【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#310 [◆SjNZMOXdWE]
きっと目新しいおもちゃを手にした子供のように、目をキラキラ‥いや、ギラギラ輝かせてたに違いない‥




圭太郎の真意を知るのはこの数時間の後だった。

まさか俺にこんな運命が待っていようなんて‥‥




.

⏰:08/09/14 21:07 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#311 [◆SjNZMOXdWE]
「ねぇねぇ、あの子の名前わかる?」

昼休み、まずは隣のクラスの女子にリサーチ。

本当根性ないんだ、俺。

こんな時だけ圭太郎のノリの良さが羨ましくなる。

「あぁ、七川さん?なんか前にもこっちに住んでたことあるらしいよ」

思ってもみない名前以外の情報ゲット!

七川さんかぁ‥

名字もなんか可愛い。

「こっちに住んでたっていつ頃?」

⏰:08/09/14 21:08 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#312 [◆SjNZMOXdWE]
「さぁ?あたしのクラスの子はみんな知らないって言ってたし、小さい頃じゃない?」

それだけ言うとナントカさんは行ってしまった。

まだもうちょっと聞きたいことはあったけど、我慢我慢‥

次のターゲットを絞っていると、七川さんの周りに人だかりができているのが目にとまった。

少しうつむいて顔を赤くしてる七川さん‥

そんな表情もたまらなく可愛い。

⏰:08/09/14 21:09 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#313 [◆SjNZMOXdWE]
「あぁあ〜お前いいの?あれ」

またも俺の背後からちょうど耳元めがけて囁いてくる圭太郎。

「気持ち悪いなぁ、何がだよ?」

「あれだよあれ」

そう言って圭太郎が指さした方へ視線をたどれば、学年一‥いや校内一のモテ男、石橋一樹が視界に入った。

何でも石橋に触れられたら、誰でもかれでもイチコロらしいのだ。

その石橋が向かう先には‥なんと愛しの七川さんが!

⏰:08/09/14 21:10 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#314 [◆SjNZMOXdWE]
「あっどうしよ!圭太郎!どうしたらいい?」

焦った俺は、やり場のない感情を圭太郎に訴えかける。

「知〜らね!自分で何とかすればぁ?」

そう言うと圭太郎は意地悪そうに歯を見せてヒヒヒと笑ってみせた。

ぐ‥ちぐじょー!

どうすりゃいいんだこんな時!?

俺はここでただただ指加えて見てる事しかできないのかぁ?

それでも動こうとしないこの足‥

ヘタレにもほどがある。

⏰:08/09/14 21:10 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#315 [◆SjNZMOXdWE]
そうこうしているうちに何とも華麗な手さばきで、石橋が七川さんの白魚のような手にそっと自分の手を重ねた。



‥終わった。



さようなら俺の愛しい人‥


せめて一言だけでも会話したかった。



だけど次の瞬間奇跡が起こった。

⏰:08/09/14 21:12 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#316 [◆SjNZMOXdWE]
 

石橋の手を物凄い勢いで払いのけた七川さんが、俺めがけて走って来たんだ。


半泣きで頬を紅潮させた七川さん。

スローモーションで再生されてるような感覚‥

ゆっくり、ゆっくりと俺の方へ翔けてくる。

そのたび揺れる栗色の巻き毛。

俺の方へ伸ばされる腕は折れそうなほどか細くて‥

⏰:08/09/14 21:19 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#317 [◆SjNZMOXdWE]
思わず一歩前に出ると同時に飛び込んできた七川さんを、体ごと抱きとめた。



「‥翔ちゃんっ」


わずかに聞こえた七川さんの声も「ヒュ〜♪」という圭太郎の口笛のせいで掻き消された。


  え?

 今何つった?

 翔ちゃん??

⏰:08/09/14 21:19 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#318 [◆SjNZMOXdWE]
疑問符を飛ばしながらも俺の心臓は限界を優に越えていた。

絶対七川さんに聞こえてるよなコレ‥‥

だけどわずかに動くたび鼻をかすめる七川さんの甘い香りが、俺の正気を奮い立たせる。


「あっあのっ七川さん?」

俺の胸元に埋もれる七川さんに、恐る恐る話しかける。

すると俺にしがみついた七川さんの手に、さらに力が入るのがわかった。

⏰:08/09/14 21:27 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#319 [◆SjNZMOXdWE]
「大丈夫だよ、もう恐くない‥」

よしよし、と栗色の髪を撫でてやる。

そんなに全身で頼られちゃうと、いくらヘタレな俺でもカッコイイセリフの一つくらい言えてしまった。

もちろん耳まで真っ赤だろうけど‥


はっと我に返ったのか、急に俺から離れた七川さんは俺よりさらに顔を赤くして戸惑いを隠せないようだった。

まごまごしているその仕草も可愛いすぎる。

⏰:08/09/14 21:30 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#320 [◆SjNZMOXdWE]
「おい、ひなたぁ‥お前そんなに大胆だったっけ?」

圭太郎の言葉に、俺は自分の耳を疑った。

 ひ‥

 ひ‥‥

「ひな太ぁ!!?」

からかってるとしか思えない。

何て失礼なこと言うんだコイツは!

さてはヤキモチ妬いてるな‥

「圭太郎、何言ってんだよ!ひな太なわけないだろ?ごめんね七川さん、コイツたまに変なんだ!」

⏰:08/09/14 21:30 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#321 [◆SjNZMOXdWE]
笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「翔ちゃん」の一言‥


 え?


 まさか?


うそ、だって‥‥


「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 ひなた本人だ」

踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。

⏰:08/09/14 21:30 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#322 [◆SjNZMOXdWE]
 

 は?

 えぇぇ?

有り得ないだろぉ!?

「だってひな太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」

「親が離婚して‥こっちに帰ってきたの」

申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。

⏰:08/09/14 21:36 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#323 [◆SjNZMOXdWE]
「あはは、あ、そう‥そうなんだ‥?」

 多分俺今、涙目‥

「改めまして‥七川日向です‥ただいま、翔ちゃん」

ひな太は女で七川さん?


しかも日向って!

 なになに?

いつから間違ってたの?


.

⏰:08/09/14 21:39 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#324 [◆SjNZMOXdWE]
 

遠ざかる意識の中で、日向と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。

いつかもこんなことあったっけ‥

あぁそうだ、あの時‥




――――――‥‥‥

それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと‥

⏰:08/09/14 21:40 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#325 [◆SjNZMOXdWE]
俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。

俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。

その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく‥




「転校‥するんだ‥」

⏰:08/09/14 21:40 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#326 [◆SjNZMOXdWE]
日向のいきなりの告白にうろたえる圭太郎。

「もう会えないの?」

「わかんない‥だけど、次会う時にはちゃんと女の子らしくなってるから‥」

大きな目をさらに大きくして驚く圭太郎。

「翔ちゃんには、そのいつかまで言わないで。今はまだこのサナギにもなれてないけど‥絶対、蝶々みたいに綺麗になって‥綺麗に‥なって‥‥翔ちゃんのとこへ戻ってくるから!」

⏰:08/09/14 21:40 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#327 [◆SjNZMOXdWE]
 



‥‥‥――――――

「てな事があったわけよ!」

なんとか意識を保った俺は、引き続き昼休みの音楽準備室で昔話を聞かされた。

俺の隣にはひな太改め日向がいる‥

もちろん俺と同じくらい顔を真っ赤にして。

⏰:08/09/14 21:45 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#328 [◆SjNZMOXdWE]
「‥何て言うかその‥‥」

まごつく俺を見るに見兼ねた圭太郎が

「ま、そういう事だから!後は二人でごゆっくり!」

また意地悪そうにヒヒヒと笑って俺達を残し準備室から去って行った。

「‥ひ、日向‥?」

ここにいるのがあの、ひな太?

信じられない思いでいっぱいの俺を、日向が笑顔で包んでくれる。

⏰:08/09/14 21:46 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#329 [◆SjNZMOXdWE]
「あの時は‥おてんばだったし‥みんな私のこと男の子だって思ってたから‥でも、騙すつもりはなかったの‥ごめんなさい」

そんな事はどうでもいい!

「俺んとこに戻ってくるって‥どういう意味?」

ヤベっ、圭太郎の意地悪がうつっちゃったかな‥

「えっ」と小さく呟くと、さらに顔を赤くしてうつむく日向。

「こっこういう意味って思っても、いい?」

⏰:08/09/14 21:46 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#330 [◆SjNZMOXdWE]
そんな日向がめちゃくちゃ可愛い過ぎて、思わず日向を抱き寄せる。

コクンとわずかに首が揺れて、日向の甘い香りが俺達を包む。


人ってこんなにあったかいんだ‥

窓から漏れる光に反射して、日向の髪がキラキラ光る。

そういえば‥ひな太の髪も、柔らかかったっけ‥

だけどこんなにいい匂いはしなかったな‥

なんて、幼い頃のひな太の面影を、俺の傍らで小さくなってる日向の姿に重ねてみる。

⏰:08/09/14 21:47 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#331 [◆SjNZMOXdWE]
するとわずかに白い息を吐きながら、日向がぽつりと呟いた。

「‥翔ちゃん、知ってる?」

その声が少しかすれてて、思わず耳を傾けると同時に、日向の肩をもう一度強く引き寄せた。

「知ってる?青虫はね、空に恋い焦がれて一生懸命綺麗になるの。少しでも空に近づきたくて、羽まで伸ばして空を翔けるの‥」

俺の胸にうずくまりながら、日向が窓の外を見る。

「ねぇ翔ちゃん‥私、蝶々になれた?」

⏰:08/09/14 21:47 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#332 [◆SjNZMOXdWE]
「あぁ、俺にはもったいないくらい‥綺麗‥に‥なったよ‥」

自分で自分が恥ずかしい。


俺ってこんなセリフ言えるんだ‥

「まっまさか蝶に帰省本能があるとは知らなかったけどな!」

照れ臭いのを隠すように、わざとおどけて話してみる。

その勢いで日向の頭に俺のこめかみがコツンとぶつかる。

⏰:08/09/14 21:52 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#333 [◆SjNZMOXdWE]
「‥‥‥‥‥‥」

顔を見合わせるとお互い耳まで真っ赤っか。

俺と日向の笑い声が、甘い香りと共に準備室をいっぱいにする。

俺が空だと笑う日向。

どうせ翔けるなら青空がいい。

空にたどり着いた蝶には、一体どんなご褒美が待ってるんだろう?




「日向‥」

⏰:08/09/14 21:52 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#334 [◆SjNZMOXdWE]
きっと空だって蝶が可愛くて仕方ないから、優しく見守るだけじゃ済まないだろ。

そんなこじつけを考えながら、日向のおでこにキスをする。

顔を見合わせるとまたも笑顔がこぼれてしまう。

「こんな‥俺でいいの?」


おでこをくっつけて、日向にだけ聞こえるくらいの声で話す。

まばゆい程の甘い笑顔で頷く日向は可愛過ぎて‥‥




時が止まったんじゃないかと思えるくらい、長い長いキスを交わした。

⏰:08/09/14 21:53 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#335 [◆SjNZMOXdWE]
いつも見上げればそこにあるあの空ように‥

永遠に君を見守り続ける。


‥甘ったるいこの感覚は、さしずめ花の蜜ってとこかな‥‥?




  □■■■■■■■■   HAPPY END
  ■■■■■■■■□

⏰:08/09/14 21:53 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#336 [◆SjNZMOXdWE]
【投下終了】

青虫は空に恋をし蝶になる

>>294-335

次の方どうぞ‥

⏰:08/09/14 21:55 📱:SH706i 🆔:☆☆☆


#337 [◆8HAMY6FOAU]
今から投下します!


タイトルは「踊り狂え、愛しきピエロ」です

⏰:08/09/14 22:17 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#338 [◆8HAMY6FOAU]
俺は彼女のことをあまり理解してなかったんだと思う。

「好きな人が出来たの」

そう告げる彼女の眼は、斜め右下を向いていた。
考えもしなかった事態に頭の中が真っ白になって、沈黙のパレードが彼女と俺の間を延々行進する。
いつまで経っても俺は、言葉を返せなかった。

⏰:08/09/14 22:19 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#339 [◆8HAMY6FOAU]
 

一人暮らしのアパートに帰って彼女の言葉を思い返すと、心臓を鷲掴みにされた気分になって情けなくも涙が溢れた。
ゴミや雑誌が散らかり放題の戦場みたいな部屋、その真ん中にだらしなく敷かれた万年床の布団に座り込んで、ただただ泣いた。
四年間恋人として過ごした女(ひと)との思い出が、鳴咽を漏らし泣きじゃくる俺の脳裏に浮かび上がっては消えていく。

⏰:08/09/14 22:20 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#340 [◆8HAMY6FOAU]
 
まだ俺たちが付き合いたての頃、大学の帰り道に寄ったスーパー。
慣れた手つきで夕食の材料を選んでは黄色いかごに入れていく彼女の後ろ姿を、俺は世界で一番の幸せ者だと思いながら眺めていた。

「ねぇ、野菜炒めでいいかな?」

俺がいくら我が儘を言っても、何時間と待ち合わせに遅れても、どれだけバイトの愚痴を零しても、彼女はいつも天使みたいに優しく頷いてくれる。
かわいくて、気が利いて、頭も良くて、その上料理も出来る彼女。
この時、俺はコイツと結婚しようと心に決めたんだった。

⏰:08/09/14 22:21 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


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