【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#178 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「てめぇまさか…さっきの魔法はお前のかよ!?そういえばお前魔法使いだったもんな!」

「待て、じゃあ後一人は誰だ?」

ラルティスがシンに聞くと、シンはガイアの更に後ろを指差した。

「お前、クーロン…か?」

ガイアが珍しそうな声を出しながら見つめる先には、クーロンと呼ばれた十八歳ほどの黒服の青年が立っていた。
腰には紫色の鞘に収まった片刃刀が下がっている。

「すみません、ガイア様。そいつが突然立ち止まったかと思うといきなり呪文の詠唱を始めて…止めるのが遅れてしまいました」

紳士を思わせる物腰が柔らかそうな青年は申し訳なさそうに言うものの、その顔は無表情を続けていた。

⏰:08/11/03 16:22 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#179 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「黒騎士のサブマスターか」

ラルティスの言葉に反応せずに、クーロンはガイアの傍まで歩み寄った。

「何でクーロンがラルティスのサブマスターと一緒にこんな所に?」

ガイアが聞くとラルティスの横で「シンだし!」と喚いている少年を無視してクーロンが口を開く。

「仕える者が主の行く所に付いていくのに理由などありませんよ。それがそいつも同じだっただけです」

そいつ呼ばわりされたシンはまたもや「シンだし!」と抗議しつつも今度はラルティスに抑え込まれた。

⏰:08/11/03 16:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#180 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「待て。君たちも行くというのか?」

ラルティスが聞くと、クーロンは明らかに不機嫌そうな表情をして今度は口を開いた。

「文句がありますか?安心してください。私が安ずるのはガイア様のみであって貴方には興味はない」

苦笑するカイトの横で、クーロンに食いかかるような目を向けるシン。

「ふざけんな馬鹿!この中で一番レベル低いくせに!」

喚き散らすシンにクーロンはやれやれといった様子でため息を吐く。

「レベルなど大した差ではない。貴様は91、私は89。たったの二つしか変わらないじゃないか」

⏰:08/11/03 16:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#181 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
相手によって接し方を変えるクーロンと、喧嘩っぱやいシンとのやり取りはどこかで見たことがある感じだった。

「ガイア…。僕、出会い方次第では君の所のサブマスターとなら気が合いそうだよ」

「奇遇だな。俺もお前の所のサブとなら上手くやっていけそうだと思っていた」

⏰:08/11/03 16:24 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#182 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
フィズの街を出て南に山を一つ越え、更に谷に沿って進んだ荒野に、バグワールドはあった。

「着いたぞ、ここだ」

四人は言葉が見つからないといった様子だった。
バグワールドの入口と思われる場所は、何もない空間に亀裂が入ったように空中にぽっかりと穴が空いており、中は真っ暗で何も見えない。
周囲の川の水は紫色をしていて、バグワールドの上空の空だけが薄暗くて、やけに黒い。
更に地面は血に染まったかのように赤い。
どんなダンジョンとも違う、異様な空間だった。

⏰:08/11/03 16:25 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#183 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「この裂け目が…入り口か?」

ガイアがやっとといった感じで口を開く。

「恐らく、そうだ」

「カイトのお父さんとお姉さんは二人で入ったんだろ?僕達は五人だし大丈夫だろう」

その言葉は自分に言い聞かせているのだろうか。
ラルティスの声色は重々しかった。

⏰:08/11/03 16:26 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#184 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「こんな場所なら最大の六人でパーティ組めば良かったのに…」

「何だ貴様。怖いのか?」

愚痴るシンにこんな場所ですら表情を変えないクーロンは正面を向いたまま受け答えをする。

「馬鹿か!怖くなんかないし!」

「どうでも良いが、足手まといだけは勘弁だぞ」

ギャーギャーと喚き始めたシンに場の空気は僅かに和んだ。
カイトがちらりと見遣ればクーロンの口元に少しだけ笑みが浮かんでいるようにも見えた。

⏰:08/11/03 16:26 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#185 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「それじゃ…行くぞ」

意を決したかのように呟くと、カイトは裂け目に飛び込んでいった。
ラルティスたちが後に続いた。

⏰:08/11/03 16:27 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#186 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「中は案外明るいな…」

ガイアが小さく呟けば、声が反響するように空間内に響いた。
薄暗い世界は洞窟内のような作りをしていて、一本道になっている。

「よくこのバグワールドに一般ユーザーが紛れ込みませんでしたね」

クーロンがぽつりと疑問を零せばカイトがすぐに答える。

「ここはアクセスコードを持ってないと入れない場所だからな。アクセスコードは俺がダウンロード済みだ」

クーロンはまさか独り言に返事が来るとは思ってなかったのか、なるほどと呟いて正面を向き直した。

⏰:08/11/03 16:28 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#187 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「…待て、カイト」

ラルティスが手を上げて制止を促した。

「どうした?特に何かの気配はないが…」

怪訝そうに眉を潜めればラルティスは人差し指を口元に当て、耳を澄ませばように指示した。

「確かに気配はない。だが…何かいる」

耳を澄ませば、確かに無音ではない。
何かがひしめくような音がする。
いや、声が。

⏰:08/11/03 16:28 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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