【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#338 [No.053◆vzApYZDoz6]
俺はどれくらいの時間、こうしていただろうか。
いつまで待っても手に抱える彼女が息を吹き返すことはない。それは分かっている。
既に敵も味方もいないこんな場所でじっとしていた所で何もない。それも分かっている。
だが、立ち上がる気力が湧いてこなかった。
立ち上がり、今も戦っている仲間の元へ一刻も早く駆けつけなければならない。
頭ではそれを理解していても、最愛の女の変わり果てた姿を目の当たりにした俺の体は、言うことを聞こうとしなかった。
流れ出る涙は止まらない。
いくら流した所で意味はないというのに。
見上げると、壮大なステンドグラスが目に入った。
天使を模した女性が、色とりどりの光を透過して輝いている。
その向こうからは、地鳴りの音が響いていた。
俺は背中に生える翼に手を掛けた。
竜族の血を半分引く俺には、翼が片方だけ生えている。
両方ともに翼がある他の竜族には劣るが、翔ぶことはできる。
その翼を、渾身の力を込めて引きちぎった。
激痛に思わず声を上げたが、歯を食いしばって耐えた。
彼女を寝かせ、俺の翼を捧げる。
ステンドグラスに映る女性のように、光ある場所へ飛び立つために。
翼を無くした苦痛によがろうとする体を押さえつけて立ち上がる。
戦いの音はまだ響いている。
翼が無くても、俺はまだ戦わなければならない。
最後に彼女を一瞥し、俺は仲間の元へ駆けていった。
:08/11/03 21:57 :P903i :LUmIhgZI
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