【特別企画】1日限りの恋愛短編祭り!【投下スレ】
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#90 [◆EOLHvvAOaU]
 
「…だから、それは!未熟者で中途半端な俺じゃ結婚は無理だから!」


そう言って濡れた頭を
ガシガシとかくと
今度は少し拗ねた様に



「…だから必死に頑張ってデビューも決まって、賞金で指輪も買ったから今日ビシッと決めようとしたのに……お前は…」


と言うと
優しく唇を重ねた
 

⏰:08/09/14 14:33 📱:812SH 🆔:☆☆☆


#91 [◆EOLHvvAOaU]
 


「俺にはお前と赤ちゃんが必要なんだ。亜由美…俺と、結婚してくれ」



シンプルだけど
雅也らしい素敵な
プロポーズだった





気付いたら
あんなに降っていた雨は
すっかり止んでいた
 

⏰:08/09/14 14:35 📱:812SH 🆔:☆☆☆


#92 [◆EOLHvvAOaU]
 
ねー雅也。
私思い出したよ
雅也が雨を好きな理由



雨が降ると虹が見えるからだよね?





虹は大きく大空に
弧を描き
私達を祝福してる様だった
 

⏰:08/09/14 14:36 📱:812SH 🆔:☆☆☆


#93 [◆EOLHvvAOaU]
 


私達は昔の様に
手を繋ぎながら歩いた



左手の薬指には
キラキラのダイヤの指輪
空には鮮やかな虹






「雅也幸せになろーね」
 

⏰:08/09/14 14:37 📱:812SH 🆔:☆☆☆


#94 [◆EOLHvvAOaU]
【投下終了】

タイトル:雨のち……
◆アンカー◆
>>70-93


次の方、どうぞ…

⏰:08/09/14 14:39 📱:812SH 🆔:☆☆☆


#95 [◆1jVUKlu67k]
今から投下します!!

タイトル
【決めゼリフ】

⏰:08/09/14 16:35 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#96 [◆1jVUKlu67k]
「結婚しよう!!……ん〜ありきたりすぎだ……」

そう言って太郎はうなだれた。

風呂上がりに腰にタオルを巻いただけの姿で鏡とにらめっこするのも日課となってしまった。

鏡の前でのプロポーズの練習は、かれこれ五日目。

同時に、彼女に指輪を渡せないでいる日数も五日目。

⏰:08/09/14 16:36 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#97 [◆1jVUKlu67k]
こんなに言葉を考えているのに、これといった決めセリフが思いつかないなんて自分の国語力のなさにため息がでる。

「俺が幸せにするから………いや、なんか違うんだよね……」

まだ乾き切っていない髪の毛から滴り落ちる滴は、太郎を慰めるように優しく頬を伝う。

半裸で鏡に映った無気力な自分は、どうしようもなく滑稽で、今日の練習はここまでにする事にした。

⏰:08/09/14 16:36 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#98 [◆1jVUKlu67k]
「もう2年か……」

湿った髪の毛をドライヤーで乾かしながら、太郎は2年前の記憶の糸を手繰り寄せる。

彼女と出会ったのは、薔薇の刺のようにチクチクとした鋭い風が吹き荒れる冬の日。

当時彼女は週に一回水曜日に、駅前でティッシュを配るアルバイトをしていた。

⏰:08/09/14 16:37 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#99 [◆1jVUKlu67k]
茶色に染めた短い髪を冷たい風になびかせながら、一生懸命ティッシュを配る姿に、気付いたらもう釘付け。

それからと言うもの、毎週水曜日は何度も彼女の前を通り、数え切れないほどのティッシュを家に溜めていった。


そんなストーカー混じりの行為を毎週していれば、さすがに彼女も気付くわけで……

「あの、そんなにティッシュ欲しいんですか?」

キレイに整えられた眉をひそめ、苛立ちを露わにして問う。

⏰:08/09/14 16:38 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#100 [◆1jVUKlu67k]
明らかに自分は嫌悪されていると分かってはいるものの、みるみるうちに自分の中の“何か”がキュウっと締め付けられる。

人はこれを切なさと呼ぶのだろうか。

「いや、あの、目的はティッシュじゃなくて、あなたなんです……あれ?」

この言葉はまずい、と思った瞬間にはもう遅かった。

乾いた音が冬空に響く。

⏰:08/09/14 16:38 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#101 [◆1jVUKlu67k]
彼女は顔を真っ赤にしながら、太郎の右頬を思いっきりひっぱたいたのだ。

「私が目的!?この変態!!!!」

ティッシュと共にその言葉を投げ捨て、彼女は去っていった。

“今思い出しても、あのビンタは強烈だったな”

水分を含んでいた髪も、今では水気を失い、一本一本が芯を持つ。

⏰:08/09/14 16:39 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#102 [◆1jVUKlu67k]
彼女との思い出が懐かしくてなのか、頬にふれる毛先がくすぐったくてなのか、いつのまにか頬がゆるんでいるのが自分でも分かった。

出会いは最悪。
自分に対しての第一印象も最悪。

こんな状況から二人が付き合うようになったのには、太郎のマメな性格と、彼女に気に入られようとする血の滲むような努力が実を結んだものだった。

⏰:08/09/14 16:40 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#103 [◆1jVUKlu67k]
ビンタを食らってからは、毎日のように謝罪の言葉を言った。
ことごとく無視されたが。


何回目かの謝罪で彼女の誤解も解け、許してくれた時に食事に誘った。

そこで1回目の告白。

まぁ、フラれたのだが……。

けれど根気強く、何度も食事に誘い、何度も告白した結果、今に至ることができた。

⏰:08/09/14 16:40 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#104 [◆1jVUKlu67k]
「あ〜あ。明日は指輪渡せたらいいな……」

小さな小箱に入った、小さい指輪を手にとって眺める。

こんな小さな輪っかで彼女の愛をつなぎ止められるのなら、いくらでも自分は買う。


けれど、この指輪はそんな陳腐なものじゃない。

もっと大切な……
二人をつなぐ、目に見える絆。

⏰:08/09/14 16:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#105 [◆1jVUKlu67k]
そう。これは一方的につなぎ止める鎖ではなく、二人で支え合っていくための証。

そして太郎は指輪を割れ物を扱うかのように大切に鞄にしまい、自身も毛布にくるまった。

「明日こそ、ちゃんと言わなきゃ……」

そう呟くと、自然と閉じてきた瞼に逆らうことを止め、太郎は深い眠りについた。

⏰:08/09/14 16:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#106 [◆1jVUKlu67k]
――――――…………

ある晴れた春の日。

木造の小さな家の中に少年と一人の女性がいた。

少年はソファーの上に寝っ転がり、女性は短く切られた髪の毛を揺らしながら、リズムよく野菜を刻む。

そんな当たり前の風景の中を柔らかい風が吹き抜けると、不思議とその部屋が一枚の絵画のような穏やかな空間へと変わる。

⏰:08/09/14 16:42 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#107 [◆1jVUKlu67k]
「……ねぇ母さん。今日結婚記念日でしょ?親父ってプロポーズの言葉なんて言ったの?」

寝っ転がってテレビを見ていた少年は思い出したように起き上がり、好奇心のまなざしで女性を見る。

少年の体格はもう大人だが、真っ直ぐに母をとらえた瞳はまだまだ子供のような無邪気な面影を残していた。

「まぁ、小太郎もマセたこと聞くようになったのね〜。母さん感激!!」

⏰:08/09/14 16:42 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#108 [◆1jVUKlu67k]
ふふっと笑った女性の顔は、新しいおもちゃを見つけた子供のようにキラキラと輝いていた。

「もぉ、うるさいなぁ!!いーから教えてよ」


「お父さんはね『僕の隣で毎日笑って下さい。そのためなら何でもします』って言って指輪を渡してくれたの」

女性はそう言って、過去を振り返るように、過去を懐かしむようにゆっくりと自分の薬指をなぞる。

⏰:08/09/14 16:43 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#109 [◆1jVUKlu67k]
「親父やるじゃん!!今つけてる指輪が親父から貰ったやつなんだろ?」

「そー思うでしょ?でも違うの。お父さんがくれた指輪、大きすぎてね……。今つけてるのは、後で買い直したやつ」

クスクスと笑みをこぼす女性は、一児の母だとは思えないほど可愛らしく笑った。

⏰:08/09/14 16:44 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#110 [◆1jVUKlu67k]
「親父だめじゃん……。
なにが『隣で笑って下さい。そのためなら何でもします』だよ…」

小さくため息をつく我が子をみながら、また女性は微笑んだ。

「でもね、お父さんはワザと大きいのを買ったと思うの」



だって薬指をみたら「付き合った時から太郎さんは、そそっかしいんだから」って毎日笑えちゃうでしょ?

⏰:08/09/14 16:45 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#111 [◆1jVUKlu67k]
投下終了です

【決めゼリフ】
>>95-110

次の方どうぞ!!

⏰:08/09/14 16:46 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#112 [◆KHkHx8enOg]
今から投下します

【死んで初めて気付く大切に人】

⏰:08/09/14 17:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#113 [◆KHkHx8enOg]
僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。

ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。
たった今、生まれ落ちたばかりのように頭がうまく働かず、無心でぼーっと天井を見つめる。
天井とはこんなに低かっただろうか。
ちょっと手を伸ばせば触れてしまいそうなほどに近く感じる。
いや、実際近いのではないか?と考えが頭を過ぎったりもしたが、正直どうでもよく感じ、あっさりと思考を停止させた。
そんなことを考えながら天井を見つめていると、次第に世界に音が戻ってきた。

⏰:08/09/14 17:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#114 [◆KHkHx8enOg]
…何の音だろう。
聞き覚えのある一定のリズムが耳に届く。

ぽくぽくぽく…。
これは確か…。
あぁ、木魚の音か。
そういえば、さっきからお経のような声も聞こえるし、これは夢だろうか。
そうでないとするなら、私は葬式中に寝ていることになる。
頭が少しずつ機能してきた時、聞き覚えのある母の啜り泣く声が聞こえてきた。

⏰:08/09/14 17:26 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#115 [◆KHkHx8enOg]
…お母さん?

「うっ、うぅっ…」

「良枝…」

母の泣き声に次いで、父のなだめるような声が母の名前を呼んだ。

お母さん?
どうして泣いてるの?
お父さん?
何があったの?

私の声は喉から出てくることはなく、心の中で虚しく響いて消えた。

⏰:08/09/14 17:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#116 [◆KHkHx8enOg]
声が、出ない。
身体も動かない。
母と、その他のいくつかの泣き声とお経だけが耳に届く。

「千恵…」

母が私を呼んでいる。
どうしたの?お母さん。
答えは返ってこなかった。

私の意識は一気に覚醒してきた。
先程からずっと続いている奇妙な感覚。
身体を取り巻く違和感に、生きた心地がしなかった。

⏰:08/09/14 17:28 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#117 [◆KHkHx8enOg]
言うならば、呼吸しないで生きているような感覚。
息苦しい。
体は質量を失い、ふわふわとしながらも心臓だけがずっしりと重い。
経験したことのない感覚。

お母さん。これは夢だよね?
現実味がありすぎて、頭が困惑してしまった。
夢には思えない、でも夢だと信じたい。

⏰:08/09/14 17:29 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#118 [◆KHkHx8enOg]
私は怖くなった。


早く覚めろ早く覚めろ。

声が出ない、何故?


早く、早く!

これは夢だ!


身体もっ!

動いて…、
動いてっ…、


動いて!!


「千恵…どうして死んでしまったの?」

⏰:08/09/14 17:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#119 [◆KHkHx8enOg]
母の声と共に、私の体は下から弾かれたような強い衝撃を受けた。
驚く間もなく、気付いたら動けるようになっていた。
あの感覚は消えないものの、いつもと何ら変わりない目覚め。
ただ違うのは、目の前に広がる光景だった。

⏰:08/09/14 17:30 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#120 [◆KHkHx8enOg]
目に映ったのは、綺麗に正座しながら泣く、全身真っ黒の知り合いたち。
友達から親戚まで、どうやら外にもまだいるようだ。
壁には白と黒の幕が垂れ下がり、目の前にはお坊さんがお経を読んでいる。

ほらね、やっぱり夢だった。
現実的すぎるけど、これは夢だ。
夢じゃないなら何なのか、教えて欲しいくらいだ。

辺りを見渡せば、暗い雰囲気は葬式そのものだった。

⏰:08/09/14 17:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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