access 〜フロッピーディスクに消えた少女〜
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#33 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「彼女でもできた?」
姉は期待を孕んだ目で僕をみて訊いてきた。
残念ながら不正解だということを彼女に伝えた。
僕がどうせ女なんて母のように裏切るに決まってる、だから彼女なんてつくらない、と心境を伝えると姉は悲しい顔をした。
:08/10/26 18:10
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#34 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
あまりにも苦しそうな顔をするものだから、僕まで胸が傷んだ。
長い沈黙の後、姉が口を開いた。
「……今更、なんだけどね。私来月に光哉さんと結婚することになったの」
姉は薬指にはめられた指輪を撫でながら言った。
光哉(みつや)とは、姉の婚約者のことである。
:08/10/26 18:11
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#35 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
姉は窓の外に広がる世界の遠くをぼんやりと見つめていた。
「光哉さんはね、小さい頃にご両親を亡くしてから、血縁関係の薄い親戚をたらい回しにされて育ったの」
まるで私達みたいに。
姉は静かに呟いた。
:08/10/26 18:12
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#36 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「けどね、彼は、誰一人として恨んでなんかいなかった。自分を一人残して亡くなったご両親のことも、酷い仕打ちをしてきた親戚のことも、白い目で自分を見てきた世間のことも。それを知らされた時ね、お姉ちゃん、なんだか馬鹿らしくなっちゃった。私達を捨てた、あの二人を恨んでたこと」
そう言って姉は立ち上がり、この後、光哉さんと会う約束があることを告げた。
電話で彼と話す姉は、笑顔が輝いていた。
:08/10/26 18:12
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#37 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
部屋に一人残された僕は何を考えたのか、セーターやらジャンパーやらをしこたま着込み、街を散歩することにした。
部屋の扉を開けると、雪と共に身の千切れそうな冷たい風が僕に吹き付けた。
マフラーに顔を埋める。
熱はまださがっていない。
けれど、だからこそ外の澄んだ空気を吸わなければいけない気がした。
:08/10/26 18:14
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#38 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
熱がさがれば、きっと僕はまた暗い世界へと身を傾けるに違いないから。
*
街を散歩している道中、普段目に止めないようなものが次々と目に入った。
手を繋いで歩く恋人。
両親に抱かれて幸せそうに笑う子供。
街の鮮やかな色彩。
雪のきらめき。
:08/10/26 18:15
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#39 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
姉や光哉さん、竹内芽衣子はこれらをどんな風に感じ、受け止め、記憶しているのだろうかと気になった。
《いつもの僕》なら、これらをまるで悪の手先か何かのように扱っていた。
今の僕は、涙が出そうになるくらい綺麗で尊いものだと感じている。
全く今の僕はおかしい。
いや、きっと風邪のせいなのだろう、風邪とは怖いものだ。
:08/10/26 18:16
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#40 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「こんにちは、彰くん」
竹内芽衣子がドラッグストアのビニール袋を持って現れた。
やあ、竹内さん、と僕は右手を上げて、情けない鼻声と微睡んだ目で挨拶を返した。
「竹内さん、どうしてここに?」
:08/10/26 18:17
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#41 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「彰くんのお姉さんに頼まれたの。彰くんを捜してきてって。
彰くんがメールで風邪だって言うからお見舞いに行ったんだけど、部屋には誰もいなくて、困ってたらお姉さんがそう言ったの。
当てずっぽうに捜してたら、着ぶくれした彰くんが歩いてたんだもん。びっくりしちゃった」
彼女が手にしていたビニール袋には、僕の為にと風邪薬や熱冷ましグッズやらがしこたま買い込んであった。
:08/10/26 18:18
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#42 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
僕は不思議な感情に包まれながら、はんば強引に部屋に連れ戻された。
改めて熱を計ると、熱があがっていた。
竹内芽衣子は夜遅くまで僕を看病してくれた。
「どうしてここまで良くしてくれるの?」
何の気なしに訊いた。
:08/10/26 18:19
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