【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#354 [向日葵]
:08/11/04 00:03 :SO906i :1uZDS5G2
#355 [向日葵]
ねぇ、ほんの少しでいいの。
思い出して笑ってくれれば、それだけで嬉しいわ……。
―――――――――…………
「こんの……クソ親父ぃーっ!!」
どうして!?
私にその疑問がつきまとった。
私はすぐそばにあったクッションを親父に投げつける。
親父はそんなもの痛くもかゆくもないという風に大あくびをする。そんなだから、私の憤りの炎は大きくなる。
「今日がなんの日か忘れたってどういうことよ!」
「あのなぁサキ、人っていうのはどんどん老いぼれていくんだよ。それに比例して物忘れも激しくなる。オーケー?」
:08/11/04 00:04 :SO906i :1uZDS5G2
#356 [向日葵]
ぼりぼりと散髪に行かず伸ばしっぱなしの髪の毛をかき回す。
今日は珍しく親父の仕事が休みだし、丁度いいと思った私が馬鹿だった。
とどめとばかりに、持っていた学校鞄を親父のスネめがけて当ててやる。
これは効いたのか、親父はその場に声にならない悲鳴を上げてうずくまる。
「いってきますっ!!」
力任せに玄関の戸を閉めて、アパート階段をかけ降りる。
私のお母さんは、1年前に亡くなった。
もともと心臓が悪かったお母さんだけど、ニコニコ笑っていて大好きだった。
そんなお母さんが亡くなる前に言ったお願いがある。
:08/11/04 00:04 :SO906i :1uZDS5G2
#357 [向日葵]
それを……あの馬鹿クソ親父はぁーっ!!
―――――――――…………
学校が終わって、夕食の材料を入れたスーパーの袋を持った私は帰宅した。
居間から入ってくる風に気づいて覗いてみれば、ベランダに続く戸の戸口に親父が夕日を眺めていた。
「……ただいま」
「んー……」
私に背を向けたまま、親父はそう言った。
親父は確かに面倒くさがりだし、のんびり屋だし、根性曲がってる部分だってある。
:08/11/04 00:06 :SO906i :1uZDS5G2
#358 [向日葵]
それでも、お母さんが大好きだった事は知ってる。
なのに、そんなお母さんの最期の言葉すら、たった1年という短い間に忘れてしまえるのだろうか。
それが分からないから、私は憤りと共に不安にも似た気持ちを胸中につのらせる。
「親父の……馬鹿……」
気づけば涙で頬を濡らしていた。
「どうして……?本当に分からないの?お母さんの言葉は、親父にとってそんな簡単なものだったの!?」
親父は黙っている。
その背中からは、今どんな気持ちでいるのかは分からなかった。
「……分かった。もういい」
:08/11/04 00:06 :SO906i :1uZDS5G2
#359 [向日葵]
私は自分の部屋に行こうとした。
「忘れるわけないだろう」
私は足を止める。
目を見開いて親父を見るが、さっきと体勢は変わっていなかった。
ただ、さっき見た背中よりも悲しそうに感じた。
そして私にはなった言葉も、微かに震えている気がした。
「思い出したら……失ってしまった事に耐えれないと思った。当たり前だろ……、生涯愛すると誓った相手なんだからよ……」
私は知っていた……。
お母さんが亡くなった日、泣きじゃくる私を慰める為、自分は泣くまいと頑張っていた親父を。
:08/11/04 00:07 :SO906i :1uZDS5G2
#360 [向日葵]
通夜の後、皆が寝静まってしまった頃、もう冷たいお母さんの手を握り締めて、「ありがとう」と涙ながらに呟いていたことを。
でも、お母さんは言った。
「命日には、お母さんとの思い出を笑って話してねって約束したんだからさ、悲しむんじゃなくわらおうよ。そしたらさ、お母さんだって、きっと……」
「……そうだな」
亡くなった人の思い出は、年月と共に悲しくも薄れていく。
だからせめて1年に1度は思い出そう。
大好きな人と過ごした、愛しい時間達を……。
―fin―
:08/11/04 00:08 :SO906i :1uZDS5G2
#361 [向日葵]
>>353-360「時間のぬくもり」
ご協力頂いた絵師の皆様、ありがとうございました
次の方どうぞー
:08/11/04 00:09 :SO906i :1uZDS5G2
#362 [8]
遅くなりました。
投下します(^O^)
:08/11/04 00:55 :W52SA :xpWYpMNU
#363 [8]
画像No.54
一輪の花
:08/11/04 00:56 :W52SA :xpWYpMNU
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