【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#366 [8]
「この海の向こうにはこの国とは違う言葉、文化が栄えているのですよ。
その中に私の病を治す方法もあるかもしれないとお父様が言ってました。」
『そうなのですか?』
「ええ、今その文化、風習がこの海を渡って来て私達の国をさらに豊かにしているそうです。」
揚羽は目を輝かせながら言った。
:08/11/04 00:59 :W52SA :xpWYpMNU
#367 [8]
真也は少し息を吐き、
『私は屋敷で生まれ、ずっと使用人として生きてきたので難しい事はあまりよくわかりません。
でもこの場所にお嬢様をお連れするとお嬢様が嬉しそうになさるので私も嬉しいです。』
「フフッ、ありがとう真也さ… あっ!ここで止めてください」
:08/11/04 01:00 :W52SA :xpWYpMNU
#368 [8]
真也は崖の下で車イスを止めた。
見上げてみると数十メートルはあろうかという切り立った崖の中程には屋敷の周りには咲かない名も知らぬ一輪の花が咲いていた
海岸に散歩に出かけると二人はいつもこの場所で花を見上げるのであった。
:08/11/04 01:01 :W52SA :xpWYpMNU
#369 [8]
「素敵…」
揚羽は花を見上げながら呟いた。
『お嬢様はあの花がとてもお好きなのですね。』
「ええ。もっと近くで見てみたい。」
『ならば私が取って参ります。』
真也は胸を張りつつ言った
:08/11/04 01:02 :W52SA :xpWYpMNU
#370 [8]
「…いいえ、あの崖を登って万が一真也さんの身に何かあったら私は…
ごめんなさい、ワガママばっかりで、」
揚羽の瞳が涙の膜でうっすらと滲んでいた
『お嬢様…』
「アゲハって呼んでくれませんか?」
『え?…』
:08/11/04 01:03 :W52SA :xpWYpMNU
#371 [8]
それから数日とたたぬ内に揚羽様の容体は急変し今に至る
真也はあの花を揚羽様に届ける為、崖の僅かなくぼみに指をかけ登っていた
下は真っ暗闇で地面を見ることはできない
ただ波の音だけが闇の中に響き渡っていた。
:08/11/04 01:04 :W52SA :xpWYpMNU
#372 [8]
花まであと数メートル、
登っていくにつれ体がどんどん重くなっていく。
腕がもう吊りそうだ
だが俺は諦めない。
俺はまだ揚羽様に、いやアゲハに想いを伝えていないんだ!
例えこの身に何かあろうと花をアゲハに!!
:08/11/04 01:05 :W52SA :xpWYpMNU
#373 [8]
腕に力を込め再び登りだした真也
先程までの体の痛みは気にはならなくなっていた。
そして遂に花に手を伸ばし、真也は花を手に入れたのだ。
『やった…やったぞ!!』
歓喜にわく真也
と、その刹那!
:08/11/04 01:06 :W52SA :xpWYpMNU
#374 [8]
ガラッ…
『う、うわぁぁぁぁぁ!!』
突如手を掛けていたくぼみが崩れ、真也は闇の中に落ちていく…
この高さから落ちれば間違いなく待っているのは死、
真也はその現実に身をゆだねる事しか出来なかった。
だがその時、
真也の周りを白い光が包んだ
「シン…ヤ…サン」
:08/11/04 01:08 :W52SA :xpWYpMNU
#375 [8]
「午前1時24分…
ご臨終です…」
『そ、そんな…揚羽、
アゲハァァァァ!!』
揚羽の両親はその夜まだほのかに暖かい娘を抱きしめ泣き続けた。
:08/11/04 01:09 :W52SA :xpWYpMNU
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