【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#104 [◆1jVUKlu67k]
「あ〜あ。明日は指輪渡せたらいいな……」

小さな小箱に入った、小さい指輪を手にとって眺める。

こんな小さな輪っかで彼女の愛をつなぎ止められるのなら、いくらでも自分は買う。


けれど、この指輪はそんな陳腐なものじゃない。

もっと大切な……
二人をつなぐ、目に見える絆。

⏰:08/09/14 16:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#105 [◆1jVUKlu67k]
そう。これは一方的につなぎ止める鎖ではなく、二人で支え合っていくための証。

そして太郎は指輪を割れ物を扱うかのように大切に鞄にしまい、自身も毛布にくるまった。

「明日こそ、ちゃんと言わなきゃ……」

そう呟くと、自然と閉じてきた瞼に逆らうことを止め、太郎は深い眠りについた。

⏰:08/09/14 16:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#106 [◆1jVUKlu67k]
――――――…………

ある晴れた春の日。

木造の小さな家の中に少年と一人の女性がいた。

少年はソファーの上に寝っ転がり、女性は短く切られた髪の毛を揺らしながら、リズムよく野菜を刻む。

そんな当たり前の風景の中を柔らかい風が吹き抜けると、不思議とその部屋が一枚の絵画のような穏やかな空間へと変わる。

⏰:08/09/14 16:42 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#107 [◆1jVUKlu67k]
「……ねぇ母さん。今日結婚記念日でしょ?親父ってプロポーズの言葉なんて言ったの?」

寝っ転がってテレビを見ていた少年は思い出したように起き上がり、好奇心のまなざしで女性を見る。

少年の体格はもう大人だが、真っ直ぐに母をとらえた瞳はまだまだ子供のような無邪気な面影を残していた。

「まぁ、小太郎もマセたこと聞くようになったのね〜。母さん感激!!」

⏰:08/09/14 16:42 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#108 [◆1jVUKlu67k]
ふふっと笑った女性の顔は、新しいおもちゃを見つけた子供のようにキラキラと輝いていた。

「もぉ、うるさいなぁ!!いーから教えてよ」


「お父さんはね『僕の隣で毎日笑って下さい。そのためなら何でもします』って言って指輪を渡してくれたの」

女性はそう言って、過去を振り返るように、過去を懐かしむようにゆっくりと自分の薬指をなぞる。

⏰:08/09/14 16:43 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#109 [◆1jVUKlu67k]
「親父やるじゃん!!今つけてる指輪が親父から貰ったやつなんだろ?」

「そー思うでしょ?でも違うの。お父さんがくれた指輪、大きすぎてね……。今つけてるのは、後で買い直したやつ」

クスクスと笑みをこぼす女性は、一児の母だとは思えないほど可愛らしく笑った。

⏰:08/09/14 16:44 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#110 [◆1jVUKlu67k]
「親父だめじゃん……。
なにが『隣で笑って下さい。そのためなら何でもします』だよ…」

小さくため息をつく我が子をみながら、また女性は微笑んだ。

「でもね、お父さんはワザと大きいのを買ったと思うの」



だって薬指をみたら「付き合った時から太郎さんは、そそっかしいんだから」って毎日笑えちゃうでしょ?

⏰:08/09/14 16:45 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#111 [◆1jVUKlu67k]
投下終了です

【決めゼリフ】
>>95-110

次の方どうぞ!!

⏰:08/09/14 16:46 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#112 [◆KHkHx8enOg]
今から投下します

【死んで初めて気付く大切に人】

⏰:08/09/14 17:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#113 [◆KHkHx8enOg]
僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。

ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。
たった今、生まれ落ちたばかりのように頭がうまく働かず、無心でぼーっと天井を見つめる。
天井とはこんなに低かっただろうか。
ちょっと手を伸ばせば触れてしまいそうなほどに近く感じる。
いや、実際近いのではないか?と考えが頭を過ぎったりもしたが、正直どうでもよく感じ、あっさりと思考を停止させた。
そんなことを考えながら天井を見つめていると、次第に世界に音が戻ってきた。

⏰:08/09/14 17:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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