【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#213 [◆KHkHx8enOg]
もう、時間か…。

どうやら、ようやくお迎えがきたようだ。

九年前に止まった時計は、九年の時を経て再び刻み始めた。



十八年間。
短いようで長い人生だった。

今から行くのは天国だろうか、地獄だろうか。

色々あったが、ようやく私の臨死体験は終わりを告げるようだ。

⏰:08/09/14 18:53 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#214 [◆KHkHx8enOg]
死んでから気付いた大切な人。

もし生き返ることが出来たなら、きっと私は告白することが出来るだろう。



でも後悔するのは嫌だから、今言えるだけ言っておこう。


今までありがとう。

貴方が大好きでした。


そして最後に…、



さようなら。




薄れゆく意識の中で、私はゆっくりと微笑んだ。

⏰:08/09/14 18:54 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#215 [◆KHkHx8enOg]
>>112-214

死んでから気付く大切な人

終了です

⏰:08/09/14 18:56 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#216 [◆1y6juUfXIk]
>>215
乙です&今から投下します

⏰:08/09/14 18:57 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#217 [◆1y6juUfXIk]
彼は洗面台に手をつき頭を垂れ、盛大にため息を吐き出す。
ゆっくりと顔を上げ、目の前のやさぐれた顔の男に告げた。



 

⏰:08/09/14 18:58 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#218 [◆1y6juUfXIk]
「まずは誕生日おめでとう。そして、早速だが本題に入る。
お前が目指してきたのは小説家だったな? もう何年もありとあらゆる賞に送りまくっている。

結果は……言わなくても分かるな。散々だ。

お前が他の全てにおいて無能でも今まで生きてこれたのは、ひとえに小説があったおかげだ。
しかしその小説が通じないとわかった今、お前の存在価値なんてどこにもありはしない。そうだろう?

……とまぁ、以上の理由から」

言葉を切り、再びため息をひとつ。

「…お前の人生を失敗と認定する。おめでとう」



自 殺 志 願 者 -太郎と花子の最後の2週間-

 

⏰:08/09/14 18:59 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#219 [◆1y6juUfXIk]
目の前の男はうなだれていた。
今まで何となくではあるが気付いていた事を、こうして真正面からはっきりと言われたのだから、当然と言えば当然だった。

彼…太郎もまた、その事を告げるのには相当に悩み苦しんだことだろう。

だが、もう誤魔化すことなどできなかった。

「失敗だ。何もかも失敗だったんだよ」

目の前の男は、太郎だった。

要するに太郎は洗面台で、鏡に写った自分自身に話しかけていたのだ。

「それじゃ、行くか」

一次選考落選の通知をゴミ箱に捨てて、辺りを見回す。

こういう時は、身の回りの整理をすればいいのだろうか。

⏰:08/09/14 19:00 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#220 [◆1y6juUfXIk]
ぼんやりと色々考えた結果、太郎は1本の万年筆だけ持っていくことにした。
とある賞の一次選考通過者全員にプレゼントされた品だ。

それが唯一、太郎が一次選考を通過できた賞だった。

安っぽい作りだが、太郎にとっては宝物だった。
それをポケットに入れて、財布を持って家を出る。

家の鍵はもう要らないし、かける必要もない。

家を出ると、季節外れの涼しい風が顔を撫で上げた。

半袖では少し肌寒いが、気にする程でもないし気にする必要もなかった。

⏰:08/09/14 19:01 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#221 [◆1y6juUfXIk]
どこを見ても灰色しかない、コンクリートに塗り固められた住宅街に1歩踏み出す。
足がやけに重く感じた。
周囲の家を見渡すと、どこか物悲しくなった。

カラッとよく晴れた過ごしやすい天気だったが、太郎の胸はコンクリートを詰め込んだように重かった。

「この風景も見納めか…」


向かった先は、ショッピングモールにあるスポーツ用品店。
入ってすぐに、愛想のよい女性店員が笑顔を見せた。

「いらっしゃいませ」

「ロッククライミングをするんだ。命綱になるロープはあるかい?」

「それでしたらこちらに。何メーターほどご入用なさいますか?」

「2メートルでいい」

⏰:08/09/14 19:02 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#222 [◆1y6juUfXIk]
当たり前だが、店員は変な顔をした。

「2メートル…ですか?」

「ああ。2メートルで」

当然だろう。

2メートルは命を救うには短すぎるが、命を捨てたい奴にとっては悪くない長さだ。

それに命綱で首を吊るなんてまさにブラックジョーク、気が利いているというもの。

ロープに加えて折り畳み椅子を持ち、そのままレジへ向かう。
さっきの店員が今度は不安そうな顔をしていたが、太郎は気にせず店を出た。

向かった先は駅。
路線図の一番端に書いてある駅へ向かう切符を買って、改札を通る。

⏰:08/09/14 19:03 📱:P903i 🆔:☆☆☆


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