【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#160 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「ちょこまかと逃げ回る臆病者が。少しは俺の太刀を受けてみろよ」
ガイアが鎖の巻き付いた魔剣をゆっくりと引き抜く。
「馬鹿の一つ覚えみたいに刀を振り回すだけの攻撃重視な奴に言われたくないね。速さこそ全てだ。いくら強い一撃でも君の鈍い攻撃に当たらなければ良いだけの話さ」
相変わらず姿勢を崩さないことからして、ラルティスはすでに戦闘の体勢になっているのだろう。
:08/11/03 16:09 :SH905i :☆☆☆
#161 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「速さしか能がねぇのか」
「君も攻撃しか能がないだろう。瞬殺というのを体験してみるかい?」
「攻撃は最大の防御ってのを思い知らせてやるよ」
ピリピリと張り詰めた空気に似合わないため息が一つ落ちた。
「待てお前ら。今日は俺に付き合う約束だろ?」
カイトはやや呆れ顔で二人の間に体を滑り込ませると剣を収めるように促した。
:08/11/03 16:10 :SH905i :☆☆☆
#162 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
ガイアは小さく舌打ちをすると魔剣を元の位置に戻し、ラルティスは大人しく柄から手を離し低い姿勢から立ち上がった。
今日はカイトのために集まったのだ。
CODの中でもまだまだ希少で、全体のユーザーの一割にも満たないLv90超えのトップクラスのメンバーが三人も集っているのだ。
よほどのことでなければ有り得ない光景だ。
「今日こそ行くんだな、バグワールドに」
「あぁ」
:08/11/03 16:10 :SH905i :☆☆☆
#163 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
バグワールド。
カイトが聞き込みを続けて五ヶ月。
ようやく耳にした有力で確かな情報だ。
父と姉はここに二人で向かったという目撃情報を最後に、消息を絶っている。
五ヶ月前の、あの日に。
「何か解るといいな。親父さんのこと」
「…あぁ。わざわざすまないな」
街の入口まで辿り着くと、再び二人に向き直る。
:08/11/03 16:11 :SH905i :☆☆☆
#164 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「ガイア、ラルティス。恐らく敵は…強い。話では親父のレベルは上限の100だと聞いた。姉も。だが、二人はやられた。Lv100が二人でも勝てない相手が居る未知の場所だ。無事に帰って来れる保証もなければ、本体の安全さえも保証出来ない。正直、俺の戦いに二人を巻き込んでしまって後悔している。やめるなら止めはしない、本当に一緒に行ってくれるか?」
ガイアは口元を歪めて小さく笑って見せた。
「馬鹿野郎。危険なのは承知済みだ。俺は黒騎士のギルドマスターだぜ?親父さんがLv100でも、俺より強いとは限らないだろ」
横にいたラルティスはわざとらしい大きめの声で「あーあ」と漏らした。
:08/11/03 16:12 :SH905i :☆☆☆
#165 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「ここで僕が辞退して、ガイアがやられれば、晴れてこの世界を統一出来るから面白いと思ったんだけどね。でも、ガイアが帰って来ちゃえば僕は臆病者扱いだ。メンバーに会わす顔がないよ。ガイアが行くなら僕も行こう」
ラルティスの理由に思わず頬が緩みそうになった。
しかし、これでメンバーは決定した。
:08/11/03 16:13 :SH905i :☆☆☆
#166 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
体力の温存のために、魔物避けの聖水を持って来たので、魔物に逢うことはまずなかった。
もし逢ったとしても、このメンバーなら息一つ切らさずに一瞬で絶命させられるだろうからあまり意味はないが。
:08/11/03 16:14 :SH905i :☆☆☆
#167 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
この世界は不思議だ。
レベルと強さは比例の関係ではなく、時には反比例する。
つまり、レベルの低い者が高い者に勝つというのも有り得るのだ。
レベルが高いから強いとは限らない。
ステータスの上昇にはその人の内面が反映させるのだという。
ラルティスのように速さや瞬殺を目指してる者は素早さが成長し、ガイアのようにとにかく攻撃を求めている者は破壊力が成長する。
逆に、特に何も考えないでゲームを楽しんでる者は、悪戯にステータスが上がり、特に秀でた能力値がなく全てが平均値なので弱くなる。
だからレベルが低い者でも高い者に勝つ場合があるのだ。
:08/11/03 16:14 :SH905i :☆☆☆
#168 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
しかしカイトは珍しいタイプだった。
ラルティスを速さタイプ、ガイアを攻撃タイプとすると、カイトは的確タイプのようなものだ。
楽しむためにやってきた訳ではなく、父と姉のためだけに戦ってきたカイトは、とにかく確実に敵を仕留めることにこだわった。
ゲームなのに楽しむためではなく、ただ真剣にまるで復讐するかのようにひたすら戦うカイトだからこそ特化した能力なのだろう。
この戦いも後少しで転換点があるかもしれない。
そう考えるとカイトの胸は高鳴った。
腰の紅い日本刀が揺れている。
もう少しで目的地に辿り着く。
:08/11/03 16:15 :SH905i :☆☆☆
#169 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「それにしても妙だな」
歩きながら突然ラルティスが悩ましげな声を上げる。
「普通は倒されたらゲームオーバーになって近くの街で復活するだろう?でも、カイトのお父さんたちは意識不明らしいじゃないか。もし何者かに倒されたなら、キャラは復活するはずだろ?」
カイトがラルティスの疑問に静かに頷くと次にガイアが声を上げる。
:08/11/03 16:16 :SH905i :☆☆☆
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