●S×S〜sugar×spice〜番外編●
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#1 [桃色]
こちらは桃色の処女作
『S×S〜sugar×spice〜』の番外編です。

初めての方でもわかるように物語を進めていくので、読んでいただけると嬉しいですヾ'v`*)ノ

●S×S〜sugar×spice〜●
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●感想板●
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⏰:08/08/15 20:28 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#2 [桃色]
 





●merry-go-round●梓編●




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⏰:08/08/15 20:30 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#3 [桃色]
 
‥‥春‥夏‥秋‥冬‥‥

高校生活の三年間、どこを振り返ってもあちらこちらにアイツがいる。



アイツはいつもそばにいて

アイツはいつもふざけてた。


そんなアイツとあたしの話し‥


恥ずかしいけど話してみようかな‥‥


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⏰:08/08/15 20:36 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#4 [桃色]
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「おはようあずちゃんっ」

朝からとびきりの笑顔をあたしにくれる、可愛い可愛いこの子はあたしの親友、桜井瑞穂。

小学校からの付き合いだ。

「おはよう瑞穂。高校生活まだ馴染めないよ」

「ねー」と相槌をうちながら笑うたび揺れる瑞穂の長いサラサラの髪。

そこからのぞく大きなたれ目は、見つめられると女のあたしでもドキッとしてしまう。

⏰:08/08/15 20:37 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#5 [桃色]
‥それに比べてあたしときたら‥

髪は肩まで伸ばしたことないし、くせ毛だし‥

焼けてもないのに色黒の肌。

細すぎる体も好きになれない。

“瀬能梓”なんて完璧名前負け‥

どうせならケイとかユウとか、オールマイティな名前が良かった。




肩を落としてため息をつこうとしたその時

⏰:08/08/15 20:38 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#6 [桃色]
「はー‥‥ぁ」

先を越されて振り向くと、さっきまで笑ってた瑞穂の元気が無くなっていた。

原因はおそらく

「湊斗くん?」

「え?」

驚いたように顔を上げる瑞穂の顔は少し動揺しているようだった。

「毎日一緒に通ってたもんね。だけどあと一年の辛抱じゃん!湊斗くんもあたしたちと一緒の高校受けるつもりなんでしょ?」

⏰:08/08/15 20:39 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#7 [桃色]
“湊斗くん”とは瑞穂の一つ下の弟で、これがまた非の打ち所がないほどのいい男。

瑞穂はただのシスコンだよって笑うけど、そんな瑞穂も十分ブラコンだ。





二人でバスに乗りまだ通い慣れない校門をくぐる。

あたしと瑞穂は1−F。

一年の校舎は一番奥にあって、中庭を突っ切ると近道なんだけど‥

途中二、三年の校舎から瑞穂に声をかけてくる先輩が何人かいた。

⏰:08/08/15 20:40 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#8 [桃色]
いちいち振り返る瑞穂の手を引き、早歩きでやり過ごす。

「待ってあずちゃんっ」

瑞穂が鈍感なのかあたしが過敏なのか‥

とにかく湊斗くんの代わりにあたしが瑞穂を狼たちから守っていかなきゃな‥

なんてわけの分からない使命感に燃えていると、前からいかにもチャラチャラした感じの男子が歩いて来た。

エンジ色のネクタイをしめてるってことは、あたしたちと同じ学年‥‥

にしてもチャラい!

⏰:08/08/15 20:41 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#9 [桃色]
“女ったらし”を顔面に張り付けたようなふやけた容姿に歩き方。

男は黒髪!短髪に限る!

あんなのに瑞穂が捕まったらたまったもんじゃないっ!

瑞穂がソイツの視界に入らないよう、庇うようにして前に立つ。

近づいてくるにつれ、ソイツのチャラさが増したように感じる。

良く言えばオーラがある?

いやいや、確かに顔は整ってるけど‥

って何考えてんのあたし!

⏰:08/08/15 20:43 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#10 [桃色]
 
あたしの後ろで不思議そうに首を傾げる瑞穂の動作が、離れかけた意識を現実へと引き戻してくれる。

危ない危ない‥

あたしとした事が‥こんな奴は無視してやり過ごすに限る。




 !?




コイツ今目が合った瞬間笑った!?

⏰:08/08/15 20:45 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#11 [桃色]
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怒りにも似た感情‥

これがあたしとアイツのファーストコンタクト。

今思えば第一印象は最悪だ。

アイツは覚えてないって笑ってはぐらかすんだけどさ。



それから間もなくして、あたしはとんでもないミスチョイスを侵してしまったことに気づく‥

そう、それは‥‥‥

⏰:08/08/15 20:46 📱:SH706i 🆔:LLzmPwlc


#12 [桃色]
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「はっ!?何でアンタがここにいるの?」




特に希望して入った訳じゃないサッカー部のマネージャー。

ただ単に担任が顧問だって理由で半ば強制的に入部させられた。

何が「その元気ハツラツな容姿はマネージャーに持ってこい」だ!

好きで色黒なわけないっつーの!

⏰:08/08/16 21:37 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#13 [桃色]
瑞穂には「あずちゃんならできるよ!」なんて無責任な事言われるし。



なんだかんだ言っても結局引き受けちゃうのがあたしなんだけど‥‥


今はそんなことどうでもいい。

あたしが知りたいのは、何であたしの目の前に映ってるのが‥

この間あたしを嘲りやがったチャラ男の胸板なのかってこと。

⏰:08/08/16 21:39 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#14 [桃色]
お構いなしに開けたあたしも悪かったけど、まさかチャラ男がサッカー部の部室にいるなんて思わなければ、着替えているなんて想像がつくはずもない!



‥にしても、惚れ惚れするぐらい引き締まった腹筋、胸筋、上腕二等筋‥‥

「アンタ呼ばわりはひどいな‥園田洋介。マネージャー?」

園田と名乗るチャラ男の声に、またも飛んでしまっていた意識が呼び戻される。

「そ‥のだ?E組の園田洋介ぇ?」

⏰:08/08/16 21:41 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#15 [桃色]
 

まさか!

園田洋介っていえば毎日毎日クラスの女子という女子が騒ぎ立ててる男子の事でしょ!?

こんなチャラ男が園田洋介のわけない‥

頭ではそう思っていても、なぜだか園田洋介から目が離せない。

切れ長の目は上品な二重のラインを描いていて、鼻筋は華奢なんだけどしっかり通ってる。

薄い唇の間から覗く八重歯が、彼の印象を柔らかくする。


「そうだけど‥俺の顔に何かついてる?」

⏰:08/08/16 21:42 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#16 [桃色]
「えっあっ、ごめん‥」

ヤバイ、見すぎた?

ってゆうか喋り方‥案外普通じゃん。

思ってたほどチャラくないのかも‥

「アンタ知ってる。瀬能さんだろ?」



 !?



「可愛い子の名前は即チェックする派だから、俺」

そう言って写真家みたいに両手を伸ばし、その手中にあたしの上半身をとらえる。

⏰:08/08/16 21:43 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#17 [桃色]
 


―ドクン!



その自信に満ちた表情に、不覚にも胸が大きく波打つ。

前言撤回!!

予想以上にチャラくてらっしゃる!

あたしの目に狂いはなかった。

さわらぬチャラ男に祟りなし‥



あたしは無言のままドアを閉め、その足で担任兼顧問に退部届けを出そうと決めた。

⏰:08/08/16 21:45 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#18 [桃色]
 
「おい、サッカー部に用なんだろ?」

追いかけてくる園田洋介に構うこと無くさっさと職員室へ向かおうとしたその時

「瀬能、部室わかんなかったか?おー園田ぁ、今日からマネージャーやってくれる瀬能梓だ!よろしく頼むぞ」

振り返ると、意外にも焦った様子の園田洋介が靴も履かずに突っ立っていた。

「ちょっと、せんせ‥」

⏰:08/08/16 21:49 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#19 [桃色]
体育会系に有りがちな、人の話しを聞かないタイプの見本‥とも言えるようなサッカー部顧問兼担任、田辺慎吾。

あたしの腕を強引に掴んで、今来た道を引っ張って行く。

「やっぱり!何も言わないで出てくんだもんな‥お茶当番手伝ってもらえる?」

八重歯を見せて、人懐っこく笑う園田洋介。

⏰:08/08/16 21:52 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#20 [桃色]
田辺先生も暑苦しい笑顔で期待の眼差しを向けてくる。



頼まれると弱いあたしは結局断るに断れず、退部届けもどこへやら‥‥

気づけばグラウンドの水飲み場で給水作業をこなしているあたしがいた。

勿論隣りには園田洋介。

終始ふやけたこの男と、これから毎日顔を合わすのかと思うと何とも言えない気持ちだった。


――
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⏰:08/08/16 22:02 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#21 [桃色]
 

あの時いやがおうでも退部してたら‥

きっとアイツとあたしはただの同級生。

いや、それ以下だったかもしれないな‥


田辺先生に感謝しとくか。





それから間もなくして事件は起こる。

初めて味わう感情の意味が、その時のあたしには分からなくて‥認めたくなくて‥‥

アイツを想って涙が出たのも、あれが初めてだった気がする。

⏰:08/08/16 22:03 📱:SH706i 🆔:Yj/jA3tg


#22 [桃色]
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高校生活にもマネージャー業にもそこそこ慣れてきた頃‥

アイツとは顔を合わせば口喧嘩。

しかも小学生みたいなレベルの言い争いをいつもしていた。


例えば?

あたしはアイツを「チャラ男」って呼んでたし、アイツもあたしを黒いから「くろさ」って呼んでた。




だけどそれだけ。

⏰:08/08/17 19:55 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#23 [桃色]
特に仲が良いわけでもなかったし、アイツの周りにはいつも入れ代わり立ち代わりいろんな学年の女子が取り巻いていた。




季節はちょうど夏を迎える手前。

梅雨が明けたにも関わらず、どんより雲がかかった‥そんな日だった。

いつもはトイレについて来る瑞穂が、課題に追われて休み時間を潰していたので一人で廊下を歩いていると、男子トイレの前に交差する男女の足が見えた。

⏰:08/08/17 19:57 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#24 [桃色]
 



 ?




覗いたわけじゃない。

そこを通らないと女子トイレに行けなかった。

あたしの目に映ったのは、あたしの知らない上級生と唇を重ねる園田洋介の姿だった。



しなやかな腕を女の人のくびれに添わして、もう片方の手は頭を固定している。

切れ長の目を綺麗に閉じて、噛み付くようにキスをしている。

⏰:08/08/17 19:58 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#25 [桃色]
 



‥‥‥‥‥‥っ!




何がなんだかわからないまま地面を蹴って女子トイレに駆け込む。



―ドッドッドッドッ‥



心臓の音と共にこめかみが圧迫される感覚‥

何? 何? 何?

何を見た?



‥‥有り得ない!

公衆の面前で何やってるの!?

⏰:08/08/17 20:00 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#26 [桃色]
「うっ‥」

軽く吐き気に襲われながら、洗面台の鏡を見る。



 あれ?



あたし‥泣いてる?



頬を伝う滴はどこから見ても目の端から流れている。
胸が締め付けられるような感覚と共に鼻の奥がツンとして、あたしはそのまま泣き崩れた。

⏰:08/08/17 20:00 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#27 [桃色]
 




次の授業をサボることになったのは言うまでもない。
一時間トイレで過ごすのは避けたかったので、チャイムが鳴ってから誰もいないのを確認して保健室へ向かう。

保健の先生には生理痛と嘘をついて、空いてるベッドを貸してもらった。




.

⏰:08/08/17 20:01 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#28 [桃色]
‥何だったんだあれは‥

そもそも誰だあの女は!

上級生でも何でも、恥を知れ恥を!





園田洋介‥

やっぱりチャラ男はチャラ男でしかなかった‥

あんな奴と今まで口きいてたなんて!

⏰:08/08/17 20:03 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#29 [桃色]
苛立つ気持ちは収まるどころか激しさを増す。

思い出したくなくても園田洋介の腕が、目が唇が‥‥


あたしの心を掻き乱して離れない。

それにさっきのあたしの涙‥

驚いたにしてもなぜ泣く必要があったのか‥‥‥

⏰:08/08/17 20:05 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#30 [桃色]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥わからない‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥考えるだけ無駄だ。






こっそり携帯を取り出して、保健室にいると瑞穂にメールで伝えると、糊のきいたシーツと布団に何もかも預けて現実から逃げ出した‥‥‥

⏰:08/08/17 20:09 📱:SH706i 🆔:gzGQb5DU


#31 [桃色]
 




昼休み、心配した瑞穂があたしの鞄を持って保健室まで来てくれた。

「あずちゃん大丈夫?」

たれた目を心配そうに歪ませて、ベッドの横の丸椅子にちょこんと座る。

嘘はつきたくなかったけど、何て説明すればいいのかわからないし‥

「心配かけてごめんね。少し横になったからもう平気!お昼食べに行こっか」

⏰:08/08/18 23:06 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#32 [桃色]
そう言って頭をポンと撫でると、花が咲いたように笑う瑞穂。



癒されるな〜ぁ‥

瑞穂はほんと、可愛いなぁ。

あたしが男だったら間違いなく惚れてるな‥

間違ってもあんっなケバい上級生なんかに興味なんて持たな‥‥‥




―キュウゥゥッ




.

⏰:08/08/18 23:06 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#33 [桃色]
すみません
上の『続き‥』何もありません!スペースのみです

⏰:08/08/18 23:08 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#34 [桃色]
また胸の奥が締め付けられる。

あたしの脳裏には園田洋介とケバ女のキスシーンが浮かんでいた。



‥なんで、

‥‥なんでこんなに苦しくなるのよ!!
 




それから放課後まで、一歩も教室から出ていないあたし。

部活に行けば嫌でもアイツと顔を合わさないといけないのはわかってる。

⏰:08/08/18 23:08 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#35 [桃色]
別に気まずいわけじゃない。

‥はずなんだけど‥‥

行きたくないな‥部活。




終礼が終わった教室で瑞穂と別れを告げ、昇降口までとぼとぼ歩く。

「はぁ‥‥」

ため息なんかついちゃったりして、あたしは一体何に悩んでるんだろう?

⏰:08/08/18 23:09 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#36 [桃色]
この胸のモヤモヤは何?

たかがチャラ男のケバ子のキスシーンじゃん‥

そうだ、きっとあんなもの見せられて胸やけしてるんじゃ!
 




一人でブツブツ考えていると

「お、くろさ!今日も変わらず黒いなぁ」

今一番聞きたくない声が、あたしの後ろを追ってくる。

⏰:08/08/18 23:09 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#37 [桃色]
歩くスピードが無意識に速くなる。

「くろさぁ?‥ったく、あーずーさーちゃんっ!」

うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!

あんな女とキスした口で、あたしの名前を呼ばないでっ!




 !!



.

⏰:08/08/18 23:11 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#38 [桃色]
あたし今、何考えてた!?

―ドンっ



「ちょっと待てって!どーしたんだよ?」

追いついた園田洋介に腕を掴まれそのまま壁に追い詰められる。

射るような目であたしを見つめる園田洋介‥

その瞳がジリジリと近づいてくる。

片手は空いてるはずなのに、抵抗できない。

体が‥動かない‥

⏰:08/08/18 23:11 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#39 [桃色]
「顔、赤いぜ?熱でもあんのか?」

そう言って額をこつんとくっつけてくると、真剣な面持ちで

「ん〜よくわかんね!取り合えず今日のお茶当番代わってやるよ」

またまた八重歯をちらつかせ、軽い身のこなしであたしから離れると

「キスされるかもぉ!とか思っちゃったぁ?」

なんて悪びれもせず笑ったチャラ男の頬に真っ赤な手形がついたのは、それから三秒も経たないうちだった。

⏰:08/08/18 23:12 📱:SH706i 🆔:Tcp1e8xI


#40 [桃色]
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あの時の事を思い出すと、今でも胸の古傷が痛む。

この痛みの理由を知るのは、もう少し後の話しなんだけど‥

あの日を境にアイツのせいでイライラする事が多くなった。

以前その元凶がわからないあたしは、全部アイツのせいにして逃げてただけだったんだよね‥

⏰:08/08/20 01:08 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#41 [桃色]
だけど気づかないフリにも限界は訪れる。

いつも視界の真ん中にいるアイツの姿を、まさか自分が追ってるからだなんて‥
ただアイツがちょっと目立つからなんだと思い込んでいたあの頃‥‥

アイツの落としテクは天性のものなのかもしれない。


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⏰:08/08/20 01:11 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#42 [桃色]
夏休みも半分が過ぎ、お盆に入る前の週‥

うだるような暑さの中、練習試合の帰り道‥‥



見事スタメンを果たし1ゴールまで決めてみせたチャラ男様は、終始ご機嫌な様子で部員と一緒に盛り上がっている。

[やっぱり園田君狙っちゃおっかな]

[こないだマミが手出したって言ってたじゃん!]

[うっそぉ!?未遂でしょぉ?]

盛り上がっているのは何も部員だけじゃない。

⏰:08/08/20 01:11 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#43 [桃色]
サッカー部にはあたしを含め四人のマネージャーがいる。

三年の沢村さん、牧野さんに二年の藤川さん。

藤川さんはサバサバした性格でよく気も合う楽しい人。

三年の二人に至っては‥

はっきり言って男をあさりに来てるとしか言いようがない。

今まで二人がお茶当番をしてるのなんて見たことない所か、マネージャーだと今日初めて知ったぐらいだ。

さっきの色づいた会話ももちろん二人の間のものだ。

⏰:08/08/20 01:17 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#44 [桃色]
 


―イライライライラ‥



まただ。

お腹の底から鈍い感情が沸き上がる‥

[園田くぅんっちょっと待ってぇ]

さっきと全く違う声色。



―イライライライラ‥



.

⏰:08/08/20 01:18 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#45 [桃色]
『‥続き』スルーしてください
毎度毎度すみません

⏰:08/08/20 01:19 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#46 [桃色]
ダメだ。

誰にも気づかれないよう団体の最後尾に回る。

少し遠くなるチャラ男の背中。

沢村さんたちに呼び止められて、嬉しそうに八重歯を見せてる。

「はー‥‥‥」

見なきゃいいのに見てしまう。

聞かなきゃいいのに聞いてしまう‥

⏰:08/08/20 01:20 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#47 [桃色]
[園田君てぇ、どんな子がタイプなのぉ?]

おいおい、趣旨が見え見え過ぎじゃないか?

「そぉっスね〜、年下よりは年上好きっスね!」

[きゃんっ!かぁわぁいぃい〜!]

‥‥さすがチャラ男様‥‥

軽くウインクまでしてみせたアンタをある意味尊敬するよ‥

イライラよりも、胸の辺りが何だか重い。

⏰:08/08/20 01:21 📱:SH706i 🆔:65Hn8iLA


#48 [桃色]
ふーん‥

年上が好きなのかぁ‥

あたしの方が誕生日早いし、あたしも年上に入るんだろうか‥‥




暑くて意識がボンヤリとする。

何でこんなこと考えてるんだろう?

持っていた空の給水タンクを二つ地面に置き、一息ついて滴る汗をタオルで拭う。

⏰:08/08/21 21:03 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#49 [桃色]
その間にも、みんなの背中はどんどんあたしから離れて行く。

もちろん誰もあたしを気遣うような人はいない。

こんなに遠くても聞こえてくる沢村さん達のバカ笑いが、あたしの胸をチクんと突き刺す。

地面と睨めっこを続けながら、深呼吸をして前を向く。

するとさっきまで小指の爪ほど小さくなってた園田洋介がこっちに向かって走ってきている。

⏰:08/08/21 21:04 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#50 [桃色]
呼び止めているんであろう沢村さん達を振り切って、その目はあたしを真っ直ぐ見ていた。

「くろさ!俺、喉渇いちった!」

おどけたようにそう言って、給水タンクを持ち上げる。

「もう二つとも空だよ‥」

そう呟くのが精一杯。





だって最後の一滴まで飲み干したの、アンタじゃん‥

「あちゃー!しゃあねぇ、持ってやるからそっちも貸してみ?」

⏰:08/08/21 21:05 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#51 [桃色]
何だか目頭が熱くて痛い。

じんわり視線が歪んだ瞬間、園田洋介の手があたしの頭にそっと触れた。




「しんどかったらしんどいって言っていいんだぞ」




 !!




一瞬息が止まったかと思った。

⏰:08/08/21 21:06 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#52 [桃色]
触れられた所がやけにこそばくて、抑えてみたけど‥何この感覚‥‥



胸が‥胸が鳴ってる‥



それは今までのイライラとは全く違う感覚で‥

音にすると‥



『きゅん』



って感じ‥


.

⏰:08/08/21 21:07 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#53 [桃色]
 

ん?


『きゅん』?




「ありがと、くろさ」

考え込んでたあたしの耳に、いきなり聞こえた園田洋介の声にはっとするどころかドキっとする。

「ななな何が?」

上ずった声しか出せないマヌケなあたし。

⏰:08/08/21 21:12 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#54 [桃色]
「今日お前、ずっと俺のこと見ててくれたろ?あの1ゴールはお前のおかげ!サンキュー、勝利の女神ちゃん!」

絶好調の園田洋介は恥ずかしげもなく以上のセリフを言ってのけた。

いつものあたしなら無視か皮肉の一つでも言い返せたはずなのに‥‥

「あれは‥アンタの実力だよ」

そんなにあたし、見てたかなぁ‥

⏰:08/08/21 21:13 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#55 [桃色]
そればっかりが気になって、普段なら口が裂けても言わないような返しをついついしてしまった。

きっとチャラ男菌のせいであたしの頭までおかしくなってる‥‥

園田洋介もいつもと違うあたしの返事に戸惑ったのか

「お?お、おう‥てかお前、惚れてんじゃねーよ!」

しどろもどろになりながらも、すぐに立て直すあたりはやっぱりプロだ。

「‥惚れっ!?‥だだだだ誰がアンタみたいなチャラ男菌!!」

⏰:08/08/21 21:14 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#56 [桃色]
口ではそう言っていても、有り得ない程バクバクいってるあたしの心臓‥‥



何これ、一体どうしちゃったの!?



頭がパンクしそうになったその時、遠くの方から

「おーい洋介ぇ!勝利の女神様がお呼びだぞー!」

とひやかすような声が聞こえた。

声の主である先輩部員の隣には、足腰をくねらせて手を振る沢村さんと牧野さんの姿。

⏰:08/08/21 21:15 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#57 [桃色]
 


はっはーん‥



そういうことね‥‥



きっ!とチャラ男の横顔を睨むと、気まずそうに頬をいじって「あちゃー」なんて呟いている。

イライラの中にまた違う感情が芽生えた事にも気づかないまま

「あたしを落とそうなんざ百万年早い!!チャラ男には色魔がお似合いよっ!」

⏰:08/08/21 21:16 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#58 [桃色]
そう言って担いでいたボストンバッグをチャラ男目がけて思いっ切り投げ付けてやると、器用にも給水タンクの間で見事に受け止めて

「素直じゃないなぁあずちゃんは‥大丈夫!落ちた時は俺がこうやって受け止めてやるからさっ!」

ボストンバッグをあたしに見立ててぎゅうっと抱きしめてみせる。

「っぶぁっっかじゃないっ!?」

⏰:08/08/21 21:16 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#59 [桃色]
 


きっと、多分、いや絶対‥


あたし、今顔赤いよね?



さっきよりさらに八重歯を見せて、ひゃひゃひゃっと特徴のある園田洋介の笑い声があたしの胸を締め付ける。



きゅんってするな!

きゅんってするなぁぁぁ!



.

⏰:08/08/21 21:18 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#60 [桃色]
 

瀬能梓、一生の不覚‥


世の中の女、全部が全部お前の思い通りになると思うなよっ!



例え何があろうとも、自分をしっかり持つのよ梓‥!


そう強く心に誓った。

⏰:08/08/21 21:19 📱:SH706i 🆔:EvS0PmyI


#61 [桃色]
――
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言い訳するわけじゃないけど‥

アイツはずるい!

あたしの誓いを知ってか知らずか、アイツのモーション?はエスカレートするばかりだった。

しかも決まって二人きりの時‥‥

新学期が始まってから、気づけば放課後どちらともなく待ち合わせをするようになってた。

⏰:08/08/22 20:50 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#62 [桃色]
チャラ男っぷりはもちろんご健在。

いつも振り回されるのはあたしなのに、嫌いになれない自分が歯痒くて‥

“好き”って感情をようやく意識し始めた、そんな秋の出来事。


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――

⏰:08/08/22 20:51 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#63 [桃色]
「おーつーかーれーっ」

いつになくボディタッチの激しい園田洋介。

その日は軽くだけど頭をくっつけてきた。


―ドクンっ!


あたしの心臓は正直だ‥

ここ最近調子が狂う事ばかり。

もちろん全てコイツのせい。

コツンとぶつかるギリギリのところで華麗に交わしてみせたあたしに

「ちぇっ」と悪びれもせずおどけるチャラ男。

⏰:08/08/22 20:52 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#64 [桃色]
蹴りの一発でも入れたくなるのはあたしだけだろうか?

薄々は自覚し始めたこの感情‥

ただ認めるには何かが足りない。

みんなみたいにキャーキャー騒ぎたくなったりしないし、カップルみたいにイチャイチャしたいとも思わない。



あたしにとって“恋”とは、形のない曖昧で頼りないものでしかなかった‥

⏰:08/08/22 20:52 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#65 [桃色]
 


行き交う女子に愛想を振り撒く相変わらずのチャラ男様。

変わったことと言えば

「梓ぁ、今日のメニュー聞いた?」

「今週はずっと一緒だよ。洋介たちはアップから入って4×4の試合形式」

練習試合のあの日以来、お互い名前で呼ぶようになった事。

ムカついた時は『チャラ男』って呼ぶけど、久しく『くろさ』とも呼ばれてないなぁ‥

⏰:08/08/22 20:53 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#66 [桃色]
なんて考えながら靴を履き変えていると

「園田くぅん、CDどうもありがとぉ‥お礼に、これ‥クッキーなんだけど‥」

向かいの靴箱で同じく靴を履き変えていた洋介に、同じ学年のナントカさんが可愛いらしくラッピングされた包みとCDを真っ赤な顔して差し出していた。



ここまではよくある光景‥

⏰:08/08/22 20:54 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#67 [桃色]
 
 

だけど何度見ても慣れることはない。

わざと知らないフリをして、靴箱に上履きをしまう事だけに集中する。

「マネージャーさんも、良かったらどうぞ」

一言あたしにそう添えて、ナントカさんは去って行った。

⏰:08/08/22 20:56 📱:SH706i 🆔:IqCw0aXc


#68 [我輩は匿名である]
おもしぃ
頑張ってね

⏰:08/08/23 18:08 📱:P905i 🆔:2lv3vcxY


#69 [桃色]
P[P905i我輩様]q・v・)⌒+゚

感想板にてお返事させていただきました

⏰:08/08/23 23:31 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#70 [桃色]
 


あたしのことまで気遣ってくれるなんて‥

あたしは安全牌だってこと?

ライバル視さえされないことに少し虚しくなる‥



「やったね」と言いながら、つま先を床にトントン打ち付け、かかとを片手で無理矢理押し込む。

そんな洋介の一連の動作をただぼんやりと眺めていると

⏰:08/08/23 23:42 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#71 [桃色]
「妬ぁくなってぇ!」

口を尖らせて手を伸ばしてくる。

そうはさせるかと、頭に触れられる寸前で払いのけると

「可愛くねぇな」と笑われる。



‥何て言うか、見透かされてる?



部室までの少しの間、何も話さないまま時間は流れる。

⏰:08/08/23 23:44 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#72 [桃色]
これじゃあたしが拗ねてるみたいじゃん!

くるっと後ろを振り返ると、さっき貰ったクッキーを呑気にほお張る洋介の姿。

思わずイラっとしてまた向き直ると

「ごめんごめん、梓も食べる?ほら、アーン」

あたしを怒らせたいとしか思えない洋介の態度にも

“ここでキレたら負けた気がする”

ぐっと唇を噛み締めた。

⏰:08/08/23 23:45 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#73 [桃色]
 


「お?‥何か入ってる」

部室のドアに伸ばしかけた手を止め振り返ると、クッキーが入っていた包みから淡い水色の小さな紙切れを手に取りニヤつく洋介がいた。

「おっしゃ!けーばんゲットォ!」

勢いよく跳び上がると、ヒラヒラさせた紙切れを口元に持って行き、わざとらしく音を立てて口づけをする。

⏰:08/08/23 23:46 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#74 [桃色]
 


いやらしい口元から覗く八重歯‥



思い出したくもないケバ子とのキスシーンが頭をかすめる。

それでも一瞬くらっとした自分に苛立ちを覚えて勢いよくドアを開けてその勢いのままドアを閉めた。




‥あたしだってまだ洋介の番号はおろかメアドさえ知らないのに‥‥!

⏰:08/08/23 23:47 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#75 [桃色]
 



―ヤキモチ



―ドクンっ



一回大きく波打ったかと思うと、あたしの心臓は鈍い痛みを全身に伝える。

心までも黒く染まってゆく感覚‥‥




こんなの恋なはずないっ

⏰:08/08/23 23:47 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#76 [桃色]
 


恋ってもっと楽しくて夢中になれるものなんでしょ?



今のあたしはとっても醜い‥

何の素性も知らないケバ子に嫌悪感を抱いていたり、あたしにもクッキーを勧めてくれたナントカさんまでも憎く思ってしまってるなんて‥‥



こんなの全然楽しくないっ

⏰:08/08/23 23:48 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#77 [桃色]
 


―キィ‥‥‥



静かにドアが開く。

「ほんとお前は分かりやすいなぁ‥」



あたしがいくら否定しても‥

その声を聞くだけで、その瞳があたしを捉らえるだけで、こんなにも胸が締め付けられるのは何でだろう?


困ったような、照れてるような‥初めて見る洋介のその表情は、いつにも増して魅力的だった。

⏰:08/08/23 23:48 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#78 [桃色]
向かい合い、見つめ合ったまま時間だけが過ぎてゆく‥‥



だけどあたしだけ時が止まってしまったように、動くことはおろか口を開くことさえできない。

ゆっくりと洋介がこっちに向かって歩いてくる様子でさえ、あたしの目にはスローモーションに映る。

柔らかく微笑んだ洋介の表情から、その考えを読み取るなんて高度な技をあたしが持っているはずもなく‥

⏰:08/08/23 23:49 📱:SH706i 🆔:y98gOomQ


#79 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


部室に誰もいない事に、今さらながらひどく焦る。


洋介のすらりと長いしなやかな腕が、またもやあたしに向かって伸びる。



 !!



思わずぎゅっと目をつむって身を硬くしてしまう。

⏰:08/08/24 22:48 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#80 [桃色◆OQUMeZqegU]
クスッと小さな笑い声がしたかと思うと

「ほら、貸してみ?」



‥‥‥?



そおっと片目を開けると洋介の大きな手の平が、あたしの目の前で何かを催促していた。

「‥ほえ?」

気の抜けた声しか出せないあたしに、じれったいと言わんばかりにもう一歩分距離を縮める。

⏰:08/08/24 22:49 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#81 [桃色◆OQUMeZqegU]
潤んだ視線が洋介の姿を歪ませた‥

次の瞬間

「け い た い っ!」
手の平を上下に振りながら、この距離では有り得ない音量で放たれた四文字。

肩がびくついて思わずまばたきを繰り返してしまう。

「今ならただで教えてやるよ!5秒以内に携帯よこせ」

横暴な洋介の言葉に、条件反射で一瞬眉間にシワを寄せたがすぐに思い直すことになった。

⏰:08/08/24 22:50 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#82 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


‥あの洋介の頬が、わずかにだけど赤いのだ。



それにつられてあたしまで顔が熱くなる‥



何よ‥
それも計算のうち!?

「‥4‥3‥」

考えてるうちにもカウントダウンは始まっていて、慌ててポケットから携帯を取り出し投げ付けるように洋介に渡す。

⏰:08/08/24 22:51 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#83 [桃色◆OQUMeZqegU]
ニカーッと笑ってあたしの携帯を握り締める洋介。

予想外の反応に、戸惑いながらも高鳴るあたしの心臓‥

いつもは目障りでしかない八重歯も、この時ばかりは愛おしく思えた。



そんな笑顔‥反則だ‥!

―ドクドクドクドク‥

.

⏰:08/08/24 22:53 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#84 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


心拍数が尋常じゃない。

こんなのいくつ命があっても足りないよ!



これ以降、あたしはくったくなく笑う洋介の笑顔を

“命懸けの笑顔”

と心の中でだけこっそり名付けた。

⏰:08/08/24 22:53 📱:SH706i 🆔:2CrvxLfE


#85 [桃色◆OQUMeZqegU]
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こうして無事?アイツのけーばんもメアドも手に入れる事ができたあたしだったけど‥

いまいち恋とは何かがわからないでした。

だけど洋介からメールが届くたび、それがどんなに下らない内容でも一喜一憂している自分が、少女漫画のヒロインと重なり恥ずかしくなることはあった。

もちろんあたしは背中に花なんか背負えないけど。

⏰:08/08/25 22:09 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#86 [桃色◆OQUMeZqegU]
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『さっき走ってたら虹が出てた』


衣更えをして間もない頃‥

洋介のメールで目が覚めたあたしは寝ぼけ眼で添付ファイルを開いてみる。

⏰:08/08/25 22:10 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#87 [桃色◆OQUMeZqegU]
そこには朝焼けでオレンジ色に染まった空に、控えめだけどその存在を認めるには十分なほどの色彩を放った虹が小さくだけど弧を描いていた。


「き‥れい‥」


そのまま下へスクロールしていくと

『お前みたいじゃね?』

という言葉がニカッと歯を見せて笑う絵文字で締めくくられていた。

⏰:08/08/25 22:12 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#88 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

‥あたし‥みたい?


疑問と一緒に浮かぶのは、洋介のあの“命懸けの笑顔”‥

思い出すだけでも胸が踊る。

その笑顔を噛み締めるため、布団の中に潜り込む。
 

あともう少し‥


まどろむあたしに携帯が寝るなとアラーム音を響かせる。

⏰:08/08/25 22:19 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#89 [桃色◆OQUMeZqegU]
「っくふぁ〜‥」

起きるか‥

カーテンを開けると外はもう明るくて、洋介がくれたメールの景色がどこか違う特別な場所に思えた。




洋介は今頃朝練か‥

朝練と言っても自主制なので、マネージャーは顔を出さなくてもいい。

今朝も瑞穂とバスに乗る。

⏰:08/08/25 22:20 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#90 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「あずちゃん、髪伸びてきたね。そのままのばすの?」

瑞穂の何気ない問い掛けに、内心ドキッとしてしまう。

「いやぁ、はは‥切りに行く時間なくてさぁ」

なんてごまかしてみたみたけど実は‥

伸ばしてみるのもありかな‥なんて‥

⏰:08/08/25 22:21 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#91 [桃色◆OQUMeZqegU]
べっ!別に洋介がロングの方が好きって聞いたからとかじゃないから!!

絶対ないからっ!!!

「顔赤いよ?大丈夫?」

「ひゃぁっ」

ひょこっと背伸びをしてあたしの顔を覗き込む瑞穂に思わず素っ頓狂な声が出た。

そのせいでバスの車内が一瞬静まり、あたしに痛い視線が集まる。

気まずそうにうつむくあたしの隣では、瑞穂が無邪気に笑っていた。


‥今日はなんだかついてなさそうだ‥

⏰:08/08/25 22:22 📱:SH706i 🆔:2TK0Lixc


#92 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



そんなあたしの予感は見事に的中‥

遅れて行った洋介とのいつもの待ち合わせ場所。

洋介の姿がなくて先に行ったのかと沈んでいると、コソコソと人の気配がした。

まさかと思い近づいて行くと、洋介の上履きがチラリと見えた。


―ズキンつ!


あの日の光景が脳内を駆け巡り鞄を持つ手が思わず震える‥

⏰:08/08/26 20:47 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#93 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
昇降口のちょうど階段の影になるところにいて、洋介側からあたしは見えない。

立ち聞きの趣味はないのでその場を立ち去ろうとしたその時‥

「ね〜ぇ、園田君ってぇ付き合ってる子、いないんだよねぇ?」

聞き覚えのある甘ったるい声に身の毛がよだつ。

そんな声を出せるのは、確認しなくてもわかる‥

とっくに引退して顔を合わすこともなくなりせいせいしていた沢村さんだ。

⏰:08/08/26 20:48 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#94 [桃色◆OQUMeZqegU]
「俺、特定の子は作らない主義なんスよ」

さすがチャラ男の鏡、模範解答をさらりと言ってのける。

上手くかわしたとあたしも胸を撫で下ろす。

だけどその日の敵はひと味違うらしく、様子はうかがえないながらも洋介がこっちに来ないことで足止めを食らっているのがわかる。

「あたし、知ってるんだから‥ “望月泉”と園田君のこと!」

⏰:08/08/26 20:49 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#95 [桃色◆OQUMeZqegU]
声のトーンを最大に低くして凄んでいる様子の沢村さん。

その声はサスペンス劇場なんかに出てくる犯行直前の犯人さながらだ。

沢村さんに詰め寄られる洋介の姿を想像したら背筋がぞくっと冷たくなった。



‥妄想もほどほどにして、気になるのは“望月泉”なる人物。

⏰:08/08/26 20:50 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#96 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介のことだからきっと女関係だろうけど‥

沢村さんは一体何を知っているんだろう?

立ち聞きは趣味じゃない、なんて言いながらちゃっかり聞き耳を立ててるあたし。


「何?泉から聞いたの?それならそれでいいっスよ、バラしてもらっても。俺は一向に構わないんで」

さっきまでおどけた様子だった洋介の語尾が強くなる。

洋介が階段下から出てきそうな雰囲気を感じて咄嗟に昇降口へと走る。

⏰:08/08/26 20:51 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#97 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたかもそこで待ちぼうけをくらっていたかのように座り込んでいると、真っ赤な顔した沢村さんが、三年の下駄箱目がけて走ってきた。

目に光るものが見えた気がして、その背中を目で追ってしまう。

洋介の奴、何やらかしたんだろ?

首を傾げてもう一度“望月泉”について考えてみる。

洋介の逆鱗に触れるぐらいの人物‥‥

⏰:08/08/26 20:51 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#98 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


“望月泉”‥



聞き覚えがあるような‥ないような‥‥

あの洋介を脅そうとするくらいのネタ‥

気になって仕方ないけどてんで見当がつかない。



腕を組んで唸っていると

「待ってたんだ?」

洋介に頭をポンっとなでられる。

⏰:08/08/26 20:52 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#99 [桃色◆OQUMeZqegU]
不意打ちをくらって跳ねる心臓を抑えながら洋介を見ると、そこにいつもの八重歯はなかった。


?


なんか、変なの‥


立ち上がって洋介の後を着いて行くと

「お前、靴は?」

両手をズボンのポケットに突っ込んで、馬鹿にしたような視線を向けてくる。

⏰:08/08/26 20:53 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#100 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「え?」

足元を見ると上履きのまま玄関を出てしまっていた。

途端に火を噴くあたしの顔面。

ひゃひゃひゃと言ってお腹を抱えて笑う洋介に、さっきの変なの雰囲気はなかった。

あたしの勘違いだったのかな?


――
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⏰:08/08/26 20:53 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#101 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 ‥“望月泉”‥


あの人の影が未だに消えることはない。

アイツが辛いと思うことは、あたしも同じように辛いから‥
 



すっかり木々の枝は痩せ、乾いた落ち葉が地面をかすめるそんな季節に‥

あたしはアイツの涙を初めて見た。


―――――――――――
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⏰:08/08/26 20:54 📱:SH706i 🆔:xCI9JcFA


#102 [桃色◆OQUMeZqegU]
街はすっかりクリスマス一色。

定番のクリスマスソングに赤と緑の装飾。

中学に上がった年からサンタクロースは来なくなったけど、毎年胸が踊るのはなぜだろう?
 


冬休みが近づいたある日曜日「みーとのプレゼントを見に行きたい」と言う瑞穂のお供で街まで来ている。

⏰:08/08/27 23:55 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#103 [桃色◆OQUMeZqegU]
地元からそんなに離れてはいないけど、人の多さに圧倒される。



「あずちゃん、あそこのお店いい?」「次はこっち!」「あっちも可愛い!」



軽く瑞穂に振り回されて、さすがのあたしも疲れてしまう。

一旦休憩しようと提案し、近くのファーストフード店に入る。

⏰:08/08/27 23:56 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#104 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


注文を済ませてトレーを持って席まで運ぶ。

すると前を歩く瑞穂がレシートを落とした。

気づかず進む瑞穂の横を通り過ぎた女の人が、親切にも拾ってあたしに渡してくれたのまでは良かったんだけど‥

「彼女さん、落としましたよ」


‥? ‥‥えっ!!


ニコッと笑って去って行く女の人。

向こうでは席を見つけた瑞穂が手を振っている。

⏰:08/08/27 23:56 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#105 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

‥そんなぁ!!


その日のあたしの出で立ちは、グレーのジャケットの中に“ピッタリめ”のインナー、ストレートのGパンをエンジニアブーツにイン‥‥

ボーイッシュにまとめてはみたけど‥


“ピッタリめ”というフレーズが、虚しくもあたしの胸元で空回る‥

確かに無いけど‥‥

全く無いわけじゃないじゃない!!?

⏰:08/08/27 23:57 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#106 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

にしても酷いっ!


何ともやるせない思いが、あたしの(小さな)胸にずっしりとのしかかる。

「はーーーー‥ぁぁぁ」


席に着くなり深いため息をついたあたしに、瑞穂が小さく首を傾げる。

仕草一つ取っても可愛い瑞穂。

「どうしたの?」

鈴のような声。

⏰:08/08/27 23:57 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#107 [桃色◆OQUMeZqegU]
まさに“可憐”という言葉がピッタリだ。


これぐらい髪を伸ばすのにどれくらいかかるんだろう?

ようやく耳が隠れるくらいまで伸びた自分の髪をいじりながら考える。



「ひっぱり回しちゃってごめんね‥?」

瑞穂の声でやっと我に返る。

⏰:08/08/27 23:58 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#108 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしの様子をうかがうように大きな瞳を潤ませる瑞穂に、まさか胸の大きさで悩んでましたなんて言えるはずもなく‥

「ごめんごめん、ボーッとしてた!さ、食べよ!」

そうやって笑顔を作ってみても、ガラス越しに映った自分の姿を見てしまえば‥


またしてもため息をつきたくなった。

⏰:08/08/27 23:59 📱:SH706i 🆔:y6aUASS.


#109 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
どの店の何が湊斗くんに一番似合うか、ポテトとジュースを交互に口に運びながら真剣に検討する瑞穂。

その様子は大好きな彼氏のために尽くす彼女そのものだ。

もっとも、それは意識せずやってのけてるんだろうけど‥

あたしにも四つ上の兄貴がいるけど、今までクリスマスはおろか誕生日プレゼントもくれたことなんてない。

⏰:08/08/28 19:38 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#110 [桃色◆OQUMeZqegU]
湊斗くんの想いが報われる日が、早く来るといいのになぁ‥だけどそれはそれで問題あるのか‥

なんて考えながら、口の端に塩を付けたまま真剣悩んでいる瑞穂を眺めていた。




ファーストフード店から出たあたしたち。

⏰:08/08/28 19:38 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#111 [桃色◆OQUMeZqegU]
「やっぱり一番最初に行った店で見た手袋にする」と言う瑞穂に従い着いて行く。

店の前で待つこと数分‥

カップルの多さに嫌気がさす。


クリスマスかぁ‥

洋介は誰と過ごすんだろ‥


ってあたしってば何考えてんだか!

アイツが誰と過ごすかなんて、あたしには関係ないことじゃん!

関係‥ないことじゃん‥

⏰:08/08/28 19:40 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#112 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


あたしって、こんなにひねくれた性格だったっけ?

アイツのこととなると、何故か素直になれない。

触れられると、ドキッとする‥だけど嬉しい。

他の女の子と話してるの見ると、ズキッとする‥あたしはヤキモチ妬きなんだと思う。

だけど洋介はあたしのものじゃないし、付き合うとかってよくわからない。

⏰:08/08/28 19:41 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#113 [桃色◆OQUMeZqegU]
クリスマスだって誰と過ごすか気になっても、一緒に過ごしたいとまでは思わないんだ‥‥‥



しばらく考えているうちに、街のイルミネーションがほんのりと目立ち始めた。

瑞穂、遅いなぁ‥

かれこれ二十分は戻らない瑞穂の安否を心配していると、一組のカップルが何やら路上で揉めているのが目についた。

⏰:08/08/28 19:42 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#114 [桃色◆OQUMeZqegU]
得に興味もなく、視界からそのカップルが消えかけた時、その後ろ姿に見覚えがあることに気づいた‥



‥ケバ子だ‥


一度しか見たことないはずなのに‥気づいてしまった自分に後悔してしまう。


―スギン‥


忘れかけた胸の痛みが蘇ってくる。

⏰:08/08/28 19:42 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#115 [桃色◆OQUMeZqegU]
痴話喧嘩は段々エスカレートしていき、彼氏とおぼしき男が大きな声で怒鳴り散らしている。

ケバ子の方も負けてはいない。

「なんでいっつも泉が悪いの!?アイツとは何もないって言ってるじゃん!!」


‥泉‥?


確かにケバ子はそう叫んだ。

泉って‥まさか‥

⏰:08/08/28 19:43 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#116 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
“望月泉”‥??


胸の中が黒く染まっていく感覚‥

「お待たせあずちゃん」

満足そうに店を出てきた瑞穂にも気づかないくらい動揺しているあたし。

「あれ?あの人‥誰だっけ‥?」

はっとして瑞穂の声に反応する。

瑞穂、ケバ子のこと知ってるの!?

⏰:08/08/28 19:45 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#117 [桃色◆OQUMeZqegU]
背筋がぞくっとしたかと思うと、手にじんわり汗が滲む‥

恐る恐る瑞穂の方を振り返る。

だけど瑞穂はケバ子とは反対の方向を指差し、その人物への記憶を巡らしている様子だった。

少しほっとしてその白くて細い指先が指す方向に視線を送るとそこには‥‥



.

⏰:08/08/28 19:49 📱:SH706i 🆔:6mqoGmOM


#118 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「洋介‥」



そこには、うなだれた様子でガードレールに座っている洋介がいた。

道路を挟んだ向こう側の道‥

瑞穂が気づいたのが奇跡だ。

「やっぱり!サッカー部の人だよね?」

モヤモヤが晴れてすっきりしている瑞穂。

⏰:08/08/31 01:10 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#119 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしは‥

その隣でただ突っ立っていた。



‥見てしまったから。



洋介の頬を伝う、涙を。



こんな時間の繁華街に、瑞穂を置いてくわけにもいかず‥

あたしは今にも駆け出してしまいそうな足を留めるとに必死だった。

⏰:08/08/31 01:10 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#120 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


‥何で、泣いてるの?



そんな顔、似合わないよ‥



『アイツとは何もないって言ってんじゃん!』

ケバ子の声が、胸の中を掻き乱す。



あの日偶然見てしまった、絡み合う二人の唇‥

.

⏰:08/08/31 01:12 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#121 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
沢村さんの意味深な言葉‥


さっきのケバ子の叫び声に


洋介の歪んだ表情と涙‥



全てが繋がった瞬間だった。




それから、どうやって帰ったかは覚えていない。

⏰:08/08/31 01:13 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#122 [桃色◆OQUMeZqegU]
瑞穂に心配かけないように、中身のない話しをただひたすら話し続けていたような気がする。



何とか瑞穂を家まで送った帰り道‥

携帯を手に取り画面を見つめる。



『お前みたいじゃね?』



嬉しくてつい待受にした虹の写メール‥


嫉妬?不安?後悔?

⏰:08/08/31 01:14 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#123 [桃色◆OQUMeZqegU]
わからない‥

わからないけど、涙が溢れる。

洋介にとって“望月泉”がどんな存在なのか‥

考えなくてもわかる。



あの時瑞穂をその場に残してでも駆け付けなかったのは‥

洋介の口から本当のことを聞くのが怖かったから。


知って、認めるのが怖かった。

洋介の心に、あたしが入る隙間なんてないこと‥

⏰:08/08/31 01:14 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#124 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


“虹に似てる”なんて浮かれてた自分が恥ずかしい。

所詮あたしも、洋介の周りに大勢いる女の子の中の一人に過ぎない。


ちょっとマネージャーってだけで‥

ちょっと放課後待ち合わせてるからって‥‥

ちょっと下の名前で呼び合ってるからって‥‥‥



.

⏰:08/08/31 01:15 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#125 [桃色◆OQUMeZqegU]
『落ちた時は俺がこうやって受け止めてやるからさっ!』



洋介にいつか言われた言葉‥

あの時は素直になれなかったけど、ちゃんと胸の中にしまってあった‥‥


洋介には何でもないセリフでも、あたしにとっては‥



あたしに、とっては‥‥

⏰:08/08/31 01:16 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#126 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



その時

握り締めていた携帯がその場に似合わない軽快なメロディで着信を知らせた。

こんな時に誰とも話す気になれない‥

そう思いながらも画面を見ると、ディスプレイには“園田洋介”の文字。

この期に及んでまだときめこうとする心臓に嫌気がさす。

出るべきか、出ないべきか‥‥

⏰:08/08/31 01:18 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#127 [桃色◆OQUMeZqegU]
涙と鼻水でぐしゃぐしゃのまま、携帯の画面とにらめっこを続ける。

すぐに切れるだろうと思ってみたものの、しばらく着信音は鳴り続ける。

出ても後悔、出なくても後悔‥‥

どうせ残るのが後悔だけなら、あたしは前者を選ぶことにした。



少し震える指先を通話ボタンに押し付ける。

⏰:08/08/31 01:19 📱:SH706i 🆔:E6syv5AE


#128 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

『出るのおせぇよ』

出るなり文句を言われたあたし。


もしかして、まだ泣いてるんじゃないかとか

どうやって励まそうかとか


一瞬でも頭を悩ませた自分がバカらしい。

「‥何?」

『何だよ、俺からラブコールなんて滅多にないんだぜ?もっと喜べよ』

⏰:08/09/01 02:05 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#129 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

さっき見たのは人違い?


そう思いたくなるような洋介の態度に、苛立ちながらも戸惑いを覚える。



「で、何?」

『だからぁ‥聞きたくなっちゃったんだよね、お前の声!』



‥!!



携帯を持つ手がかすかに震えた。

それぐらい、あたしの心を揺さぶる言葉‥

⏰:08/09/01 02:06 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#130 [桃色◆OQUMeZqegU]
耳から脳へ直接響く洋介の声は、なんて甘く刺激的なんだろう。


だけど‥

騙されちゃだめだ。

もう洋介の言葉に期待して、後悔したり落ち込んだりするのは嫌‥



これ以上、本当の洋介を知ってしまう前に‥



これ以上、心が洋介でいっぱいになってしまう前に‥

⏰:08/09/01 02:07 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#131 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「調子いいことばっかり言わないで。この電話だってあたしだけにかけたんじゃないでしょ?もっと自分の気持ちに誠実に生きてみたら?」


思わず言わなくていいことまで言ってしまった。

やっぱり残るのは後悔だけか‥


黙り込んだままの洋介に「じゃあ」と告げる。

携帯を耳から離しても、何も返事は聞こえない。

⏰:08/09/01 02:08 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#132 [桃色◆OQUMeZqegU]
通話時間を示す数字が虚しく時を刻むだけ‥


これ以上は無駄だと自分に言い聞かせて、さっきとは逆に潔く電話を切った。



また現れた虹の写メール‥


洋介が欲しいのは、こんなぼやけた虹じゃないでしょ?

――
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⏰:08/09/01 02:08 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#133 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

こうしてあたしは自分からアイツを突き放すことで自分を守った。

アイツの本心を見抜いたつもりで出た最善の方法‥

だけどそれは、かなりの逆効果だったらしい。



そんなあたしたちに冷たい風が容赦無く吹き付ける。

季節は冬。

あたしの苦手なこの季節に、またしても小さな事件は起きた。

⏰:08/09/01 02:12 📱:SH706i 🆔:O8doJN12


#134 [桃色◆OQUMeZqegU]
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「あずちゃん!どおしたの、その髪!?」

真っ白な息を吐きながら、瑞穂が泣きそうな顔で飛びついてくる。

「昨日やっと美容院行く暇ができたからさ!」

「てっきり伸ばすんだと思ってたのにぃ‥」

プクっと頬を膨らませ、拗ねるような表情であたしを責める瑞穂。

⏰:08/09/02 00:05 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#135 [桃色◆OQUMeZqegU]
よっぽど諦めがつかないのか「せっかく似合ってたのに」とあたしの髪を恨めしそうに見つめている。



‥今日は三学期の始業式。

もう悩むのはやめにして、何もかもすっきりさせたかった。


単純‥かなぁ?


あれから洋介とは連絡をとっていなかった。

⏰:08/09/02 00:07 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#136 [桃色◆OQUMeZqegU]
部活で顔を合わせても、前みたいに言い合ったりすることもなかった。

一度顧問の田辺に『園田はお前がしっかり見とけよ』みたいなこと言われたけど、意味がわからなくて素無視した。


洋介が視界に入る度、まだ心臓は波打つけど‥それも時間が解決してくれる‥

そう思ってた。




.

⏰:08/09/02 00:08 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#137 [桃色◆OQUMeZqegU]
明日の実力テストに向けて、今日は部活なし!

瑞穂と一緒に帰ろうと、昇降口まで並んで歩く。

「湊斗くん、やっぱりうちの高校受けるんでしょ?」

「うん‥みーとならもっと上狙えるんだけどね」

そんなこと言いながらも嬉しそうに頬を染める瑞穂の首には、クリスマスに湊斗くんから貰ったという淡いピンクで両端にボンボリが付いたマフラーが巻かれている。

さすが湊斗くん。

⏰:08/09/02 00:09 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#138 [桃色◆OQUMeZqegU]
瑞穂の可愛いらしさがより引き立つデザイン、色、共に文句なし!



‥なんてバカなことを考えているとふいに誰かと肩がぶつかった。

「あっ、ごめんなさい」

顔を確認する前に謝まると、向こうも「わりぃ!」と謝ってきた。


ん?この声は‥

「てゆうかお前、その髪!」

⏰:08/09/02 00:12 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#139 [桃色◆OQUMeZqegU]
口に手を当て、目を真ん丸に見開いているのは‥


「洋‥介‥」


鈍い痛みが心臓から全身に広がる。

いつか気づかれることだけど、このタイミングではまだ心の準備ができてない。

しかもあたし、今絶対顔引きつってる‥

そう思った瞬間、洋介にぐいっと肩を掴まれる。

⏰:08/09/02 21:15 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#140 [桃色◆OQUMeZqegU]
どうせ似合わないとかなんとか言うんでしょ!?

キッと洋介を睨んだ瞬間

「何で俺の許可無しに切っちゃったんだよ!?」


‥え?


思ってもみない洋介の反応に、思わず開いた口が塞がらない。

まるであたしの髪は洋介のものみたいな言い方。

だけどどうして?

⏰:08/09/02 21:18 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#141 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介には関係ないことじゃん‥


そうは言っても胸の辺りがザワザワして、さっきの痛みなんかどっかへ消えてる。

「どっどうしてあんたに許可がいるのよ?あたしの髪なんだからほっといて!」

やっぱり可愛くないことしか言えないあたし。

でもいいんだ。

もう変な期待持たされたくない。

⏰:08/09/02 21:23 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#142 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしから距離置かなくちゃ‥

「うるせぇ!俺はロングが好きなんだよ!俺のために伸ばしてたんじゃなかったの!?」


‥はっ!?


超自信過剰!!


だけど図星だったりするから何も言い返せないあたし‥

「ちょっと期待しちゃったじゃん‥」

最後に小さくそう呟いてあたしの肩から手を離し、フラフラと下駄箱に向かう洋介。


‥え?

‥‥え?

‥‥‥えぇぇぇええ!?

⏰:08/09/02 21:25 📱:SH706i 🆔:V6lO01Jw


#143 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしを探して瑞穂がこっちへ駆けてくる。

「もぉ‥あずちゃんが隣にいると思ってずっと一人でしゃべってたよ‥ってどおしたの?あずちゃん」

よっぽど恥ずかしかったのか、頬を赤くしたままあたしの様子に驚いている。

それもそのはず‥あたしの顔は、瑞穂の頬に比べものにならないほど、真っ赤になってるはずだから。

見なくてもわかる。

⏰:08/09/04 19:33 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#144 [桃色◆OQUMeZqegU]
マフラーの中に熱がこもって汗をかきそうなほど体温が上がってる。

瑞穂の声が耳に入らないほど自分の鼓動がうるさい‥


『ちょっと期待しちゃったじゃん』


耳鳴りのように頭の中で繰り返されるフレーズ。

同時に浮かぶ洋介のしゅんとした表情‥


“騙されちゃダメ!”


漫画みたいな話しだけど、小さな天使が囁いてる。

⏰:08/09/04 19:33 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#145 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

“いいじゃん!もう一回くらい信じてみれば?”


今度は悪魔‥

あはは、いや笑えないって。


頭から煙りが出そうなほど、あたしの脳内はパンク寸前だった。




何とか正気を取り戻したあたしは、心配で顔を歪ませる瑞穂とバスに乗った。

「さっきのあずちゃん絶対おかしかったもん!熱とかあるんじゃない?大丈夫?」

⏰:08/09/04 19:34 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#146 [桃色◆OQUMeZqegU]
確かにおかしかったよね‥

天使に悪魔‥

いつからあたしは少女漫画のヒロインになったんだ。


あたしの大好きなたれ目を潤ませるほど心配してくれる瑞穂に、相談したいのは山々だけど‥

何をどう話していいかわからない。

もっもちろん、これが‥

初‥恋‥ってわけじゃないけど‥

ひっかかるのはケバ子改め“望月泉”‥

⏰:08/09/04 19:34 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#147 [桃色◆OQUMeZqegU]
安易に想像できる洋介との関係も、本当のところはわからないにしろあの日の涙に嘘はなかった。


「はーぁぁぁ‥」

思わず長いため息が出た。

瑞穂を見れば「やっぱり」という表情で口をぎゅっとつむっている。

「あは‥」

笑ってごまかそうにも無理がある。

⏰:08/09/04 19:35 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#148 [桃色◆OQUMeZqegU]
さっきまで潤んでいた瑞穂のたれ目が、見たこともないほどきりっと上がる。

「あずちゃんが言いたくなるまで待つからいい!その代わりその時は、あたしに一番に話してね?」

そう言うとすぐにまた元のたれ目が戻ってきて、瑞穂は花が揺れるように笑ってくれた。


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⏰:08/09/04 19:36 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#149 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

あの日アイツにあんなこと言われなければ‥

瑞穂が笑ってくれなかったら‥

あたしはきっと、今もこの思いを胸に秘めたままだったと思う。

この小さな事件が起こした奇跡は、あたしにとって大きな一歩へのきっかけになったんだ。

⏰:08/09/04 19:38 📱:SH706i 🆔:npIIKYeA


#150 [桃色◆OQUMeZqegU]
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2月14日、バレンタインデー。

恋する乙女のビッグイベント‥

今までもらうばっかりで、誰かに渡したことなんてただの一度だってない。

毎年一ヶ月先のホワイトデーの方が忙しかったりする。

もちろん洋介に気持ちを伝える気はさらさらなかったし、増してそれが自他共に認めるモテ男相手ならなおさらだった。

⏰:08/09/09 16:24 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#151 [桃色◆OQUMeZqegU]
毎年うちに押しかけてくる中学の後輩たちのために、部活が終わったら早く帰ってあげなくちゃな‥


なんて呑気に考えながら、昼休みで賑わう学食で瑞穂とランチタイムを過ごす。

「今年も余分に作ったから持ってきちゃった」

鞄をゴソゴソする瑞穂。

⏰:08/09/09 16:27 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#152 [桃色◆OQUMeZqegU]
去年はレアチーズケーキ、一昨年はマドレーヌ、その前は‥‥

言い出したら小学生の頃までさかのぼる。

毎年手作りのお菓子を持ってきてくれる瑞穂は、“ついで”とはとても思えないほど綺麗にラッピングをしてプレゼントしてくれる。

今年はケーキ屋さんみたいな箱にピンクのリボンが結んであって、持ち手のところには“あずちゃん大好き!”と書かれたメッセージカードが添えられていた。

⏰:08/09/09 16:33 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#153 [桃色◆OQUMeZqegU]
思わず顔がゆるんでしまう。

「ありがと瑞穂!開けていい?」

瑞穂の笑顔に花が咲く。


やっぱり‥

あたしには貰う役の方が合ってるよな。

とてもじゃないけどこんな可愛いことできない‥


「今年はね、ちょっと頑張っちゃった!」

箱を開けると中にはパン屋さんで見かけるような菓子パンが三つ並んでいた。

⏰:08/09/09 16:45 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#154 [桃色◆OQUMeZqegU]
「おいしそー!すごいね瑞穂ぉ!」

スイーツにはてんで疎いあたしに、瑞穂が嬉しそうに説明をしてくれる。

「これね、コルネって言うの。パイ生地なんだけど膨らますの難しかったんだぁ。中にはチョコクリームが入ってます!」

「へー!ん、おいしぃ!」

いつかあたしにも勇気が持てたら‥その時は瑞穂にレクチャーしてもらおうかな。

⏰:08/09/09 16:53 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#155 [桃色◆OQUMeZqegU]
甘い気持ちをチョコレートに例え、託して気持ちを伝える。

瑞穂の愛を噛み締めながら、漠然とした未来を想像してみる‥


その“未来”がすぐそこまで足音も立てずやってきているなんて、まさか知っているはずもなく‥

⏰:08/09/09 17:04 📱:SH706i 🆔:FHe2bU0I


#156 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



「梓ちゃんはもうチョコレート渡したの?」

爽やかな笑顔であたしにそう聞いてきたのは2年の藤川さん。

沢村さんたちと違って真面目にマネージャー業を務めている彼女とあたしは、部員たちが散らかした部室を毎日二人で片付けてから家に帰る。

藤川さんは、下ろすと肩に着くくらいの髪を部活の時だけ一つに束ねる。

その大人っぽい仕草や人柄も含めて憧れの存在だ。

⏰:08/09/10 19:55 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#157 [桃色◆OQUMeZqegU]
そんな藤川さんが、あたしに想い人がいること前提で、さっきの質問を投げ掛けてきた。

「え?あたっあたしですか?渡す人なんていませんよー」

精一杯、平常心を装ってかわそうとするあたし。

「えー!?どおして?いいの?園田くんに渡さなくて‥」


 !!?


「なっ、なな何がですか?洋介?え?え?」

⏰:08/09/10 19:56 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#158 [桃色◆OQUMeZqegU]
ありえないほどうろたえるあたしを見て、キョトンとしたかと思うとふふふ、とポニーテールを揺らしながら笑う藤川さん。

「あたしてっきり園田くんと梓ちゃんは付き合ってるものだと思ってた‥だけどその様子だと、まだそういう関係じゃないみたいだね」


ま‥まだ?


耳を疑うようなセリフに、言うまでもなくあたしは顔から火を噴いていた。

⏰:08/09/10 19:57 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#159 [桃色◆OQUMeZqegU]
こうなったらもう、笑ってごまかしとくしかない。

「あは、あはは‥」

藤川さんも静かに笑う。

その時、部室のドアが軽快なリズムでノックされた。

あたしも藤川さんもドアの方に視線を移す。

しばらく待ったがノックをしてきた人物が中に入ってくる気配はなかった。

⏰:08/09/10 20:06 📱:SH706i 🆔:3lsGwRtY


#160 [ゆき]
ixen.jp/..

⏰:08/09/10 21:40 📱:SH706i 🆔:9uGKlwQY


#161 [桃色◆OQUMeZqegU]
藤川さんがドアを開けようとしたその時

「英恵?もう終わった?」

外から男の子の声がした。


はなえって‥藤川さんのこと?


あたしが不思議そうな表情を浮かべていると「ちょっとごめんね」と申し訳なさそうに微笑んで、藤川さんは部室の外へ消えて行ってしまった。


もしかして‥彼氏さん?

⏰:08/09/11 19:59 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#162 [桃色◆OQUMeZqegU]
へぇ‥いたんだぁ‥

ってゆうかあんな素敵な人なんだから、いない方がおかしいよね。



一人部室に残されたあたしの頭に浮かぶのは‥

洋介の顔‥

そういえばあれからまともに話してない。

あの日からさらに酷くなった洋介のチャラ男っぷりに、苛立ちよりも戸惑いの方があたしの心を支配していた。

⏰:08/09/11 19:59 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#163 [桃色◆OQUMeZqegU]
自惚れてるわけじゃないけど‥

あたしが髪の毛切っちゃったから?

なんて自分に都合のいいことを、小さい悪魔が囁き続けてる。

もちろん反対側では小さな天使が精一杯反論してるんだけど‥‥



ゼッケンをたたんでカゴにしまいながら、あの日の洋介の寂しげな表情を思い出す。

⏰:08/09/11 20:00 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#164 [桃色◆OQUMeZqegU]
それに加えて藤川さんのさっきの言葉‥

嬉しくないって言ったら嘘になる。

だからと言って調子に乗ってチョコレートを渡しに行けるくらい、あたしの心は頑丈じゃない。

本当は恐いんだ‥

“望月泉”のことだって、結局聞けないままだし。

思わせぶりな態度を取られれば取られる程、期待してしまう自分‥

⏰:08/09/11 20:00 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#165 [桃色◆OQUMeZqegU]
だけど面と向かって確かめる勇気なんてなくて、いつも洋介のせいにして逃げてるのはあたしなのかも。


だけど‥だけどやっぱり‥


答えの出ない螺旋階段のような自問自答を繰り返す。



「はー‥‥‥」


どっちしろ、チョコレートなんて用意してないんだから考えるだけ無駄じゃん。

⏰:08/09/11 20:01 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#166 [桃色◆OQUMeZqegU]
ゼッケンでいっぱいになったカゴを棚に戻そうとしていると、ちょうどドアが開く音がした。

「藤川さん、もう片付いたんで先に帰ってもらっていいですよ」

てっきり藤川さんが戻ってきたんだと思ったあたしは、確認しないまま話しかけた。

‥だけど返事が返ってくる様子はなくて、しんと静まり返った部室内がやけに不気味に思えて後ろを振り返ろうとしたその時‥

ザリっと砂が擦れる足音と同時に、持っていたカゴが急に重みを失った。

⏰:08/09/11 20:01 📱:SH706i 🆔:2MUJFB/6


#167 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
同時に感じたこの香りは‥

「お疲れ」

「よ‥洋介!?」

紛れも無い洋介の、汗と香水が混ざった匂い。

きゅんっと胸が締め付けられる。

心拍数が徐々に上がる。

だってカゴを支える洋介の腕が、あたしの背後から前にある棚に伸びてるんだから‥

つまり抱きしめられる一歩手前みたいな状態。

⏰:08/09/12 19:38 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#168 [桃色◆OQUMeZqegU]
‥たたた耐えられない!!

あたしが耳まで真っ赤になってるのを知ってか知らずか、洋介はひょいっと棚の上にカゴを戻すとぱんぱんっと手をはらい「はいっ」と両手の平を出してきた。


いつか見たようなこの光景‥

反射的に携帯を手渡す。

「ちっがう!」

大声で否定されて固まるあたし。


‥?


.

⏰:08/09/12 19:38 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#169 [桃色◆OQUMeZqegU]
思わず眉間にシワを寄せて、洋介の顔を睨んでしまう。

「鞄の中、机の中、下駄箱‥どこ探しても無かったんだけど」

ますます意味がわからない。

「何が?何か無くしたの?」

あたしのすぐ後ろには棚、これ以上逃げ場はない。

それをいいことに、にじり寄ってくる洋介。

いつもならこれくらいの距離で「キスされるかと思った?」とか「鼻毛出てんぞ」とか言ってくるのに、今日に限ってそんな素振りもない。

⏰:08/09/12 19:39 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#170 [桃色◆OQUMeZqegU]
いつになく真剣な表情の洋介‥

その目に見つめられるとダメなんだ、あたし。

ドクン、ドクンと心臓が波打つ。

そのたびに涙が溢れそうになる。

部室の中は寒いはずなのに、全く寒さを感じない。

ただ目の前の洋介の瞳が、綺麗で‥綺麗過ぎて‥


吸い込まれそうになる。

何だか不思議な感覚に襲われ、無意識に目を閉じようとしたその時‥

⏰:08/09/12 19:40 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#171 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介がいきなり視界から消えた。

と思ったら、足元にあったあたしの鞄の中をあさっていた。

「ち‥ちょっと!何やってんの!?」

ってゆうか、あたし今何想像してた?

洋介が見てなかったからいいものの、自分から目を閉じるなんて‥‥!


「おっ!あったあった!お前なぁ、この俺が直々に貰いに来てやるなんてありがたいと思えよなー」

⏰:08/09/12 19:40 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#172 [桃色◆OQUMeZqegU]
そう言って取り出したのは、昼休みに瑞穂から貰ったコルネの箱だった。

「それはっ‥」

まだドキドキが治まらないのにまたしても胸がドクンと波打つ。


あたしの制止も聞かないで、箱を開けた洋介の顔が歪む。

当然だ。

だって中は空なんだから‥

⏰:08/09/12 19:41 📱:SH706i 🆔:sQLxEbdc


#173 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「何だよこれ」

唇を尖らせて、ムスっとする洋介。

「友達から貰ったの‥」


自ら目を閉じたことがバレてないとはいえ、気まずい空気があたしたちを包む。

あたしを見上げて何か言いたげな洋介。その唇はまだ尖っていて、いつの間にか頬まで膨らんでいる。


どうしよう‥

洋介の行動からして、あたしからチョコを貰える気満々だったみたいだし‥

⏰:08/09/17 23:09 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#174 [桃色◆OQUMeZqegU]
てゆうか、どこまで自信過剰なわけ!?

それ以前にあたしの気持ちバレてんの!!?



混乱が混乱を呼び、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

こんなことなら‥手作りとまではいかなくても、用意しとくべきだった?


なんて訳の分からない後悔までもが押し寄せたその時‥

「だあぁ!もぅ‥あと1つで最高新記録だったのにぃ!!」

迷路をさ迷っていたあたしに、いきなり突き付けられた新事実‥

⏰:08/09/17 23:09 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#175 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
 

衝撃的?

そんなもんじゃない‥


新記録‥新記録‥新記録‥


頭の中で繰り返されるフレーズ。

『ほらね、アンタなんか恋愛対象に見られてるわけないでしょ?』

『もうこれ以上アイツに期待するのはやめましょう』

悪魔と天使の意見が初めて合った‥

⏰:08/09/17 23:10 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#176 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


「‥ははっ」

くだらな過ぎて笑ってしまう。


こんな恋やめてやる。

こんな奴もう知らない。



ゆっくりと洋介に近づき、鞄を手に取る。

中身が飛んでいかないようにファスナーを閉めて‥

洋介のコメカミめがけ、フルスイングで鞄を振り抜いた。

⏰:08/09/17 23:11 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#177 [桃色◆OQUMeZqegU]
「っってっ!」

バコっという鈍い音と共に、洋介の体が床に倒れる。

それだけじゃ足りないあたしは、そのまま洋介に馬乗りになって胸の辺りを力任せに殴り続けた。

「いたたっ!痛い!どうしたんだよ!?」

「‥っか!馬鹿!馬鹿!馬鹿ヤロー!!」


洋介のブレザーに水滴が落ちてシミになる。

「何?お前‥泣いてんの?」

⏰:08/09/17 23:12 📱:SH706i 🆔:N1Om/Le.


#178 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「‥うっ‥っく‥!」

泣くもんか‥っ!

そうは思ってもとめどなく流れてくる涙を止めることなんてできなかった。

「‥あ〜、その、何だ‥」

上半身だけ起こした洋介は、あたしの涙に戸惑っているのか気まずそうに下を向いている。


‥ちょっとは罪悪感くらい感じてるわけ?

⏰:08/09/18 22:08 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#179 [桃色◆OQUMeZqegU]
グスグスと花をすするあたし。

みっともないなぁ‥

よく考えたら有り得ない状態。

いくら頭に血が上ってたからって、この体勢は恥ずかし過ぎる‥

そう思った瞬間、顔から火が出そうになって洋介を押しのけ立ち上がろうとした‥

その時‥

両手を洋介に引き寄せられ、そのまま倒れ込む形になったあたしの体はすっぽりと洋介に包まれてしまったのだ。

⏰:08/09/18 22:08 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#180 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 !?


いきなりの事にわけが分からないはずなのに、一気に上がる心拍数と体温。

同時に感じる圧迫感に、今置かれている状況がやっと把握できる。


あたし‥抱きしめられてるよね?


洋介の鼓動が耳から直接伝わってくる。

悔しいことに、あたしよりもいくらか落ち着いているそのリズムに、なぜだか逆らう事ができなくて‥‥

⏰:08/09/18 22:09 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#181 [桃色◆OQUMeZqegU]
だけどこれってごまかされてるだけなんじゃ?

そう思ったらまたも怒りが込み上げてきた。

「‥な‥して‥」

「 へ? 」

「離してっ!!」

ジタバタともがいて洋介の腕を解こうとする。

だけどそれ以上の力で抱きしめてくる洋介に、あたしの心臓は一生分を使い切るんじゃないかと思うくらいドキドキしてしまう。

⏰:08/09/18 22:10 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#182 [桃色◆OQUMeZqegU]
胸が苦しくて息ができない‥

洋介の力が強いから?


ううん‥

きっと洋介が好きだから。

どうしようもないのはあたしだ‥

何でわざわざこんな奴、好きになっちゃったんだろう。


「なぁ、梓‥」
.

⏰:08/09/18 22:13 📱:SH706i 🆔:iKCs.Ct2


#183 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
洋介のかすれた声にゾクリとしてしまう。

こんな感覚は初めてで、何だか頭がボーっとする。


時間だけが過ぎてゆく‥


あたしはただじっとしているしかできなくて、さっきの洋介の言葉の続きを聞き出せる程の余裕なんて全く持っていなかった。


冬の夜は静かだ‥

.

⏰:08/09/19 23:36 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#184 [桃色◆OQUMeZqegU]
ここが部室だってことを忘れてしまいそうになる。

お互いの鼓動が交差する‥

夢見心地ってこういう事をいうんだろうか‥?


その時、かすかに聞こえた砂がコンクリートにこすれる音‥


思わず洋介を突き飛ばして、その場から飛びのく。


 ドクドクドクドク‥

.

⏰:08/09/19 23:37 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#185 [桃色◆OQUMeZqegU]
まだやかましい自分の鼓動に目眩がしそうだ。

胸に手を当て落ち着く努力をしていると、部室のドアがゆっくりと開いて外の冷たい風が舞い込んで来た。

一気に冷える部室内。

お陰で少し、頭がすっきりする。


「あれ?園田くん?」

やっと戻ってきた藤川さんの後ろから、彼女よりも頭一つ分飛び出た大きな影がゆらりと揺れる。

⏰:08/09/19 23:38 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#186 [桃色◆OQUMeZqegU]
「園田が‥いるの?」

あっ、さっきの声の人だ。

さっきよりもはっきり聞こえたその声に、聞き覚えがあることに気づく。

 だけど、誰だっけ?

あたしが答えを出すよりも早く、まだ床の上に座っていた洋介が体を起こしてその人物の名を呼んだ。

「おっ大谷さん!‥お疲れ様っス!」


 え!?

大谷さんって副キャプテンの!?

⏰:08/09/19 23:38 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#187 [桃色◆OQUMeZqegU]
うろたえるあたしの目の前に現れたのは、寡黙なことで有名な大谷彰先輩、その人だった。

‥てことは、藤川さんの彼氏って大谷先輩!?

「片付け、終わったんなら早く帰れよ」


低くてよく響く大谷先輩の声に、身が引き締まる思いがした。


良かった‥

さっきのあんな場面見られなくて‥‥


洋介の顔をチラリと見ると、考えてることはあたしと同じみたいで‥その場に固まってしまっている。

⏰:08/09/19 23:39 📱:SH706i 🆔:4hYh8Ti.


#188 [桃色◆OQUMeZqegU]
「梓ちゃん、全部片付けてくれたんだね‥園田くんも、待たせてごめん」

申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせる藤川さん。

「いえ、コイツが勝手に入って来ただけで!これはっ、その‥」

しどろもどろなあたしを見て、藤川さんにまたクスリと笑われてしまった。

「もう外真っ暗だよ、出よっか」

⏰:08/09/21 23:49 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#189 [桃色◆OQUMeZqegU]
藤川さんに促されるまま、さっき投げ捨てた自分の鞄とまだボーッとしている洋介の鞄を肩にかけると、そのまま洋介の背中を押し出すようにして部室を出た。



「ふーぅぅぅ‥‥」

部室のドアに鍵をかけると、詰まっていた何かがため息になって宙を白くした。


そこで初めて気づいた違和感‥

⏰:08/09/21 23:50 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#190 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
 ん?

洋介の鞄がやたらと軽い‥

“最高新記録だったのにぃ!”

あの名ゼリフが頭をよぎる。

‥あれ?

‥‥あれ??

「園田‥もう遅いから瀬能を家まで送ってやれ」

一人混乱状態の中にいるあたしに突然、大谷先輩の有無を言わさぬ重たい声がのしかかる。

⏰:08/09/21 23:51 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#191 [桃色◆OQUMeZqegU]
当然首を横に振る間もなく、洋介が二つ返事で快諾せざるを得ない状況‥


校門の前で先輩たちに別れを告げ、二人の背中を洋介と見送る。


「あービックリしたぁ!大谷先輩と藤川さんって付き合ってたんだね‥」

そう言って振り返ると、あたしの瞳を真っすぐに見つめる洋介がいた。

そういえばさっきまで、あの腕の中にいたんだよね‥


何だか急に恥ずかしくなって、急いで前に向き直る。

⏰:08/09/21 23:52 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#192 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



「部内恋愛もありだな」

暗い夜空に洋介の声がぽつりと響く。

思わずドキリと肩を強張らせてしまうあたし‥


「誰もお前となんて言ってねーけど?」

 は‥はぁっ!?

肩にかけていた洋介の鞄を、思いっ切り振りかざして投げ付けてやろうとしたその時‥

⏰:08/09/21 23:53 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#193 [桃色◆OQUMeZqegU]
やっぱり鞄が軽すぎることが気になって、中身を確かめようとその場にしゃがみ込む。

制止しようと手を伸ばす洋介の姿が見えたけど、おかまいなしに一気にファスナーを右に引いた。


 やっぱり‥


そこにはペンケースとプリントが数枚、あとはMDとウォークマンしか入っていない。

“あと一つで最高新記録”

洋介、確かにそう言ってたよね‥?

⏰:08/09/21 23:54 📱:SH706i 🆔:rn0IEmUk


#194 [桃色◆OQUMeZqegU]
「どういうこと?」

今度はあたしの唇が尖る。


わけ分かんない。


他に袋も持ってないし‥

どっかにまとめて置いてあるとか?

それかもしくは‥

「そういうことだよ!」

頭をポリポリかきながら、照れ臭そうに笑う洋介。

⏰:08/09/22 21:09 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#195 [桃色◆OQUMeZqegU]
「そういうことってどういうことよ!」

またからかってるなら今度こそ承知しないんだから‥
眉間にシワを寄せ、警戒心をあらわにする。

洋介はまたも頭をかいて

「どうもこうもねーよ!ほら、帰るぞ!」

片方だけポケットに手を突っ込んで、もう片方の手を差し延べてくる。

⏰:08/09/22 21:09 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#196 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

  !!?


 何? なになに!?

 手!?


「鞄‥返してくれる?」

真顔でそう言われて、初めて自分の勘違いに気づく。

途端に熱くなるあたしの頬‥

無言で洋介に鞄を渡すと、ニヤッと笑った洋介にくしゃっと頭を撫でられた。

⏰:08/09/22 21:12 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#197 [桃色◆OQUMeZqegU]
頬だけじゃなく、顔全体が熱くなる。


「手、繋ぎたかった?」

意地悪そうな八重歯が光る。


 !!


図星をつかれてさらに上がる心拍数。

「ば‥っばか!!」

ニヒヒと満足そうに笑う洋介の背中を平手で思い切りひっぱたく。

それでもまだ笑い続ける洋介に、何だかもう‥あたしまで笑ってしまうしかなかった。

⏰:08/09/22 21:14 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#198 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



それから本当に家まで送ってくれた洋介は、とうとう家に着くまで“新記録”の真意を教えてくれなかった。

いくら聞いてもはぐらかすばかりで、半ば諦めかけたその時‥

「俺さ、欲しいと思った女から‥貰ったことないんだ、チョコ」

あたしと目を合わす事なく、足元を見ながら話す洋介。

⏰:08/09/22 21:15 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#199 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 え?

何?どういうこと?


「言っとくけどなぁ、他の全部断ったんだぜ?なのにお前っ‥‥‥まぁいいや」

そう言うとあたしの前まで来て、ゆっくりとあたしの肩に手を沿えてきた。


 ま‥ままままさか!


そう思って身構えするも、軽くデコピンをお見舞いされて、目を開けると“命がけの笑顔”を向ける洋介が
.

⏰:08/09/22 21:16 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#200 [桃色◆OQUMeZqegU]
「チョコくれなかったからキスしてやんないっ!じゃなっ!」

捨てゼリフのようにそう言って、風のごとく走り去って行ってしまった。


 んな‥なななな

 なんなんのよー!!!


もちろん心臓バックバクのあたしは、デコピンされた額よりも結んだ唇に力が入り過ぎていて‥

洋介の背中がどんなに小さくなっても、見えなくなるまで目を離すことはしなかった。

⏰:08/09/22 21:16 📱:SH706i 🆔:SgOTXqmI


#201 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

――
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今でも思い出す部室でのくすぐったい思い出と、別れ際のあの“命がけの笑顔”‥

家までの帰り道、バスの窓側に座らせてくれたこと、

さりげなく車道側を歩いてくれたこと、

今も変わらないアイツの優しさに、あの頃のあたしは意地を張るばかりで‥

⏰:08/09/24 21:50 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#202 [桃色◆OQUMeZqegU]
そんなあたしのどこを好きになってくれたのか、あたしが知るのはもう少し先の話し。



季節は冬から春へ‥

三月三日、洋介の誕生日。

女を口説くため、わざわざ女の子の日に生まれたアイツにも、思うことはあったようで‥


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―――――
――

⏰:08/09/24 21:51 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#203 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

「もう三月かぁ‥一年生も終わりだね」

瑞穂が窓の外を眺めながらぽつりと呟く。

「いいじゃん!四月からまた湊斗くんと通えるんだし」

「そ、それはそうだけど‥あずちゃんとまた同じクラスになれるかなって‥」

相変わらず可愛い事しか言わない瑞穂。

⏰:08/09/24 21:53 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#204 [桃色◆OQUMeZqegU]
あたしに少しでもこんな可愛い気があったら‥洋介への思いも、もっと上手に表現できるのかなぁ‥?


三月‥卒業の季節。


 “望月泉”


彼女も卒業するんだろうか?

校内で彼女を見たのは男子トイレでの一件だけで、学校集会やその他の行事を思い返しても、やっぱりその姿を見た記憶がない。

もしかしたら、もうすでに辞めちゃってるのかも‥

⏰:08/09/24 21:54 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#205 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

洋介は最近ボーっとしてることが多くて、そういえばバレンタイン以来喧嘩もしてない。

あの部室での出来事が夢だったんじゃないかと思う。


“部内恋愛もありだな”


藤川さんと大谷先輩を見ていると、いつもあのセリフを思い出す。

⏰:08/09/24 21:54 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#206 [桃色◆OQUMeZqegU]
洋介‥

どんなつもりで言ってくれたの?

期待してていいの‥?



なんて‥

これから何が起こるか全く知らないで、自分に都合のいい事ばかり考えてたあたし。




今日も廊下で洋介を待つ。

付き合ってもいないのに、待ち合わせて部室に行くなんてやっぱり変だよね‥

⏰:08/09/24 21:55 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#207 [桃色◆OQUMeZqegU]
壁にもたれてそんな事を考えていると、どこからともなく香水の香りが漂ってきた。

化粧品に全く疎いあたしには、キツく感じるこの香り‥

あんまり好きじゃないな。

どんどん強くなる香りに、頭がくらくらしてしまう。

「あのぅ、すいません」

いきなり聞こえた鼻にかかった甘ったるい声‥

⏰:08/09/24 21:56 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#208 [桃色◆OQUMeZqegU]
顔を上げると、ふんわり巻いた明るい色の髪を人差し指に絡めながら、あたしの顔ををまじまじ見つめる女の人がいた。

「あなたが瀬能梓ちゃん?」

距離が近すぎて一瞬戸惑ってしまったが、今目の前にいるのはまさに‥

「望月泉です!ちょっとお時間ありますかぁ?」

紛れも無く彼女だった。


 ???


望月泉が一体あたしに何の用!?

⏰:08/09/24 21:57 📱:SH706i 🆔:FF7Tazu.


#209 [桃色◆OQUMeZqegU]
渦巻く疑問に飲み込まれそうなあたしを、強引に引っ張って行く望月泉‥

「え!?ち、ちょっと待ってください!!」

「いいから、いいから」

彼女の髪が揺れる度、香水の香りが鼻孔をつく。

抵抗する気力を失ったあたしは、されるがままに付いて行った。




「さてと、ごめんね!急に呼び出して」

着いた先は三年生の教室。

⏰:08/09/26 14:07 📱:SH706i 🆔:oJZUcPwU


#210 [桃色◆OQUMeZqegU]
中庭側の日当たりのいい場所だった。

無言のまま望月泉を見つめるあたし。


‥何を言ったらいいのかわからない。

というかこの状況がわからない。

「あれっ怒っちゃった?」

大袈裟に両手を広げ、口の前でヒラヒラさせている。

んー‥、クリスマス前に見かけた時とは全然違うブリっ子キャラに、正直戸惑いを隠せない。

⏰:08/09/26 14:08 📱:SH706i 🆔:oJZUcPwU


#211 [桃色◆OQUMeZqegU]
「あのぅ‥何でしょう?」

漫画によくある“呼び出し”の類いでもないようだし‥

「梓ちゃんって呼んでもいい?泉のことも泉ちゃんって呼んでね」

あたしの質問には答えず、ニッコリと笑う泉ちゃん。

初めてまじまじと見る泉ちゃんの顔は、日本人離れしていて、もしかしたらハーフやクオーターなのかも‥と思わせるくらい整った顔立ちだった。


‥洋介が泣くほど好きな泉ちゃんは、やっぱり可愛い。

⏰:08/09/26 14:08 📱:SH706i 🆔:oJZUcPwU


#212 [桃色◆OQUMeZqegU]
今から何を言われるんだろう‥


“洋介はあたしのだから”

“あんたには渡さない”

“うざいんだよ”


何通りもの予想をしてみる。

だけどどれもしっくりこないまま、泉ちゃんが口を開いた。


「あのね‥梓ちゃんに、お願いがあるんだ‥」

⏰:08/09/26 14:09 📱:SH706i 🆔:oJZUcPwU


#213 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

ほら来た‥!

おそらくこの続きは

“洋介にこれ以上近づかないで”‥


覚悟を決めて目をつむる。


「洋ちゃんを‥洋ちゃんをお願いします!」


 !?


 え?よろしく??


 え? えぇ??


つむっていた目をそろりと開けると、頭を下げる泉ちゃんの姿。

わけのわからない展開に、頭が全然ついていかない。

⏰:08/09/26 14:10 📱:SH706i 🆔:oJZUcPwU


#214 [桃色◆OQUMeZqegU]
「ど、どういうことですか?ていうか、頭‥上げてください」

そっと泉ちゃんの肩に触れる。

「へへっ!やっぱり梓ちゃん、いい子だった」

そう言ってゆっくり顔を上げた泉ちゃんは、満面の笑みを向けてきた。


知れば知るほどわからなくなる“望月泉”という人物‥‥


もしかして‥いい人?


戸惑いながらも思わず安堵の笑みを浮かべてしまう。

⏰:08/09/27 14:12 📱:SH706i 🆔:UAXeUFOI


#215 [桃色◆OQUMeZqegU]
向かい合って椅子に座り、しばしの沈黙が二人を包む。

中庭にほとんど人通りはなく、グラウンドの声も届かない。

部活のことが気になったけど、それよりも今はここにいることを優先させたかった。




「あのね‥」

沈黙を破ったのは、またしても泉ちゃんの方だった。

うつむいて、上履きをパタパタさせながら話し始める泉ちゃん。

⏰:08/09/27 14:12 📱:SH706i 🆔:UAXeUFOI


#216 [桃色◆OQUMeZqegU]
「洋ちゃんとはね、幼なじみなんだぁ。小さい頃からいつもそばにいて泉のこと守ってくれた。

中学まではね、泉も洋ちゃんのこと‥好きなんだと思ってたの。だけど‥‥

出会っちゃったんだよね、今の彼氏に。

それからは洋ちゃんのこと‥ううん、それまでもきっと弟みたいにしか思ってなかった。

だけど洋ちゃんの気持ち利用して、寂しい時だけ洋ちゃんに甘えて‥

泉、最低なことしてきた」

⏰:08/09/27 14:13 📱:SH706i 🆔:UAXeUFOI


#217 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

いつの間にか涙声になった泉ちゃんは、上履きをパタパタするのもやめて、短いスカートの裾をぎゅっと掴んでいた。

あたしは‥

はい、とか はぁ、とか相槌を打つだけで、おおよそ予想はついていた二人の仲を泉ちゃんの声に乗せて想像していた。


きゅっと胸を締め付けるこの感覚は‥

きっと嫉妬というものだろう。

それでも知りたいと思うあたしは、バカなんだろうか‥?

⏰:08/09/27 14:13 📱:SH706i 🆔:UAXeUFOI


#218 [桃色◆OQUMeZqegU]
「それでね、決めたの!」
一層強く掴んだスカートの裾をぱっと払って顔を上げた泉ちゃんの目には、大粒の涙が溜まっていた。

「最近の洋ちゃんね、梓ちゃんの話ししかしないんだぁ‥ヤキモチ妬いちゃうけど、それって泉の我が儘なだけなんだよね。

泉が変われば洋ちゃんも変わると思うんだ。

だから梓ちゃん‥洋ちゃんを、洋ちゃんをよろしくお願いします!」

⏰:08/09/27 14:14 📱:SH706i 🆔:UAXeUFOI


#219 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
もう一度頭を下げた泉ちゃんのスカートに、涙がパタリと音を立てて落ちた。


‥いくら泉ちゃんにそう言われても、洋介の気持ちがわからないから「はいそうですか」と引き受けるわけには当然いかない。


しぶるあたしを見かねたのか

「大丈夫!昨日ちゃんと洋ちゃんと話し合ったから。洋ちゃんもそれでいいって言ってたし!」


 ん?


じゃあなんで洋介が直接言ってこないわけ?

⏰:08/09/28 11:08 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#220 [桃色◆OQUMeZqegU]
考え込むあたしに泉ちゃんは立ち上がって

「梓ちゃんも、洋ちゃんのことが好きなんだよね?

じゃあ泉がいない方がいいでしょ?」

それはまぁそうだけど‥

なんだか鬼気迫る様子の泉ちゃんに驚きつつも、そんなことを思ってしまう。

だけど曖昧な返事しか返さないあたしに、納得がいかないのか泉ちゃんは唇を噛んで明らかにイライラしている様子だった。

⏰:08/09/28 11:08 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#221 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「泉‥ちゃんの気持ちはわかりました。だけど洋介がいないんじゃ勝手にそんなこと決められません。悪いですけど今日はこれで」

早口でそう言ってあたしも急いで席を立つと、後ろからガッと腕を掴まれた。

ゾッとする感覚が背後を襲う‥

そろりと後ろを振り返ると

「あ、ごめん!何でもないの‥っ」

⏰:08/09/28 11:11 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#222 [桃色◆OQUMeZqegU]
どこかおかしい泉ちゃんはあたしの腕から手を離すと、取って付けたような笑顔を浮かべて両手で否定の意を表している。


 ‥?


時計を見ると四時を回っていた。

これ以上ここにいても、いい事なんてなさそうなので早々と教室を出て行った。



―ガタガタッガシャーン!

.

⏰:08/09/28 11:11 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#223 [桃色◆OQUMeZqegU]
しばらくしてから廊下に物凄い音が響いた。

思わず跳びはねた心臓と一緒にあたしの体も宙に浮いた。

振り返っては見たものの、まさかそれが泉ちゃんの仕業だなんて思ってもみなかったあたしは、ただ単に何かが倒れたのだろうと思い込んで部活に向かった。




グラウンドには部員と共に藤川さんの姿。

⏰:08/09/28 11:12 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#224 [桃色◆OQUMeZqegU]
「すいません!ちょっと先生に呼び出されてて‥」

そう言って藤川さんの元へ駆け寄ると

「あれ?園田くんもまだ来てないからてっきり二人一緒なのかと思ってた」

遅れたことを咎めることもなく天使のような微笑みをくれる藤川さんにホッとしながらも、洋介のことが心配になる。

顧問の田辺もあたしを見つけるなり

「おい、園田はどうしたぁ?」

なんて怒鳴ってくる。

⏰:08/09/28 11:12 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#225 [桃色◆OQUMeZqegU]
まさかまだあの場所で待ってる!?


焦ったあたしは何も告げずにその場からダッシュで校舎に向かった。




「洋介ぇ?」

いつもの待ち合わせ場所に来てみるも、その姿はやっぱりなかった。

携帯に連絡しようと画面を見ると、いつ届いたのかメールが一件届いていた。


  『 どこ? 』


洋介からの素っ気ないメール。

⏰:08/09/28 11:13 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#226 [桃色◆OQUMeZqegU]
時間を見ればついさっきだ。

泉ちゃんと話していた教室からだと、待ち合わせ場所は通らない。

なのに立ち寄らなかったことを今さら後悔する。


キョロキョロ辺りを見渡すが、やっぱり洋介らしき人影はない。

探すのは諦めて携帯に連絡を入れると、しばらくコール音がした後にいきなり留守電に切り替わってしまった。


「‥‥‥‥‥‥」


なんだか嫌な予感がする。

⏰:08/09/28 11:14 📱:SH706i 🆔:2lNMyPho


#227 [桃色◆OQUMeZqegU]
教室まで探しに行こうかとも考えたけど、さすがに気が引けてグラウンドに戻ることにした。




その日、とうとう洋介が部活に現れることはなかった。




部活が終わって片付けも済ませ、藤川さんといつものように校門で別れる。

別れ際
.

⏰:08/09/29 21:30 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#228 [桃色◆OQUMeZqegU]
「園田くんと何かあった?」

あえて“心配はしてないよ”という表情でやわらく微笑む藤川さんに、全て話してしまいたい衝動に駆られたけどそうなれば洋介と泉ちゃんの関係まで説明しなきゃならないし‥

それに時間ももう遅い。

きっと今日も大谷先輩が待ってるだろうから

「今日一度も顔合わしてないから、気になっただけです」

そう言ってあたしも何でもないフリをするしかなかった。

⏰:08/09/29 21:31 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#229 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

一人で抱え込むには大きすぎるこの胸のモヤモヤは、いつか晴れる時が来るんだろうか‥‥


今まで一度だって部活を休んだことのなかった洋介が今日は無断で休んだ。

それだけでも事件なのに、思い当たる原因があるから余計に胸がざわめく。


 ‥洋介‥

.

⏰:08/09/29 21:33 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#230 [桃色◆OQUMeZqegU]
信じてていい?


そう思ってみても、一体何を信じればいいのかもわからない。

そもそも信じろなんて言われてないし‥


「はー‥‥」


ため息をつきながら校舎を睨む。

‥さすがにもう、いるわけないか。

夜の校舎の不気味さに、思わず身震いしながらマフラーをきつく巻き直す。


その時だった
.

⏰:08/09/29 21:34 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#231 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

また、あの香り‥‥



 “幼なじみなんだ”

“気持ち利用して”

 “梓ちゃんの話ししか”

“よろしくお願いします”

 “泉がいない方が”



泉ちゃんとの会話が一気に脳内を駆け巡る。

同時にあの時掴まれた腕の当たりが疼いた気がした。

⏰:08/09/29 21:35 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#232 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


思わず校門の影に隠れて息を殺す。

何となく、もうあの人と関わっちゃいけない気がしたから‥‥

どんどん上がる心拍数。

暑くなんてないはずなのに、首元と手の平にじんわりと嫌な汗が滲む。

震える指先を合わせながら、できるだけ体を縮こまらせる。


―ザッザッザッ‥


冬の夜に響く足音は何故か聞き覚えがある気がした。

⏰:08/09/29 21:35 📱:SH706i 🆔:.HIHz0ig


#233 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
ゆっくりと顔を覗かせる。

暗くてよく見えないけど、あの背丈‥あの歩き方‥


「‥よぉ‥すけっ」

考えるよりも先に声が出た。

震えてしまったその声は、きっと寒さだけのせいじゃない。

洋介はいきなり呼ばれて驚いた様子だったけど、すぐにあたしだと気づいてそばまでやって来た。


「梓ぁ?どうしたんだよ、こんなとこで」

⏰:08/09/30 21:30 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#234 [桃色◆OQUMeZqegU]
校門のそばの植え込みから現れたあたしに、洋介は少し戸惑っている。

目は泳いでいて今日は全くあたしの姿を捕えない‥

何だかそれが無償に悲しくて泣きたくなる。


そういえばあたし、どうして隠れてたんだっけ?


そう思った時、またしても鼻をかすめるあの香り‥

どうして洋介から泉ちゃんの香りがするの‥?


“泉が変われば洋ちゃんも変わる”

あの人確かにそう言ってたよね?

⏰:08/09/30 21:31 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#235 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
もう‥わけがわからない‥

あの香りがするたびに、頭がガンガンして割れそうになる。


やっぱりこの香り‥好きになれない‥


洋介は何を考えているのかポケットに手を突っ込んだまま、ただひたすら白い息を吐いている。

「今日‥」

言いかけて迷う。

⏰:08/09/30 21:31 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#236 [桃色◆OQUMeZqegU]
泉ちゃんに呼び出されたこと‥言ってもいいんだろうか?

だけど何故だか今日の洋介は好きじゃない。

そのまま背を向け別れも告げずに行こうとすると

「お、おい‥何だよ?」

追いかけてくる洋介にイライラがおさまらない。

「何でもない、忘れて」

早足になるあたしの肩に、洋介の手がかかる。

⏰:08/09/30 21:32 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#237 [桃色◆OQUMeZqegU]
「とりあえず、送るべ?」
そう言ってまたいつかみたいに車道側に回った洋介。



この世で一番見たくないものを見た瞬間だった。



外灯に照らされた洋介の首元‥



赤く滲んだキスマーク‥


.

⏰:08/09/30 21:32 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#238 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
同時にあの人の笑い声が聞こえた気がした。

頭をハンマーで殴られたような感覚‥

ううん、そんなの嘘。


何も感じない‥

何も聞こえない‥‥



目の前が、真っ暗だ。

⏰:08/09/30 21:33 📱:SH706i 🆔:loenBkT2


#239 [桃色◆OQUMeZqegU]
 



それからどうやって家に帰ってきたのか‥

所々しか思い出せない。


追いかけてくる洋介を、振り切って‥振り切って‥バスに乗った‥‥


気づいたら自分の部屋にいて、体中の力が抜けて動けなくなっていた。


あの時以来の衝撃‥


絡まる二人の姿が甦る‥

⏰:08/10/01 19:23 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#240 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
 

 やめて!

見たくない!!

‥洋介っ!

‥‥洋介っっ!!



呼吸が乱れて上手く息ができない。

苦しい‥

痛い‥

胸が、痛い‥

⏰:08/10/01 19:23 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#241 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

「うぅ‥っく!うぅぅ‥」

声にならない声は、喉の奥に引っ掛かって我慢するほど涙が溢れる。


その時‥


体全体をふわっと柔らかい感覚に包まれた。


 ?


「泣きたい時はなぁ、思っきり泣け。じゃないと涙ってのは止まんねぇぞ」

「‥なぎっ‥にぃ‥?」

⏰:08/10/01 19:24 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#242 [桃色◆OQUMeZqegU]
毛布を頭から被せられ、その姿を確認することはできないけど‥

頭をぽんっとなぜてくれるこの感覚、声‥

それはあたしの四つ上の兄ちゃん、渚のものだった。


「泣ききったら俺んとこ来い。何でも聞いてやっから」

そう言うと渚兄は部屋から出て行き、静かにドアを閉めてくれた。


渚兄の優しさが暖かくて‥


あたしは声の限り泣いた。

⏰:08/10/01 19:24 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#243 [桃色◆OQUMeZqegU]
毛布に顔を思い切りうずめて大声で叫んだ。




ねぇ、洋介‥

何を信じたらいい?

洋介の言葉は全部嘘なの?

あたしのこと本当はどう思ってる?

望月泉‥

あの人は一体何がしたいの??

.

⏰:08/10/01 19:25 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#244 [桃色◆OQUMeZqegU]
 




 



――――‥‥‥

どれくらい泣いたのか‥


不思議だ。

涙ってものは本当に止まるらしい。

ヒクヒクとしゃっくりする度に、勝手に息を吸い込んでしまう。

⏰:08/10/01 19:26 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#245 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「ふー‥‥‥」

肺の中が空になるまで息を吐き出す。



洗面所に行き顔を洗う。

酷い顔‥‥鏡に映った自分を見て、思わず吹き出しそうになる。

「おっ泣いたカラスが何とやら‥しっかしお前、ブサイクだなぁ」

心配して来てくれたのか、渚兄が鏡越しにイヤミをたれてくる。

⏰:08/10/01 19:27 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#246 [桃色◆OQUMeZqegU]
鼻に思いっきりシワを寄せて「イー!!」をしてやる。


ほんの少し、気分が軽くなっている自分に気づく。

「バカたれ」

フっと笑った渚兄に、ぽかんと頭を叩かれる。

出た‥渚兄の“バカたれ”

口は悪いけど優しい渚兄の、最大級の愛情表現‥

だとあたしは思ってる。

⏰:08/10/01 19:29 📱:SH706i 🆔:EavP5aJg


#247 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

「仏間、行くか?」

穏やかな渚兄の声に、コクリと頷き付いて行く。

あたしが泣いたり落ち込んだりした時は、いつも必ず仏間で話しを聞いてもらう。

何で仏間なのかって?

渚兄いわく

「俺だけじゃ頼りないからご先祖様の力も借りる」


‥のだそうだ。

よくわからないけど、確かに仏間の静かな雰囲気は心を落ち着かせてくれる。

⏰:08/10/03 20:36 📱:SH706i 🆔:CNPraxg6


#248 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
座布団に座り、うつむいたまま膝を抱える。

ヒーターをつけてくれた渚兄が、少し離れたところであぐらをかく。


「で?今回はどした?あの泣きっぷりじゃあ友達とケンカ‥ってわけでもなさそうだけどな」

片方の眉だけをいやらしい角度に吊り上げて、ニヤニヤしながら聞いてくる渚兄の言葉に、ムッとしにながらも思わず顔が赤くなる。

その瞬間嫌な予感があたしを襲う。

⏰:08/10/03 20:37 📱:SH706i 🆔:CNPraxg6


#249 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 しまった‥!


「‥おい、マジかよ!」


―パキッ‥パキパキッ


口をワナワナ震わせて、両手の関節を豪快に鳴らす渚兄。

背後には般若のお面が見える‥‥


 ヤバイっ!


そう思ってみても、時すでに遅し‥

「どこのどいつだぁあ!?うちの妹泣かせやがった糞野郎はぁああ!!!」

⏰:08/10/03 20:38 📱:SH706i 🆔:CNPraxg6


#250 [桃色◆OQUMeZqegU]
容赦ない渚兄の怒号が仏間全体‥いや家全体に響き渡る。

襖が少し揺れたように見えたのは、あたしの気のせいであってほしい‥


「おっ落ち着いて渚兄!違うんだってば!‥あれ?違わないか‥だけどとにかくっっ」

「いいからその糞野郎呼んで来いぃぃぃ!」

血走った目にさっきまでの温厚さは微塵もない。

⏰:08/10/03 20:39 📱:SH706i 🆔:CNPraxg6


#251 [桃色◆OQUMeZqegU]
こうなると手がつけられない渚兄には、もう奥の手を使うしか‥ない。

「だから人の話し聞けって言ってんでしょ!?梢さんに言い付けるよ!!?」


“梢さん”とは渚兄の彼女。

まだ一度しか会ったことないけど、とっても綺麗で優しい、渚兄には勿体なさ過ぎるような人。

梢さんにだけは頭が上がらない渚兄には、これが一撃必殺なのだ。

⏰:08/10/03 20:40 📱:SH706i 🆔:CNPraxg6


#252 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

だけど今回ばかりは渚兄も退かない。

「あ?梢が恐くて妹守れるかっつーの!」

そう言って詰め寄ってくる渚兄‥

あぁ、ご先祖様‥お助けください‥‥

あたしがまた違う意味で涙を流しそうになったとき、天の助けか、はたまたご先祖様の御加護なのか‥音もなくその人は現れた。


「私が、どうか‥した?」

⏰:08/10/04 12:58 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#253 [桃色◆OQUMeZqegU]
「こっこここ梢ぇ!?おまっ!なんでここにっっ!」

尻もちを付いた渚兄は、後ずさるようにして驚愕の表情を浮かべている。

打って変わってそよ風のように現れたその人は、今日も綺麗で凛としていた。

その姿はまるで聖母マリアのよう‥


「おばさまがお夕飯に呼んでくださったの。それより渚くん、私との約束‥忘れたなんて言わないよね?」

 あれ?
.

⏰:08/10/04 13:01 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#254 [桃色◆OQUMeZqegU]
よく見るとマリア様のお面を被った‥般若が見える‥


思わず身震いてしまう。

それくらい圧倒的な威圧感を持った梢さんに、さっきまでの勢いはどこへやら‥

すっかり意気消沈している様子の渚兄。

頭をガリガリやりながら、ちょこんと正座なんかしちゃってる。

⏰:08/10/04 13:03 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#255 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「‥何かすいません、ありがとうございました」

「私こそ、勝手に入って来てごめんね?だけど渚くんの雄叫び聞いたらいてもたってもいられなくって‥」

「いやっそんな!助かりました!もし梢さんが来てくれなかったら今頃どうなってたか‥」

大袈裟に手をガクガク震わせるあたしに、笑顔を返す梢さん。


やっぱりその姿はマリア様そのものだ‥

⏰:08/10/04 13:04 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#256 [桃色◆OQUMeZqegU]
「渚くん、次またこんなことがあったらその時は‥わかってるよね?」

「‥‥‥」

「お返事は?」

「‥‥‥‥」



「プ‥‥っ!」

思わず吹き出してしまったあたし。

すかさず睨んでくる渚兄の視線から、逃げるようにして梢さんの後ろに隠れる。

気まずい空気が仏間を包む。

⏰:08/10/04 13:06 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#257 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「だぁああ!もぅ、わぁったよ!だけど梓を泣かせた奴は許せねぇ‥」

そう言うと渚兄は立ち上がり、窓を開けてタバコを一本取り出した。

「梓ちゃん、泣かされたって‥」

驚いた表情でこっちを振り返った梢さんに、苦笑いしかできないあたし。


これで話さなかったら余計に心配かけるだけ‥だよね

意を決して全て話す決心をした。

⏰:08/10/04 13:07 📱:SH706i 🆔:dS.9ZrzE


#258 [桃色◆OQUMeZqegU]
 





――――――――‥‥


「‥やっぱり‥許せねぇ、その洋介とかいう野郎‥」

「渚くん、タバコ吸い過ぎよ‥」

空になったタバコの箱を握り潰す渚兄の顔色が、みるみるうちに赤くなる。

「ひとつ、聞いていい?」

そんな渚兄とは打って変わって至って冷静な梢さん。

⏰:08/10/07 00:50 📱:SH706i 🆔:WUFZj2Eo


#259 [桃色◆OQUMeZqegU]
その真っすぐな瞳から、あたしのことを真剣に考えてくれてるのがよくわかる。

大きく頷いたあたしに、ふわっと笑った梢さんは、渚兄には聞こえないようにあたしのそばまで近づいてきた。


「梓ちゃんは、洋介くんのどんな所が好き?」


 !!?


 はい!?


怒りに震えてゆでダコみたいになっている渚兄‥

‥に負けないくらい赤くなっているであろうあたしの顔。

⏰:08/10/07 00:51 📱:SH706i 🆔:WUFZj2Eo


#260 [桃色◆OQUMeZqegU]
そんなあたしを見た梢さんは

「きっと彼は梓ちゃんのそういう所が好きなのね」

と言って柔らかく笑った。


 ‥‥なんて言うか

 敵わないなぁ‥‥


複雑な心境を精一杯の笑顔で隠してみても、何だか見透かされてるような気がしてドキドキしてしまう。


瑞穂や藤川さんとはまた違った、大人の魅力溢れる梢さん‥

⏰:08/10/07 00:52 📱:SH706i 🆔:WUFZj2Eo


#261 [桃色◆OQUMeZqegU]
渚兄が彼氏なんかでいいのかな?


自分のことなんてそっちのけで二人のことを考えていると、タバコが切れて余計にイライラした渚兄がキッとこっちを睨んできた。

「で、その‥洋介って野郎にちょっかい出してるのはどこのどいつなんだ?」

洋介に対して明らかに悪意のある言い回し。

あごひげをいじりながらあぐらをかくと、貧乏ゆすりまで始める始末‥

⏰:08/10/07 00:53 📱:SH706i 🆔:WUFZj2Eo


#262 [桃色◆OQUMeZqegU]
「渚くん、足」

はっとした表情を見せる渚兄。

「悪い悪い」と謝る仕種が父さんにそっくりだと思った。

「その子の名前だけでもわからないかなぁ?」

少し困ったという風に眉を寄せて首を傾げる梢さんに、ついつい口が開いてしまう。

「‥望月‥いず‥」

「はぁぁあああ!!?
 もちづきぃぃいい??」
言い終わる寸前でまたも渚兄の怒号が響く。

耳がキーンとして思わず目をつむってしまった。

⏰:08/10/07 00:55 📱:SH706i 🆔:WUFZj2Eo


#263 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

そぉっと瞼を開くと、そこに見えたのは憤怒の炎に燃える渚兄の姿‥‥


「望月なんて名前にいい奴がいるわけねぇ‥」

独断と偏見でそう断言する渚兄に、梢さんも苦笑いを浮かべただけで、完全には否定をしなかった。

「渚兄、望月って人となんかあったの?」

「お前は‥知らなくていい」

ムスッとする渚兄。

⏰:08/10/09 14:09 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#264 [桃色◆OQUMeZqegU]
そんな渚兄の心境を知ってか知らずか

「渚くんのね、元恋敵!」

涼しい顔でサラっと爆弾発言をした梢さん。

自分のことじやないのに、何故かドキリとするあたしの心臓。

「おいっ‥‥!」

渚兄の制止も聞かず、梢さんは話しを続ける。


「あのね梓ちゃん、大事なのは梓ちゃんの気持ち。

ライバルに負けたと思った時点でその恋は終わりだと思うんだ。

⏰:08/10/09 14:09 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#265 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
‥あたしもね、渚くんが諦めずにいてくれなかったら、今ここにこうしていなかったと思うから‥」

ニッコリ笑うその先には、照れ臭そうにあごひげを触る渚兄の姿。


二人がどうやって結ばれたのか、全く知らなかったあたしにはすごく意外で‥

見た目はともかく、ぶっきらぼうで頑固な渚兄。

てっきり梢さんの方からだと思ってたのに、渚兄ったらやる時はやるんだな‥‥

⏰:08/10/09 14:10 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#266 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

思わず顔がにやけてしまう。

「‥くそ‥‥」

肩肘をついて悔しそうに呟く渚兄。


だけど一つ気になるのは、元恋敵の望月さんと泉ちゃんの関係‥


まさか、兄妹?


「確か望月くんも、妹さんがいるって言ってなかった?」

梢さんの言葉に、あたしの仮説が一気に真実味を増す。

⏰:08/10/09 14:10 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#267 [桃色◆OQUMeZqegU]
「あたしの知り合いは、泉っていうんですけど‥」

「ん〜名前まで聞いたことないからなぁ‥だけど地元は隣町だよ。あたしと一緒なの」


ドキッと胸が鳴ったと同時に手足の血の気が引いた気がした。


隣町‥まさに洋介の地元。

洋介と泉ちゃんが幼なじみっていうのが本当なら、泉ちゃんの地元も‥‥

「多分‥その人の地元も隣町だと思います」

⏰:08/10/09 14:12 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#268 [桃色◆OQUMeZqegU]
ここで繋がったからといって何がどうなるわけじゃないけど‥‥

だけど少しだけ、今までよりも心強くなった気がした。




それからその日は梢さんも交えて晩ご飯を食べた。

梢さんがいるだけで、いつもの食卓が花が咲いたように明るい。


この人なら、いつか本当にお姉さんって呼べる日が来るといいな‥

なんて呑気に考えてた。

⏰:08/10/09 14:17 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#269 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
まさかこの後何が起きるかなんて全く知らずに。


立ち込める鍋の湯気に頬をほころばせ、泉ちゃんに言われたことも、洋介の首元も‥部屋であんなに泣いたことさえ、忘れかけていた

その時‥‥



―ピンポーン‥‥


こんな時間には珍しく、家のチャイムが来客を知らせた。

⏰:08/10/09 14:21 📱:SH706i 🆔:BZ3PB6b.


#270 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「あら、こんな時間に誰かしら‥梓、出てくれる?」

手が離せないお母さんに代わって、インターホンに向かうあたし。

リビングの時計を見ると、21時を少し過ぎたところだった。


本当、こんな時間に一体誰だろう‥?



「‥‥はい」
「ハァ、ハァ、、」


 !!?


何!?気持ち悪い!!

変質者!?
.

⏰:08/10/11 16:15 📱:SH706i 🆔:92b63kNI


#271 [桃色◆OQUMeZqegU]
「どなたぁ?」

陽気な調子で聞いてくるお母さん。

ここで取り乱したりしたら、また渚兄が暴れかねない‥‥


受話器に向かって生唾を飲む。

「どちら様でしょうか?」


「ぁあ、あのッ俺、梓さんと同じ学校の‥園田っていいます!梓さん‥帰ってますか?」

⏰:08/10/11 16:16 📱:SH706i 🆔:92b63kNI


#272 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


 えっ!!?

よっよよ洋介っっ??


何で洋介があたしん家に?


「誰なんだぁ?」

心配そうにこっちを見ている渚兄。

その声にみんなもお箸を止めてあたしの方に顔を向ける。

唯一梢さんだけが、あたしの表情から全てを察知してくれたらしく「ここは任せて」と言わんばかりに微笑んでから頷いてくれた。

⏰:08/10/11 16:17 📱:SH706i 🆔:92b63kNI


#273 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
ありがとう、梢さん‥


思い切りよく受話器を置いて「ちょっと出てくる」と駆け出した。


パーカーを羽織って玄関の扉を開ける‥‥




「梓‥‥っっ!」

顔を見るなり門にしがみついた洋介が、何だかおかしくて笑ってしまう。

「何?どうしたの、こんな時間に」

口では怒ってても、内心すごくドキドキしている自分がいる。

⏰:08/10/11 16:18 📱:SH706i 🆔:92b63kNI


#274 [桃色◆OQUMeZqegU]
‥どうしよう、あんなにムカついて、あんなに泣いたのに‥‥

やっぱりあたし‥‥


どうしようもなくコイツが好きだ‥


「お前‥携帯出ろよ!」

門に手を掛け、大きく息を吐く洋介。


肩で息するほど走って来てくれたの?

鼻の頭真っ赤だよ‥


「ごめん‥部屋に置きっぱなしにしてた」

ドアから出て、門まで歩み寄る。

⏰:08/10/11 16:18 📱:SH706i 🆔:92b63kNI


#275 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

―カシャン‥


門がわずかに揺れたと同時に、洋介の手があたしの頬まで伸びてくる。

トクン、トクンと胸の辺りが騒ぎだす。

「心配‥しちゃったんだけど‥‥」

痛いくらい真っすぐな視線。

ポツリと呟いたその声は、冬の夜には十分過ぎるほどよく聞こえて‥

⏰:08/10/13 16:41 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#276 [桃色◆OQUMeZqegU]
触れられた手を拒む事ができないまま、思わず顔を赤くしてしまう。


「‥そんなこと、言われたって‥」

「ちょっと話せる?」

洋介の手がかすかに震えたような気がした。


緊張‥してる?。


返事の代わりに門に手を掛けゆっくり開いた。

⏰:08/10/13 16:45 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#277 [桃色◆OQUMeZqegU]
同時に頬から離れた洋介の手は、何の迷いもなくあたしの冷たい手を包む。


いつもだったら絶対こんなこと有り得ない‥


違和感なく繋がった二人の手の平を見つめてみる‥

これから起きる何かに、期待と不安で押し潰されそうになりながら洋介が進む方向へ歩き出した。





無言のまま、洋介に手を引かれついて行く。

⏰:08/10/13 16:52 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#278 [桃色◆OQUMeZqegU]
「ねぇ、どこ行くの?」

「えっ?あぁ‥」

立ち止まると同時に目に入ったのは小さな公園。

砂場とすべり台、それにベンチが一つだけ。

話しをするには十分なスペース‥今度はあたしが洋介の手を引いた。





しばらく続く気まずい雰囲気‥‥

⏰:08/10/13 16:55 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#279 [桃色◆OQUMeZqegU]
「手、いつまで握ってるつもり?」

ベンチに座ったものの、一向にその手を離そうとしない洋介に、照れも混ざってつい口調が尖ってしまう。

「また逃げたら困る」

ニヤッと笑った洋介は、そう言うと手をまた強く握り直してきた。

「に、逃げてないしっ!」
「は〜?俺が送ってやるっつったのに走って逃げたのはどこのどいつだよ!?」

⏰:08/10/13 16:55 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#280 [桃色◆OQUMeZqegU]
「なっ!」

‥それは

それはあんたのキスマークのせいだろうがぁっ!!


洋介の手を振りほどいて、勢いよく立ち上がる。

だけどまたすぐに腕を掴まれ、今度は体ごと洋介の方に引き寄せられてしまった。


「ごめん、ケンカしに来たんじゃ‥ないのに」


久しぶりに感じる洋介の温もり‥

⏰:08/10/13 16:56 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#281 [桃色◆OQUMeZqegU]
体温が上がる‥

胸が高鳴る‥‥

でもその背後に、どうしてもあの人の影がチラついてしまう。


「離してっ!!」

「梓っ、梓、どうしたんだよ?」

もがくあたしに戸惑いながらも、その腕をゆるめる気配はない。

「自分の胸に‥聞いてみれば!!?」

⏰:08/10/13 16:57 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#282 [桃色◆OQUMeZqegU]
渾身の力を込めて洋介の胸を跳ね退ける。

ポカンと口を開いたまま、険しい表情であたしを見つめる洋介。

その首筋にはさっきと同じ赤い痣‥

まるであたしを嘲笑っているかのように、はっきりと目に入ってきた。


「え?ぇえ?何で泣く?」


また感情のフタが外れて、一気に涙が溢れ出す。

⏰:08/10/13 16:58 📱:SH706i 🆔:tn7bq.tc


#283 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「ばかぁっ!あんたがっ‥‥‥‥マーっク っ!!」


涙に負けて言葉が出ない。

「何?俺?っつーか泣くなよ‥」

洋介まで泣きそうな顔をして、そのまま正面から抱きしめられる。

「うぅ‥やだぁ!泉ちゃんっっ‥‥‥手で触ん‥いでっっ!!」


そう叫んだ次の瞬間、洋介の腕から力が抜けた。

⏰:08/10/15 15:35 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#284 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「‥なん‥で‥?」


あたしから泉ちゃんの名前が出たことが余程ショックだったのか、今まで見たことないくらい酷い顔をした洋介。


胸が痛い‥


そんな辛そうな顔しないでよ‥‥


あたしの気も知らないで‥
.

⏰:08/10/15 15:37 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#285 [桃色◆OQUMeZqegU]
「今日、話したのっ。泉ちゃんと‥」

「‥え‥‥?」

「それ、その首‥泉ちゃんなんでしょ?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


何も反論してこない‥

期待してたわけじゃないけど、言い訳くらい‥聞いてあげてもよかったのに‥‥

⏰:08/10/15 15:38 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#286 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
やっぱりそのキスマークは、泉ちゃんにつけられたんだ。


「泉に‥あいつに何言われた?」

それでも泉ちゃんのことばかり気にする洋介に苛々する。

「心配しなくても邪魔する気ないから。だから洋介も、もうあたしに構わないで」


いつの間にか涙も乾いて、洋介を睨むあたしがいた。

⏰:08/10/15 15:39 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#287 [桃色◆OQUMeZqegU]
 




梢さん‥いくら好きでも、叶わない恋ってあるんだよ。

いくら信じても、裏切られる‥


そんな恋なら‥

そんな‥恋なら‥‥

⏰:08/10/15 15:40 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#288 [桃色◆OQUMeZqegU]
 







「‥‥‥‥待てよっ!」

公園から去ろうとしたその時、夜空をつん裂く洋介の声があたしをその場に立ち止まらせた。

振り返るのを躊躇うあたしに、またも伸びてくる洋介の腕。

⏰:08/10/15 15:41 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#289 [桃色◆OQUMeZqegU]
「頼むから‥話し聞けよ‥!!」

後ろから覆いかぶさるようにしてきつく抱きしめられたせいで、息が一瞬できなくなる。


「話すことなんて、ない‥‥‥っ!!」

「お前にはないかもしんないけど俺には聞いてほしいことがあんだよっ!」


二人の息が目の前を白くする。

⏰:08/10/15 15:42 📱:SH706i 🆔:sYBk9NB6


#290 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「わかった‥わかったから、離して‥‥」

羽交い締めにされたまま身動きのとれないあたしは、とにかく今は洋介から離れたくて結局話しを聞くことにした。

時間は10時を優に越えている。


‥渚兄、心配してるだろうな‥‥そんなことを考えながらまたさっきのベンチに腰を降ろす。


少し離れて座った洋介は、大きくゆっくり深呼吸をして、じっと足元を見つめたままポツリポツリと話しを始めた。

⏰:08/10/17 15:01 📱:SH706i 🆔:NNyqxJYU


#291 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
「‥泉には、俺達のこと‥何て聞いた?」

「幼なじみ‥だけど?」

「そっか‥良かった‥」


―良かった?何が??


「だけど洋介は泉ちゃんが好きだって言ってた」

ほっとしてる洋介がムカついて、つい言わなくていいことまで言ってしまった。

だけど洋介は驚くことなく困ったような、悲しいような、そんな表情を浮かべていた。

⏰:08/10/17 15:01 📱:SH706i 🆔:NNyqxJYU


#292 [桃色◆OQUMeZqegU]
「はぁ‥‥そっか、うん。間違ってはない。好きだったのは事実。だけどあくまで“だった”って話し」

意外にもあっさり認めた洋介にこっちの気が抜けてしまう。

しかも“だった”って‥

泉ちゃんはそんな風に言ってたっけ‥‥?


「あいつさぁ、小さい時から嘘つきで‥それで他人を傷つけたり、迷惑かけてるっていうの‥わかってないんだよね」

「えっ‥それって‥‥」

「ん〜、虚言癖ってやつ?病院とか行ったことないからわかんねぇけど‥だけどそう思われても仕方ないぐらい、あいつの嘘つきは酷いんだ」

⏰:08/10/17 15:02 📱:SH706i 🆔:NNyqxJYU


#293 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

 

‥嘘?

どこまでが、嘘なの?

それとも全部‥嘘だったの?


“洋介、梓ちゃんの話ししかしないんだ”


よみがえる泉ちゃんのフレーズ‥

あの時一瞬でも浮かれてしまった自分が少し恥ずかしくなった。

⏰:08/10/17 15:02 📱:SH706i 🆔:NNyqxJYU


#294 [桃色◆OQUMeZqegU]
「他には、何か言ってこなかった?“洋介には泉が必要なの〜”とかさ」

ふざけたように手をヒラヒラさせながら話す洋介。


この感じからして、こういう事が前にもあった‥?


「そんな風には、言ってなかった‥」

まさかあんたをお願いされた、なんて言えるはずもなく‥‥


「相手によって変わるのかな」

腕を組んでそう呟いた洋介に、さっきの予感が的中したと確信した。

⏰:08/10/17 15:03 📱:SH706i 🆔:NNyqxJYU


#295 [よ]
あかなあ

⏰:08/10/20 01:55 📱:D905i 🆔:VcZDhAyU


#296 [我輩は匿名である]
は・や・く

⏰:08/10/25 01:30 📱:SH903i 🆔:N13f0rRY


#297 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

「聞かせてくれる?泉ちゃんと、洋介の話し‥」


ただ単純に知りたいと思った。

あたしの知らない洋介‥

それから

どうして泉ちゃんが嘘をつくのか‥‥

知らなきゃいけない気がしたんだ。



だけど洋介は立ち上がって、ポケットに両手を突っ込むと首をブンブン横に振った。

⏰:08/10/31 13:30 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#298 [桃色◆OQUMeZqegU]
「いっ、いいよ!また今度でっっ!!」

何故か焦っている洋介にあたしの頭上は疑問譜だらけだ。

「あんたが聞いてほしいって言ったんでしょーが!今度はないよ、今しか聞かないっ」

プイッとそっぽを向きながら、ベンチの上で膝を抱えて暖をとる。


とはいえやっぱり寒い‥


「ふぇ‥っくちっっ!」

「ほらぁ、今日はもう遅いし帰ろうぜ?」

「‥やだっ聞くまで帰んないっ!」

⏰:08/10/31 13:31 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#299 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

あんなに辛い思いさせられて‥‥

あんなに泣いて‥

渚兄や梢さんにまで心配かけて‥‥



知りたいって思うのは当然じゃない‥‥



洋介のことなら

なおさら‥



‥何だって知りたい。


そんなあたしの意地が勝って、何とか本音を言う前にベンチに戻ってきた洋介。

⏰:08/10/31 13:32 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#300 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


―!!!


だけどその距離は隙間なんてないほどピッタリ密着していて、さもそれが当然であるかのように洋介の腕があたしの肩に回っている。


言うまでもなく、あたしの意識は飛ぶ寸前‥‥‥


「ちょっっと‥ぉ」


やっとの思いで出た言葉も、自分の鼓動に掻き消されそうだ。

⏰:08/10/31 13:32 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#301 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
左半身に伝わる洋介の温もり‥

あっ、こんなとこにホクロあるんだ‥‥


なんて洋介の耳の後ろなんか見てる場合じゃない!

「ばか!離れてよ!!」

「寒みーんだろ?話し聞きたいならこれが条件!」

そう言ってあたしの頭を抱えると、自分の方に抱き寄せる。


―☆*×#%★っ!!?

.

⏰:08/10/31 13:33 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#302 [桃色◆OQUMeZqegU]
「も!ももも、もう大丈夫!平気!だからはな‥‥っ」

「だぁ!もぉうっせぇ、俺だって寒みーの!おとなしくしてろっ」

‥‥‥‥‥

そうは言ってもこれ以上密着したら、それこそあたしこの場で溶けちゃうっ!

そんなあたしの気も知らないで、空を見上げる洋介の横顔‥‥

⏰:08/10/31 13:34 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#303 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


うぅ‥

余裕じゃん‥‥

こういうの、慣れてるんだろな‥‥



なんだかあたしばっかりドキドキして、ズルイよ洋介‥


そう思った次の瞬間―






.

⏰:08/10/31 13:34 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#304 [桃色◆OQUMeZqegU]
「うぇっ!?梓っ??」


気づくと思いっきり不自然な体勢で洋介に抱きついてたあたし。

‥抱きつくっていうよりはしがみつくって感じ‥?


うろたえる洋介の声、もちろんあたしの心臓はバックバクのドックドク。


「梓‥お前‥‥」

そっとあたしの頬に伸びてきた洋介の指先‥

冷たくて一瞬びくっとしてしまう。

⏰:08/10/31 13:35 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#305 [桃色◆OQUMeZqegU]
顔を上げるとそこには

目を閉じたまま近づいてくる‥


洋介の顔‥


いや―


 唇‥‥!!?


え‥ぇえ‥‥ぇええ〜!?

何なに!?
なんでっ!!

⏰:08/10/31 13:36 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#306 [桃色◆OQUMeZqegU]
ちょっとからかっただけっ!


やだ!

待って!!


待っって!!



待っっっっ‥‥‥





.

⏰:08/10/31 13:36 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#307 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


‥‥‥???‥‥‥

そおっと目を開けると、そこには何故か青ざめた顔の洋介のドアップ。


と共に感じるこの悪寒は‥


「〜あ゛ぁぁ〜ずぅぅ〜〜さ〜〜〜ぁぁあああああ」


一気に血の気が引いていく。

お腹の底から内臓をえぐり出されるような感覚‥

地響きと共に現れたのは‥.

⏰:08/10/31 13:37 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#308 [桃色◆OQUMeZqegU]
「ぬぁっ!渚‥兄!?‥‥と、梢‥さんっ‥」

今にも殴りかかってきそうな勢いの渚兄を、後ろからつかみ掛かって必死に止めてくれている梢さん。


「オイっ!ゴラァ!うちの妹にそれ以上近づいてみろォ!てめぇ‥ぶっ殺すだけじゃすまねぇぞっ!!」

完璧に目の色が変わってる渚兄。


‥ヤバイ、このままじゃ本当に洋介何されるかわかんないっ

⏰:08/10/31 13:37 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#309 [桃色◆OQUMeZqegU]
そう思った次の瞬間、あたしの横にすっと立ち上がった洋介は、背筋を伸ばすと渚兄に向かって思い切りよく頭を下げた。





「はじめましてっ‥‥!
梓さんと同じ部の園田といいます。こんな遅くまで妹さん連れ出してしまってすいません」


ピーンと張り詰める公園の空気。


より一層寒さが増したように感じるのは気のせいかな。

⏰:08/10/31 13:38 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#310 [桃色◆OQUMeZqegU]
 

「渚兄、あのね‥」

「お前は黙ってろッ!」

容赦なく飛ぶ渚兄の怒鳴り声。

制止する梢さんの手からゆっくり離れると、じりじりとこちらににじり寄って来る。





―お願いっ
殴ったりしないで‥!

⏰:08/10/31 13:40 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#311 [桃色◆OQUMeZqegU]
 
心配そうに二人を見つめるあたしと梢さん‥


暗くても伝わってくる、渚兄の威圧感。

ゆっくりと確実に近づいてくる‥


靴の先同士が当たるんじゃないかと思う程、二人の距離が縮まった


その時‥


「てめぇが園田か‥‥‥」

目の前の洋介を貫いてしまいそうなほど鋭い目つきで睨んでいる渚兄。

⏰:08/10/31 13:40 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#312 [桃色◆OQUMeZqegU]
その眼差しに、その重圧に、かろうじて耐えている様子の洋介。



あたしはただ、祈るような気持ちでそこに立ち尽くしてた。


しばらく沈黙が続いた後、口を開いたのは渚兄だった。

「帰るぞ、梓」


―!?


「え‥‥‥」

「こんな奴、殴る価値もねぇ」

⏰:08/10/31 13:41 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#313 [桃色◆OQUMeZqegU]
吐き捨てるようにそう言って、背中を向けるとそのまま歩き出してしまった。


「待って!まだ話しの途中なの‥」

「あぁ?俺にはとても話してるようには見えなかったけどなぁ」

「あ‥っあれは‥‥っ」

思わず口ごもってしまったあたしに、渚兄は顔だけ振り返ると

「お前が納得できてねぇうちから手ぇ出すような輩じゃあ、ろくな男じゃねぇに決まってる。だいたいてめぇ、梓と付き合ってるわけでも何でもねぇんだろ?」

⏰:08/10/31 13:41 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#314 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


静かだけど、重い言葉‥

ズキン、ズキンと心に響く。


「‥‥‥それは‥‥‥

‥‥すんません‥‥‥」

バツが悪そうに下唇を噛む洋介。

だけどすぐに顔を上げると

「確かに‥さっきのは、言い逃れできませんけど‥‥いい加減な気持ちで梓に話しに来たんじゃありません」

⏰:08/10/31 13:42 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#315 [桃色◆OQUMeZqegU]
はっきりと、空に響いた洋介の声。


冷えた心に染みる言葉。


こんな時に、不謹慎だけど‥

嬉しい

素直にそう思う自分がいた。


今度は体ごとこちらに向き直った渚兄は、洋介の顔をじっと見ると小さくため息をついて

「だったら、もうコイツのこと二度と泣かせるな」

⏰:08/10/31 13:46 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#316 [桃色◆OQUMeZqegU]
そう言ってまた踵を返すと梢さんを連れて行ってしまった。




「‥‥‥何か、ごめんね」

「おっ!?おぅ、俺の方こそ‥‥悪かったな」


軽く頬をかきながら、照れ臭そうに笑う洋介。

「今日はやっぱり送ってくわ。これ以上お前連れ出してたら、あの兄ちゃんに何言われるかわかんねぇし」

「そ‥だね‥」

少し寂しい気もしたけど、これ以上渚兄に心配かけたくないのも本音だ。

⏰:08/10/31 13:46 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#317 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


あたしたちもそれからすぐに公園を後にした。



「なぁ梓‥」

「ん?」

「泉のことだけど‥ちゃんと話すから」

「‥うん」



家の前まで送ってもらうと、また明日、と言って別れた。 


あたしたちもそれからすぐに公園を後にした。

⏰:08/10/31 13:50 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#318 [桃色◆OQUMeZqegU]
上の『続き』にある

“あたしたちもそれからすぐに公園を後にした。”

無視してください!

⏰:08/10/31 13:52 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#319 [桃色◆OQUMeZqegU]
心配したお母さんが、玄関のドアを閉めるなり走って来て

「あんまり遅いから心配したじゃない!携帯も部屋に置きっぱなしだし‥渚には会えた?」

「うん、ごめんねお母さん。渚兄、まだ帰ってないの?」

「あんた追いかけて出てったっきり!誰も帰って来ないからお父さんに連絡しようかと思ったわ」

「そんなぁ‥大袈裟な!」

笑ってごまかしながらも内心ドッキドキのあたし。

⏰:08/10/31 13:53 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#320 [桃色◆OQUMeZqegU]
渚兄よりも熱血漢のお父さん‥‥

単身赴任でいろんな所を飛び回ってるんだけど、あたしがちょっと熱を出したってだけで昔はよく飛んで帰って来てたっけ‥


「まっ、今はお父さんよりも渚の方が頼りになるわね」

微笑むお母さんにあたしの顔も自然とほころぶ。


と同時に、何だか一気に疲れが襲ってくる。

一日のうちで、こんなに色んな感情を味わったのなんて初めてだ。

⏰:08/10/31 13:54 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#321 [桃色◆OQUMeZqegU]
 


それからゆっくりお風呂に浸かって、洋介の耳の後ろのホクロを思い出しながら眠りについた。


――
―――――
――――――――
―――――――――――


あの日あの時重なった色んな偶然が、それからのあたしを強くしてくれたような気がする。


まもなく訪れる“卒業”の日。


洋介にとって、泉ちゃんにとって、そしてあたしにとって‥‥

大切なのは“信じること”.

⏰:08/10/31 13:55 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#322 [桃色◆OQUMeZqegU]
それに気づくのにはもう少し時間がかかるんだけど‥


“いい加減な気持ちで話しにきたんじゃない”

あの時の洋介の言葉は、あたしの宝物になったんだ。

それと、耳の後ろのホクロ‥もね!


―――――――――――
――――――――
―――――
――

⏰:08/10/31 14:25 📱:SH706i 🆔:J.HgY2bw


#323 [ゆい]
あげっ

⏰:09/10/06 21:00 📱:SH05A3 🆔:5NkxHd5g


#324 [我輩は匿名である]
あげる

⏰:11/03/06 23:43 📱:SH02C 🆔:☆☆☆


#325 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:11/03/07 15:00 📱:N05B 🆔:GL9Lj62Y


#326 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600

⏰:11/03/08 00:10 📱:SH02A 🆔:VYpWDwKk


#327 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/01 22:34 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#328 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/17 22:06 📱:Android 🆔:We5gljpk


#329 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>290-320

⏰:22/10/17 22:07 📱:Android 🆔:We5gljpk


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