月の裏側
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#401 [我輩は匿名である]
「…んあー、誰ぇ」
「俺」
「誰ー」
「ミナト」
「あー、ミナト。久しぶりー」
なんだ。
はずれか。
ここに百合はいない。
明らかに寝起きの声のヨースケ
:08/09/23 15:59
:PC
:a.07ms/M
#402 [我輩は匿名である]
「百合、いないよな」
「…は?何の話だよー。つか、まだ8時前じゃねーか」
「今、お前んちの家の前の駐車場だから出てこい」
「やだー」
「2分で来い」
そう言って電話を切ると、1分もしないうちに寒そうな顔をしたヨースケが家から出てきた
:08/09/23 15:59
:PC
:a.07ms/M
#403 [我輩は匿名である]
俺は車の外に出た。
「うおー、美優ちゃんおっきくなったねー」
美優は恥ずかしそうな顔で車の中からヨースケをじっと見ていた。
「もう3歳だから」
「デカくなったな。で、何?寒いし眠いし久しぶりだし意味わかんねーしで、俺爆発しそう」
「百合がいなくなった」
「…何で?意味不明」
:08/09/23 15:59
:PC
:a.07ms/M
#404 [我輩は匿名である]
「お前のとこには勿論いねーよな?」
「いるわけねーだろ。ミナトんちで殴られてから百合なんて見てねーよ」
「ほんとか?」
「嘘付いてどーすんだよ。だいたい何で俺に聞くわけ?一番知ってる可能性の低い人間じゃんかー」
「百合がいなくなったのはお前が原因だもん」
:08/09/23 16:00
:PC
:a.07ms/M
#405 [我輩は匿名である]
夢にお前が出て来る。
そして百合を突き放す。
百合を泣かした。
百合の見た夢を一部始終話すとヨースケは冗談じゃねぇ、と苦笑いした。
「百合が勝手に俺の夢を見て自分責めてるだけじゃん。バカじゃねーの?」
:08/09/23 16:01
:PC
:a.07ms/M
#406 [我輩は匿名である]
ヨースケだろうが真子だろうが、百合をバカにすると殴り掛かりたくなるぐらい腹が立つ。
だけど美優が見てる前でヨースケを殴るだなんて、そんな事はできないのでグッと我慢した。
「そんな事で一々俺を恨んだり頼ったりされちゃ身が持たねぇって」
:08/09/23 16:01
:PC
:a.07ms/M
#407 [我輩は匿名である]
昔から口の悪い奴だった。
頭がよくて女にルーズ。
今も変わらず、結婚もせずに遊びほうけてるんだろう。
「そうだけど、こんな事初めてだし…百合はそこまで弱くなんかなかったから」
:08/09/23 16:02
:PC
:a.07ms/M
#408 [我輩は匿名である]
「だとしたらお前の考えすぎ。もしくは…百合は自分の弱さをお前には見せなかったって事だ」
いつかの話を思い出した。
月の裏側。
私の裏側はミナトにしか見せない、って甘えてきた百合はまだ幼かった。
:08/09/23 16:02
:PC
:a.07ms/M
#409 [我輩は匿名である]
あれからどれくらいの時間が経った?
百合の気持ちは変わったのだろうか。
もしかしたら裏側だけしか見せてくれないようになっちまったのかな…。
「悪かったな。とりあえず他当たるわ」
一気に冷静になった俺はヨースケに礼を言ってから車を走らせた。
:08/09/23 16:03
:PC
:a.07ms/M
#410 [我輩は匿名である]
途中、美優がトイレに行きたいと言うので、コンビニに寄った。
そのとき、とても懐かしい顔に遭遇した。
「中畑?」
すぐにわかった。
「タツヤ…」
大学の友達。
:08/09/23 16:03
:PC
:a.07ms/M
#411 [我輩は匿名である]
「久しぶりだな!」
「ホント、何年ぶり?」
同窓会にも顔を出せなかった俺は、タツヤやマコトとは卒業以来会っていなかった。
「つか…子供?」
「あ、うん、そう。てか、待って。まずトイレ行くから!」
慌てて美優の手をひいてトイレに駆け込んだ。
後ろでタツヤが笑う声が聞こえた。
:08/09/23 16:04
:PC
:a.07ms/M
#412 [我輩は匿名である]
「だれ〜?」
「ん?パパの大学の時のお友達」
「さっき、おそとで、おはなししてたひとは?」
「あの人は幼なじみ」
「おさななじみってなに?」
「んー。美優にはいないもんな。また教えてやるから」
手を洗ってトイレから出るとタツヤが笑ってた。
:08/09/23 16:04
:PC
:a.07ms/M
#413 [我輩は匿名である]
「パパうんち?」
「きゃはは」
美優は下品な言葉が好きな年頃。
タツヤの顔見て笑ってた。
「違うっつーの」
「この子が噂の美優ちゃんね。初めましてー」
「はじめまして、みゆです」
「賢い!パパとは大違いだね」
:08/09/23 16:05
:PC
:a.07ms/M
#414 [我輩は匿名である]
「みゆ、ぱぱより、かしこいの?」
「うん。パパおばかだから、ママの言うことだけ聞きなさ〜い」
美優は笑ってたけど、俺は笑えねーし。
そのママ、今探してるんだっつーの。
:08/09/23 16:05
:PC
:a.07ms/M
#415 [我輩は匿名である]
「で、久しぶりついでに今日の夜飲み行く?マコトも呼んで」
「悪い。また今度な。今、忙しくて」
「えー、数年ぶりに再会したのにー」
タツヤは昔とほとんど変わってない。
「ごめんな。また連絡して」
「はいはい。じゃあね。美優ちゃん、バイバイ」
「ばいばーい」
:08/09/23 16:05
:PC
:a.07ms/M
#416 [我輩は匿名である]
懐かしい友達の笑顔。
あの頃は、百合とこんな未来を築いているなんて想像もしなかった。
百合が綺麗で美人な女だと褒められるのが嬉しくて、いつも鼻が高かった。
やっぱり俺には勿体ないくらいの奥さんなんだな、百合って。
自分の不甲斐なさにどんどん腹が立ってくる。
美優をチャイルドシートに座らせて再び車を発車した。
:08/09/23 16:06
:PC
:a.07ms/M
#417 [我輩は匿名である]
30分かけて着いた場所は、美優の喜ぶところだった。
「おじーちゃんとおばーちゃんのおうち〜」
百合の実家だった。
「うん。ほら、美優おりて」
:08/09/23 16:06
:PC
:a.07ms/M
#418 [我輩は匿名である]
車から降りた美優の髪の毛がフワッと風で揺れた。
その動きや横顔が百合にそっくりで…俺に似てると言われてる美優だけど、やっぱり百合の子なんだ、って改めて実感させられた。
ピーンポーン
美優の手を繋ぎ、インターホンを押した
:08/09/23 16:07
:PC
:a.07ms/M
#419 [我輩は匿名である]
「はい」
「おはようございます」
インターホンのカメラに向かって頭を下げた
「ミナトくん…どうぞ」
お義母さんの声でわかった。
百合がここにいるんだ、って。
:08/09/23 16:08
:PC
:a.07ms/M
#420 [我輩は匿名である]
ガチャ…
「おばーちゃぁーん!」
美優が飛びつくとお義母さんは優しい笑顔を見せた。
「まぁ、美優ちゃんも来てくれたの?」
「うん、ぱぱのくるまできたー」
「そう!ありがとうね。中におじいちゃんいてるから入って」
:08/09/23 16:08
:PC
:a.07ms/M
#421 [我輩は匿名である]
美優は靴を脱いで、おじいちゃんと叫びながら中に入っていった。
美優の靴の隣に、百合の靴もあった。
「ミナトくん、来てくれてありがとね」
「あの、百合は…」
「ええ。部屋にいる。私たちが朝起きて来たらリビングにいて、泣きながらミナトと美優に会わせる顔がないって言い出して」
気にしなくていいって伝えたのに…伝わらなかったのか。
百合は自分を責めているんだ
:08/09/23 16:10
:PC
:a.07ms/M
#422 [我輩は匿名である]
「お父さんはミナトくんと喧嘩したんだと誤解してるみたいだけど…違うんでしょ?百合の様子、おかしかったから」
「喧嘩ではないですけど…僕の力不足です」
「私が悪いのってずっと言ってるし、ミナトくんには連絡しちゃダメって言うし…私どうすればいいのかわからなくて」
「迷惑かけてすみません」
:08/09/23 16:11
:PC
:a.07ms/M
#423 [我輩は匿名である]
「とにかく入って。美優ちゃんは私たちが見てるから百合のところに行ってあげて。お父さんには私から話しておくわ」
「はい、お願いします」
百合の部屋まで通されて、お義母さんは部屋をノックした。
「百合、入るわよ」
「…」
返事のない扉を開けた。
:08/09/23 16:12
:PC
:a.07ms/M
#424 [我輩は匿名である]
百合が嫁に出てからも、部屋はそのままにしてある松本家。
見覚えのある懐かしいベットの中に百合がいた。
「それじゃ」
お義母さんが扉を閉めて、俺と百合の二人っきりになった。
「…百合」
「…」
:08/09/23 16:12
:PC
:a.07ms/M
#425 [我輩は匿名である]
ベットの近くに座って、百合の体の上に手をのせた。
「こっち向いて」
百合は首を横に振り、こっちを見てくれない。
「なんで、逃げるの。俺のこと嫌になった」
「…ううん」
消えていきそうなくらい小さな声
:08/09/23 16:13
:PC
:a.07ms/M
#426 [我輩は匿名である]
「また、見たの?」
「…」
何も言わない百合。
そっか、見たんだ。
俺の手を繋ぎながらヨースケの夢を。
さすがにそれは俺もキツい。
「百合はさ、ここに逃げて来てどうしたいの」
「…」
「俺から逃げたいんだろ?」
:08/09/23 16:24
:PC
:a.07ms/M
#427 [我輩は匿名である]
「わかんない。どうすればいいのかわかんないから、ここに来た」
「美優を置いて?」
「…」
「ヨースケの夢を見るのは百合の言う通り嫁失格かもしれない。でも母親失格にまでなるなよ」
:08/09/23 16:25
:PC
:a.07ms/M
#428 [我輩は匿名である]
「…」
「美優、ずっとママは?ママは?って聞いてくんだよ。美優のこと不安にさせちゃダメじゃん」
「…ごめ…なさい」
百合は泣いていた。
叱りたくなかったけど、百合がここまで弱かったのなら、もう叱るしか方法がなかった。
:08/09/23 16:25
:PC
:a.07ms/M
#429 [我輩は匿名である]
「わかったなら、帰っておいで」
「…ごめん」
「わかったから。もう帰ろう。これ以上、お義母さんたちに迷惑‥」
「これ以上ミナトに迷惑かけられない」
「え」
:08/09/23 16:25
:PC
:a.07ms/M
#430 [我輩は匿名である]
百合が顔を上げ、俺を見た。
目元がベチャベチャに濡れていた。
「こんな女、もういらないでしょ?」
「何言ってんの」
「もうミナトと美優に迷惑かけたくない」
「だから帰ろうって言ってんじゃん」
:08/09/23 16:26
:PC
:a.07ms/M
#431 [我輩は匿名である]
百合の目からとめどなく涙が流れている。
「帰れないよ」
「迷惑かけたくないなら、帰ってこいよ!帰って来ない方が迷惑だってわかるだろ?」
堂々巡りの会話。
どんどん…辛くなってきた。
百合と話すのが。
:08/09/23 16:26
:PC
:a.07ms/M
#432 [我輩は匿名である]
「もうミナトの奥さんも、美優のママも…自信ない」
百合は全てを放棄した。
「何、何で?たかがヨースケが夢に出てきたぐらいで俺と美優を捨てんの?」
つい、声をあらげてしまった。
:08/09/23 16:27
:PC
:a.07ms/M
#433 [我輩は匿名である]
「そんなに百合にとってヨースケは大きいの?」
誰にでも忘れられない人がいる。
俺は忘れるもなにも、目の前にいる百合が1番大切な人。
だけど百合は、きっと、ヨースケを忘れられない人として心に残してたんだ
:08/09/23 16:28
:PC
:a.07ms/M
#434 [我輩は匿名である]
「ヨースケに未練はないの。でもね、生まれて初めて大恋愛だったの。結局遊ばれただけだったし、相手にもされてなかったけど…ミナトの言う通り、私にとって大きな人だったのかもしれない」
「ヨースケとは何もないって…」
:08/09/23 16:29
:PC
:a.07ms/M
#435 [我輩は匿名である]
「本当に、何もないよ。ミナトと付き合ってから会ったのはあの日だけ。殴って、気持ちがスッキリしたってのも本当。でもね‥」
「もういい!わかった…」
これ以上、聞きたくない。
:08/09/23 16:29
:PC
:a.07ms/M
#436 [我輩は匿名である]
俺を好きだけど、ヨースケも好きって事なんだろ?
だから俺と美優に会わせる顔がない、って。
もう、いいや。
これ以上百合を泣かせるのもいやだし、これ以上…百合に幻滅したくない。
:08/09/23 16:31
:PC
:a.07ms/M
#437 [我輩は匿名である]
「自分の気持ちに整理ついたら改めて話そう。今の百合とじゃ話ててもキリないや」
「…」
「頭冷やしな」
「…美優は?」
:08/09/23 16:32
:PC
:a.07ms/M
#438 [我輩は匿名である]
「今の百合に美優の事、無理なんじゃないの」
わざと憎まれ口を叩いたのに百合は目を伏せた
そんなことない!と反論さえしてこない
やっぱり百合は弱かったんだ
気付かなかった俺が悪いのか。
:08/09/23 16:40
:PC
:a.07ms/M
#439 [我輩は匿名である]
「美優は俺が面倒見るから」
百合は何も言わない
これ以上、一緒にいると百合をもっと傷つける
俺は部屋を出た。
お義父さんに挨拶をしてから、お義母さんにも今回の騒ぎの理由を話した
:08/09/23 16:40
:PC
:a.07ms/M
#440 [我輩は匿名である]
過去の恋人が、と、ヨースケの名前は伏せたが、お義母さんは「ヨースケくんね」とすぐに悟っていた。
百合の弱さや俺の不甲斐なさ。
美優のこと、これからのこと。
お義父さんもお義母さんも混乱していた。
俺だって、混乱している。
:08/09/23 16:41
:PC
:a.07ms/M
#441 [我輩は匿名である]
きっと百合だって混乱している。
自分でどうしていいのかわからないだろう。
だからって投げやりな気持ちで、妥協しながら俺の元に戻ってきて欲しくない。
だから少し強く言ってしまったのだ。
:08/09/23 16:41
:PC
:a.07ms/M
#442 [我輩は匿名である]
「美優に、ママが家にいないのは少し疲れたから、おじいちゃんとおばあちゃんのお家で休んでると話そうと思っています」
「そうね。それがいいわ」
妥協して帰ってきて欲しくないと思う反面、数日すれば百合も帰ってくるだろうとどこか余裕ぶった気持ちもあった。
:08/09/23 16:42
:PC
:a.07ms/M
#443 [我輩は匿名である]
「じゃあね美優ちゃん」
「美優、また来なさい」
「おじーちゃん、おばーちゃんばいばーい」
「それじゃ、よろしくお願いします」
帰る時、美優はぐずらず一緒に車に乗ってくれた。
いつもは、まだいると泣いてぐずるのに。
:08/09/23 16:43
:PC
:a.07ms/M
#444 [我輩は匿名である]
車に乗って、美優が言った。
「ままは?」
「ママね、今、コホンコホンって風邪ひいちゃったの」
「かぜ?」
「そう。美優もこの前なったでしょ?お薬飲んで、しんどかったでしょ?」
「しんどかったー」
「ママもあれになっちゃったの。だからしばらく、おじいちゃんの家でお休みするの」
:08/09/23 16:43
:PC
:a.07ms/M
#445 [我輩は匿名である]
「おやすみ?」
「美優に移しちゃうといけないから、治すためにお休みするの。元気になったら帰ってくるから、美優は良い子にしてパパとおうちで待ってようね」
「ままいないの?」
「すぐ帰ってくるよ。美優が良い子にしてないと早く治らないかも。だからパパと2人で良い子にしてようね!」
「うん…わかったぁ」
:08/09/23 16:44
:PC
:a.07ms/M
#446 [我輩は匿名である]
美優は納得していないようだ。
我ながら嘘が下手くそ。
昔はもっと上手に女を騙せたのになー、なんて。
:08/09/23 16:44
:PC
:a.07ms/M
#447 [我輩は匿名である]
これからどうしよ。
何も家事のできない俺、どうすればいい?
とりあえず真子に電話をかけ、百合とのことを報告した。
「そっか。でもミナト、美優のこと大丈夫なの?」
「全然大丈夫じゃない」
:08/09/23 17:19
:PC
:a.07ms/M
#448 [我輩は匿名である]
真子は優しいから、俺か百合が弱音を吐くと、すぐに助けてくれる。
俺はそれを知って、わざと甘えた。
本当はもっとしっかりしないといけないのに…。
でも、俺だってどうすればいいのかわかんねーだもん。
ホント、勘弁してよ…百合。
:08/09/23 17:19
:PC
:a.07ms/M
#449 [我輩は匿名である]
「明日から3連休だから、そっち行ってあげる」
「まじ助かる。ありがと」
真子が明日から3日間、ママの変わりにお手伝いに来てくれる事を美優に話すと喜んでいた。
真子はよく遊びに来ているから美優も嬉しそう。
:08/09/23 17:20
:PC
:a.07ms/M
#450 [我輩は匿名である]
その日は美優が生まれてから、初めて美優と二人っきりで過ごした日だった。
それほど俺はいつも百合に育児を任せっきりだったんだ。
どこに遊びに行くのにも美優がいて、片時だって一人の時間はない。
それが苦痛だと思ったことは無いんだろうが、少しは百合に一人の時間を作ってあげればと今更後悔している。
百合、ごめん。
:08/09/23 17:20
:PC
:a.07ms/M
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