●S×S〜sugar×spice〜番外編●
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#101 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 ‥“望月泉”‥


あの人の影が未だに消えることはない。

アイツが辛いと思うことは、あたしも同じように辛いから‥
 



すっかり木々の枝は痩せ、乾いた落ち葉が地面をかすめるそんな季節に‥

あたしはアイツの涙を初めて見た。


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⏰:08/08/26 20:54 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#102 [桃色◆OQUMeZqegU]
街はすっかりクリスマス一色。

定番のクリスマスソングに赤と緑の装飾。

中学に上がった年からサンタクロースは来なくなったけど、毎年胸が踊るのはなぜだろう?
 


冬休みが近づいたある日曜日「みーとのプレゼントを見に行きたい」と言う瑞穂のお供で街まで来ている。

⏰:08/08/27 23:55 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#103 [桃色◆OQUMeZqegU]
地元からそんなに離れてはいないけど、人の多さに圧倒される。



「あずちゃん、あそこのお店いい?」「次はこっち!」「あっちも可愛い!」



軽く瑞穂に振り回されて、さすがのあたしも疲れてしまう。

一旦休憩しようと提案し、近くのファーストフード店に入る。

⏰:08/08/27 23:56 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#104 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


注文を済ませてトレーを持って席まで運ぶ。

すると前を歩く瑞穂がレシートを落とした。

気づかず進む瑞穂の横を通り過ぎた女の人が、親切にも拾ってあたしに渡してくれたのまでは良かったんだけど‥

「彼女さん、落としましたよ」


‥? ‥‥えっ!!


ニコッと笑って去って行く女の人。

向こうでは席を見つけた瑞穂が手を振っている。

⏰:08/08/27 23:56 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#105 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

‥そんなぁ!!


その日のあたしの出で立ちは、グレーのジャケットの中に“ピッタリめ”のインナー、ストレートのGパンをエンジニアブーツにイン‥‥

ボーイッシュにまとめてはみたけど‥


“ピッタリめ”というフレーズが、虚しくもあたしの胸元で空回る‥

確かに無いけど‥‥

全く無いわけじゃないじゃない!!?

⏰:08/08/27 23:57 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#106 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

にしても酷いっ!


何ともやるせない思いが、あたしの(小さな)胸にずっしりとのしかかる。

「はーーーー‥ぁぁぁ」


席に着くなり深いため息をついたあたしに、瑞穂が小さく首を傾げる。

仕草一つ取っても可愛い瑞穂。

「どうしたの?」

鈴のような声。

⏰:08/08/27 23:57 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#107 [桃色◆OQUMeZqegU]
まさに“可憐”という言葉がピッタリだ。


これぐらい髪を伸ばすのにどれくらいかかるんだろう?

ようやく耳が隠れるくらいまで伸びた自分の髪をいじりながら考える。



「ひっぱり回しちゃってごめんね‥?」

瑞穂の声でやっと我に返る。

⏰:08/08/27 23:58 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#108 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしの様子をうかがうように大きな瞳を潤ませる瑞穂に、まさか胸の大きさで悩んでましたなんて言えるはずもなく‥

「ごめんごめん、ボーッとしてた!さ、食べよ!」

そうやって笑顔を作ってみても、ガラス越しに映った自分の姿を見てしまえば‥


またしてもため息をつきたくなった。

⏰:08/08/27 23:59 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#109 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
どの店の何が湊斗くんに一番似合うか、ポテトとジュースを交互に口に運びながら真剣に検討する瑞穂。

その様子は大好きな彼氏のために尽くす彼女そのものだ。

もっとも、それは意識せずやってのけてるんだろうけど‥

あたしにも四つ上の兄貴がいるけど、今までクリスマスはおろか誕生日プレゼントもくれたことなんてない。

⏰:08/08/28 19:38 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#110 [桃色◆OQUMeZqegU]
湊斗くんの想いが報われる日が、早く来るといいのになぁ‥だけどそれはそれで問題あるのか‥

なんて考えながら、口の端に塩を付けたまま真剣悩んでいる瑞穂を眺めていた。




ファーストフード店から出たあたしたち。

⏰:08/08/28 19:38 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#111 [桃色◆OQUMeZqegU]
「やっぱり一番最初に行った店で見た手袋にする」と言う瑞穂に従い着いて行く。

店の前で待つこと数分‥

カップルの多さに嫌気がさす。


クリスマスかぁ‥

洋介は誰と過ごすんだろ‥


ってあたしってば何考えてんだか!

アイツが誰と過ごすかなんて、あたしには関係ないことじゃん!

関係‥ないことじゃん‥

⏰:08/08/28 19:40 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#112 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


あたしって、こんなにひねくれた性格だったっけ?

アイツのこととなると、何故か素直になれない。

触れられると、ドキッとする‥だけど嬉しい。

他の女の子と話してるの見ると、ズキッとする‥あたしはヤキモチ妬きなんだと思う。

だけど洋介はあたしのものじゃないし、付き合うとかってよくわからない。

⏰:08/08/28 19:41 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#113 [桃色◆OQUMeZqegU]
クリスマスだって誰と過ごすか気になっても、一緒に過ごしたいとまでは思わないんだ‥‥‥



しばらく考えているうちに、街のイルミネーションがほんのりと目立ち始めた。

瑞穂、遅いなぁ‥

かれこれ二十分は戻らない瑞穂の安否を心配していると、一組のカップルが何やら路上で揉めているのが目についた。

⏰:08/08/28 19:42 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#114 [桃色◆OQUMeZqegU]
得に興味もなく、視界からそのカップルが消えかけた時、その後ろ姿に見覚えがあることに気づいた‥



‥ケバ子だ‥


一度しか見たことないはずなのに‥気づいてしまった自分に後悔してしまう。


―スギン‥


忘れかけた胸の痛みが蘇ってくる。

⏰:08/08/28 19:42 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#115 [桃色◆OQUMeZqegU]
痴話喧嘩は段々エスカレートしていき、彼氏とおぼしき男が大きな声で怒鳴り散らしている。

ケバ子の方も負けてはいない。

「なんでいっつも泉が悪いの!?アイツとは何もないって言ってるじゃん!!」


‥泉‥?


確かにケバ子はそう叫んだ。

泉って‥まさか‥

⏰:08/08/28 19:43 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#116 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
“望月泉”‥??


胸の中が黒く染まっていく感覚‥

「お待たせあずちゃん」

満足そうに店を出てきた瑞穂にも気づかないくらい動揺しているあたし。

「あれ?あの人‥誰だっけ‥?」

はっとして瑞穂の声に反応する。

瑞穂、ケバ子のこと知ってるの!?

⏰:08/08/28 19:45 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#117 [桃色◆OQUMeZqegU]
背筋がぞくっとしたかと思うと、手にじんわり汗が滲む‥

恐る恐る瑞穂の方を振り返る。

だけど瑞穂はケバ子とは反対の方向を指差し、その人物への記憶を巡らしている様子だった。

少しほっとしてその白くて細い指先が指す方向に視線を送るとそこには‥‥



.

⏰:08/08/28 19:49 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#118 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「洋介‥」



そこには、うなだれた様子でガードレールに座っている洋介がいた。

道路を挟んだ向こう側の道‥

瑞穂が気づいたのが奇跡だ。

「やっぱり!サッカー部の人だよね?」

モヤモヤが晴れてすっきりしている瑞穂。

⏰:08/08/31 01:10 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#119 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしは‥

その隣でただ突っ立っていた。



‥見てしまったから。



洋介の頬を伝う、涙を。



こんな時間の繁華街に、瑞穂を置いてくわけにもいかず‥

あたしは今にも駆け出してしまいそうな足を留めるとに必死だった。

⏰:08/08/31 01:10 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#120 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


‥何で、泣いてるの?



そんな顔、似合わないよ‥



『アイツとは何もないって言ってんじゃん!』

ケバ子の声が、胸の中を掻き乱す。



あの日偶然見てしまった、絡み合う二人の唇‥

.

⏰:08/08/31 01:12 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#121 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
沢村さんの意味深な言葉‥


さっきのケバ子の叫び声に


洋介の歪んだ表情と涙‥



全てが繋がった瞬間だった。




それから、どうやって帰ったかは覚えていない。

⏰:08/08/31 01:13 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#122 [桃色◆OQUMeZqegU]
瑞穂に心配かけないように、中身のない話しをただひたすら話し続けていたような気がする。



何とか瑞穂を家まで送った帰り道‥

携帯を手に取り画面を見つめる。



『お前みたいじゃね?』



嬉しくてつい待受にした虹の写メール‥


嫉妬?不安?後悔?

⏰:08/08/31 01:14 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#123 [桃色◆OQUMeZqegU]
わからない‥

わからないけど、涙が溢れる。

洋介にとって“望月泉”がどんな存在なのか‥

考えなくてもわかる。



あの時瑞穂をその場に残してでも駆け付けなかったのは‥

洋介の口から本当のことを聞くのが怖かったから。


知って、認めるのが怖かった。

洋介の心に、あたしが入る隙間なんてないこと‥

⏰:08/08/31 01:14 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#124 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


“虹に似てる”なんて浮かれてた自分が恥ずかしい。

所詮あたしも、洋介の周りに大勢いる女の子の中の一人に過ぎない。


ちょっとマネージャーってだけで‥

ちょっと放課後待ち合わせてるからって‥‥

ちょっと下の名前で呼び合ってるからって‥‥‥



.

⏰:08/08/31 01:15 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#125 [桃色◆OQUMeZqegU]
『落ちた時は俺がこうやって受け止めてやるからさっ!』



洋介にいつか言われた言葉‥

あの時は素直になれなかったけど、ちゃんと胸の中にしまってあった‥‥


洋介には何でもないセリフでも、あたしにとっては‥



あたしに、とっては‥‥

⏰:08/08/31 01:16 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#126 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



その時

握り締めていた携帯がその場に似合わない軽快なメロディで着信を知らせた。

こんな時に誰とも話す気になれない‥

そう思いながらも画面を見ると、ディスプレイには“園田洋介”の文字。

この期に及んでまだときめこうとする心臓に嫌気がさす。

出るべきか、出ないべきか‥‥

⏰:08/08/31 01:18 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#127 [桃色◆OQUMeZqegU]
涙と鼻水でぐしゃぐしゃのまま、携帯の画面とにらめっこを続ける。

すぐに切れるだろうと思ってみたものの、しばらく着信音は鳴り続ける。

出ても後悔、出なくても後悔‥‥

どうせ残るのが後悔だけなら、あたしは前者を選ぶことにした。



少し震える指先を通話ボタンに押し付ける。

⏰:08/08/31 01:19 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#128 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

『出るのおせぇよ』

出るなり文句を言われたあたし。


もしかして、まだ泣いてるんじゃないかとか

どうやって励まそうかとか


一瞬でも頭を悩ませた自分がバカらしい。

「‥何?」

『何だよ、俺からラブコールなんて滅多にないんだぜ?もっと喜べよ』

⏰:08/09/01 02:05 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#129 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

さっき見たのは人違い?


そう思いたくなるような洋介の態度に、苛立ちながらも戸惑いを覚える。



「で、何?」

『だからぁ‥聞きたくなっちゃったんだよね、お前の声!』



‥!!



携帯を持つ手がかすかに震えた。

それぐらい、あたしの心を揺さぶる言葉‥

⏰:08/09/01 02:06 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#130 [桃色◆OQUMeZqegU]
耳から脳へ直接響く洋介の声は、なんて甘く刺激的なんだろう。


だけど‥

騙されちゃだめだ。

もう洋介の言葉に期待して、後悔したり落ち込んだりするのは嫌‥



これ以上、本当の洋介を知ってしまう前に‥



これ以上、心が洋介でいっぱいになってしまう前に‥

⏰:08/09/01 02:07 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#131 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「調子いいことばっかり言わないで。この電話だってあたしだけにかけたんじゃないでしょ?もっと自分の気持ちに誠実に生きてみたら?」


思わず言わなくていいことまで言ってしまった。

やっぱり残るのは後悔だけか‥


黙り込んだままの洋介に「じゃあ」と告げる。

携帯を耳から離しても、何も返事は聞こえない。

⏰:08/09/01 02:08 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#132 [桃色◆OQUMeZqegU]
通話時間を示す数字が虚しく時を刻むだけ‥


これ以上は無駄だと自分に言い聞かせて、さっきとは逆に潔く電話を切った。



また現れた虹の写メール‥


洋介が欲しいのは、こんなぼやけた虹じゃないでしょ?

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⏰:08/09/01 02:08 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#133 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

こうしてあたしは自分からアイツを突き放すことで自分を守った。

アイツの本心を見抜いたつもりで出た最善の方法‥

だけどそれは、かなりの逆効果だったらしい。



そんなあたしたちに冷たい風が容赦無く吹き付ける。

季節は冬。

あたしの苦手なこの季節に、またしても小さな事件は起きた。

⏰:08/09/01 02:12 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#134 [桃色◆OQUMeZqegU]
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「あずちゃん!どおしたの、その髪!?」

真っ白な息を吐きながら、瑞穂が泣きそうな顔で飛びついてくる。

「昨日やっと美容院行く暇ができたからさ!」

「てっきり伸ばすんだと思ってたのにぃ‥」

プクっと頬を膨らませ、拗ねるような表情であたしを責める瑞穂。

⏰:08/09/02 00:05 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#135 [桃色◆OQUMeZqegU]
よっぽど諦めがつかないのか「せっかく似合ってたのに」とあたしの髪を恨めしそうに見つめている。



‥今日は三学期の始業式。

もう悩むのはやめにして、何もかもすっきりさせたかった。


単純‥かなぁ?


あれから洋介とは連絡をとっていなかった。

⏰:08/09/02 00:07 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#136 [桃色◆OQUMeZqegU]
部活で顔を合わせても、前みたいに言い合ったりすることもなかった。

一度顧問の田辺に『園田はお前がしっかり見とけよ』みたいなこと言われたけど、意味がわからなくて素無視した。


洋介が視界に入る度、まだ心臓は波打つけど‥それも時間が解決してくれる‥

そう思ってた。




.

⏰:08/09/02 00:08 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#137 [桃色◆OQUMeZqegU]
明日の実力テストに向けて、今日は部活なし!

瑞穂と一緒に帰ろうと、昇降口まで並んで歩く。

「湊斗くん、やっぱりうちの高校受けるんでしょ?」

「うん‥みーとならもっと上狙えるんだけどね」

そんなこと言いながらも嬉しそうに頬を染める瑞穂の首には、クリスマスに湊斗くんから貰ったという淡いピンクで両端にボンボリが付いたマフラーが巻かれている。

さすが湊斗くん。

⏰:08/09/02 00:09 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#138 [桃色◆OQUMeZqegU]
瑞穂の可愛いらしさがより引き立つデザイン、色、共に文句なし!



‥なんてバカなことを考えているとふいに誰かと肩がぶつかった。

「あっ、ごめんなさい」

顔を確認する前に謝まると、向こうも「わりぃ!」と謝ってきた。


ん?この声は‥

「てゆうかお前、その髪!」

⏰:08/09/02 00:12 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#139 [桃色◆OQUMeZqegU]
口に手を当て、目を真ん丸に見開いているのは‥


「洋‥介‥」


鈍い痛みが心臓から全身に広がる。

いつか気づかれることだけど、このタイミングではまだ心の準備ができてない。

しかもあたし、今絶対顔引きつってる‥

そう思った瞬間、洋介にぐいっと肩を掴まれる。

⏰:08/09/02 21:15 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#140 [桃色◆OQUMeZqegU]
どうせ似合わないとかなんとか言うんでしょ!?

キッと洋介を睨んだ瞬間

「何で俺の許可無しに切っちゃったんだよ!?」


‥え?


思ってもみない洋介の反応に、思わず開いた口が塞がらない。

まるであたしの髪は洋介のものみたいな言い方。

だけどどうして?

⏰:08/09/02 21:18 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#141 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介には関係ないことじゃん‥


そうは言っても胸の辺りがザワザワして、さっきの痛みなんかどっかへ消えてる。

「どっどうしてあんたに許可がいるのよ?あたしの髪なんだからほっといて!」

やっぱり可愛くないことしか言えないあたし。

でもいいんだ。

もう変な期待持たされたくない。

⏰:08/09/02 21:23 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#142 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしから距離置かなくちゃ‥

「うるせぇ!俺はロングが好きなんだよ!俺のために伸ばしてたんじゃなかったの!?」


‥はっ!?


超自信過剰!!


だけど図星だったりするから何も言い返せないあたし‥

「ちょっと期待しちゃったじゃん‥」

最後に小さくそう呟いてあたしの肩から手を離し、フラフラと下駄箱に向かう洋介。


‥え?

‥‥え?

‥‥‥えぇぇぇええ!?

⏰:08/09/02 21:25 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#143 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしを探して瑞穂がこっちへ駆けてくる。

「もぉ‥あずちゃんが隣にいると思ってずっと一人でしゃべってたよ‥ってどおしたの?あずちゃん」

よっぽど恥ずかしかったのか、頬を赤くしたままあたしの様子に驚いている。

それもそのはず‥あたしの顔は、瑞穂の頬に比べものにならないほど、真っ赤になってるはずだから。

見なくてもわかる。

⏰:08/09/04 19:33 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#144 [桃色◆OQUMeZqegU]
マフラーの中に熱がこもって汗をかきそうなほど体温が上がってる。

瑞穂の声が耳に入らないほど自分の鼓動がうるさい‥


『ちょっと期待しちゃったじゃん』


耳鳴りのように頭の中で繰り返されるフレーズ。

同時に浮かぶ洋介のしゅんとした表情‥


“騙されちゃダメ!”


漫画みたいな話しだけど、小さな天使が囁いてる。

⏰:08/09/04 19:33 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#145 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

“いいじゃん!もう一回くらい信じてみれば?”


今度は悪魔‥

あはは、いや笑えないって。


頭から煙りが出そうなほど、あたしの脳内はパンク寸前だった。




何とか正気を取り戻したあたしは、心配で顔を歪ませる瑞穂とバスに乗った。

「さっきのあずちゃん絶対おかしかったもん!熱とかあるんじゃない?大丈夫?」

⏰:08/09/04 19:34 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#146 [桃色◆OQUMeZqegU]
確かにおかしかったよね‥

天使に悪魔‥

いつからあたしは少女漫画のヒロインになったんだ。


あたしの大好きなたれ目を潤ませるほど心配してくれる瑞穂に、相談したいのは山々だけど‥

何をどう話していいかわからない。

もっもちろん、これが‥

初‥恋‥ってわけじゃないけど‥

ひっかかるのはケバ子改め“望月泉”‥

⏰:08/09/04 19:34 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#147 [桃色◆OQUMeZqegU]
安易に想像できる洋介との関係も、本当のところはわからないにしろあの日の涙に嘘はなかった。


「はーぁぁぁ‥」

思わず長いため息が出た。

瑞穂を見れば「やっぱり」という表情で口をぎゅっとつむっている。

「あは‥」

笑ってごまかそうにも無理がある。

⏰:08/09/04 19:35 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#148 [桃色◆OQUMeZqegU]
さっきまで潤んでいた瑞穂のたれ目が、見たこともないほどきりっと上がる。

「あずちゃんが言いたくなるまで待つからいい!その代わりその時は、あたしに一番に話してね?」

そう言うとすぐにまた元のたれ目が戻ってきて、瑞穂は花が揺れるように笑ってくれた。


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⏰:08/09/04 19:36 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#149 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

あの日アイツにあんなこと言われなければ‥

瑞穂が笑ってくれなかったら‥

あたしはきっと、今もこの思いを胸に秘めたままだったと思う。

この小さな事件が起こした奇跡は、あたしにとって大きな一歩へのきっかけになったんだ。

⏰:08/09/04 19:38 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#150 [桃色◆OQUMeZqegU]
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2月14日、バレンタインデー。

恋する乙女のビッグイベント‥

今までもらうばっかりで、誰かに渡したことなんてただの一度だってない。

毎年一ヶ月先のホワイトデーの方が忙しかったりする。

もちろん洋介に気持ちを伝える気はさらさらなかったし、増してそれが自他共に認めるモテ男相手ならなおさらだった。

⏰:08/09/09 16:24 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#151 [桃色◆OQUMeZqegU]
毎年うちに押しかけてくる中学の後輩たちのために、部活が終わったら早く帰ってあげなくちゃな‥


なんて呑気に考えながら、昼休みで賑わう学食で瑞穂とランチタイムを過ごす。

「今年も余分に作ったから持ってきちゃった」

鞄をゴソゴソする瑞穂。

⏰:08/09/09 16:27 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#152 [桃色◆OQUMeZqegU]
去年はレアチーズケーキ、一昨年はマドレーヌ、その前は‥‥

言い出したら小学生の頃までさかのぼる。

毎年手作りのお菓子を持ってきてくれる瑞穂は、“ついで”とはとても思えないほど綺麗にラッピングをしてプレゼントしてくれる。

今年はケーキ屋さんみたいな箱にピンクのリボンが結んであって、持ち手のところには“あずちゃん大好き!”と書かれたメッセージカードが添えられていた。

⏰:08/09/09 16:33 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#153 [桃色◆OQUMeZqegU]
思わず顔がゆるんでしまう。

「ありがと瑞穂!開けていい?」

瑞穂の笑顔に花が咲く。


やっぱり‥

あたしには貰う役の方が合ってるよな。

とてもじゃないけどこんな可愛いことできない‥


「今年はね、ちょっと頑張っちゃった!」

箱を開けると中にはパン屋さんで見かけるような菓子パンが三つ並んでいた。

⏰:08/09/09 16:45 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#154 [桃色◆OQUMeZqegU]
「おいしそー!すごいね瑞穂ぉ!」

スイーツにはてんで疎いあたしに、瑞穂が嬉しそうに説明をしてくれる。

「これね、コルネって言うの。パイ生地なんだけど膨らますの難しかったんだぁ。中にはチョコクリームが入ってます!」

「へー!ん、おいしぃ!」

いつかあたしにも勇気が持てたら‥その時は瑞穂にレクチャーしてもらおうかな。

⏰:08/09/09 16:53 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#155 [桃色◆OQUMeZqegU]
甘い気持ちをチョコレートに例え、託して気持ちを伝える。

瑞穂の愛を噛み締めながら、漠然とした未来を想像してみる‥


その“未来”がすぐそこまで足音も立てずやってきているなんて、まさか知っているはずもなく‥

⏰:08/09/09 17:04 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#156 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



「梓ちゃんはもうチョコレート渡したの?」

爽やかな笑顔であたしにそう聞いてきたのは2年の藤川さん。

沢村さんたちと違って真面目にマネージャー業を務めている彼女とあたしは、部員たちが散らかした部室を毎日二人で片付けてから家に帰る。

藤川さんは、下ろすと肩に着くくらいの髪を部活の時だけ一つに束ねる。

その大人っぽい仕草や人柄も含めて憧れの存在だ。

⏰:08/09/10 19:55 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#157 [桃色◆OQUMeZqegU]
そんな藤川さんが、あたしに想い人がいること前提で、さっきの質問を投げ掛けてきた。

「え?あたっあたしですか?渡す人なんていませんよー」

精一杯、平常心を装ってかわそうとするあたし。

「えー!?どおして?いいの?園田くんに渡さなくて‥」


 !!?


「なっ、なな何がですか?洋介?え?え?」

⏰:08/09/10 19:56 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#158 [桃色◆OQUMeZqegU]
ありえないほどうろたえるあたしを見て、キョトンとしたかと思うとふふふ、とポニーテールを揺らしながら笑う藤川さん。

「あたしてっきり園田くんと梓ちゃんは付き合ってるものだと思ってた‥だけどその様子だと、まだそういう関係じゃないみたいだね」


ま‥まだ?


耳を疑うようなセリフに、言うまでもなくあたしは顔から火を噴いていた。

⏰:08/09/10 19:57 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#159 [桃色◆OQUMeZqegU]
こうなったらもう、笑ってごまかしとくしかない。

「あは、あはは‥」

藤川さんも静かに笑う。

その時、部室のドアが軽快なリズムでノックされた。

あたしも藤川さんもドアの方に視線を移す。

しばらく待ったがノックをしてきた人物が中に入ってくる気配はなかった。

⏰:08/09/10 20:06 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#160 [ゆき]
ixen.jp/..

⏰:08/09/10 21:40 📱:SH706i 🆔:9uGKlwQY


#161 [桃色◆OQUMeZqegU]
藤川さんがドアを開けようとしたその時

「英恵?もう終わった?」

外から男の子の声がした。


はなえって‥藤川さんのこと?


あたしが不思議そうな表情を浮かべていると「ちょっとごめんね」と申し訳なさそうに微笑んで、藤川さんは部室の外へ消えて行ってしまった。


もしかして‥彼氏さん?

⏰:08/09/11 19:59 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#162 [桃色◆OQUMeZqegU]
へぇ‥いたんだぁ‥

ってゆうかあんな素敵な人なんだから、いない方がおかしいよね。



一人部室に残されたあたしの頭に浮かぶのは‥

洋介の顔‥

そういえばあれからまともに話してない。

あの日からさらに酷くなった洋介のチャラ男っぷりに、苛立ちよりも戸惑いの方があたしの心を支配していた。

⏰:08/09/11 19:59 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#163 [桃色◆OQUMeZqegU]
自惚れてるわけじゃないけど‥

あたしが髪の毛切っちゃったから?

なんて自分に都合のいいことを、小さい悪魔が囁き続けてる。

もちろん反対側では小さな天使が精一杯反論してるんだけど‥‥



ゼッケンをたたんでカゴにしまいながら、あの日の洋介の寂しげな表情を思い出す。

⏰:08/09/11 20:00 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#164 [桃色◆OQUMeZqegU]
それに加えて藤川さんのさっきの言葉‥

嬉しくないって言ったら嘘になる。

だからと言って調子に乗ってチョコレートを渡しに行けるくらい、あたしの心は頑丈じゃない。

本当は恐いんだ‥

“望月泉”のことだって、結局聞けないままだし。

思わせぶりな態度を取られれば取られる程、期待してしまう自分‥

⏰:08/09/11 20:00 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#165 [桃色◆OQUMeZqegU]
だけど面と向かって確かめる勇気なんてなくて、いつも洋介のせいにして逃げてるのはあたしなのかも。


だけど‥だけどやっぱり‥


答えの出ない螺旋階段のような自問自答を繰り返す。



「はー‥‥‥」


どっちしろ、チョコレートなんて用意してないんだから考えるだけ無駄じゃん。

⏰:08/09/11 20:01 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#166 [桃色◆OQUMeZqegU]
ゼッケンでいっぱいになったカゴを棚に戻そうとしていると、ちょうどドアが開く音がした。

「藤川さん、もう片付いたんで先に帰ってもらっていいですよ」

てっきり藤川さんが戻ってきたんだと思ったあたしは、確認しないまま話しかけた。

‥だけど返事が返ってくる様子はなくて、しんと静まり返った部室内がやけに不気味に思えて後ろを振り返ろうとしたその時‥

ザリっと砂が擦れる足音と同時に、持っていたカゴが急に重みを失った。

⏰:08/09/11 20:01 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#167 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
同時に感じたこの香りは‥

「お疲れ」

「よ‥洋介!?」

紛れも無い洋介の、汗と香水が混ざった匂い。

きゅんっと胸が締め付けられる。

心拍数が徐々に上がる。

だってカゴを支える洋介の腕が、あたしの背後から前にある棚に伸びてるんだから‥

つまり抱きしめられる一歩手前みたいな状態。

⏰:08/09/12 19:38 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#168 [桃色◆OQUMeZqegU]
‥たたた耐えられない!!

あたしが耳まで真っ赤になってるのを知ってか知らずか、洋介はひょいっと棚の上にカゴを戻すとぱんぱんっと手をはらい「はいっ」と両手の平を出してきた。


いつか見たようなこの光景‥

反射的に携帯を手渡す。

「ちっがう!」

大声で否定されて固まるあたし。


‥?


.

⏰:08/09/12 19:38 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#169 [桃色◆OQUMeZqegU]
思わず眉間にシワを寄せて、洋介の顔を睨んでしまう。

「鞄の中、机の中、下駄箱‥どこ探しても無かったんだけど」

ますます意味がわからない。

「何が?何か無くしたの?」

あたしのすぐ後ろには棚、これ以上逃げ場はない。

それをいいことに、にじり寄ってくる洋介。

いつもならこれくらいの距離で「キスされるかと思った?」とか「鼻毛出てんぞ」とか言ってくるのに、今日に限ってそんな素振りもない。

⏰:08/09/12 19:39 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#170 [桃色◆OQUMeZqegU]
いつになく真剣な表情の洋介‥

その目に見つめられるとダメなんだ、あたし。

ドクン、ドクンと心臓が波打つ。

そのたびに涙が溢れそうになる。

部室の中は寒いはずなのに、全く寒さを感じない。

ただ目の前の洋介の瞳が、綺麗で‥綺麗過ぎて‥


吸い込まれそうになる。

何だか不思議な感覚に襲われ、無意識に目を閉じようとしたその時‥

⏰:08/09/12 19:40 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#171 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介がいきなり視界から消えた。

と思ったら、足元にあったあたしの鞄の中をあさっていた。

「ち‥ちょっと!何やってんの!?」

ってゆうか、あたし今何想像してた?

洋介が見てなかったからいいものの、自分から目を閉じるなんて‥‥!


「おっ!あったあった!お前なぁ、この俺が直々に貰いに来てやるなんてありがたいと思えよなー」

⏰:08/09/12 19:40 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#172 [桃色◆OQUMeZqegU]
そう言って取り出したのは、昼休みに瑞穂から貰ったコルネの箱だった。

「それはっ‥」

まだドキドキが治まらないのにまたしても胸がドクンと波打つ。


あたしの制止も聞かないで、箱を開けた洋介の顔が歪む。

当然だ。

だって中は空なんだから‥

⏰:08/09/12 19:41 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#173 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「何だよこれ」

唇を尖らせて、ムスっとする洋介。

「友達から貰ったの‥」


自ら目を閉じたことがバレてないとはいえ、気まずい空気があたしたちを包む。

あたしを見上げて何か言いたげな洋介。その唇はまだ尖っていて、いつの間にか頬まで膨らんでいる。


どうしよう‥

洋介の行動からして、あたしからチョコを貰える気満々だったみたいだし‥

⏰:08/09/17 23:09 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#174 [桃色◆OQUMeZqegU]
てゆうか、どこまで自信過剰なわけ!?

それ以前にあたしの気持ちバレてんの!!?



混乱が混乱を呼び、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

こんなことなら‥手作りとまではいかなくても、用意しとくべきだった?


なんて訳の分からない後悔までもが押し寄せたその時‥

「だあぁ!もぅ‥あと1つで最高新記録だったのにぃ!!」

迷路をさ迷っていたあたしに、いきなり突き付けられた新事実‥

⏰:08/09/17 23:09 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#175 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
 

衝撃的?

そんなもんじゃない‥


新記録‥新記録‥新記録‥


頭の中で繰り返されるフレーズ。

『ほらね、アンタなんか恋愛対象に見られてるわけないでしょ?』

『もうこれ以上アイツに期待するのはやめましょう』

悪魔と天使の意見が初めて合った‥

⏰:08/09/17 23:10 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#176 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「‥ははっ」

くだらな過ぎて笑ってしまう。


こんな恋やめてやる。

こんな奴もう知らない。



ゆっくりと洋介に近づき、鞄を手に取る。

中身が飛んでいかないようにファスナーを閉めて‥

洋介のコメカミめがけ、フルスイングで鞄を振り抜いた。

⏰:08/09/17 23:11 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#177 [桃色◆OQUMeZqegU]
「っってっ!」

バコっという鈍い音と共に、洋介の体が床に倒れる。

それだけじゃ足りないあたしは、そのまま洋介に馬乗りになって胸の辺りを力任せに殴り続けた。

「いたたっ!痛い!どうしたんだよ!?」

「‥っか!馬鹿!馬鹿!馬鹿ヤロー!!」


洋介のブレザーに水滴が落ちてシミになる。

「何?お前‥泣いてんの?」

⏰:08/09/17 23:12 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#178 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「‥うっ‥っく‥!」

泣くもんか‥っ!

そうは思ってもとめどなく流れてくる涙を止めることなんてできなかった。

「‥あ〜、その、何だ‥」

上半身だけ起こした洋介は、あたしの涙に戸惑っているのか気まずそうに下を向いている。


‥ちょっとは罪悪感くらい感じてるわけ?

⏰:08/09/18 22:08 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#179 [桃色◆OQUMeZqegU]
グスグスと花をすするあたし。

みっともないなぁ‥

よく考えたら有り得ない状態。

いくら頭に血が上ってたからって、この体勢は恥ずかし過ぎる‥

そう思った瞬間、顔から火が出そうになって洋介を押しのけ立ち上がろうとした‥

その時‥

両手を洋介に引き寄せられ、そのまま倒れ込む形になったあたしの体はすっぽりと洋介に包まれてしまったのだ。

⏰:08/09/18 22:08 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#180 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 !?


いきなりの事にわけが分からないはずなのに、一気に上がる心拍数と体温。

同時に感じる圧迫感に、今置かれている状況がやっと把握できる。


あたし‥抱きしめられてるよね?


洋介の鼓動が耳から直接伝わってくる。

悔しいことに、あたしよりもいくらか落ち着いているそのリズムに、なぜだか逆らう事ができなくて‥‥

⏰:08/09/18 22:09 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#181 [桃色◆OQUMeZqegU]
だけどこれってごまかされてるだけなんじゃ?

そう思ったらまたも怒りが込み上げてきた。

「‥な‥して‥」

「 へ? 」

「離してっ!!」

ジタバタともがいて洋介の腕を解こうとする。

だけどそれ以上の力で抱きしめてくる洋介に、あたしの心臓は一生分を使い切るんじゃないかと思うくらいドキドキしてしまう。

⏰:08/09/18 22:10 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#182 [桃色◆OQUMeZqegU]
胸が苦しくて息ができない‥

洋介の力が強いから?


ううん‥

きっと洋介が好きだから。

どうしようもないのはあたしだ‥

何でわざわざこんな奴、好きになっちゃったんだろう。


「なぁ、梓‥」
.

⏰:08/09/18 22:13 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#183 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
洋介のかすれた声にゾクリとしてしまう。

こんな感覚は初めてで、何だか頭がボーっとする。


時間だけが過ぎてゆく‥


あたしはただじっとしているしかできなくて、さっきの洋介の言葉の続きを聞き出せる程の余裕なんて全く持っていなかった。


冬の夜は静かだ‥

.

⏰:08/09/19 23:36 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#184 [桃色◆OQUMeZqegU]
ここが部室だってことを忘れてしまいそうになる。

お互いの鼓動が交差する‥

夢見心地ってこういう事をいうんだろうか‥?


その時、かすかに聞こえた砂がコンクリートにこすれる音‥


思わず洋介を突き飛ばして、その場から飛びのく。


 ドクドクドクドク‥

.

⏰:08/09/19 23:37 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#185 [桃色◆OQUMeZqegU]
まだやかましい自分の鼓動に目眩がしそうだ。

胸に手を当て落ち着く努力をしていると、部室のドアがゆっくりと開いて外の冷たい風が舞い込んで来た。

一気に冷える部室内。

お陰で少し、頭がすっきりする。


「あれ?園田くん?」

やっと戻ってきた藤川さんの後ろから、彼女よりも頭一つ分飛び出た大きな影がゆらりと揺れる。

⏰:08/09/19 23:38 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#186 [桃色◆OQUMeZqegU]
「園田が‥いるの?」

あっ、さっきの声の人だ。

さっきよりもはっきり聞こえたその声に、聞き覚えがあることに気づく。

 だけど、誰だっけ?

あたしが答えを出すよりも早く、まだ床の上に座っていた洋介が体を起こしてその人物の名を呼んだ。

「おっ大谷さん!‥お疲れ様っス!」


 え!?

大谷さんって副キャプテンの!?

⏰:08/09/19 23:38 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#187 [桃色◆OQUMeZqegU]
うろたえるあたしの目の前に現れたのは、寡黙なことで有名な大谷彰先輩、その人だった。

‥てことは、藤川さんの彼氏って大谷先輩!?

「片付け、終わったんなら早く帰れよ」


低くてよく響く大谷先輩の声に、身が引き締まる思いがした。


良かった‥

さっきのあんな場面見られなくて‥‥


洋介の顔をチラリと見ると、考えてることはあたしと同じみたいで‥その場に固まってしまっている。

⏰:08/09/19 23:39 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#188 [桃色◆OQUMeZqegU]
「梓ちゃん、全部片付けてくれたんだね‥園田くんも、待たせてごめん」

申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせる藤川さん。

「いえ、コイツが勝手に入って来ただけで!これはっ、その‥」

しどろもどろなあたしを見て、藤川さんにまたクスリと笑われてしまった。

「もう外真っ暗だよ、出よっか」

⏰:08/09/21 23:49 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#189 [桃色◆OQUMeZqegU]
藤川さんに促されるまま、さっき投げ捨てた自分の鞄とまだボーッとしている洋介の鞄を肩にかけると、そのまま洋介の背中を押し出すようにして部室を出た。



「ふーぅぅぅ‥‥」

部室のドアに鍵をかけると、詰まっていた何かがため息になって宙を白くした。


そこで初めて気づいた違和感‥

⏰:08/09/21 23:50 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#190 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
 ん?

洋介の鞄がやたらと軽い‥

“最高新記録だったのにぃ!”

あの名ゼリフが頭をよぎる。

‥あれ?

‥‥あれ??

「園田‥もう遅いから瀬能を家まで送ってやれ」

一人混乱状態の中にいるあたしに突然、大谷先輩の有無を言わさぬ重たい声がのしかかる。

⏰:08/09/21 23:51 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#191 [桃色◆OQUMeZqegU]
当然首を横に振る間もなく、洋介が二つ返事で快諾せざるを得ない状況‥


校門の前で先輩たちに別れを告げ、二人の背中を洋介と見送る。


「あービックリしたぁ!大谷先輩と藤川さんって付き合ってたんだね‥」

そう言って振り返ると、あたしの瞳を真っすぐに見つめる洋介がいた。

そういえばさっきまで、あの腕の中にいたんだよね‥


何だか急に恥ずかしくなって、急いで前に向き直る。

⏰:08/09/21 23:52 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#192 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



「部内恋愛もありだな」

暗い夜空に洋介の声がぽつりと響く。

思わずドキリと肩を強張らせてしまうあたし‥


「誰もお前となんて言ってねーけど?」

 は‥はぁっ!?

肩にかけていた洋介の鞄を、思いっ切り振りかざして投げ付けてやろうとしたその時‥

⏰:08/09/21 23:53 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#193 [桃色◆OQUMeZqegU]
やっぱり鞄が軽すぎることが気になって、中身を確かめようとその場にしゃがみ込む。

制止しようと手を伸ばす洋介の姿が見えたけど、おかまいなしに一気にファスナーを右に引いた。


 やっぱり‥


そこにはペンケースとプリントが数枚、あとはMDとウォークマンしか入っていない。

“あと一つで最高新記録”

洋介、確かにそう言ってたよね‥?

⏰:08/09/21 23:54 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#194 [桃色◆OQUMeZqegU]
「どういうこと?」

今度はあたしの唇が尖る。


わけ分かんない。


他に袋も持ってないし‥

どっかにまとめて置いてあるとか?

それかもしくは‥

「そういうことだよ!」

頭をポリポリかきながら、照れ臭そうに笑う洋介。

⏰:08/09/22 21:09 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#195 [桃色◆OQUMeZqegU]
「そういうことってどういうことよ!」

またからかってるなら今度こそ承知しないんだから‥
眉間にシワを寄せ、警戒心をあらわにする。

洋介はまたも頭をかいて

「どうもこうもねーよ!ほら、帰るぞ!」

片方だけポケットに手を突っ込んで、もう片方の手を差し延べてくる。

⏰:08/09/22 21:09 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#196 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

  !!?


 何? なになに!?

 手!?


「鞄‥返してくれる?」

真顔でそう言われて、初めて自分の勘違いに気づく。

途端に熱くなるあたしの頬‥

無言で洋介に鞄を渡すと、ニヤッと笑った洋介にくしゃっと頭を撫でられた。

⏰:08/09/22 21:12 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#197 [桃色◆OQUMeZqegU]
頬だけじゃなく、顔全体が熱くなる。


「手、繋ぎたかった?」

意地悪そうな八重歯が光る。


 !!


図星をつかれてさらに上がる心拍数。

「ば‥っばか!!」

ニヒヒと満足そうに笑う洋介の背中を平手で思い切りひっぱたく。

それでもまだ笑い続ける洋介に、何だかもう‥あたしまで笑ってしまうしかなかった。

⏰:08/09/22 21:14 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#198 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



それから本当に家まで送ってくれた洋介は、とうとう家に着くまで“新記録”の真意を教えてくれなかった。

いくら聞いてもはぐらかすばかりで、半ば諦めかけたその時‥

「俺さ、欲しいと思った女から‥貰ったことないんだ、チョコ」

あたしと目を合わす事なく、足元を見ながら話す洋介。

⏰:08/09/22 21:15 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#199 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 え?

何?どういうこと?


「言っとくけどなぁ、他の全部断ったんだぜ?なのにお前っ‥‥‥まぁいいや」

そう言うとあたしの前まで来て、ゆっくりとあたしの肩に手を沿えてきた。


 ま‥ままままさか!


そう思って身構えするも、軽くデコピンをお見舞いされて、目を開けると“命がけの笑顔”を向ける洋介が
.

⏰:08/09/22 21:16 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#200 [桃色◆OQUMeZqegU]
「チョコくれなかったからキスしてやんないっ!じゃなっ!」

捨てゼリフのようにそう言って、風のごとく走り去って行ってしまった。


 んな‥なななな

 なんなんのよー!!!


もちろん心臓バックバクのあたしは、デコピンされた額よりも結んだ唇に力が入り過ぎていて‥

洋介の背中がどんなに小さくなっても、見えなくなるまで目を離すことはしなかった。

⏰:08/09/22 21:16 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#201 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

――
―――――
――――――――
―――――――――――


今でも思い出す部室でのくすぐったい思い出と、別れ際のあの“命がけの笑顔”‥

家までの帰り道、バスの窓側に座らせてくれたこと、

さりげなく車道側を歩いてくれたこと、

今も変わらないアイツの優しさに、あの頃のあたしは意地を張るばかりで‥

⏰:08/09/24 21:50 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


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