【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#383 [◆ZPM9124utk]
副店長は少し寂しそうな
表情をした。
「…一年前はよくここに
2人で来たしね。そういえば
…悠二と友達だったよね、
最近元気なの?」
絢は少しざわついている
店内の中でひっそり言った。
:08/09/15 01:49 :F705i :☆☆☆
#384 [◆ZPM9124utk]
「それが、一年前から連絡
取れなくてさ…。
他の峰原の友達も連絡
取れないって言ってて…。」
副店長は悲しげな面持ち
で言い、カウンター越しに
絢に紅茶を渡した。
「それっていつから?」
絢はとても嫌な予感がした。
興奮して少し声が大きくなる。
「12月20日、去年のちょうど
今頃だよ。あ、明日だね。」
:08/09/15 01:51 :F705i :☆☆☆
#385 [◆ZPM9124utk]
…―間違いない。
彼と別れた日だ。
絢は紅茶に手もつけず
鞄に入れていた財布から
千円札を乱暴に抜き取り、
副店長に渡した。
「え!?絢ちゃん!??」
副店長が驚いている間に
絢は鞄をつかみ、勢い良く
店を出た。
…―もしかして、
歩道橋にいるのは…
:08/09/15 01:52 :F705i :☆☆☆
#386 [◆ZPM9124utk]
絢は雑踏をかき分けて
例の歩道橋まで急いだ。
人にぶつかったって
コートがめくれたって
気にもしなかった。
ただ、絢は歩道橋にいる
女性を見ているイケメンが
誰なのか確信していた。
緑色の急な階段を
一気に駆け上がる。
男性はいた。
歩道橋の真ん中で
悲しい目で通る人々を
眺めている。
…―一年前の翌日に
この場所で別れた
元彼、悠二だ。
:08/09/15 01:53 :F705i :☆☆☆
#387 [◆ZPM9124utk]
「ゆう…」
そう言って伸びた手を
絢はふと我に返って
制した。
…―今更悠二に声
かけるものじゃ
ないかもしれない…。
まして、あんな別れ方
だったんだから…。
絢は悠二を見つめながら
制した手を強く握った。
…―でもみんな心配してた
し、私が一声かけるくらい…。
:08/09/15 01:54 :F705i :☆☆☆
#388 [◆ZPM9124utk]
絢が脳内で悶々と
悩んでいると、
歩道橋を通った子どもが一人
悠二に近づいた。
「お兄ちゃん何してるの?」
不思議そうな顔をして
その子どもは悠二に聞いた。
悠二はしゃがみ込むと、
子どもに微笑み、答えた。
「大切な人、待ってるんだ。」
「大切な人?それって
お兄ちゃんの彼女なの?」
「……たぶん。」
:08/09/15 01:55 :F705i :☆☆☆
#389 [◆ZPM9124utk]
悠二は少し困ったように
言った。そんな悠二に子どもは
へんなのー、と言って、
歩道橋を駆けていった。
「…だよな。」
絢には悠二がぼそりと
つぶやいたのがわかった。
人ごみに混ざったざわめき
なんてもう聞こえなかった。
悠二にスピーカーが
ついているかのように
彼の声だけ聞こえた。
「…何もかもわかんない
なんて変だよな…。」
:08/09/15 01:56 :F705i :☆☆☆
#390 [◆ZPM9124utk]
「どういうこと?」
いつの間にか絢は
悠二の目の前に
しゃがみ込んでいた。
長い沈黙が流れた。
悠二の目はまん丸だ。
「…………え?」
悠二が絢に向かって言った
第一声はそれだった。
「………すみません、
もしかしてあなた、
立架絢さんですか?」
…―これは冗談?
絢の思考は停止する。
悠二は絢を見つめたままだ。
…―もし本当に悠二が
忘れたとしたら、彼の記憶
が丁度消えているのなら…。
:08/09/15 01:57 :F705i :☆☆☆
#391 [◆ZPM9124utk]
絢はうつむいて、
悠二を見つめた。
「すみません、違います。」
…―これはきっと
彼にとって、私にとって
一番いいのかもしれない。
悠二は、絢の答えを聞くと、
慌ててぺこりと
謝り、立ち上がった。
「そうですよね、すみません。
よくその人に
似ていたもので。」
「…いえ。それより、
さっき、何もかもわからない
って…。」
:08/09/15 01:58 :F705i :☆☆☆
#392 [◆ZPM9124utk]
絢も立ち上がって悠二
と並び、橋の下を眺める。
鞄を握り跡がついて
しまいそうなくらい
強く掴んだ。
「あ、はい。僕、丁度一年前に
事故で記憶
なくしちゃいまして、」
絢の目の前が真っ暗に
なった。
「事故っていっても
ぶつかった程度なんです
けどね…でも厄介なことに
なかなか記憶が
戻ってくれないんですよ。」
「…………。」
何も言い出せない絢を
お構いなしに悠二は
話を続ける。
:08/09/15 01:59 :F705i :☆☆☆
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