【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#106 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「うぇ!!初めて神様見ちゃった……」

レインは碧い瞳をより一層大きく見開き、エプロン姿の青年を食い入るように見つめる。

「そう驚くでない。神などそこら辺にゴロゴロいる」

青年はフンと鼻を鳴らして、そっぽを向く。

「さて、無断で神界を抜けてきたからギードルの奴が怒って迎えにくるだろうな……」

曇り空を見上げフーっとため息吐き、お玉で頭を掻く青年の表情はその若さに似つかわしくないほど疲れ切ったものだった。

神とはそれほど神経を浪費する役割なのだろう。

⏰:08/11/03 14:58 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#107 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「あの、ギードルとは……?」

差し出がましくないように、言葉を選びながらレインは恐る恐る『神』に問う。

「あぁ、俺の秘書だ。まだ学生なんだが、なかなかキレる奴でな。ほら 生意気にもう俺の居場所を見つけやがった」

青年は曇り空の一点を見つめる。つられてレインも空を仰ぐ。

と、同時に雲の切れ間から人影が。

人影はどんどん高度を下げ、先程まで肉眼では確認できなかった格好や容姿も理解できるほどに近づいてきた。

⏰:08/11/03 14:58 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#108 [紫陽花→渚坂 さいめ]
そして黒い学生服の下に着込んだトレーナーのフードを揺らしながら、青年の秘書役であるギードルはこの地に降り立った。

「神様ここにいらしたのですか!!すぐにお戻りください!!城が城が……!!」

ギードルは蒼白な顔をして青年に話しかける。

レインの存在も気付かないほど焦っている様子を見ると、余程の緊急事態なのだろう。

「落ち着け。なにがあったのだ?」

青年はギードルの肩をつかみ、揺さぶるようにして詳細を問う。

⏰:08/11/03 14:59 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#109 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「申し上げます……城が賊に襲われました。怪我人はおりませんが、神界の安定を司る宝玉“亜神の命”が盗まれました」

それだけ言うと下唇をギリギリと噛み、目を伏せた。

「なるほど、お前が焦るのも無理はない。亜神の命を盗むとは……小賢しい賊め。で、その賊の行方は?」

青年はギードルの肩から手を離し、そのまま右手を顎の下に持っていく。

まるで探偵のようなポーズで考え込む姿は、少なくともレインの目に立派な大人の姿に見えた。

⏰:08/11/03 15:00 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#110 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「正確な位置は掴めませんが、居合わせた燕弥(エンビ)に賊の臭いを覚えさせました」

「よし、でかした。燕弥!!そこに隠れているのだろう?出てこい」

そう言って青年はギードルに向かって叫ぶ。

「あぁーもう!!分かってるよ」

青年が叫ぶのと同時にギードルの後ろからひょっこりと少年が飛び出した。

背格好こそレインと変わらないものの、彼の目は少しつり上がり額に小さな傷。

燕弥 [jpg/36KB]
⏰:08/11/03 15:02 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#111 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「何!?ギードルと賊を追いかければいいの!?」

腕を組み、ギードルを顎で指しながら青年と話す燕弥。

態度こそ大きいものの、それを青年が許しているところを見てみれば、互いの信頼が厚いと言うことだろう。

二人の会話を聞きながらレインはそんなことを考えていた。

「いや、お前はここにいるレインと行ってもらう」

⏰:08/11/03 15:02 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#112 [紫陽花→渚坂 さいめ]
ぼーっとしていた頭を一気に覚ますような青年の思いもかけない言葉に、レインは一瞬言葉を失った。

「うぇ!?ななななんでオイラが……」

わたわたと首を振ってみるものの青年は怪しい笑みを浮かべるばかり。

⏰:08/11/03 15:03 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#113 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「すいません……本来、僕が行くべきなんでしょうけど、僕の全てをかけた事件が時効になりそうなんです……」

申し訳なさそうにギードルは頭を下げた。

「事件?時効?ギードルさんは秘書なんじゃ……」

不思議そうにレインは首を傾げる。

「ギードルは18歳にして、学年トップ、秘書役、警視総監、弁護士とか、色んな肩書きを持ってらっしゃるんですよー」

イヤミったらしく、吐き捨てるように燕弥が説明する。

⏰:08/11/03 15:04 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#114 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「うぇー、スゴい……だからってオイラが行かなくても」

「つべこべ言うな。時は一刻の猶予もないのだ。ギードル!!こいつに服と地図を!!」

レインの抗議も無視して話を進める。

こんな独裁主義者がこの世界の神様だなんて、大丈夫なのだろうか。

レインが青年にそんな不安を感じているとはつゆ知らず、ギードルはレインの着ていたボロ布の服を素早くひっぺかし、どこからか現れた新しい服を着せていく。

⏰:08/11/03 15:04 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


#115 [紫陽花→渚坂 さいめ]
「うむ、流石コーディネーターの資格を持つギードルだ。なかなか良いではないか」

青年は自分が仕立てたかのように満足げに鼻を鳴らした。

レインの碧い瞳と同じ色の宝石が埋め込まれたベルトに、ボロ布とは違う上等な布で作られた服。

さっきまでのしがないドラゴン使いとは誰も思うまい。

そして、これもどこから取り出したのか青年は一枚の茶色く変色した地図をレインに差し出す。

レイン [jpg/19KB]
⏰:08/11/03 15:06 📱:F905i 🆔:WY17HTaw


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