access 〜フロッピーディスクに消えた少女〜
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#42 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

僕は不思議な感情に包まれながら、はんば強引に部屋に連れ戻された。

改めて熱を計ると、熱があがっていた。

竹内芽衣子は夜遅くまで僕を看病してくれた。

「どうしてここまで良くしてくれるの?」

何の気なしに訊いた。

⏰:08/10/26 18:19 📱:L704i 🆔:5rC7WrjE


#43 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

彼女は頬を紅に染めて、わたしにもよく分からないの、と言った。

分からなくていい。

僕みたいなやつに好意を持つと、不幸になる。

僕は微睡みの中でそう言った。

しかしその忠告も無駄に終わった。

何故なら、彼女は帰り際に眠る僕の頬にキスを落としていったからである。

⏰:08/10/26 18:20 📱:L704i 🆔:5rC7WrjE


#44 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



それから暫くして、僕ははれて大学生となった。

いちいちアパートを借りるのも手続きやらなんやらがあるし面倒だったので、寮に入ることにした。

たびたびむせかえるほどの湿気を含んだ濃霧が立ち込める、地味で陰気臭い良い所である。

⏰:08/10/30 18:51 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#45 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

強いて欠点をいうなら、寮全体が酷く傷んでいて、隣の住人の出すテレビの音や音楽の音が筒抜けだということくらいだ。

初め、寮生の一人に顔合わせパーティーとやらに誘われたが断った。

僕の賑やかで明るいものを本能的に避けてしまう習性は相変わらずだった。

しかし何故か友人はたくさんできた。

何故か教授にも気に入られた。

⏰:08/10/30 18:52 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#46 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

理由は恐らく、僕がつねに彼らの前で気持ち悪く笑っていて、うんうんと聞いてもいないのに耳を傾けているフリをしているからだと思われる。

服装はファッション誌のモデルが着ているものを直接注文して揃えた。

慣れない笑いを無理矢理つくるために、毎日、肩こりならぬ頬こりに悩まされた。

僕の笑顔をつくりだす筋肉は、頻繁に使用するよう出来ていないのである。

⏰:08/10/30 18:53 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#47 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

面白くも何ともないのに笑顔をつくり、服装や話題を流行に合わせ、どこにでもいる普通の学生を装う。

つまり、キャンパスライフもやはり今までの延長でしかなかったということだった。

自分は死ぬまで心から楽しいと感じることができないのだろうか。

夜、眠れない時にそう考えると身悶えするほど恐ろしくなる。

獣のように爪をシーツに突き立てて、ガリガリと掻きむしる。

⏰:08/10/30 19:00 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#48 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

そんなとき、いつも思い出すのは竹内芽衣子の笑顔だった。

彼女とはセンター試験以来、連絡もつかずにいた。

なぜ彼女のことが脳裏によぎるのか、分からない。

けれど、少しでも気を抜けば、時を選ばず僕の脳裏に彼女の笑顔と柔らかい声が繰り返された。

⏰:08/10/30 19:01 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#49 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

まるで、死神に引かれた僕の右手に逆らうように、彼女の存在は僕の左手を強く引っ張り現実へと引き戻してくれるのである。

彼女に会いたかった。

しかし僕には彼女に連絡する勇気すらなく、それは到底無理だと感じていた。

彼女は幸せな人生を送っているはずだった。

⏰:08/10/30 21:51 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#50 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

そこに僕という人間が入り込むことで、きっと彼女は不幸になるに違いない。

そう思うことでしか、僕は竹内芽衣子に会えない虚しさを正当化することができなかった。

⏰:08/10/30 21:52 📱:L704i 🆔:gsMrl8Wk


#51 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

その日の夜は、やけに星が明るく輝いていた。

部屋の中で小説を読みふけっていても日頃溜まった鬱憤は晴れそうもなかったので、久しぶりに夜空を眺めてみることにした。

ベランダに出ると、きんと冷えた空気が気管から肺へ、そして僕の肺胞を犯した。

身を震わせる。

⏰:08/11/02 14:00 📱:L704i 🆔:y1yuMBeI


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