【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#370 [◆j9RqQwYZbM]
すると突然、顔の下に敷いていた腕を力強く引き上げられた。

「一人で…ハァッ…泣くな!!俺が居る意味が無いだろ!」

驚いて見ると息を切らした咲良が私の手を握っている。

「だ…ッだって!っていうか、勝手に飛び出して行ったのは咲良の方じゃん!!」

突然のことに動揺した私は、急に泣いている自分が恥ずかしくなって慌てて涙を拭く。

その言葉を聞いた咲良は思い出したように、私の手を握る右手とは逆の手をまた勢い良く差し出した。

「これ…お前に渡せるの、今しかないと思って」

咲良はそう言って俯いた。
見ると咲良の手には、一輪の赤いバラがあった。

⏰:08/09/15 00:11 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#371 [◆j9RqQwYZbM]
「…バラ……?」

まだ現状が理解仕切れていない私は、じっとその花を見つめる。

そんな私を咲良は苛々した様子で暫く見ていると、胃を消したように突然大声を上げた。

「バラの花言葉ぐらいだったら、お前も知ってるだろ!」

「花言葉…?」

そこまで言うと咲良はまた恥ずかしそうに俯いた。
咲良を見つめながら、私はゆっくりと思い出す。

バラの花言葉。
確か……。

「ー……ッ!!!!!!!!」

思い出した途端、自分の体温が急上昇していくのが分かる。

「そ…れって…」

バラの花言葉、"愛・愛情"。私が何よりも欲しがっていたモノだ。

⏰:08/09/15 00:18 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#372 [◆j9RqQwYZbM]
「口で言わなきゃ分かんねぇのかよ…この鈍感」

いつになく顔を赤らめている咲良はバラをテーブルに置くと、私を見つめ直す。

「花言葉で告白って…。プッ…相変わらずダサいなぁ〜咲良は!」

大真面目に言っている咲良を前に私は思わず吹き出して言う。
咲良の方は一世一代の告白をまさか笑われるとは思っていなかったらしく、キョトンとしている。

「お前…っ…普通ここで笑うか…ッ!?」

咲良はそこまで言うとまた口を紡ぐ。
というよりも、紡がざるを得なかった。

咲良の唇を、私が塞いだから。

⏰:08/09/15 00:24 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#373 [◆j9RqQwYZbM]
何で気が付かなかったんだろう。

私が今まで恋をしていて不満だらけだった理由。それは、いつも相手に咲良を重ねて思っていたからだ。

咲良のような優しさや温もりを相手に求めては、拒まれていた。

そりゃあそうだ。
咲良の優しさは咲良にしか生み出せない。

こんな簡単なことに気が付くまで、随分時間がかかったものだ。

⏰:08/09/15 00:30 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#374 [◆j9RqQwYZbM]
ゆっくりと唇を離すと、咲良から花の良い香りがした。
どこか懐かしくて心があったかくなる香り。

「沙保…お前って本当に無茶苦茶だな」

ようやく自由になった口を咲良は不満そうに開いた。その顔はバラより赤くて、また私は笑った。

「無茶苦茶な私に愛を誓ったのは咲良だよ?
最後まで付き合ってもらうから」

私はそう言って微笑むと目を閉じる。
咲良の甘い香りに包まれるのを、心地良く感じながら。

⏰:08/09/15 00:34 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#375 [◆j9RqQwYZbM]
【花と君とあたし。】

>>359-374

投下終了です!

次の方どぞ!

⏰:08/09/15 00:36 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#376 [◆vzApYZDoz6]
業務連絡

投票開始しました!
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3873/
匿名でなら作家さん自身が投票するのもアリなんで、お好きにどうぞw

なお、24:00〜26:00はマージンタイムです!
投票はすでに受付開始していますが、この時間に投下された作品も投票対象になりますのでまだ投下してない方はお早めに!

⏰:08/09/15 00:52 📱:P903i 🆔:☆☆☆


#377 [◆ZPM9124utk]
今から投下させて
頂きます。

題名は【歩道橋の上で】

⏰:08/09/15 01:40 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#378 [◆ZPM9124utk]
大学の授業が終わり
大学1年生の
立架絢が自宅への帰り支度
をしているところに
近くで話していた生徒
の声が聞こえてきた。

「ねーねー最近あの歩道橋
に男の人がずっといるの
知ってる?」

⏰:08/09/15 01:41 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#379 [◆ZPM9124utk]
「え、何それナンパ?」

「ん〜わかんない…。でも
超イケメンで〜女の子
ガン見してるらしいよ。」

「え〜どうしよ、
見てみたいな。」

絢は鞄に本を詰める手を
休ませて生徒達の話に
思わず聞き入って
しまっていた。

「誰か待ってるのかもね!」
「なーんかそれロマンチック!」

絢は生徒達の話が
一通り済むまで聞くと
鞄を提げコートを羽織り、
生徒達を尻目に
部屋を出て行った。

⏰:08/09/15 01:43 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#380 [◆ZPM9124utk]
…―今更あの人が
いる訳ないよね、うん。
だって一年も前の話だし…。

絢はそんなことを思いながら
大学を出て外の冷たい
風を受けコートの襟を
少し立てた。




『カランコロン』

絢は数ヶ月ぶりに聞くドアに
取り付けられたベルの音色
を少し懐かしく思った。

「いらっしゃいませ…
絢ちゃん!久しぶり!!」

コーヒーを淹れていた
短髪の青年の
店員が嬉しそうに絢に
声をかけた。

⏰:08/09/15 01:45 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#381 [◆ZPM9124utk]
「久しぶり、元気してた?」

絢も微笑みながら、
店員の近くのカウンター席
に腰を下ろした。

「元気元気!あの頃は
店に慣れなかったけど、
今はこの通り副店長だよ!!」

店長は誇らしげに
制服の胸ポケットに
付けていたネームプレートを
指した。
確かに「副店長」と印刷
されている。

⏰:08/09/15 01:47 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#382 [◆ZPM9124utk]
「たった一年で!
…変わるもんなんだね。」

「うん、一年は大きいよ。
あ、絢ちゃん何頼む?」

「それじゃあ紅茶を。」

メニューも見ずに即答した
絢に副店長は頷き、
淹れたコーヒーを他の店員に
渡すと、今度は紅茶を
淹れ始めた。

「絢ちゃんは、アイツが
いなくなった、ってだけで
何にも変わらないね。」

「…アイツって、」

「峰原悠二のこと。」

⏰:08/09/15 01:48 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#383 [◆ZPM9124utk]
副店長は少し寂しそうな
表情をした。

「…一年前はよくここに
2人で来たしね。そういえば
…悠二と友達だったよね、
最近元気なの?」

絢は少しざわついている
店内の中でひっそり言った。

⏰:08/09/15 01:49 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#384 [◆ZPM9124utk]
「それが、一年前から連絡
取れなくてさ…。
他の峰原の友達も連絡
取れないって言ってて…。」

副店長は悲しげな面持ち
で言い、カウンター越しに
絢に紅茶を渡した。

「それっていつから?」

絢はとても嫌な予感がした。
興奮して少し声が大きくなる。

「12月20日、去年のちょうど
今頃だよ。あ、明日だね。」

⏰:08/09/15 01:51 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#385 [◆ZPM9124utk]
…―間違いない。
彼と別れた日だ。

絢は紅茶に手もつけず
鞄に入れていた財布から
千円札を乱暴に抜き取り、
副店長に渡した。

「え!?絢ちゃん!??」

副店長が驚いている間に
絢は鞄をつかみ、勢い良く
店を出た。

…―もしかして、
歩道橋にいるのは…

⏰:08/09/15 01:52 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#386 [◆ZPM9124utk]
絢は雑踏をかき分けて
例の歩道橋まで急いだ。
人にぶつかったって
コートがめくれたって
気にもしなかった。
ただ、絢は歩道橋にいる
女性を見ているイケメンが
誰なのか確信していた。

緑色の急な階段を
一気に駆け上がる。

男性はいた。

歩道橋の真ん中で
悲しい目で通る人々を
眺めている。

…―一年前の翌日に
この場所で別れた
元彼、悠二だ。

⏰:08/09/15 01:53 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#387 [◆ZPM9124utk]
「ゆう…」

そう言って伸びた手を
絢はふと我に返って
制した。

…―今更悠二に声
かけるものじゃ
ないかもしれない…。
まして、あんな別れ方
だったんだから…。

絢は悠二を見つめながら
制した手を強く握った。

…―でもみんな心配してた
し、私が一声かけるくらい…。

⏰:08/09/15 01:54 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#388 [◆ZPM9124utk]
絢が脳内で悶々と
悩んでいると、
歩道橋を通った子どもが一人
悠二に近づいた。

「お兄ちゃん何してるの?」

不思議そうな顔をして
その子どもは悠二に聞いた。

悠二はしゃがみ込むと、
子どもに微笑み、答えた。

「大切な人、待ってるんだ。」

「大切な人?それって
お兄ちゃんの彼女なの?」

「……たぶん。」

⏰:08/09/15 01:55 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#389 [◆ZPM9124utk]
悠二は少し困ったように
言った。そんな悠二に子どもは
へんなのー、と言って、
歩道橋を駆けていった。

「…だよな。」

絢には悠二がぼそりと
つぶやいたのがわかった。
人ごみに混ざったざわめき
なんてもう聞こえなかった。
悠二にスピーカーが
ついているかのように
彼の声だけ聞こえた。

「…何もかもわかんない
なんて変だよな…。」

⏰:08/09/15 01:56 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#390 [◆ZPM9124utk]
「どういうこと?」

いつの間にか絢は
悠二の目の前に
しゃがみ込んでいた。

長い沈黙が流れた。
悠二の目はまん丸だ。

「…………え?」

悠二が絢に向かって言った
第一声はそれだった。

「………すみません、
もしかしてあなた、
立架絢さんですか?」

…―これは冗談?

絢の思考は停止する。
悠二は絢を見つめたままだ。

…―もし本当に悠二が
忘れたとしたら、彼の記憶
が丁度消えているのなら…。

⏰:08/09/15 01:57 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#391 [◆ZPM9124utk]
絢はうつむいて、
悠二を見つめた。

「すみません、違います。」

…―これはきっと
彼にとって、私にとって
一番いいのかもしれない。

悠二は、絢の答えを聞くと、
慌ててぺこりと
謝り、立ち上がった。

「そうですよね、すみません。
よくその人に
似ていたもので。」

「…いえ。それより、
さっき、何もかもわからない
って…。」

⏰:08/09/15 01:58 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#392 [◆ZPM9124utk]
絢も立ち上がって悠二
と並び、橋の下を眺める。
鞄を握り跡がついて
しまいそうなくらい
強く掴んだ。

「あ、はい。僕、丁度一年前に
事故で記憶
なくしちゃいまして、」

絢の目の前が真っ暗に
なった。

「事故っていっても
ぶつかった程度なんです
けどね…でも厄介なことに
なかなか記憶が
戻ってくれないんですよ。」

「…………。」

何も言い出せない絢を
お構いなしに悠二は
話を続ける。

⏰:08/09/15 01:59 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#393 [◆ZPM9124utk]
「親や少人数の
親しい友人に大まかな話を
聞いて大体の記憶は
取り戻したんですが、一年前
の数ヶ月のことだけ
誰に教えてもらっても
しっくり来ないんですよ。
ほら、あのパズルで形が
似てるピースが
当てはまらないみたいに。」

「…………はい。」

なんとか絢は頷いた。

「立架絢さんという女性が
僕の大切な人だった、
ということはわかるんですが。」

⏰:08/09/15 02:00 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#394 [◆ZPM9124utk]
同じく絢は頷く。

…―落ち着け私。
彼にとって私を思い出さない
方が幸せなはず。

「記憶って大きいキーワード
を思い出したらあとは
思い出せるらしいんです。
あと少しなんですよね。」

…―そのために早く
私のことを諦めせなくちゃ。

絢の呼吸が荒くなる。

「て、ごめんなさい。
見ず知らずの人にこんな
こと話してしまって…。」

悠二は慌てて絢に
謝った。

⏰:08/09/15 02:01 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#395 [◆ZPM9124utk]
「記憶をなかなか
思い出せないのは、あなたの
どこかで思い出したくない
自分がいるんじゃない?
そんな辛い過去、忘れたまま
の方がいいに決まってる!
こんな先の見えない
記憶探し、馬鹿みたい!!」

絢は悠二に言った。
胸が痛くて今にも
倒れてしまいそうだった。

⏰:08/09/15 02:02 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#396 [◆ZPM9124utk]
絢が歩道橋を引き返そう
とした時、悠二の足元に
見覚えのあるマフラーを
見つけた。

…―私が去年あげた
マフラー。

「これ、落としてる。」

乱暴にそれを悠二に
押し付けると絢は
振り向きもせずに歩道橋の
階段を駆け下りた。

⏰:08/09/15 02:03 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#397 [◆ZPM9124utk]
悠二はマフラーを
受け取りながら絢の
背中を見つめていた。

「さっきの…もしかして……。」

一人暮らししている
マンションの部屋の
鍵を開けてベッドに
倒れ込んだ絢の顔は
涙でぐちゃぐちゃだった。

「…あのマフラー、
まだ使ってた…。」

ふとさっきの情景が
絢の中で思い出された。

「悠二…。」

絢はいつの間にか
眠って夢をみていた。

一年前の話だ。

⏰:08/09/15 02:04 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#398 [◆ZPM9124utk]
絢は7年間片思いしていた
異性に男友達だった
悠二に後押しされながらも
思い切って告白した。

「ごめん、君に興味ないから。」

返ってきたのは、
期待していた言葉より
何倍も何倍も冷たい言葉。

その態度に絢が
傷つかない訳がなかった。

何ヶ月も家に引きこもった
絢を心配した悠二は
見舞いついでに絢に
声をかけた。

⏰:08/09/15 02:05 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#399 [◆ZPM9124utk]
「絢に最高の場所、
教えてやるよ。」

絢がしぶしぶ付いていくと
そこはただの歩道橋だった。

ぼやく絢に悠二は
歩道橋の上から向こうを
指差した。

「絢、ほらあれみて。」

絢の瞳に映ったのは
クリスマス期間限定で
道路の端々の木に付けられた
数え切れない程に
輝いているイルミネーション
だった。

「こんなの、知らなかった…。」

⏰:08/09/15 02:06 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#400 [◆ZPM9124utk]
絢は目を丸くして
笑顔で景色を眺める。

「絢、もし良かったら
俺とつ、つ、付き合って
くれないか!??」

絢を先ほどから見つめていた
悠二は緊張した面もちで
告白した。

驚いた絢は固まった後、
はにかみながら、

「…うん。」

と返事をした。

⏰:08/09/15 02:07 📱:F705i 🆔:☆☆☆


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