【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
最新 最初 全
#324 [◆SjNZMOXdWE]
遠ざかる意識の中で、日向と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。
いつかもこんなことあったっけ‥
あぁそうだ、あの時‥
――――――‥‥‥
それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと‥
:08/09/14 21:40 :SH706i :☆☆☆
#325 [◆SjNZMOXdWE]
俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。
俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。
その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく‥
「転校‥するんだ‥」
:08/09/14 21:40 :SH706i :☆☆☆
#326 [◆SjNZMOXdWE]
日向のいきなりの告白にうろたえる圭太郎。
「もう会えないの?」
「わかんない‥だけど、次会う時にはちゃんと女の子らしくなってるから‥」
大きな目をさらに大きくして驚く圭太郎。
「翔ちゃんには、そのいつかまで言わないで。今はまだこのサナギにもなれてないけど‥絶対、蝶々みたいに綺麗になって‥綺麗に‥なって‥‥翔ちゃんのとこへ戻ってくるから!」
:08/09/14 21:40 :SH706i :☆☆☆
#327 [◆SjNZMOXdWE]
‥‥‥――――――
「てな事があったわけよ!」
なんとか意識を保った俺は、引き続き昼休みの音楽準備室で昔話を聞かされた。
俺の隣にはひな太改め日向がいる‥
もちろん俺と同じくらい顔を真っ赤にして。
:08/09/14 21:45 :SH706i :☆☆☆
#328 [◆SjNZMOXdWE]
「‥何て言うかその‥‥」
まごつく俺を見るに見兼ねた圭太郎が
「ま、そういう事だから!後は二人でごゆっくり!」
また意地悪そうにヒヒヒと笑って俺達を残し準備室から去って行った。
「‥ひ、日向‥?」
ここにいるのがあの、ひな太?
信じられない思いでいっぱいの俺を、日向が笑顔で包んでくれる。
:08/09/14 21:46 :SH706i :☆☆☆
#329 [◆SjNZMOXdWE]
「あの時は‥おてんばだったし‥みんな私のこと男の子だって思ってたから‥でも、騙すつもりはなかったの‥ごめんなさい」
そんな事はどうでもいい!
「俺んとこに戻ってくるって‥どういう意味?」
ヤベっ、圭太郎の意地悪がうつっちゃったかな‥
「えっ」と小さく呟くと、さらに顔を赤くしてうつむく日向。
「こっこういう意味って思っても、いい?」
:08/09/14 21:46 :SH706i :☆☆☆
#330 [◆SjNZMOXdWE]
そんな日向がめちゃくちゃ可愛い過ぎて、思わず日向を抱き寄せる。
コクンとわずかに首が揺れて、日向の甘い香りが俺達を包む。
人ってこんなにあったかいんだ‥
窓から漏れる光に反射して、日向の髪がキラキラ光る。
そういえば‥ひな太の髪も、柔らかかったっけ‥
だけどこんなにいい匂いはしなかったな‥
なんて、幼い頃のひな太の面影を、俺の傍らで小さくなってる日向の姿に重ねてみる。
:08/09/14 21:47 :SH706i :☆☆☆
#331 [◆SjNZMOXdWE]
するとわずかに白い息を吐きながら、日向がぽつりと呟いた。
「‥翔ちゃん、知ってる?」
その声が少しかすれてて、思わず耳を傾けると同時に、日向の肩をもう一度強く引き寄せた。
「知ってる?青虫はね、空に恋い焦がれて一生懸命綺麗になるの。少しでも空に近づきたくて、羽まで伸ばして空を翔けるの‥」
俺の胸にうずくまりながら、日向が窓の外を見る。
「ねぇ翔ちゃん‥私、蝶々になれた?」
:08/09/14 21:47 :SH706i :☆☆☆
#332 [◆SjNZMOXdWE]
「あぁ、俺にはもったいないくらい‥綺麗‥に‥なったよ‥」
自分で自分が恥ずかしい。
俺ってこんなセリフ言えるんだ‥
「まっまさか蝶に帰省本能があるとは知らなかったけどな!」
照れ臭いのを隠すように、わざとおどけて話してみる。
その勢いで日向の頭に俺のこめかみがコツンとぶつかる。
:08/09/14 21:52 :SH706i :☆☆☆
#333 [◆SjNZMOXdWE]
「‥‥‥‥‥‥」
顔を見合わせるとお互い耳まで真っ赤っか。
俺と日向の笑い声が、甘い香りと共に準備室をいっぱいにする。
俺が空だと笑う日向。
どうせ翔けるなら青空がいい。
空にたどり着いた蝶には、一体どんなご褒美が待ってるんだろう?
「日向‥」
:08/09/14 21:52 :SH706i :☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194