鬼が哭くよるに
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#20 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
桐箱には「お宮」と書かれた白い札が貼られ、蓋と箱は赤糸で離れないよう入念に絡めてある。
秋吉はお宮に逢える期待に胸を膨らませながら、震える手で桐箱の赤糸を解いていった。
:08/08/13 18:25
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#21 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
両手で左右を掴み桐箱の蓋を持ち上げると、箱の中に月明かりが射し込み中に在る物を照らす。
桐箱の中には、純白の絹でできた綿布団の上に、澄んだ眼(まなこ)を大きく見開き、此方をじっと見据えた「お宮」が横たわっていた。
秋吉は安堵の溜息をもらす。
:08/08/13 19:34
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#22 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「無事であったか、お宮。山賊や見知らぬ輩にお主を奪われていないか、この身が裂けんばかりに心配していたぞ。お主は相も変わらず美しいことよ」
秋吉は、恍惚とした表情でお宮の艶やかな髪を優しく撫でた。
:08/08/13 19:47
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#23 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
お宮というのは、秋吉が拾った日本人形だった。
しかし、人形というにはあまりに大きく、その身の丈ときたら本物のおなごと大して変わらぬものであるのだ。
:08/08/13 21:00
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#24 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
きらびやかな着物を脱がせば、童顔には似合わぬふくよかな白い乳房がある。
体の節々、いわゆる肘や膝にはある程度曲げる為の「繋ぎ目」というものが見当たらない。
しかしお宮の腕や足は自由に動いた。
:08/08/13 21:25
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#25 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
瞳は先程水で濡らしたように常に潤み、唇は紅を挿したてのように鮮やかでみずみずしい。
お宮は、人形らしくない、限りなく人間に近い「人形」だった。
:08/08/13 21:26
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#26 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
けれども、秋吉はお宮を不気味がることなく、彼女を人間同等(もしくはそれ以上かもしれない)に愛したのである。
お宮はそんな秋吉の想いに答えるように、日に日にその美しさを増していった。
:08/08/13 21:34
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#27 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「こんな汚ならしい小屋にお主を閉じ込めて面目ないな。環境は人を変えるという、お主の美しさも色褪せよう。もうすぐ妻であるお主に相応しい部屋をやる。それまでの辛抱だぞ」
「…………」
「そうか。お主は健気よのう」
:08/08/13 22:13
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#28 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
お宮は当然、答えない。
しかし、秋吉にはお宮の声なき声が確かに聴こえていた。
:08/08/13 22:13
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#29 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
:08/08/13 22:19
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