我輩は匿名である]
ヨースケは続けた

「百合、もうお前ミナトんとこ帰れよ。俺が迷惑」

「…帰れない」

「なんで」

「ヨースケが夢に出てくるからだよ」

「っ。意味わかんねー」

⏰:08/09/23 18:06 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#465 [我輩は匿名である]
確かにヨースケの言うとおり

意味がわからない

どうして俺が好きなのに、帰って来ないんだ

どうしてヨースケの夢を見るから、帰って来れないんだ

「俺ら男だから、女のそーゆーのよくわかんねぇんだけど…元彼の夢を見るって浮気なの?」

ヨースケが聞いた

⏰:08/09/23 18:08 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#466 [我輩は匿名である]
「浮気より最低だよ」

百合の答えにまた首をかしげる男2人

「俺らさ、百合も知ってると思うけど…昔っから女にはだらしなくてさ。ミナトは百合のおかげで更正したけど俺は今でも昔のまんま。だから、そうやって忘れられない人…みたいなのがいないから、気持ちがわかんねーんだよ」

⏰:08/09/23 18:15 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#467 [我輩は匿名である]
百合は言った

「ミナトが好きなの。でも、心の底にはヨースケがいる。嫌いだけど、存在してんの。好きなのはミナトだよ。でもね、初めて本気で愛した人がヨースケ。そういう特別な人を、簡単には忘れられなかった私の弱さに原因があるんだってわかってる」

「なぁ百合」

「ん?」

「なんで言ってくんなかったの」

⏰:08/09/23 18:15 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#468 [我輩は匿名である]
俺は続けて言った。

「ヨースケがどっか心の隅っこに残ってる、ってなんで言ってくんなかった?俺には全て隠し事ないって言ってたよな。何で?俺を悲しませたくなかった?だとしたら検討違い。今、こうやって知った事のほうが悲しい」

強い口調でまた百合を責めてしまった

だけど押さえられない

⏰:08/09/23 18:16 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#469 [我輩は匿名である]
「その弱さも何もかも、何で俺に頼ってくんなかったの。百合に不満なんてなかった。だけど、今はそれが不満。こんなに想ってたのに、なんで伝わらなかったかな」

美優とママに大きな声は出さないと、百合がいなくなった朝、約束したはずなのにな…。

俺ももう壊れそう。

俯いて溜め息を零し、頭をかきむしってる俺にヨースケが背中にドンッと拳をぶつけてくれた。

そしてヨースケは言う

⏰:08/09/23 18:17 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#470 [我輩は匿名である]
「百合、その心の中にいる俺、美化しすぎてるんだよきっと。だから早く忘れなよ、そんな最低な男。こんなに想ってくれてる男、他にいないって」

「…」

「なぁ。百合が逃げ出したのって、俺以外に理由あるっしょ?」

「…は?」

何を言い出すかと思ったら…意味のわかんねーことを。

⏰:08/09/23 18:18 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#471 [我輩は匿名である]
「俺、久しぶりに百合見て思ったんだわ。つーか俺じゃなくてもわかんだろ。悩みの種は俺と…ミナトだろ?」

ヨースケは百合の目を見て言った

なんで?

俺が悪かったのか?

俺に悪いところがあったなら、治してるよ。

なんで、百合じゃなくてヨースケに指摘されなきゃなんねーんだよ

⏰:08/09/23 18:21 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#472 [我輩は匿名である]
「ミナトに悩みがあんなら言ったら?ミナトもわかんねーの?百合の悩みは俺とお前だったって」

「え、何それ…俺に原因あんの?」

「客観的に見てればわかんじゃん。百合が悩んでる原因は旦那にもあるってさ。なぁ百合、そうだろ?」

⏰:08/09/23 18:21 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#473 [我輩は匿名である]
百合は何も言わず俯いていた。

「何が?確かに家事も育児も任せっきりだったけど…え、意味わかんねーわ」

パニック状態なくらい焦った

ずっとヨースケばかりを恨んでいたから

「百合、言えば?」

ヨースケが促す。

「百合、言ってよ」

俺も促す

⏰:08/09/23 18:25 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#474 [我輩は匿名である]
すると百合は顔を上げて言った

「…ヤリチン」

はぁ?

何、その懐かしい単語。

訳わかんなくて頭、爆発しそうだわ。

⏰:08/09/23 18:25 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#475 [我輩は匿名である]
「毎日不安だったんだよ。女にだらしなかったから、私と付き合ってても浮気してんじゃないかなって。ミナトは私だけって言ってくれてたけど、毎日違う女連れてるところ、ずっと見たたから」

過去の自分を責めた

「今は百合だけだ、っていつも言ってたのに…信じてくれてなかったの?」

「信じてたけど、不安は消えないよ」

⏰:08/09/23 18:26 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#476 [我輩は匿名である]
「自業自得ってやつ…」

混乱していた俺にヨースケのお節介な言葉が耳に届いた。

「俺、ずっと百合の事不安にさせてたの…本当に?全然気付かなかった…」

「した方は気付かなくても、された方ってのはずっと覚えてるもんじゃん」

ヨースケの言うとおりだ。

加害者は忘れてる事でも、被害者はずっと忘れない

⏰:08/09/23 18:26 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#477 [我輩は匿名である]
「百合、なんで言ってくんなかったの」

「言えるわけないじゃん!問いつめて、開き直られるのが怖かったの…」

百合の顔は涙でぐちゃぐちゃだ。

「ミナトもさ、まったく自覚なかった訳じゃないんだろ?そんな簡単に性格なんて変えれねーじゃん?女にだらしない癖、残ってるかもって思った事、あっただろ」

⏰:08/09/23 18:27 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#478 [我輩は匿名である]
ヨースケはいつも痛いところをついてくる。

確かに…そうだ。

本当に百合だけを想っていても、たまには昔の癖が出ていた。

それも無意識に。

体の関係だとか、不倫だとか…そういうんじゃない。

たまに心にもない事を冗談で百合に言ったり、聞いたり…。

それが、いけなかったんだ。

⏰:08/09/23 18:27 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#479 [我輩は匿名である]
自分でもわかってたんだ。

そろそろケジメつけねーと、って。

だけど、ケジメをつけきるのが邪魔くさくて後回しにしていたんだ。

それが百合を苦しめた

今日、ケジメをつけないと。

そのタイミングが…今日。

俺は『俺』とバイバイする。

⏰:08/09/23 18:27 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#480 [我輩は匿名である]
「ちょっ…そこまでする?」

ヨースケが小声で呟いたのは聞こえた。

ここまでって、どこまでだよ。

土下座なんかで許されるなんて思ってないよ。

「ミナト辞めてよ…土下座なんかされたくない」

⏰:08/09/23 18:28 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#481 [我輩は匿名である]
「俺には百合しかいないんです。ヨースケが心にいてもいい。ヨースケとの恋があってこその百合だから、そんな百合を全てひっくるめて、これからも俺の奥さんで居て欲しいです」

百合のすすり泣く声が部屋に響く。

ヨースケは何も言わずに、黙って聞いていた

「ヨースケが心にいてもいいけど、俺からは離れていかないで。俺は、本当に百合しかいないし、百合以外の女を女だなんて思ってないんだ。俺には百合がいないと無理なんです」

⏰:08/09/23 18:28 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#482 [我輩は匿名である]
顔を上げると、百合はさっきより泣いていた。

「許してくれる?俺、至らないとこだらけの男だしヨースケみたいに頭もよくない。でも、百合は俺の事、好きだって言ってくれたよな。それ信じるよ?だから百合も俺、信じてよ。ヨースケ忘れなくていいから、俺のこと信じて」

百合は何度も頭を上下に動かして頷いていた。

「ヨースケ、あんたのせいで…またミナトのこと惚れ直しちゃったじゃん」

⏰:08/09/23 18:28 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#483 [我輩は匿名である]
そう言って百合が笑った

「すみませんね。お詫びに1日でも早く、百合の中から俺がバイバイできること祈ってるよ」

ヨースケも笑ってる

「うん。さっさと消えてよね。あんたのせいで…もう泣きたくないんだから」

「おう。さっさと消えるよ。だから百合も頑張ってさっさと消せ、な?」

百合は大きく頷いていた。

⏰:08/09/23 18:29 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#484 [我輩は匿名である]
「ミナト」

「…え」

「私、弱いけど、あんたの強さがあるから今まで一緒にいれたんだよね。だからこれからも私と一緒にいてよね」

百合が目を潤ませて笑っている。

何、これ…

解決したの?

百合、俺のこと許してくれたの?

⏰:08/09/23 18:30 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#485 [我輩は匿名である]
これから先、ヨースケのことで百合はまた泣くかもしれない。

そのときは俺が包んでやればいいんだ。

「ごめんね、ミナト」

俺に抱きついた百合。

「俺いるの忘れんなよ」

そう言うヨースケの前で俺にキスする百合なら、もう泣かせないって誓わずにいられない。

END

⏰:08/09/23 18:30 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#486 [我輩は匿名である]
〜〜〜〜〜〜〜

最後までおつき合いいただきありがとうございました。

途中更新が遅くて迷惑かけたと思います。

今回の作品も思いついたままポンポン書いて言ったので、まとめるのにかなり座棺がかかりました。

⏰:08/09/23 18:32 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#487 [我輩は匿名である]
まとめるのにかなり座棺がかかりました

じゃなくて

まとめるのにかなり時間がかかりました

です。すみません;

⏰:08/09/23 18:32 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#488 [我輩は匿名である]
で、結局何が言いたいのかと言うと
昔の悪さは将来、自分や恋人、家族を傷つけてしまうこともあるって事です。

今、もし自分がバカなことしてるかもって思ったらケジメつけて抜け出してください。

⏰:08/09/23 18:34 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#489 [我輩は匿名である]
きっと将来、あのとき抜け出せておいてよかったって思う時が来ますから。

それと、奥さんに何もかも任せきりの旦那さんが少しでも減って欲しくて。

当たり前すぎて、家族のありがたみに気づけないことってありますよね。

相手が苦しくなってからや、いなくなってから気づいては遅いんです。

自分を見つめ直して欲しいという意味も込めて書きました。

⏰:08/09/23 18:36 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#490 [我輩は匿名である]
文才0の主ですが何か少しでも伝わってくれていれば幸いです。

簡単な挨拶ですが、本当にありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜

⏰:08/09/23 18:37 📱:PC 🆔:a.07ms/M


#491 [霞草]
いい話でした
最後まで書いてくれてありがとうございました

⏰:08/09/23 19:10 📱:D905i 🆔:4MyvjBuc


#492 [我輩は匿名である]
泣けました。

⏰:08/09/23 19:26 📱:P904i 🆔:9YwnHkvM


#493 [我輩は匿名である]
>>1-250
>>251-500

⏰:08/09/23 19:34 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#494 [我輩は匿名である]
前作もとてもよかったですが、このお話もとてもよかったです!とても考えさせられましたし泣けました。最後まで書いて下さってありがとうございました
お疲れ様でした

⏰:08/09/23 20:42 📱:SH906i 🆔:sDp2YIx6


#495 [AIRI☆彡]
とてもぃぃ話でしたw

最後まで書いてくれて感謝してます!!

お疲れ様でしたヾ(○´∪`●)ノ

⏰:08/09/26 19:35 📱:PC 🆔:ddbLL4v2


#496 [なな]
すごく感動しました

主さんのメッセージが
すごく伝わってきました

大切なこと
気づかせてくれて
ありがとうございます

この小説に出会えて
ほんとによかったです…

⏰:08/09/26 23:08 📱:SH902iS 🆔:☆☆☆


#497 [たたた]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:08/09/27 09:09 📱:W61SA 🆔:g1XJgf9A


#498 [我輩は匿名である]
読んでほしいからあげ!!

⏰:08/10/01 06:45 📱:SH906i 🆔:GYRj4bws


#499 [我輩は匿名である]
あげます。

⏰:08/10/01 19:57 📱:SH901iC 🆔:☆☆☆


#500 [我輩は匿名である]
考えさせられる事ばかりでした。今隣にいる人を大事にしたいと改めて思いました主さんありがとう
こんな家庭を築けるよーに頑張りたいです

⏰:08/10/02 02:58 📱:SH903i 🆔:gu/GX6ws


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