月の裏側
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#301 [我輩は匿名である]
「二人揃って暴力主義かよ、んっとにもー。百合のほうが痛いし」

「CDまた今度持ってくから、今日は帰って」

「あー、はいはい」

ヨースケはめんどくさそうに頭を縦に振り、帰って行った。

⏰:08/09/05 13:56 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#302 [我輩は匿名である]
ヨースケは帰って行き、俺は部屋に戻った。

「…百合」

真っ白い背中を丸め、俯いている。

俺は、そっと上着をかけた。

「寒いだろ?服、着なよ。な?」

「…ミナト…ごめん」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#303 [我輩は匿名である]
百合は声を枯らして謝っている。

「何が?」

「…全部。こんな姿で元カレの前に立った事、殴った事、泣いた事」

「気にしてないから。ビックリはしたけどね」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#304 [我輩は匿名である]
「ミナトぉ」

百合は俺に抱き着いて、こう言った。

「ヨースケと友達だなんて…神様、いじわるだよ」

「そうだな」

「私、泣いちゃったけど…未練とかないからね」

「わかってるよ」

⏰:08/09/05 13:57 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#305 [我輩は匿名である]
「ヨースケは忘れたの。今はミナトだけだよ。ミナトが好き」

百合の力が強くなった。

「俺も百合だけだから。離れてくなよ?」

「ミナトこそ」

涙に濡れた唇はしょっぱくて、俺の涙まで流させる気なのかって思った。

あの時、電話に出なければこんなことにならなかった。

百合を泣かさずに済んだのに。

⏰:08/09/05 13:58 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#306 [我輩は匿名である]
百合を泣かせた元カレがヨースケだった事。

事実は変えられないのだから受け入れよう。

俺はきっとこれからもヨースケとは友達なんだろう。

ヨースケとどう接していくかは俺の心の広さ次第。

⏰:08/09/05 13:58 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#307 [我輩は匿名である]
決めた。

ヨースケとは、明日からも友達でいる。

俺も男なんだし、一発殴ったから水に流す!

百合とは、明日からも恋人。

ずっとずっと好きな人。

離れてやるもんか。

そう思いながら百合と何度もキスした。

⏰:08/09/05 13:59 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#308 [我輩は匿名である]
次の日の朝。

百合は名残惜しみながら自分の家に帰った。

「もしもし、ミナト?」

電話口のヨースケの声はいつもと変わらない

「今どこ」

「家にいる」

「行くから待ってろ」

徒歩5分圏内にあるヨースケの家に、返しそびれたCDを持って向かう。

⏰:08/09/05 14:00 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#309 [我輩は匿名である]
ヨースケの部屋に入り、腰を下ろした。

「おいおい、何で本格的にくつろいでんだよ」

「ん?だって今日ひまだしー」

「変な奴」

ヨースケの顔は腫れたりしてなかった。

いつもの顔。

なんかちょっとムカつく。

もう少し強く殴っとくんだった。

⏰:08/09/05 14:00 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#310 [我輩は匿名である]
CDをケースに直し、煙草を吸い始めたヨースケ。

「あ、俺も」

ついでに俺の火も付けてもらう。

「ミナト」

「ん?」

「何なの、これ」

⏰:08/09/05 14:01 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#311 [我輩は匿名である]
「あ?」

「昨日の今日だっつーのに、いつもと変わんねーし。新手の嫌がらせか?」

苦笑いしたヨースケ。

「別に。百合の元カレなのはウゼーけど、もう関係ないんだろ?」

「…ん」

「お前は二度と百合にちょっかい出さないって誓うか?」

「…うん、誓う誓う」

「じゃあもういい。俺らはこれからも変わらないウザイ幼なじみってやつだ」

「…あぁ」

⏰:08/09/05 14:01 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#312 [我輩は匿名である]
ヨースケは誓ったんだ。

二度と百合に手を出さないって。

だから信じた。

もう、心配なんていらない。

だから俺らはこれからも変わらず、友達であるんだ。

そう思った冬。

もうすぐクリスマスだ。

⏰:08/09/05 14:02 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#313 [我輩は匿名である]
待ちわびたクリスマス。

俺らはドライブや食事をして楽しんだ。

年が明けた1月。

冬休みが終わる前に旅行をしようと言うことで、ボードをするために北海道に行った。

楽しくて幸せで、とてもいい思い出だ。

⏰:08/09/05 14:02 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#314 [我輩は匿名である]
それからの俺たちは、喧嘩だってした。

だけどそのたび絆は深まっていた。

何も問題なんてなかった。

俺らは、問題なんてない。

そう思わずにいられない関係だった。

⏰:08/09/05 14:03 📱:PC 🆔:CbnYZWUc


#315 [オ]
頑張って下さいx!

⏰:08/09/06 22:50 📱:W43H 🆔:S0fIkIms


#316 [N]
続き読みたいです!

⏰:08/09/11 13:34 📱:W43H 🆔:TwPo2VoU


#317 [我輩は匿名である]
遅くなってすみません;

今から更新します

⏰:08/09/14 20:54 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#318 [我輩は匿名である]
20歳になった大学2年。

21、22歳と月日が過ぎ、無事に卒業もした。

俺はおきまりのコース。

両親に頼ってコネ入社し、就職した。

百合も事務職という、決して派手ではないが大手企業に就職した。

⏰:08/09/14 20:54 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#319 [我輩は匿名である]
付き合って5年目の夏に、同棲を始めた。

俺の親は、賛成も反対もしない。

好きにしろ。

そういった感じ。

⏰:08/09/14 20:55 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#320 [我輩は匿名である]
百合の親は、最初は反対したものの、俺が頭を下げに行くと快く了承してくれた。

仕事ですれ違い、会えなくなるということもなくなった俺たち。

同棲生活は楽しくて新鮮で、早く自分で稼いだ金を貯めて、百合と結婚したかった。

⏰:08/09/14 20:55 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#321 [我輩は匿名である]
付き合って6年目。

上司と同僚と一緒にキャバクラに行った事がバレて、百合を泣かした。

実家に帰る、といい玄関を飛び出したぐらいだ。

俺は細い腕を掴み、何度も謝った。

土下座もした。

仕事だから仕方ない。

そんな言葉はいいわけでしかない。

百合が嫌がっていたことをした俺が悪いんだから。

⏰:08/09/14 20:56 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#322 [我輩は匿名である]
頭を4発殴られた。

だけど、それで百合が許してくれるなら何発だって殴られてもいい。

俺は百合がいないとダメなんだ。

百合しかいないんだ。

本当にごめん。

⏰:08/09/14 20:57 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#323 [我輩は匿名である]
付き合って7年目。

俺の仕事が忙しくて旅行に行けなかった。

19歳の冬、初めてボードに行った旅行から、毎年冬にはどこかに旅行していた。

だけど、今年ばっかりは連休が取れなくて、百合は不機嫌そうだった。

お詫びに来年は海外に行く約束をした。

すると百合は簡単に許したくれた。

⏰:08/09/14 20:58 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#324 [我輩は匿名である]
だけど、その翌年、俺らは旅行に行けなくなった。

俺、百合、共に26歳。

小さな命を授かったんだ。

⏰:08/09/14 20:58 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#325 [我輩は匿名である]
「赤ちゃんできたの」

「…ブッ!…マ…ジで…すか?」

百合が照れながらそう言った時、俺は食べていたコロッケを吹き出したっけ。

嬉しくて嬉しくて、泣くのを我慢したせいで鼻の奥が痛かった。

「生んでもいいよね?」

⏰:08/09/14 21:01 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#326 [我輩は匿名である]
答えは1つしかないじゃんね。

「俺と百合の子供…」

「うん」

「産んでください。よろしくお願いします」

「はい」

百合は笑った。

もう母親の顔だった。

「百合」

「ん?あ、ご飯おかわり?」

そう言って立ち上がった百合の手を掴んで言った。

「結婚しよう」

⏰:08/09/14 21:01 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#327 [我輩は匿名である]
百合は、さっきより何倍もの可愛い笑顔で「はい」と言った。

数日後に百合の両親に、妊娠と結婚の報告に行った。

「順番が逆だ!もっと早くに籍を入れとかんから、こんなことになる!」

そう言ってお父さんに叱られた二人。

「まぁまぁいいじゃないの。私たちに孫ができるのよ?おめでたいじゃない」

お母さんは喜んでくれた

⏰:08/09/14 21:02 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#328 [我輩は匿名である]
「百合さんを幸せにします」

こんなありきたりの言葉しか言えない俺だけど、最後にはお父さんも許してくれた。

なんだかんだ言って、お父さんが1番喜んでくれていたらしい。

名前を考えたり、ベビーグッズを探したり…。

両親に愛されながら育った百合が羨ましかった

⏰:08/09/14 21:02 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#329 [我輩は匿名である]
俺の両親は、「そうか」「よかったわね、おめでとう」と軽い返事だった。

結婚や孫ができることになっても無関心なのか。

こんな両親にはなりたくない。

そう決めた。

⏰:08/09/14 21:03 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#330 [我輩は匿名である]
その翌年、元気な女の子が生まれた。

俺は泣いた。

27歳にして、周りの目も気にせずに泣いた。

百合はそんな俺を見て笑ってた。

⏰:08/09/14 21:03 📱:PC 🆔:kf/llK9E


#331 [我輩は匿名である]
画数とかバランスとか、結局は関係なく俺ら2人の名前をとって「美優」と、素晴らしい名前を付けてくれたお父さん。

お父さんも病室で孫の顔を見て泣いた。

「美優、おじいちゃんだよー。泣き虫だね」

百合はまた笑ってた。

「可愛い子だな。じいちゃんに目元が似てるなぁ!」

⏰:08/09/18 14:38 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#332 [我輩は匿名である]
お父さんは美優を抱きながら目尻を下げっぱなしていた。

小さいけれど大きな命。

その誕生によって誰もが幸せになる。

俺が生まれたとき、親父やお袋も喜んでくれたのかな。

⏰:08/09/18 14:38 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#333 [我輩は匿名である]
百合と美優が退院し、仕事から家に帰る楽しみができた。

つい数週間前までは家に帰っても百合は入院して、ひとりぼっちだった。

この年になってもひとりぼっちは寂しくて…。

だから今、家族3人で過ごしているなんて「幸せ」以上の言葉があったら教えて欲しいくらいだ。

⏰:08/09/18 14:39 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#334 [我輩は匿名である]
28歳になった。

結婚して2年だが、付き合い始めて、なんと10年がたったのだ。

美優も1歳になり、百合は専業主婦として頑張ってくれている。

守るものが2つある。

仕事は前にも増して頑張った。

⏰:08/09/18 14:39 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#335 [我輩は匿名である]
29歳。

三十路1歩手前。

このまま親子3人、のらりくらり生きていくんだと思っていた。

だけど違った。

結婚3年目の真実は、頭を抱える物だった。

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#336 [我輩は匿名である]
「ぱぱ〜」

「ん?」

「ままとみゆ、どっちがすき?」

仕事が休みの俺に美優は甘えてくる。

「どっちも好き」

「えぇ〜。ままは、みゆが1ばんすきって、いってたよ」

「パパは?」

「2ばんめだって」

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#337 [我輩は匿名である]
「パパ、美優に負けたの?ショックー」

「キャハハハッ」

ムンクの叫びみたいな顔をしてやると美優は可愛い顔で笑った。

幸せ。

娘の笑顔見てると仕事の疲れなんて吹っ飛ぶな。

⏰:08/09/18 14:40 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#338 [我輩は匿名である]
「おなかすいたー」

「ん、パパも。ママまだ起きて来ないね」

時刻は朝の9時。

いつも8時には朝食を済ませる3人なのに、今日は百合がまだ起きて来ない。

⏰:08/09/18 14:41 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#339 [我輩は匿名である]
「パパが起こしてくるから美優テレビ見ててお利口にしててねー」

「はーい」

寝室に行き、布団に丸まっている百合に声をかけた。

「百合」

「…んんっ」

⏰:08/09/18 14:41 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#340 [我輩は匿名である]
「どうしたの?熱でもある?」

「…んー。何時?」

「9時。美優お腹すいたって」

百合はバッと起き上がったが、どこか力の入っていない顔。

「ごめんね。今から急いで作るよ」

「体調悪いなら無理しなくていいよ?」

「平気。寝坊してごめんね」

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#341 [我輩は匿名である]
百合は覚束ない足取りでリビングに向かう。

俺も後ろから追い掛けると美優が嬉しそうに百合に縋り付いている最中だった。

「おはよう!」

「おはよ。お腹空いた?ごめんね、すぐ作るから待ってて」

「うんっ」

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#342 [我輩は匿名である]
百合は美優に笑ってみせたけど、いつもと違う。

いつもの笑顔じゃない。

やっぱり体調が悪いのか。

「手伝うよ」

「あ、ありがと」

作り笑顔を俺に見せた百合の隣で、俺は朝食の準備を手伝った。

⏰:08/09/18 14:42 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#343 [我輩は匿名である]
その日からやっぱり百合は少し変だった。

ボーッとしたり、寝坊したり、無口だったり。

どうしたの?と聞いても、何もないよ、と笑顔で答えていた。

何もないわけない。

俺にはわかる。

何か悩み事があるってこと。

⏰:08/09/18 14:46 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#344 [我輩は匿名である]
ある日、突然言われたりもした。

「別れようなんて言ったら、どうする?」

そんな事、普通聞いてくるか?

何を悩んでいるのかわからないけど、そんな質問されるのが辛かった。

「別れない」

⏰:08/09/18 14:46 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#345 [我輩は匿名である]
真剣に聞いてくるから真剣に言い返すと百合は泣きそうな顔に変化した。

「…ごめん。変な事聞いたね。別に意味ないから」

そう言って百合は寝室に行ってしまった。

⏰:08/09/18 14:47 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#346 [我輩は匿名である]
百合が何を悩んでいるのか。

俺といる事が百合にとって苦痛になってきたのだろうか?

夫婦としてのマンネリなんてないし、互いの意見をぶつけ合う喧嘩もする。

冷め切った家庭ではない。

一体、何がどうなっているのか。

⏰:08/09/18 14:47 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#347 [我輩は匿名である]
早く解決させたいのに、仕事が邪魔をして上手くいかなかった。

いや、解決させるのが恐かったのかもしれない。

仕事を理由に、逃げていたのかも。

そんな風に百合の闇から逃げていると、いつの間にかクリスマスにの季節だった。

⏰:08/09/18 14:48 📱:PC 🆔:D6L4N7VY


#348 [.]
>>338-500

⏰:08/09/18 16:55 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#349 [我輩は匿名である]
アンカーありがとうございます

⏰:08/09/19 12:08 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


#350 [我輩は匿名である]
俺が仕事から帰り、翌日が休みという幸せな夜。

「ただいまー」

「おかえり」

いつも通りの百合の出迎え。

「美優は?」

「もう寝たよ」

「そっか」

「先にお風呂でしょ?」

「おう」

⏰:08/09/19 12:09 📱:PC 🆔:./.2cs2Y


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