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#269 [我輩は匿名である]
その日の夜
慧弥さんから着信があった
少し迷ったけど、もち出られる筈もなく俺は放置した
次の日もその次の日も着信はあった
メールも一件だけあった
俺がこんな風になってるなんてまるで思ってもないような内容だった
…当たり前か。
『どうした?忙しいのか?とりあえず飯、さんきゅーな。連絡くれ』
:10/08/29 21:21
:F906i
:☆☆☆
#270 [我輩は匿名である]
俺は少し罪悪感にかられた
…ごめん慧弥さん
俺、どう接したら良いのかわかんねーよ
―それから一週間が過ぎようとしていたある日の帰り道
大学から駅に向かっていると、不意にバイクに横切られあぶねーなと思っていたら目の前に止まりやがった。
俺は何だと不審に思っていると、そいつはメットを無造作に外した。
…見慣れた顔が、そこにあった。
:10/08/29 21:24
:F906i
:☆☆☆
#271 [我輩は匿名である]
「よう、湊。元気そうじゃねぇか」
「……慧弥さん………」
そこにいる慧弥さんは、いつかの鬼の形相みたいな顔をしている訳でもなく、不気味に微笑んでいるだけだった。
それが、余計に怖い。
「話は後だ。乗れ」
そう言って俺にメットを投げ渡す
「でっでも」
「いいから」
:10/08/29 21:26
:F906i
:☆☆☆
#272 [我輩は匿名である]
有無を言わさないかのように無言の視線が痛い。
俺は仕方なく慧弥さんの後ろに跨る。
「んじゃ、しっかり捕まっとけよ」
「…はい」
慧弥さんは俺の返事を確認すると勢い良くエンジンをかけた。
行き先は、勿論知らない。
―…結局慧弥さんち(マンション)に戻って来ちまった。
:10/08/29 21:28
:F906i
:☆☆☆
#273 [我輩は匿名である]
慧弥さんはずっと無言だった。
何度かチラ見したけど、その表情からは何も感じ取れない。
はぁ。いたたまれないなぁ…
一度ならず二度もすっぽかした訳だもんな
家に上がり、テーブルに促され、前も煎れてくれたあの高級茶を二人分用意すると、漸く慧弥さんは座った。
と、とりあえず謝らないと…!
:10/08/29 21:31
:F906i
:☆☆☆
#274 [我輩は匿名である]
「あ…、あの、」
「で、今度は何だ?」
「は?」
慧弥さんは何故か笑っているようだった。
俺は意味わかんなかったけど、とりあえず謝ろうと思った。
「……すみませんでした。連絡、しなくて……」
「今度は素直に言ったな」
「……?」
:10/08/29 21:33
:F906i
:☆☆☆
#275 [◆LOSh2yD9/c]
言葉の意味をまたもや理解出来ずにいると、慧弥さんは更に笑みを浮かべ、補足した。
「"出来なかった"んじゃなくて"しなかった"んだろ?」
「……!!」
「いや、あの……。俺、慧弥さんにどう接したら良いのか、わかんなくて…」
「……………」
「すっ…すみません!俺、慧弥さんが名家の人だったなんて知りませんでした!!」
「……………」
:10/08/31 01:50
:F906i
:☆☆☆
#276 [◆LOSh2yD9/c]
俺は意を決し頭を下げて叫んだ。
……だがしかし慧弥さんの反応はない。
俺は恐る恐る顔を上げて見ると、慧弥さんは俯き、肩を震わせているようだった。
え!?
やばい、もしかして怒ってる?!
「け、慧…」
「……く、駄目だ。堪えらんねー、ははは…」
「は?!!」
慧弥さんは顔を上げると腹を抱えて笑い出した。
:10/08/31 01:52
:F906i
:☆☆☆
#277 [◆LOSh2yD9/c]
ま、まじで意味がわかんね〜〜
何がどーなってんだ?!
「……お前はな、俺の親友だった奴に似てるんだよ」
「え?」
慧弥さんは少し落ち着き、一息吐いた後唐突に告げた。
「この間のことといい、今回のことといい…、何でだろうな。顔や雰囲気も全然違うのに」
そう言ってまた小さく笑い出す慧弥さん。
:10/08/31 01:54
:F906i
:☆☆☆
#278 [◆LOSh2yD9/c]
…勝手に盛り上がってる所悪いんだけど、全く理解出来ないんですけど!!
「親友"だった"……?」
そう。俺が引っかかっていたのはそこだった。
過去形なのはどうしてだ?
「…ああ。あいつは、もうこの世にはいない」
急に慧弥さんから笑みが消えた。
「あの、慧弥さん?全然話が見えないんですけど…」
:10/08/31 01:56
:F906i
:☆☆☆
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