【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#393 [◆ZPM9124utk]
「親や少人数の
親しい友人に大まかな話を
聞いて大体の記憶は
取り戻したんですが、一年前
の数ヶ月のことだけ
誰に教えてもらっても
しっくり来ないんですよ。
ほら、あのパズルで形が
似てるピースが
当てはまらないみたいに。」
「…………はい。」
なんとか絢は頷いた。
「立架絢さんという女性が
僕の大切な人だった、
ということはわかるんですが。」
:08/09/15 02:00 :F705i :☆☆☆
#394 [◆ZPM9124utk]
同じく絢は頷く。
…―落ち着け私。
彼にとって私を思い出さない
方が幸せなはず。
「記憶って大きいキーワード
を思い出したらあとは
思い出せるらしいんです。
あと少しなんですよね。」
…―そのために早く
私のことを諦めせなくちゃ。
絢の呼吸が荒くなる。
「て、ごめんなさい。
見ず知らずの人にこんな
こと話してしまって…。」
悠二は慌てて絢に
謝った。
:08/09/15 02:01 :F705i :☆☆☆
#395 [◆ZPM9124utk]
「記憶をなかなか
思い出せないのは、あなたの
どこかで思い出したくない
自分がいるんじゃない?
そんな辛い過去、忘れたまま
の方がいいに決まってる!
こんな先の見えない
記憶探し、馬鹿みたい!!」
絢は悠二に言った。
胸が痛くて今にも
倒れてしまいそうだった。
:08/09/15 02:02 :F705i :☆☆☆
#396 [◆ZPM9124utk]
絢が歩道橋を引き返そう
とした時、悠二の足元に
見覚えのあるマフラーを
見つけた。
…―私が去年あげた
マフラー。
「これ、落としてる。」
乱暴にそれを悠二に
押し付けると絢は
振り向きもせずに歩道橋の
階段を駆け下りた。
:08/09/15 02:03 :F705i :☆☆☆
#397 [◆ZPM9124utk]
悠二はマフラーを
受け取りながら絢の
背中を見つめていた。
「さっきの…もしかして……。」
一人暮らししている
マンションの部屋の
鍵を開けてベッドに
倒れ込んだ絢の顔は
涙でぐちゃぐちゃだった。
「…あのマフラー、
まだ使ってた…。」
ふとさっきの情景が
絢の中で思い出された。
「悠二…。」
絢はいつの間にか
眠って夢をみていた。
一年前の話だ。
:08/09/15 02:04 :F705i :☆☆☆
#398 [◆ZPM9124utk]
絢は7年間片思いしていた
異性に男友達だった
悠二に後押しされながらも
思い切って告白した。
「ごめん、君に興味ないから。」
返ってきたのは、
期待していた言葉より
何倍も何倍も冷たい言葉。
その態度に絢が
傷つかない訳がなかった。
何ヶ月も家に引きこもった
絢を心配した悠二は
見舞いついでに絢に
声をかけた。
:08/09/15 02:05 :F705i :☆☆☆
#399 [◆ZPM9124utk]
「絢に最高の場所、
教えてやるよ。」
絢がしぶしぶ付いていくと
そこはただの歩道橋だった。
ぼやく絢に悠二は
歩道橋の上から向こうを
指差した。
「絢、ほらあれみて。」
絢の瞳に映ったのは
クリスマス期間限定で
道路の端々の木に付けられた
数え切れない程に
輝いているイルミネーション
だった。
「こんなの、知らなかった…。」
:08/09/15 02:06 :F705i :☆☆☆
#400 [◆ZPM9124utk]
絢は目を丸くして
笑顔で景色を眺める。
「絢、もし良かったら
俺とつ、つ、付き合って
くれないか!??」
絢を先ほどから見つめていた
悠二は緊張した面もちで
告白した。
驚いた絢は固まった後、
はにかみながら、
「…うん。」
と返事をした。
:08/09/15 02:07 :F705i :☆☆☆
#401 [◆ZPM9124utk]
それから悠二は
片時も絢のそばから
離れなかった。
絢が昔を思い出して
悲しくなったらいつだって
励ましてくれた。
絢の大学合格が決まった時
は自分のことのように
喜んでくれた。
そんな悠二を絢も
いつからかかけがえのない
大切な人だと感じる
ようになった。
しかし、そう思う反面
絢は自分が寂しさを
埋めるために悠二と付き合い
始め都合の良いことを
しているのではないか、
と悩むようになった。
:08/09/15 02:08 :F705i :☆☆☆
#402 [◆ZPM9124utk]
絢にとって悠二は
大切な人だった。
しかし片思いしていた異性
は絢にとってまだ
諦めきれない大好きな人
だったのだ。
そうと分かったら
いても立ってもいられなく
なった絢は悠二を
あの歩道橋に呼び出した。
「別れてほしいの。」
:08/09/15 02:09 :F705i :☆☆☆
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