【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#283 [No.027、036(2/4)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。

「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」

「サンキュ」

角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。

先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。

「あなた最近元気ないわね」

先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。

「うーん…」

「授業もサボりがちみたいだし。学校は楽しくない?」

「……どうなんだろ」

つまらない訳じゃない。
友達もそれなりにいるし、放課後の理科室も好きだ。

けど、何か物足りないというか、満たされる事がない。
やりたいことがあるわけでもない。
何もしていないのに疲れていくような感覚がある。

心から楽しいかと言われると、たぶん楽しくない。

⏰:08/11/03 20:30 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#284 [No.027、036(3/4)◆vzApYZDoz6]
「やっぱりアレね、女よ女。彼女作っちゃいなさい」

「いいよ、彼女なんて。めんどくさいし」

「いい若者が何言ってるの。あなた黙ってればそれなりにカッコいいんだから、彼女ぐらいすぐできるわよ」

「どういう意味だよ…」

「そのままよ。あなたのお守りも楽じゃないんだから」

「…そういう事ね」

コーヒーを一気に飲み干し、カップを置く。
少しだけ口に苦味が残っていた。

彼女ができたところで、俺の気分は晴れないと思う。
曇りの原因は分からないけど、そんな気がする。

「ご馳走さま」

「おかわりはいい?」

「うん」

俺はまた天井を仰いで、目を閉じた。

やっぱり、ここが一番落ち着く。
いつもボーッとしてるか先生と世間話をしてるだけだけれど、それだけで気分が良くなった。

ふと目を開けると、先生がかなり間近で俺を覗きこんでいた。

⏰:08/11/03 20:31 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#285 [No.027、036(4/4)◆vzApYZDoz6]
「…顔が近いよ、顔が」

「寝られでもしたら困るからね。ドキドキした?」

ふふっ、と笑いながら、カップとお盆を片付けに再び給湯室に向かっていった。

それを目で追っていると壁の時計が視界に入った。
すでに午後5時半を回っている。

俺は少ない荷物を持って立ち上がる。
ちょうど給湯室から先生が出てきた。

「んじゃ、帰るわ」

「うん、おつかれさま。気をつけてね」

そのまま踵を返し、ドアに向かう。
ドアノブに手をかけたところで、また呼び止められた。

「明日の放課後もちゃんと来なさいよ」

見ると、先生がひらひらと手を振っていた。

「……気が向いたらね」

帰り道、理科室の方に目をやると、俺が座っていた回転椅子に先生が座っているのが見えた。

たぶん、明日の放課後も俺はあの椅子に座っているのだろう。
俺は少しだけ笑って、自転車を漕ぎだした。

⏰:08/11/03 20:32 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


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