【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#108 [◆1jVUKlu67k]
ふふっと笑った女性の顔は、新しいおもちゃを見つけた子供のようにキラキラと輝いていた。
「もぉ、うるさいなぁ!!いーから教えてよ」
「お父さんはね『僕の隣で毎日笑って下さい。そのためなら何でもします』って言って指輪を渡してくれたの」
女性はそう言って、過去を振り返るように、過去を懐かしむようにゆっくりと自分の薬指をなぞる。
:08/09/14 16:43 :F905i :☆☆☆
#109 [◆1jVUKlu67k]
「親父やるじゃん!!今つけてる指輪が親父から貰ったやつなんだろ?」
「そー思うでしょ?でも違うの。お父さんがくれた指輪、大きすぎてね……。今つけてるのは、後で買い直したやつ」
クスクスと笑みをこぼす女性は、一児の母だとは思えないほど可愛らしく笑った。
:08/09/14 16:44 :F905i :☆☆☆
#110 [◆1jVUKlu67k]
「親父だめじゃん……。
なにが『隣で笑って下さい。そのためなら何でもします』だよ…」
小さくため息をつく我が子をみながら、また女性は微笑んだ。
「でもね、お父さんはワザと大きいのを買ったと思うの」
だって薬指をみたら「付き合った時から太郎さんは、そそっかしいんだから」って毎日笑えちゃうでしょ?
:08/09/14 16:45 :F905i :☆☆☆
#111 [◆1jVUKlu67k]
:08/09/14 16:46 :F905i :☆☆☆
#112 [◆KHkHx8enOg]
今から投下します
【死んで初めて気付く大切に人】
:08/09/14 17:23 :SH905i :☆☆☆
#113 [◆KHkHx8enOg]
僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。
ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。
たった今、生まれ落ちたばかりのように頭がうまく働かず、無心でぼーっと天井を見つめる。
天井とはこんなに低かっただろうか。
ちょっと手を伸ばせば触れてしまいそうなほどに近く感じる。
いや、実際近いのではないか?と考えが頭を過ぎったりもしたが、正直どうでもよく感じ、あっさりと思考を停止させた。
そんなことを考えながら天井を見つめていると、次第に世界に音が戻ってきた。
:08/09/14 17:24 :SH905i :☆☆☆
#114 [◆KHkHx8enOg]
…何の音だろう。
聞き覚えのある一定のリズムが耳に届く。
ぽくぽくぽく…。
これは確か…。
あぁ、木魚の音か。
そういえば、さっきからお経のような声も聞こえるし、これは夢だろうか。
そうでないとするなら、私は葬式中に寝ていることになる。
頭が少しずつ機能してきた時、聞き覚えのある母の啜り泣く声が聞こえてきた。
:08/09/14 17:26 :SH905i :☆☆☆
#115 [◆KHkHx8enOg]
…お母さん?
「うっ、うぅっ…」
「良枝…」
母の泣き声に次いで、父のなだめるような声が母の名前を呼んだ。
お母さん?
どうして泣いてるの?
お父さん?
何があったの?
私の声は喉から出てくることはなく、心の中で虚しく響いて消えた。
:08/09/14 17:27 :SH905i :☆☆☆
#116 [◆KHkHx8enOg]
声が、出ない。
身体も動かない。
母と、その他のいくつかの泣き声とお経だけが耳に届く。
「千恵…」
母が私を呼んでいる。
どうしたの?お母さん。
答えは返ってこなかった。
私の意識は一気に覚醒してきた。
先程からずっと続いている奇妙な感覚。
身体を取り巻く違和感に、生きた心地がしなかった。
:08/09/14 17:28 :SH905i :☆☆☆
#117 [◆KHkHx8enOg]
言うならば、呼吸しないで生きているような感覚。
息苦しい。
体は質量を失い、ふわふわとしながらも心臓だけがずっしりと重い。
経験したことのない感覚。
お母さん。これは夢だよね?
現実味がありすぎて、頭が困惑してしまった。
夢には思えない、でも夢だと信じたい。
:08/09/14 17:29 :SH905i :☆☆☆
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