【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#255 [No.017(1/2)◆vzApYZDoz6]
これは、とある女の人のお話。


美しい緑野の丘。
暖かい陽気をもたらす太陽の下では、たくさんの色鮮やかな花が咲き誇り、甘い香りに誘われた蝶々がひらひらと舞い遊んでいます。

そんな緑野の片隅で、彼女は1人で住んでいました。
彼女は花を摘んだり蝶々と戯れながら、たった1人で住んでいました。


彼女が1人、周囲の人間から離れるには、理由がありました。
美しく平和な世において、彼女は調和を乱してしまうからです。

彼女の手にかかると、すべては正常に動きませんでした。

水を汲もうと井戸車を回転させれば、それは土を掘りました。
辺りを照らそうと松明を握れば、たちまち火が燻りました。
会話に混ざろうと隣人たちの中に入れば、いつも隣人たちを困惑させました。

だから、彼女は1人でいなければなりませんでした。

それでも丘の住人たちは孤立した彼女を憐れみ、手を引いて調和の中に引き戻そうとします。
でも、それに従った結果はいつも同じでした。

いつしか彼女は、手を引かれる事を拒むようになりました。

そうしても『孤立した存在がある』という事実が丘の住人たちを苛み、調和を乱してしまいました。

彼女と世界の間には、越えがたい隔絶が横たわっていました。

そんな彼女には、双子の妹がいました。

⏰:08/11/03 19:46 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#256 [No.017(2/2)◆vzApYZDoz6]
世界に受容されない彼女に対し、妹は世界に寵愛されていました。
彼女は妹を介してでしか調和を手にすることができません。

土を掘った桶に妹が触れれば、土はたちまち水へと変わりました。
燻り煙が立つ松明を妹が握れば、みるみるうちに立派な火が灯りました。
妹が彼女の手を引いて隣人たちの中に入れば、そこには笑顔が溢れました。

情深く慈愛に満ちた人格の妹は、関わる全ての人々に幸福をもたらしました。

彼女も妹が側にいるとき、あるいは妹の呼び掛けに手を振るときなどは、気持ちが多く満たされていました。

いつしか彼女は、妹を欲し妹と共にありたいと強く望むようになりました。
それに連なり、彼女が妹の側にいる時間は長くなっていきました。

しかし、美しく平和な世において、彼女が正常者になることを、世界は拒みました。

世界が拒んだその瞬間、天に雷雲が立ち込めます。
雷鳴が轟き、彼女の側にいた妹は稲妻と共に雷に打たれました。

物言わぬ姿となった妹を見た他の住人たちは、とうとう耐えきれず、調和を乱す彼女を罵ります。

彼女は住人たちを拒みました。
住人たちの罵詈雑言に、耳を抑えて悲鳴を上げました。

その瞬間、再び雷鳴が轟き、雷が次々と住人たちを打ち付けていきました。

彼女は妹の亡骸を抱え、一晩中悲哀に暮れました。

いつの間にか眠ってしまった彼女が目を覚ますと、妹はおらず、さらには物言えず耳も聞こえなくなっていました。

代わりに調和を手に入れた事に彼女が気付くのは、彼女が永遠の孤独を認識する直後の事でした。

⏰:08/11/03 19:47 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


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