【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
最新 最初 全
#30 [◆BBhDve0Trg]
俺は今日、本当は、付き合っていた頃のように普通に話せることを期待してた。
あ久しぶり、とか言って。
何事もなかったかのように。
けど実際は、視界の隅に映る二人を見るのが精一杯で、目すら合わせられなかった。
.
:08/09/14 13:29 :D904i :☆☆☆
#31 [◆BBhDve0Trg]
別によりを戻したいとか思ってるわけじゃない。
いや、そうなるのを全く期待していなかったって言ったら嘘になる。
けど今日、幸せそうな美穂を見て、進藤の隣で笑う美穂を見て、そんなことは有り得ないんだって実感した。
そして、あの頃の思い出と、優しい言葉をかけられなかった後悔だけが残った。
.
:08/09/14 13:30 :D904i :☆☆☆
#32 [◆BBhDve0Trg]
最後の最後にあんなに冷たかった俺を、美穂は嫌いになっただろうか?
俺と付き合ったことを、後悔しなかっただろうか?
カランッ
店のドアの開く音がした。
どうせ知らない人だろう、と俺は後ろを振り向きもしない。
.
:08/09/14 13:31 :D904i :☆☆☆
#33 [◆BBhDve0Trg]
「・・・一輝」
声が、聞こえた。
聞き慣れていたはずの声。
(・・・これって)
まさかと思いながら、俺はゆっくりと振り向く。
「・・・美穂」
そこには、美穂がいた。
驚く俺をよそに、美穂は俺の隣に並ぶ。
.
:08/09/14 13:32 :D904i :☆☆☆
#34 [◆BBhDve0Trg]
「・・・一輝、変わってないね」
冷たい風に長い髪をなびかせながら、美穂は言った。
「・・・美穂もな」
俺は、平然を装って答える。
いや、むしろ綺麗になったよ。
そんなこと言えないけど。
.
:08/09/14 13:33 :D904i :☆☆☆
#35 [◆BBhDve0Trg]
美穂は髪を押さえて、ふふっと笑った。
俺はそんな美穂を、今日初めて正面から見た。
・・・あぁ、美穂だ。
笑った顔も、一つ一つの仕草も、何もかもが大好きだった。
大好きだった。
なのに・・・
.
:08/09/14 13:34 :D904i :☆☆☆
#36 [◆BBhDve0Trg]
あの時、傷つけてごめん。
優しくなれなくて、ごめん。
「・・・美穂」
「ん?」
美穂がきょとんとした顔で俺を見る。
.
:08/09/14 13:34 :D904i :☆☆☆
#37 [◆BBhDve0Trg]
(・・・あ)
言いたいことはいっぱいありはずなのに、いざとなると言葉が出てこなくて、俺は固まってしまった。
顔が赤くなるのが分かる。
そんな俺を見て、美穂は優しく微笑む。
「・・・一輝、私ね」
口を開いた。
.
:08/09/14 13:35 :D904i :☆☆☆
#38 [◆BBhDve0Trg]
「一輝のこと、本当に好きだったよ」
そう言って、美穂は少しうつむいた。
長い髪がさらりと揺れる。
・・・美穂に、こんなこと言ってもらえるとは思ってなかった。
俺も・・・今なら言えると思った。
もう、絶対に後悔したくない。
.
:08/09/14 13:36 :D904i :☆☆☆
#39 [◆BBhDve0Trg]
俺は冷たい空気を吸い込んだ。
今は、夜空の星でさえも自分を応援してくれている気がする。
(・・・よし)
「・・・俺さ、ずっと後悔してたんだ」
白い息とともに、吐き出すように言った。
美穂が、真剣な顔で俺を見る。
.
:08/09/14 13:37 :D904i :☆☆☆
#40 [◆BBhDve0Trg]
「最後に・・・美穂に冷たい言葉しか掛けれなかったこと」
美穂は、驚いたような顔をした。
「美穂のこと、好きだったのに・・・泣きそうな顔させた」
俺は目をつむって、頭を下げた。
「・・・あの時は、ごめん」
.
:08/09/14 13:38 :D904i :☆☆☆
#41 [◆BBhDve0Trg]
やっと言えた。
謝ったからって、傷つけた事実が変わる訳じゃないし、ただの自己満足かもしれない。
けど、言わずにはいられなかった。
「一輝・・・顔上げて」
美穂に言われて、俺はゆっくりと顔を上げる。
それを確認して、美穂は口を開いた。
.
:08/09/14 13:39 :D904i :☆☆☆
#42 [◆BBhDve0Trg]
「・・・よかった。私、一輝に嫌われたかと思ってたから」
美穂の言葉に、俺はブンブンと首を横に振った。
そんな俺を見て、美穂は微笑んだ。
「自分勝手だけと・・・一年以上付き合って、嫌われて終わるのって悲しいから・・・ずっと、聞きたかったの」
言った後、今度は美穂が頭を下げる。
.
:08/09/14 13:40 :D904i :☆☆☆
#43 [◆BBhDve0Trg]
「・・・今まで、本当にありがとう。一輝と付き合って、すごく楽しかった」
美穂が言った。
心が軽くなった気がした。
ずっと胸につっかえていたものが、すーっと消えていくのが分かった。
あぁ・・・美穂も同じだったんだ。
.
:08/09/14 13:41 :D904i :☆☆☆
#44 [◆BBhDve0Trg]
「・・・美穂」
美穂が顔を上げる。
俺も、ずっと言いたかったことがある。
あの時言えなかった言葉。
今度こそ、伝えたい。
美穂の顔を見て、自然に笑えた。
「俺も・・・今までありがとう・・・幸せになってな!!」
.
:08/09/14 13:42 :D904i :☆☆☆
#45 [◆BBhDve0Trg]
ずっと言いたかった言葉。
それを聞いて、美穂は大きくうなずいた。
そして、照れたように笑う。
「今日、来てよかった。一輝と話せてよかったよ。・・・優子に感謝しなきゃな」
「へ?中井?」
俺が言うと、美穂はしまったという風に口を押さえた。
.
:08/09/14 13:43 :D904i :☆☆☆
#46 [◆BBhDve0Trg]
俺の顔を見て、へへっと笑って見せる。
「えっと、じゃぁ先入るね!!」
そう言って美穂は、そそくさと店の中に戻っていった。
俺は頭にハテナマークを浮かべたまま、その場に立ち尽くす。
(・・・ま、いっか)
.
:08/09/14 13:44 :D904i :☆☆☆
#47 [◆BBhDve0Trg]
俺も、来てよかった。
話せてよかった。
・・・もう、大丈夫だ。
もう一度空を見上げて、店のドアを開けた。
「わわっ!!」
その瞬間、声がした。
(・・・この間抜けな声は)
.
:08/09/14 13:46 :D904i :☆☆☆
#48 [◆BBhDve0Trg]
下を向くと、案の定中井がいた。
俺と目が合うと、やばいといった顔をして不自然に目をそらす。
「・・・何してんだよ」
俺は呆れながら言った。
「いや!!たまたま偶然、ね!!」
明らかに怪しい身振り手振りを交えながら、中井が言う。
.
:08/09/14 13:47 :D904i :☆☆☆
#49 [◆BBhDve0Trg]
『・・・優子に感謝しなきゃな』
その時、さっき美穂の言っていたことが頭をよぎった。
(・・・こいつ)
中井が俺の顔をちらりと見て、観念したようにひひっと笑った。
「美穂とはちゃんと話せた?」
そして、心配そうに言う。
.
:08/09/14 13:48 :D904i :☆☆☆
#50 [◆BBhDve0Trg]
(あぁ・・・中井のお陰なのか)
俺は、中井を見て笑った。
「・・・ありがとな」
言いながら俺は、部屋に向かって歩き始める。
そんな俺を見て、中井は少し驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。
「どういたしまして!!」
.
:08/09/14 13:49 :D904i :☆☆☆
#51 [◆BBhDve0Trg]
――――――――
ガラッ
部屋のドアを開けると、みんな一斉にこっちを見た。
「サンタと中井どこ行ってたんだよー!!遅刻コンビ!!」
「何かゲームやるぞ!!」
そんな言葉に、俺は手を合わしながら謝る。
向こうの方で、美穂が笑っているのが見えた。
.
:08/09/14 13:50 :D904i :☆☆☆
#52 [◆BBhDve0Trg]
「・・・ふ」
(・・・ふ?)
小さく笑い声のした方を見ると、中井が肩を震わせて笑っていた。
「・・・何そんな笑ってんの?」
俺が聞くと、中井は自分の口元で手招きした。
俺はかがんで、自分の耳を中井の口元に近付ける。
.
:08/09/14 13:51 :D904i :☆☆☆
#53 [◆BBhDve0Trg]
「あのね・・・サンタと中井、だって!!」
中井が俺の耳元に手を添えてこそっと言った。
「・・・?」
言った後また中井は笑ったが、俺にはさっぱり何のことか分からない。
そんな俺に気づいて、中井は少しすねたような顔をした。
「だーかーらー」
そう言って、もう一度口を近づける。
.
:08/09/14 13:52 :D904i :☆☆☆
#54 [◆BBhDve0Trg]
「サンタ・トナカイ!!」
そして、今度は分かりやすく、区切って言った。
(・・・あ)
本当だ。
言われて初めて気づいた。
サンタとトナカイなんて・・・今日にぴったりだな。
嫌だったはずのそのあだ名が、急にくすぐったく感じた。
.
:08/09/14 13:54 :D904i :☆☆☆
#55 [◆BBhDve0Trg]
なんだか可笑しくて、俺も笑えてきた。
中井も満足げに笑う。
「何こそこそ話してんだよー!!早く座れ!!」
さっき「サンタと中井」と言った奴が言って、俺たちは顔を見合わせてまた笑った。
この様子だと、周りの奴らも言った本人も気づいてないようだ。
「行こっ!!」
中井が自分の席に向かって歩き出す。
.
:08/09/14 13:54 :D904i :☆☆☆
#56 [◆BBhDve0Trg]
「あ!!おい、雪!!」
その時、進藤が窓の外を指さして言った。
空から白い結晶がパラパラと舞い降りている。
「え、うそ!?」
「わー!!」
みんな口々に言いながら窓に近づく。
「雪!!」
中井も目を輝かせて、窓の方へ向かう。
途中、中井が俺の方を振り向いた。
.
:08/09/14 13:55 :D904i :☆☆☆
#57 [◆BBhDve0Trg]
「ほら、サンタ!!」
そう言って、本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔は、美穂に負けないぐらいまぶしくて、輝いて見えた。
.
:08/09/14 13:57 :D904i :☆☆☆
#58 [◆BBhDve0Trg]
・・・その瞬間、俺の中で中井が、一人の女の子に変わった。
けど、そのことに俺自身が気づくのは、まだもう少し先の話・・・。
・・・明日はクリスマスだ。
.
:08/09/14 13:58 :D904i :☆☆☆
#59 [◆BBhDve0Trg]
:08/09/14 14:01 :D904i :☆☆☆
#60 [◆67oIOf49hA]
投下させて頂きます
「幸せの象徴」
:08/09/14 14:05 :SO906i :☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194