短編集
最新 最初 🆕
#249 [我輩は匿名である]
悔しいから言いたくないけど)慧弥さんはイケメンだし、奥さんは超美人だし、有名(らしい)な画家だし、金持ち?だし、本当ムカつく!!

…八つ当たりです、はい。

だってー、羨ましいじゃん?
つーか憧れんじゃん?


何となく自分が恥かしくなって慧弥さんにそっぽ向いていると、真剣な声が部屋に響いた。

慧弥さんはさっきの写真を手に取り、それを静かに見つめている。

⏰:10/08/29 05:09 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#250 [我輩は匿名である]
「……最近俺、絵を描くのに行き詰まっててさ、その上企画もあったり他にやらなきゃいけない仕事もあったりして…全然余裕、なかった」

何となく、あの夜話していたことと関係ありそうで、俺は黙って慧弥さんの話に耳を傾けた。

「エリサはとても心配してくれて、あいつも忙しい筈なのに、少しでも俺の負担を減らそうとしてくれていた。」

「なのに俺は……記念日も、約束も……」

慧弥さんは言葉を詰まらせながら話し続ける。

⏰:10/08/29 05:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#251 [我輩は匿名である]
「……俺は最低な旦那だよ。何一つあいつにしてやれなかった」

自嘲気味に息を吐くと、写真を置いた。

そして、俺と慧弥さんの間に沈黙が続く。


「…何ですかその過去形は!」

「え?」

「してやれなかった。って、まるでもう別れたみたいじゃないですか!詳しい事情はわかんねーけど、少なくとも慧弥さんはそれが嫌だからあの日あの場所にいたんだろ?それにエリサさんと、ちゃんと話し合ったんですか!?」

⏰:10/08/29 05:11 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#252 [我輩は匿名である]
「…………」


…!!
しまった!
つい勢いに身を任せて叫んじまった!

「…あの、す、すいません、偉そうなこと…」

「……いや、お前の言う通りだな」

「え…」

「俺はエリサ以外、考えられない」

そう言って、真っ直ぐ俺を見つめる慧弥さん。

⏰:10/08/29 05:13 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#253 [我輩は匿名である]
……まただ

また、あの感じだ

どうしてこの人は、こんなにも真っ直ぐなんだろう


俺はあの時のように、慧弥さんの澄んだ闇色から眼が離せないでいた。

「……そんなに、そんなに大切なら離しちゃ駄目です!ちゃんと逢って、慧弥さんの気持ちを伝えるべきだよ!」


あークソ何か腹立ってきた!

⏰:10/08/29 05:15 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#254 [我輩は匿名である]
「つーかあんたが直接逢いに行けばいいじゃん!エリサさん、待ってるかもしれませんよ?!」

「……待ってる…?」

「大体、本当にエリサさんが離婚したいと思っているならシュレッターになんかかけてませんよ!」

「ここは一つ、エリサさんが喜びそうな物でも持って行って、仲直りしてくれば良いじゃないっすか!きっと気持ちは、伝わる筈ですよ!」

「……!!」

⏰:10/08/29 05:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#255 [我輩は匿名である]
俺が言うや否や、慧弥さんは部屋を飛び出した。

「え?!ちょっ…慧弥さんっ??」

俺は慌てて奴の後を追う。

今度は迷子にならずに済んだ。

リビングの隣の部屋のドアが開けっ放しだったから。


「すげー…」

その部屋は沢山の絵画で埋め尽くされていたので、此処が慧弥さんの仕事場(アトリエ)なんだとすぐにわかった。

⏰:10/08/29 05:24 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#256 [我輩は匿名である]
綺麗で高級感溢れるこのマンションには似合わない程、此処だけ別の空間みたいな、そんな不思議な気持ちになった。

描き掛けの物や完成品であろう物、絵画に関する雑誌など様々な物で溢れている。

俺は絵画とか美術なんかはまるで無知だけど、此処にある数々の作品は"ホンモノ"だと思った。
それだけはすぐにわかった。
それ程までに、凄すぎる。

俺はこの空間に圧倒されて、つい不注意になっていた。
何かに躓き、その拍子に仕事道具であろう物品たちをぶちまけてしまった。

大きな音を立て床に散らばる筆やその他諸々。

⏰:10/08/29 05:26 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#257 [我輩は匿名である]
「すっすみませんっっ!!」

俺はそれを慌てて拾い集めるが、慧弥さんの反応はない。

不思議に思い、慧弥さんへ振り返る。


慧弥さんは只ひたすら筆を動かしていた。


あんなデカイ音を立ててしまったのに、この人の耳には何も聞こえていないんだ

…なんて凄い集中力なんだ

きっと、今この人の世界には誰も入れない。

⏰:10/08/29 05:28 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#258 [我輩は匿名である]
俺はそっとアトリエから出た

何か、慧弥さんのこと段々わかってきた気がする

何を描いてるのか全く見当もつかないけど、たぶん、あの絵を書き終えるまで奴はあの部屋に籠もるな

何の根拠もないが、慧弥さんはその手のタイプの人間だと思う

それに、"その時感じたインスピレーションが大事だ!"とか、芸術家なんか良く言うじゃん?

たぶん。

⏰:10/08/29 05:29 📱:F906i 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194